かつてスピリットが現実で生きていたとされる異世界、スピリッツエデン。スピリットの存在はカードとなり、この異世界スピリッツエデンではかつての伝説を称えてか、あらゆる物事に関してバトルスピリッツを通して決められる事となった。
そう。つまりは、バトルの実力があれば全てが思い通りにされるという程に。
そしてその世界に住むとある一人の女性がいた。女性は裕福な環境にも恵まれ、またバトルスピリッツにおいてもその才能を発揮し、少なくとも並みのカードバトラーに負ける事等皆無だった。
だが実力はあってもその女性は決して誰かに何かを要求する事はなかった。自分の為の欲望はなく、寧ろ誰かの為に尽くしたい。そんな事を想う優しい女性だった。自分自身がやりたい事はない、だからこそ自分以外の誰かの為に役立てるのなら彼女にとってはそれが幸せだった。それが例え、都合よく利用されるだけだとしても。
誰かから必要とされたい、強いて言うならばただそれだけが彼女の唯一の欲。しかし、そんなただ一つの儚く思えるその欲望でさえも、満たされる事は無かった。
端的に経緯を述べよう、出る杭は打たれるそんな言葉がある様に、力を持つ彼女に周りの人間は疎み、実の家族ですら力を持つ彼女を恐れ、疎外してしまう。
その後一人となった彼女に、利用しようと彼女の実力に目を付けて近付く者が少なからずいた。彼女は自分を必要としてくれるならばと喜ぶものの、所詮は束の間。
彼女を利用する者達は、その実力を間近で見て改めて考える。もし、彼女に裏切られでもしたら自分がどうなるか、と。
勿論彼女に必要としてくれる誰かを裏切る気等微塵もない、しかしその思考に至った者達は簡単に彼女を切り捨て、自分の目の前から消え、誰からも必要とされなくなり、たった一つの欲望が満たされない事に、絶望する事しか彼女にはできなかった。
心が次第に闇に堕ちて行く中、そんな彼女の前に一人の人物が現れる。
「ねぇ、君。バトル、相当な腕の実力だってね?」
初対面であるその人物から掛けられた第一声がそれだった。見知らぬ人物を前に、どう対応すればよいかと彼女はただ困惑するしかなかった。
「あの、私に……何か?」
「うん。端的に言うよ? 君の実力を見込んで手を借りたいんだ」
「!!」
その男から聞かされた言葉は彼女が求めてやまない、自分を必要としてくれる声、心が沈みかけていた彼女にとってその言葉は一筋の光にも思えた。
「な、何故私を?」
「僕が必要だと思ったからさ。それ以外の理由はない」
「…………」
自分を求めてくれるのなら彼女にとっても願ってない。しかし、差し出されたその手を直ぐに取ってしまうのはどうしても気が引けてしまう。
「どうやら、信用してくれてはいないみたいだね」
「!」
「正直に言ってくれていいよ。僕も君の事を何れ恐れて目の前からいなくなるんじゃないかって、そう考えてるんだよね?」
「ど、どうしてそれを?」
「悪いけど君の事は色々調べがついてるんだ。何せこっちにはいい情報屋がいるからね」
「……」
確信を突くような男の一言、その男性の言葉に彼女は肯定の意味も込めてただ黙ってその言葉を聞き入っていたが、男性は「心配いらないよ」と付け足しながら彼女の目を見て話を続ける。
「僕は君よりも強い。だから君を恐れて立ち去るなんてそんな事は絶対ない、誓ってもいいよ?」
「……それは、凄い自信ですね。でも、私より強いと豪語するなら、そもそも私の力何て必要ですか?」
「そりゃそうさ。僕だけが強くても意味がないからね。僕程とはいかなくても、凄腕のカードバトラー集団の組織を作りたいんだ。その中核に君のようなカードバトラーがいるんだよ」
「私を……!」
「そう、君だからこそね。何ならバトルで決めようか?」
笑顔でデッキを構える男性、他の誰でもない。自分を必要としてくれたその言葉彼女にとっては何物にも代えられない喜びだった。
そしてその言葉が、決して嘘ではないと。最後に確信が欲しくて、彼女は目の前の男性と同じくその表情に笑みを浮かべながら、喜々としてデッキを構えた。
「是非喜んで、御手合わせを……お願いします!」
「フフ、いいよ。早速始めよっか」
両者互いに宣言をコールし、バトルを始めるがその決着にそれほど時間が掛かる事は無かった。
***
「ッ!!」
最期のライフが砕け、崩れ落ちるようにその場で膝を突く女性。そしてバトルフィールドへと戻り、男性は女性にゆっくりと歩み寄る。
「僕の勝ちだね? じゃあ約束通り、僕に手を貸してくれる?」
女性に対して純粋なまでの笑顔を向けて手を差し伸べる男性。もう女性に断る理由など一つもなかった。
「はい……はい!! 喜んで、私は、貴方のお役に立ちます!」
「ありがとう。君が望むのなら、僕にずっと仕えて欲しいなぁ。最も、君が僕の望む働きをしてくれればだけど」
「勿論。この命に代えても、必ず私は貴方に尽くして見せます」
「フフフ、本当に君は健気だねぇ。君のような忠誠心ある人はまだ僕の組織には一人もいないよ。よければ君の名前を聞かせてもらえるかい?」
「ディスト。それが私の名前です」
「そう、僕はルディア。これから、よろしくね」
「はい! こちらこそ、宜しくお願いします。ルディア様」
それがあの人、ルディアとの出会いだった。
あの日を境に、私はルディア様の期待に応えようとそう心に誓った。どんな手を使ってもこの人に尽くす。そうする事こそが私にとっての喜びに他ならないのだから。
そして現在、今に至る。
***
「ガイトからの連絡、完全に途絶えたわね」
「奴等に負けたって事なのじゃ?」
「そう見るのが妥当ね。もしくは……」
ガイトが負けた丁度その頃、行動を共にしているミコとディスト。ガイトからの通信が途絶えていることにディストは何かを察しているのか意味深な台詞を口にし、それに対しミコは事情が把握できてない様に「もしくは?」とディストの言葉に、疑問符を付けて聞き返す。
「いえ、別に。ただ、どちらにせよこの状況でガイトには期待できそうにないって事だけは確か」
「どうする気じゃ?」
「決まってる。誰が負けた所で関係ない、残った者が他の七罪竜を回収すればいい」
そして彼女は先陣を切る様に、ミコの先を歩き始めて行く。
「ミコ、貴方はここに居なさい。奴等の七罪竜は私が回収してくるわ」
「一人でやる気なのじゃ?」
「えぇ。甘い貴方には荷が重いでしょう?」
「ッ!」
ディストの言葉に対し、ミコは唇を噛み締めながらもディストの様子に対し、ふと浮かんだ疑問を口にする。
「ディスト、お主もドレイクも妾の事を甘いと言うが、本当にそこまで……非情にならねばならぬのか?」
「!」
ミコの口からそんな質問が来ることは意外だったのか、彼女は驚いたような表情を浮かべながらすぐに表情を柔らかくして彼女は口を開く。
「当然。貴方とドレイクがどう思ってるかは知らないけど、私は非情になるわよ。ルディア様に尽くせるなら、他の全て、いえ私自身さえ犠牲にしたって構わない。
それが私の、帝騎としての覚悟よ」
「……」
そう言葉を告げて、彼女はそのまま歩き出しミコは彼女の言葉に何を想うのか、ただ静かにその後姿を見送るだけだった。
「うぅっ……!」
「絵瑠、無事か?」
「……光黄!? お前こそ」
丁度同じ頃、烈我達とは別の場所で目を覚ます光黄と絵瑠。
『光黄様! 絵瑠様! お二人ともご無事な様で何より!!』
「あぁ、心配してくれてありがとうな」
『いえいえ、執事として当然!』
「
ライトに対しそんな会話を交わしつつ、二人は状況確認するように辺りを見渡すものの、周囲には自分達以外の人影はない。
「どうやらミナト達とははぐれたようだな」
「あぁ。全員無事だといいけど」
「大丈夫、きっと全員無事なはずさ。烈我や星七君も強いし、それにミナトだって……癪だけど強い奴だって言うのは知ってるから」
「あぁ、そうだな。アイツ等なら大丈夫だよ」
全く心配していないと言う訳ではないが、心配していた所でどうにかなる訳ではない。今は全員無事だと希望を持ち、先へ進むかしかない。
『!……この気配!』
「ライト? どうかしたか?」
『えぇ。何か反応を感じると言うか、ともかく光黄様、絵瑠様、私についてきてくれませんか?』
何かを感じ取ったものの、それを口では説明し辛い様子のライト。それに一瞬動揺するように絵瑠は光黄の方に視線を向けるが、彼女は迷う事無く首を縦に振る。
「今はライトの直感を信じよう。ライト、その場所まで案内してくれ」
『はい、お任せください!』
先導するように飛び出すライトの後に続く光黄と絵瑠の二人、そして少し進んだのち、二人の前に見えてきたのは何か鉄格子のような物が。
「あ、アレ!!」
鉄格子を見た瞬間、何かに気付いたように真っ先に声を上げて指差す絵瑠、彼女が指差す先には鉄格子の中にある一枚のカード、そのカードは紛れもなくシュオンのカードであった。
「シュオン!!」
「絵瑠、待て!」
咄嗟に絵瑠を呼び止める光黄だが、彼女の静止も聞かずその場に駆け寄り、鉄檻を掴みながら呼びかけるが、反応はない。
「シュオン! シュオン!!」
「絵瑠、落ち着け」
「でも……!」
「気持ちは分かる。でも此処は敵地だ、冷静にならないと状況は悪くなる」
「うっ……ごめん。私」
「嫌、謝らなくていい。俺もお前と同じ状況だったら、今みたいに冷静さを欠いてるかもしれないからな」
『光黄様……!』
彼女の言葉に嬉し涙を零すライトだが、今は泣いている場合はない。一先ず檻を調べるが、やはり出入口となる扉には鍵が掛けられている。
「ッ!! シュオンは目の前なのに……!」
「……待て」
「!」
何かに気付いたように光黄は錠前を手に取り、一見気付かないがよく目を凝らしてみるとそれなりに深い傷が付けられていた。
「この傷……ライト、お前なら壊せそうか?」
『やってみます。お二人共どうぞお下がりを』
二人の安全を考慮し適切な距離まで離れたのを確認すると頭部の角を構え、錠前に向かって角を突き出し、何度も力強く叩きつけて行き、二度三度と攻撃を加えると最初に傷のあった個所から徐々に錠前は皹割れ始めて行く。
『これで、どうだッ!!』
最後に渾身の力を込めて錠前に角を叩きつけると、完全に錠前を破壊し、扉を開く。
「シュオンッ!」
鉄格子が開かれると同時に真っ先に中へと入り、シュオンのカードを手に取って呼び掛ける。
薄暗い闇の中、誰かに呼びかけられるような声が響く。
『(誰、だ?)』
何も見えない筈の闇の中で何かが光り輝いているように見えた。そしてその光の方向へ手を伸ばすと、その声はより大きく頭の中へと響く。
『この声……アイツ、なのか?』
呼び掛けに対して目を覚ますと、次の瞬間、シュオンのカードは光り輝き始め、彼女の目の前で実体化する。
『絵瑠? お前、なのか?』
「シュオン!! よかった、私!」
泣きながらシュオンに頬擦りし、その様子に対し一瞬訳が分からない様に困惑しながらも、すぐに気を取り直す様に『離せ!』と絵瑠から距離を置く。
『お前、何でここに居る?』
「何でって、お前を助けに来たに決まってるだろ」
『助けにだと? そんな事誰が頼んだ!』
「!」
絵瑠に対して鋭く睨むような視線を向けながら声を荒げるシュオン。
『大体、別れはもう告げたはずだ。お前を助けたのだって、ただ借りを返しただけ、だからお前が来る必要なんてなかったんだ!』
『シュオン! 折角絵瑠様と光黄様が危険を冒してまで助けに来たのに、そんな言い──!』
シュオンに対し抗議するように突っかかるライトだったが、それを真っ先に手を出して止める絵瑠。
『絵瑠、様?』
絵瑠の様子に不思議に思いつつも引っ込み、そして彼女はそのままシュオンを見つめたかと思うと。
次の瞬間、シュオンに対しコツンと拳骨で殴って見せ、目の前の出来事に光黄もライトもぎょっとした様に驚く。
『!?……絵瑠、貴様何の真似だ!』
「……」
シュオンの問いに対して、彼女は無言だったがその目には静かに涙が篭る。
『!?』
「お前を」
『?』
「お前をただ助けたい。それだけが理由じゃ駄目なのか?」
『……絵瑠』
涙を拭いながらも俺でも必死に彼女は言葉を続けて行く。
「前に言ってくれたよな? 私と過ごして悪い気はしなかったって。そう言ってもらえた時私も同じだったから……シュオンと一緒に居て楽しかったから、その言葉が嬉しかったんだ」
『……お前、本気で?』
シュオンの言葉にただ黙って頷く彼女。此処まで来たのも紛れもなく彼女自身の意思。
「このままお前とお別れなんて私は絶対に嫌だ! もっとお前と一緒に過ごしたいんだ。美味しい物だって一緒に食べたいし、バトルだってもっとお前と一緒に戦いたい! そう思える大切な友達なんだ!!」
『友達、俺がか?』
元の始まりは彼女を乗っ取ろうとしていた事、にも関わらずそれを受け入れた上で自分を友達と言ってくれている事がとても信じられなかった。
だが、それでも彼女の目と涙を見れば嘘ではないと判断するには充分だった。
『絵瑠……俺は……!』
『これは、どういう事かしら!!』
『「!!」』
何かを言い掛けた瞬間、口を挟むようにその場に響く第三者の声、その声の方角を振り返るとその先には帝騎の一人であるディストの姿。
「お前……!!」
光黄にとっては以前の借りもある相手、ライトもまた警戒心を強くさせ、光黄達を庇う様に先頭に立つ。
「檻に閉じ込めてた筈のシュオンが何故解放されてるのかしら? そう簡単に破壊できる檻ではなかったはずだけど?」
「さぁ? ただそっちの管理が甘いだけだろ? 俺達に聞かれたって知る訳ないし、教える義理もない」
「随分なご挨拶ね。まぁ、あんな目に合わせたんだから当然か」
「……ッ! ふざけるなッ!」
不意を突かれ、ディストに攫われる羽目となってしまった光黄。そのことを思い返す様に笑みを浮かべるディストに対し、光黄は忘れがたい記憶であり、睨むような視線をディストに向ける。
「まぁこの際、どうだっていいわ。どの道ライトボルディグスと一緒にエルドラシュオンも再度捕え直す。ただそれだけよ」
一度捕えた相手、それを再度捕獲する程度彼女にとっては何ら難しい事であるとは思っていない。容易であると、確信していた。
「さぁ構えなさい? まずはどっちから、私の狩る相手になってくれるのかしら?」
「貴様……!」
まずは自分からだと名乗る様に光黄はデッキを構えようとするが、「待って!」と絵瑠は彼女の肩を掴んで呼び止める。
「絵瑠?」
「ごめん光黄。お前にとっても因縁ある相手だと思うけれど、ここは私にやらしてくれ」
「お前が?」
「あぁ。元々私も戦うつもりで此処まで来たんだ! だったら当然、受けて立つだけだ」
『しかし、絵瑠様は……その!』
言葉選びが難しい様に口籠らせるライトだが、「大丈夫」と彼が何を言わんとしているかは絵瑠にも分かっていた。
「確かに私は一度負けた……けど、だからこそその時の悔しさを晴らしたいんだ! シュオンと一緒に!!」
『絵瑠!』
自信に溢れた絵瑠に心配は無用だった。その様子に光黄も少し安心するように口元を緩ませる。
「分かった。だったら頼んだぞ、絵瑠」
「任せろ! 何てたって私はお前のライバルだからな! お前以外の奴にもう負けるつもりなんてない!」
「舐められたものね。ミコに負けた貴方が私に勝てると本気で思ってるのかしら?」
「勿論そのつもりだ! 例え誰が相手だろうが今の私達には関係ない!」
強気な様子の絵瑠に対し、ディストは悪態をつきながらも彼女の傍にいるシュオンに視線を向けると、また静かに笑って見せる。
「まぁいいわ。どっちが相手でも勝つのは私、それにシュオン、私を裏切った貴方に直接粛清できるのもまた一興!」
『フン、貴様と手を組んだ覚えはない。未練がましく言うのなら今日その縁を断ち切らせてもらうぞ』
「言ってくれる。精々後悔しない事ね」
早速バトルの舞台を整えるようにキューブを得ると自分の足元に投げ込むと、光の輪が二人を囲い込む。
「準備はいいかしら?」
「あぁ!」
「それじゃあ行くわよ」
「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」
宣言と共に二人の姿がその場から消えるとバトルフィールドへと転送され、その舞台での光景が光黄とライトの前に映し出されていく。
「バトルを始める前に一つ聞かしてくれ」
「あら? 何かしら」
「あの男の目的……お前達の組織のトップの目的が何なのか、お前は分かってるのか?」
「フフ、それが一体どうしたのかしら?」
「分かってるのか! 彼奴の目的はこの世界の滅亡! そんな奴に従ってたらお前達だって!」
「別に構わないわよ」
「何だと!?」
このスピリッツエデンという世界そのものの滅亡、それがルディア目的。万が一にもその目的が果たされれば今このスピリッツエデンに住む人々がどうなるのか、ルディア本人は勿論、彼女もまたどうなるのか分からない。
にも関わらず、絵瑠の言葉に彼女は取り乱す訳でも否定する訳でもなく、前々から知っていたと、知った上でそれがどうしたのだとまるで平然としていた。
「ルディア様の目的ぐらい今更貴方達に言われなくても把握してる。
最も、あの御方の目的を周知してるのは帝騎の中でも私かヴァンだけだと思うけどね」
「じゃあお前は、全て分かった上で!」
「ええ。あの御方が何を望むか、その願い事態は何だって構わない。ルディア様は私を必要としてくれて、私はその期待に応える。ただ、それだけの事よ」
「それだけの事って、自分達だってどうなるか分からないのに!!」
「だから何? ルディア様の為なら、私は自分がどうなろうが構いやしない」
「!」
狂信的な忠誠、それには思わず絵瑠達は言葉を失い、モニターを通して状況を観戦している光黄も余りにも過度なディストの忠誠に「狂ってる」と思わず言葉を零す。
『絵瑠、それ以上は無駄だ』
「……シュオン」
『もうその女に何を言っても退きはしない。説得は無理だ』
「……」
「なら、余計な会話はここまでね」
「!」
「さっさと始めましょうか? どの道私にとって貴方達は敵、戦う理由はそれで充分よ」
「やるしか、ないか!」
「そうよ、それでいい。精一杯抵抗すればいい……私達組織に盾突いた事、何より私の邪魔をした事、存分に痛めつけて後悔させてあげる!」
先行はディストからの開始となり、いよいよバトルの幕が上がる。
────第1ターン、ディストside。
[Reserve]4個。
[Hand]5枚。
「私のターン、創界神ツクヨミを配置」
「!」
ディストの背後に出現する幻影、その姿は太陽神の名を持つアマテラスと双璧を為す、月を司る神──ツクヨミの姿である。
「神託によりカード3枚をトラッシュに、その中にある「妖戒」、「魔影」を持つカードがあればツクヨミにコアを追加。これでLv.2!」
トラッシュに送られたカードは「キャメロットポーン」、「ストロゥパペット」、「騎士の覇王ソーディアスアーサー」の3枚。
「配置して早々Lv.2か」
「効果でツクヨミにコア3個を追加。これでターンを終了するわ」
厄介だと言わんばかりに表情を歪める絵瑠に対して、ディストは余裕を感じさせるような態度でターンシークエンスを終える。
────第2ターン、絵瑠side。
[Reserve]5個。
[Hand]5枚。
「メインステップ、バーストセット! さらにネクサス、シヴァの破壊神殿を配置! ターン終了!」
────第3ターン、ディストside。
[Reserve]5個。
[Hand]5枚。
[Field]創界神ツクヨミLv.1
「私のターン、キャメロットナイトX、2体連続召喚!」
小柄な体に鎧を着こみ、モノアイを赤く光らせるスピリット。姿形は似ているが、以前彼女が扱っていたキャメロットナイトとはまた別種の存在。
「召喚時効果、このスピリットは手札から召喚した場合、デッキから1枚ドロー!
それぞれ召喚時効果発揮により、2枚ドロー!」
「(着実に手札を増やしに来るのか)」
戦略に長けた紫にとって手札を増やす事は堅実的とも言える。場を整えた後はどうするか、当然決まっているかのように彼女は口角を上げる。
「さて、貴方の場はがら空き。攻めさせてもらおうかしら?」
「!」
「キャメロットナイトX、アタック!」
突撃と言わんばかりに手に持つ矛を構えて前進するキャメロットナイトX。そのまま絵瑠へと迫ると構えた矛をバリアに刺し貫く。
「ぐぅッ! まだだ、ライフ減少時でバースト発動! 魔竜デスラー!!」
ただ黙ってやられはしない。攻撃を受けてなお怯む事無くカードを宣言すると、絵瑠のフィールドに二刀の剣を掲げし紫龍、デスラーがフィールドへと降り立つ。
「デスラーの召喚時効果で私はデッキから2枚ドロー! さぁ、まだ来るか」
残るキャメロットナイトXを牽制するように吼えるデスラー、無闇にアタックすれば返り討ちに合うのは必須。
「ターンエンドよ」
────第4ターン、絵瑠side。
「ドローステップ、ネクサスの効果! 手札1枚を裏向きで手元に置く事で2枚ドロー!」
[Reserve]6個。
[Hand]6枚、(手元)1枚。
[Field]魔竜デスラーLv.1(1)BP5000。
「一気に畳みかける! 創界神シヴァを配置! 配置時によって3枚神託!」
神託によって破棄されたカードは「辰の十二神皇ウロヴォリアス」、「戊の紫龍レッドライダー」、「ムトゥードラゴン」。
「さらに障壁の舞踏龍ナーティアドラゴンLv.2で召喚!」
また新たに呼び出される死竜を持つスピリット、その召喚によりシヴァにコアが追加されていく。
「アタックステップ! ナーティアドラゴンでアタック!! さらにフラッシュタイミング、シヴァの【神域】効果を使用! 手札一枚を裏向きで手元に置く事でコア3個以下の相手スピリットを破壊! キャメロットナイトXだ!」
シヴァが腕を翳した瞬間、キャメロットナイトXはまるで何かに掴まれてるようにジタバタともがき始め、シヴァは翳した腕を一気に握り潰すとキャメロットナイトXはそのまま圧殺される様に破壊され、爆発四散してしまうが。
「そう来ると思ってたわよ! 相手によって、魔影を持つ自分のスピリットが破壊されたのならこのスピリットを召喚可能!」
「!!」
「冥府の亡霊を糧に生きる月光の鬼、月魂鬼神スメラギンガを召喚ッ!」
月の光に照らされるように姿を現すスピリット、仮面の隙間から不気味な光を灯すと、剣を引き抜いて戦闘態勢に入るよう構える。
「スメラギンガでアタック中のナーティアドラゴンをブロックさせる!」
ナーティアドラゴンは舞う様に軽やかな動きでスメラギンガに蹴り掛かるが、その攻撃を難なく片腕で防御して見せるとそのまま攻撃を弾き、ナーティアドラゴンに剣を振り下ろして破壊。
「随分と呆気なかったわね」
「……いや、私のスピリットの破壊は無駄にはしない!」
「何?」
主力たるスメラギンガ、その姿を前にしてもその目は全く怯む事無く彼女は手元に伏せてあるカードに手を掛ける。
「裏向きにあるこのカードは、そのバースト条件を満たされた時、そのバースト発動できる!!」
「!?」
裏向きで置かれているその手元のカードをオープンすると同時に、彼女は高らかに宣言を口にする。
「バースト条件は『相手による自分のスピリット破壊後』! よってバースト発動ッ! 破壊魔龍バイラヴァー!! 此奴のバースト効果により、お前のツクヨミのコア3個をボイド送りにさせてもらう!」
「なッ! 創界神のコアを!?」
バイラヴァーのカードにより放たれる紫の波動、その波動を受けツクヨミからコアが取り除かれ、それによる影響かツクヨミの表情に苦痛が見える。
「その後このスピリットを召喚! 異次元の果てより姿を見せろ! バイラヴァーをLv.2でバースト召喚!」
紫の次元の向こう側より現れるバイラヴァー、黄金に輝く矛を肩に担ぎながら、標的であるディストを睨む。
「ッ!」
「まだ私のアタックステップ中だ! 召喚したバイラヴァーでそのままアタック! そしてLv.2、3のアタック時効果! ターンに1回、疲労状態の相手スピリットを破壊する!」
バイラヴァーは担いだ矛を勢い良く地面に突き刺すと、衝撃波は地面を伝って直線上にスメラギンガへと直撃し、その攻撃を受け、スメラギンガは堪らず大爆発を起こす。
「ッ! スメラギンガを……!」
「さらにこれだけじゃない! フラッシュでシヴァの【転神】発動! シヴァのコア2個をボイドに送る事でこのターン、シヴァはスピリット状態として扱える!」
「これで場のスピリットは三体、速攻を仕掛けて来るつもりかしら?」
「あぁ、もうお前にブロッカーはないからな! メインアタックだ!」
「ライフよ」
バイラヴァーは地面に突き立てた矛を引き抜くと、そのまま投擲のようにディストに向かって投げつけ、投げつけた槍は標的を正確に捕え、矛はバリアへと直撃。
「ッ!!」
「まだまだッ! 転神状態のシヴァでもアタックだ!」
「それもライフ!」
今度はシヴァの放つ光弾がバリアへと直撃し、爆撃と共に再びライフが破壊される。
「デスラーでさらにアタック!!」
「流石にそれ以上は通さないわよ? フラッシュでマジック、ネクロブライト!」
二刀の剣を掲げて飛び出すデスラー、だが行く手を阻むように突如として怪しげな魔方陣が目の前に展開されていく。
「効果でトラッシュにあるコスト3以下のスピリットを召喚! 出てきなさい、キャメロットナイトX!」
魔法陣より飛び出し、再びフィールドに蘇るキャメロットナイトX。モノアイを輝かせながらケタケタと不気味な笑い声を上げている。
「くっ! でも、デスラーの攻撃は継続中だ!」
「アタックはキャメロットナイトXでブロックよ!」
再び甦るキャメロットナイトXに多少驚きつつもデスラーは構う事無く、再び突っ込み繰り出された槍を剣で捌き、残るもう一刀の剣で敵を両断、破壊によって目の前で爆発を起こすが、咆哮を上げて生じた爆風を直ぐに掻き消す。
「ターン、終了だ」
『凄い! 流石絵瑠様!! 相手のキースピリットを倒した上にライフ差も逆転! これはもう勝負決まったも同然です!』
「……」
バトルの状況を見守る光黄とライトの二人、此処までの状況を見れば絵瑠の優勢とみてまず間違いない。勝利ももうすぐだと浮かれるように語るライトだが、その隣で光黄だけはまだ戦局を判断できないのか、難しい表情を見せる。
『光黄様、どうかされました?』
「……いや、お前の言う通り確かに今は絵瑠の優勢だ。けど、まだ油断はできない」
『しかし、相手の主力も倒しましたしこのまま一気に押し切るだけでは?』
「そう簡単じゃない。相手も実力者な上に、奴等にはあのカードもある」
『……ハイドカード!』
彼女の言葉にライトもすぐさま察したようにそのワードを口にし、ライトの言葉に彼女も重く頷いて見せる。
「(何か仕掛けて来るとすれば勝負はここからが本番。絶対に油断するなよ、絵瑠)」
────第5ターン、ディストside。
[Reserve]7個
[Hand]4枚。
[Field]キャメロットナイトXLv.1(1)BP2000、創界神ツクヨミLv.2。
「私のターン……!」
このターン、手札に加わった一枚。その一枚に彼女の顔色が変わったかと思うと。
「フフフ、ハハハッハハ!! どうやら来てくれたみたいね!」
「その様子、まさか……!」
「えぇ、お察しの通りよ」
絵瑠の問いに対して、不敵な笑みを見せるとターンシークエンスを進めていく。
「まずはキャメロットポーンを召喚。さぁ、覚悟はできてるかしら?」
「(来る!)」
空気が重々しく変わり始め、これから来る何かに息を呑む絵瑠。そして彼女は満を持して、手札にあるそのカードを構える。
「恐怖に慄けッ! 破滅と絶望を象徴せし災厄の悪魔ッ! 死神デュアルベルガス、Lv.2で降臨せよ!」
光を覆い隠す様にフィールドを包む黒雲。キャメロットポーンとキャメロットナイトXの二体は空を見上げると、闇の空より突如として振り落ちる巨大な漆黒の鎌。
自分達の頭上へと落ちる鎌に、キャメロットナイトXは咄嗟に離れるがキャメロットポーンは逃げ遅れそのまま鎌の下敷きとなって消滅。
そして暗闇の中、薄ら見える影が鎌を掴み始めたかと思うと、次の瞬間、その鎌を持ち上げるように天に向かって鎌を振り上げ、振るわれた鎌の一閃は雲に覆われた空を一瞬にして裂き、裂けた空より差し込む光が鎌を持つその正体を照らす。
「あ、あれは……!」
絵瑠の視界に映り込んだのは、どす黒い瘴気をまるで黒装束のように身に纏う異形の顔を持つスピリット、瘴気を吐きながら鎌を掲げる姿はまさに死神。
「これがハイドカードの一体! 死神デュアルベルガス!! 災厄と絶望を齎し、全てを狩り尽くすまさに最凶のスピリットよッ!」
恐怖の象徴とも言うべき死神の姿に光黄も絵瑠も思わず息を呑み、一方でディストは死神の姿に見惚れるように笑みを見せ、デュアルベルガスも自身を扱う主人にまるで同調するかのように笑いながら目の前の相手である絵瑠に鎌の切っ先を向ける。
「アタックステップ! デュアルベルガス、狩りの時間よ!」
鎌の肩に担ぎ直すと、ディストの指示に死神は一気にフィールドを駆け抜けて行く。
「デュアルベルガスの効果、系統「魔影」を持つスピリット全ては疲労状態の相手スピリットに指定アタックが可能。デュアルベルガスで魔龍デスラーに指定アタック!」
死神が最初に標的と定めたのはデスラー、槍を構えて一気にデスラーへと迫る。
「デュアルベルガスの効果はまだ続くわよ、このスピリット自身が疲労状態の相手に指定アタックしたのなら効果によって回復!」
「ッ! デスラー、ブロック頼む!」
絵瑠の指示に頷くと、迎撃するように飛び出し迫る死神に二刀の剣を振り下ろすが、デュアルベルガスは幻影のようにデスラーの目の前から消えると、振り下ろした剣は虚しく空を斬るだけに終わる。
何処に消えたのかと咄嗟に辺りを見渡すが瞬間、背後に強烈な殺気を感じ、直ぐに振り返って剣を振り翳すが、デスラーが剣を振るうよりも先に背後に現れた死神は鎌を横一閃に振るい、死神の放つ鎌の斬撃はデスラーの剣の刀身を切り落としてしまい、得物を失った事で抵抗する事さえできなくなったデスラーを非情なまでに鎌で二度、三度と切り刻み、力尽きて爆発四散する。
「この瞬間、デュアルベルガスのLv.2、3効果発揮! このスピリットが相手スピリットだけを破壊した時、相手の手札か相手スピリットのコア1個をトラッシュに送れる!」
「なッ!?」
「バイラヴァーのコア1個をトラッシュに送るわ!」
鎌に紫の光を灯すと、そのまま鎌を振り切って斬撃波としてバイラヴァーへと飛ばすと、その直撃を受け、バイラヴァーは力を削がれるように片膝を突く。
「コアが取り除かれた事でバイラヴァーはこれでLv.1、ディアルベルガスのBPを下回ったわね」
「し、しまった!」
「デュアルベルガス、次の獲物はバイラヴァーよッ!」
その指示に喜々として従う様にバイラヴァーへと迫り、黄金の矛をデュアルベルガスへと突き出すが、鎌で矛を軽々と弾き飛ばすとそのまま鎌を振るい、バイラヴァーを斬り裂いて破壊。
「デュアルベルガスの効果! 今度は貴方の手札1枚を破棄させてもらうわ!」
「ッ!!」
紫の斬撃波を今度は絵瑠に直接飛ばすと、斬撃波は絵瑠の手札から1枚を弾き飛ばして強制的に破棄されてしまう。
「手札まで……!」
「これが死神の力。どう、堪能してもらえたかしら?」
「くッ!」
依然として余裕の笑みを見せながらターンエンドをコール、彼女のフィールドに立つ死神デュアルベルガス、そのスピリットは絵瑠にとってはこれまでにない難敵だった。
『死神、かなりとんでもないスピリットですね』
「ハイドカード、やはり想像以上に曲者過ぎる。対処があればいいが」
打つ手はあるのかと不安を感じながらも継続してバトルを見守る光黄とライト、絵瑠自身もまた打つ手を思考するように自分のターンを迎え、手札とフィールドの状況を見比べる。
────第6ターン、絵瑠side。
[Reserve]8個。
[Hand]4枚、(手元)2枚。
[Field]シヴァの破壊神殿Lv.1(0)、破壊の創界神シヴァLv.1
このターンもネクサスの効果により、手札の1枚を手元に置いて新たに2枚のカードを手札に加える。
「(……私の手札にシュオンのカードはない。けど例えシュオンがいなくても対抗する手段ぐらいはある!)」
強大なデュアルベルガスだが、そのスピリットに対抗意識を燃やす様に瞳に闘志を灯す。
「(何か仕掛けて来る気かしら? まぁ所詮無駄な足搔きだろうけど)」
何か企みがあるのか、絵瑠に対し傍観しディストとデュアルベルガスは共に動く気配はないが、彼女は構う事無く自分のメインステップへと移る。
「シヴァの破壊神殿をLv.2にアップ。さらにムリダンガムドラゴンに残りのコア全てを置き、Lv.2で召喚!」
紫のコア除去を警戒してか、必要以上のコアをムリダンガムの上に乗せて呼び出し、恐ろし気な死神の姿を前にしながらムリダンガムは猛々しく雄叫びを上げて見せる。
「勇ましい事、やる気かしら?」
「当然! 余裕ぶった態度もそこまでだ! アタックステップ!」
「来なさい。お姉さんが相手してあげるわ!」
アタック開始と同時に、ムリダンガムドラゴンに攻撃指示を繰り出すと、ムリダンガムドラゴンは翼を広げてディストへと飛び出して行く。
「ムリダンガムドラゴンのアタック時効果! 私の手札2枚を裏向きで手元に置く事でデッキから3枚ドロー!」
前のターンで失った手札を補う効果、だが彼女の狙いはそれに留まらない。
「ムリダンガムドラゴンはアタック時でさらにコスト6としても扱える! これで手札にあるこのスピリットの煌臨条件を満たせる!」
「!」
コスト6以上の条件とするカード、それは絵瑠にとって主力となるエースカード。
「全てを灰塵と化して消し去れ! 絶対破壊の漆黒龍! ムリダンガムドラゴンを破壊神龍ヴァルドラムに煌臨だぁッ!!」
ムリダンガムドラゴンの体が漆黒へと染まり始めたかと思うと、その身はシヴァの化神たるヴァルドラムへと変貌を遂げる。
「煌臨時効果発揮! このスピリット以外の全てのネクサスとスピリットを破壊! この時、私の手元にカードが4枚以上あればこの効果で破壊するのは相手スピリットとネクサスだけ!!」
シヴァの破壊神殿に防壁のようにバリア画が展開され始めると同時に、ヴァルドラムはフィールドを揺るがす程の咆哮を轟かせ、音圧が衝撃となってフィールド全域に広がって行き、防壁に守れたシヴァの破壊神殿はヴァルドラムの効果から守られるが、ディストの場は違う。
衝撃波は地面の瓦礫を削りながらデュアルベルガスとキャメロットナイトXへと迫り、衝撃に備える二体だが抗う術などない。衝撃波をその身に受け、吹き飛ばされて二体は爆発を起こして破壊される。
「ヴァルドラムはダブルシンボル! このまま一気に追い込むッ!」
「甘いわよ、ツクヨミの【神技】発揮!」
「ッ!!」
「その効果によりコスト合計4になるまでトラッシュにあるスピリットを好きなだけ召喚できる! キャメロットポーン2体、ストロゥパペット、キャメロットナイトXの計4体を一気に召喚よ!」
ツクヨミは腕を添えて呪文のような言葉を呟き始めると、フィールドに黒渦が展開され、瘴気の篭る渦の中よりトラッシュに眠るスピリット達が一斉に目覚めていく。
「い、一気に四体も!?」
「ふふっ、攻撃はキャメロットポーンでブロックよ」
小さな槍を構えながらヴァルドラムの行く手を阻むキャメロットポーン。しかしヴァルドラムは光弾を作り出すと、そのまま光弾を拳に纏って直接キャメロットポーンへと叩き付け、圧し潰されたキャメロットポーンは破壊される。
「ターン、エンド」
今は大量に展開されたあのスピリットの壁を突破する手はない。悔しさに歯を喰いしばりながらも終了を宣言するしかない。
────第7ターン、ディストside。
[Reserve]6個。
[Hand]3枚。
[Field]キャメロットポーンLv.1(1)BP1000、ストロゥパペットLv.1(1)BP1000、キャメロットナイトXLv.1(1)BP2000、創界神ツクヨミLv.2。
「マジック、ダークイニシエーションを使用! 効果でストロゥパペットを破壊」
ターン開始早々、蘇らせたばかりのスピリットを破壊する彼女だが、当然それは狙いがあっての事。
「ダークイニシエーションの効果、破壊したスピリット1体につきトラッシュにあるスピリットカードを手札に加えられる。戻す対象は勿論……死神デュアルベルガス」
「(ッ! さっきまでのあの余裕はブラフじゃなく、回収を見越してか!)」
彼女の持つ帝騎の名は決して飾りではない。そして手札に戻したデュアルベルガスのカードを再び構えて見せると。
「もう一度狩りの場に赴け! 死神デュアルベルガス、Lv.2で再召喚。不足コスト確保の為、キャメロットポーンは破壊するわ」
キャメロットポーンの足元に黒渦が発生すると、引き摺り込まれるように渦の中にキャメロットポーンは呑み込まれるが、その代償として渦はより大きく広がり、渦の中より再び這い出るようにデュアルベルガスが姿を現す。
「さぁここからがショータイムよ! まずはキャメロットナイトXでヴァルドラムに指定アタック!」
「何ッ!?」
「キャメロットナイトXは魔影を持つスピリット、問題なくデュアルベルガスのサポートを受けられるからね!」
確かに条件は満たしているが、キャメロットナイトXのBPはヴァルドラムを遥かに下回り、一見無謀と思える。そのままバトルでは迫るキャメロットナイトXをヴァルドラムは腕を振り払って弾き飛ばし、キャメロットナイトXはそのままフィールドから消滅。
「この瞬間を待ってたわ! 相手による破壊を受けて、手札にあるスメラギンガを再び召喚!!」
「二枚目!?」
デュアルベルガス同様、再びフィールドに姿を見せるスメラギンガ。ここまでの展開は全て彼女の思惑通り。
「行きなさい! スメラギンガでアタック! アタック時効果! 【天界放】発動! ツクヨミのコア2個をスメラギンガに移動!」
「!」
コアの移動によりスメラギンガは自動的にLv.2へと上昇するが、勿論それだけが狙いではない。
「ヴァルドラムのソウルコアをトラッシュに置き、さらにフィールドのコア3個を相手リザーブに! よってヴァルドラムから合計コア4個を取り除かせてもらうわ!」
スメラギンガは剣を勢いよく振るって斬撃波を飛ばすと、ヴァルドラムは斬撃波を受け、残るコアは1つだけとなりLv.1にまで力を減少させられる。
「さらに黄色のシンボルがあればスメラギンガはブロックされない。ツクヨミの神シンボルは黄色と紫としても扱う為、条件は達している!」
「元よりライフで受けるつもりだ!」
スメラギンガはそのまま引き抜いた剣を絵瑠へと振り下ろし、斬撃がライフを両断し破壊する。
「ッ!!」
「これでライフは同点。次は貴方のエースを討ち取らせてもらおうかしら?」
「何を?」
「死神デュアルベルガスで、疲労状態のヴァルドラムに指定アタック!」
「!!?」
鎌を引き摺りながらヴァルドラムへ迫る死神、だがそのBPは7000、幾らレベルを降下されたといえど、まだBPあヴァルドラムが僅かに上回っているが。
「フラッシュタイミング! マジック、リターンスモーク!」
「それは……!」
「不足コストはスメラギンガより確保。そして効果により、デュアルベルガスのBPは10000ッ! 一気に仕留めさせてもらうわ!」
ヴァルドラムは吠えながらデュアルベルガスに光弾を撃ち飛ばすが、鎌で全ての光弾を引き裂きながら進み、そのままヴァルドラムへと迫り、ヴァルドラムは再び拳に光弾を纏わせてそのままデュアルベルガスに突き出すが、その拳が届く前にデュアルベルガスは腕を蹴り上げると、がら空きとなった腹部を鎌で斬り裂き、ヴァルドラムは絶叫を上げながら大爆発を起こす。
「ヴァルドラム!」
「破壊により手札一枚を破棄させてもらうわ!」
「ッ!!」
再び手札の一枚が吹き飛ばされ、トラッシュへと送られるがデュアルベルガスはまだ物足りない様に鎌を構えながら絵瑠を睨む。
「デュアルベルガスは回復状態! 追撃よ、デュアルベルガスでさらにアタック!」
「ライフッ!」
展開されたバリアに鎌を突き刺すと、そのままバリアを斬り裂き、衝撃によってライフが砕ける。
「ぐぅッ!!」
「ターンエンド」
────第8ターン、絵瑠side。
[Reserve]10個。
[Hand]4枚、(手元)4枚。
[Field]シヴァの破壊神殿Lv.1(1)、破壊の創界神シヴァLv.1
「(来た……ッ!!)」
このターン引いたカードに反応を示す絵瑠。理由は明白、待ちに待った
「行くぞ! シヴァの破壊神殿をレベルダウン。そして来い! 決して潰えぬ常闇の影、全て無に帰す暴食の闇で何もかも喰らい尽くせッ!! 召喚、闇影夜龍エルドラシュオンLv.3!!」
フィールドに広がる黒い瘴気の中で赤く輝く眼光、そして次の瞬間闇を引き裂き、咆哮を届かせながらエルドラシュオンがその姿を晒す。
”グルルルルルアアアアアアアアァァァァァ─────ッ!!”
咆哮による風圧にスメラギンガは怯むように一瞬で顔を覆う様に腕を翳すが、デュアルベルガスだけはまるで物おじていない様に静かにエルドラシュオンを見定め、シュオンもまた死神の姿に正面から睨み返す。
「シュオン頼んだぞ! ここからが正念場だ!!」
『あぁ、言われるまでもない! 必ず勝つ、それだけだ!』
まるで激励のようなシュオンの言葉に、絵瑠も力強く頷いて返事を返す。二人にとっては是が非でも負けられない。
「アタックはなし。私はこれでターンエンドだ!」
────第9ターン、ディストside。
[Reserve]6個。
[Hand]2枚。
[Field]死神デュアルベルガスLv.2(3)BP7000、月魂鬼神スメラギンガLv.1(1)BP6000、創界神ツクヨミLv.1。
「シキツル召喚、召喚時の効果によりデッキから1枚ドロー。続けてデュアルベルガスをLv.3、スメラギンガはLv.2にそれぞれアップ」
「さて」と今の状況を品定めするように見ながら次の一手を考える彼女、このままフルアタックがセオリー通りに決まれば残りライフが2つしかない絵瑠のライフを全て砕けるが。
「来るなら来い!」
「……いいえ、ここはターンエンドよ」
「!」
アタックステップは何もせずにターンエンド宣言。シュオンの効果を警戒してるのか今はまだ準備を整える段階なのか、そのままターンを終える。
────第10ターン、絵瑠side。
[Reserve]8個。
[Hand]4枚、(手元)4枚。
[Field]闇影夜龍エルドラシュオンLv.3(4)BP15000、シヴァの破壊神殿Lv.1(0)、破壊の創界神シヴァLv.1
「私のターン、メインステップは何もせず、このままターン終了」
「あら?」
絵瑠自身も動く事は無く、ターンを終了しそれに対してディストは意外そうな顔色を浮かべるが、それ程動揺はせず笑みを崩す事は無い。
『お互いアタックはなし。完全に膠着状態ですね』
「あぁ、二人とも互いの出方を覗ってる。まるで嵐の前触れみたいだな」
『はい、私もそう思います』
これから起こる波瀾前の一瞬の静けさ。その瞬間がいつ来るのか、光黄達はただ静かに見守る事しかできない。
『いいのか、絵瑠?』
「あぁ、私を信じてくれ!」
『……』
以前にミコと戦った時、あの時の彼女には迷いがあった。あの時はフェンリルドガルムの効果による影響ではあったものの、真っ直ぐに自分を信じると言った今の絵瑠はもうあの頃とは違う。
『……絵瑠、今の内に言っておくぞ』
「シュオン?」
『俺の野望はずっと昔の力を取り戻す事だけにあった。それが俺の欲望にして、それが全てだった』
「…………」
じっと絵瑠を見つめたまま何を想うのか、静かに自分の気持ちを語り始めたかと思うと、フッと少しだけ笑って見せ。
『けれど、もう……力はどうでもいい。そう思ってしまった』
「えっ?」
『あの日、気付いたんだよ。お前の過ごした日常が、俺にとっては暖かくて新鮮だったよ』
「!」
『力を取り戻す事、それが全てだと思っていた筈なのに……それがどうでもいいと思える程、俺にとっては、一番楽しい思い出だった』
『素直に認めたくはないがな』と憎まれ口を付け足しながらも、そう言ったシュオンの言葉は絵瑠にとって何よりも嬉しい言葉だった。
『改めて言ってやる。俺を扱えるのは……嫌、お前だからこそ……俺は、お前をパートナーとして信じられる!!』
「シュオン!! パートナーって!」
初めて聞く絵瑠に対しての信頼を寄せる言葉、それはまさしく二人の絆の証明。
『存分に俺を使え! そして今一度言う! この勝負、必ず勝つぞ!!』
「あぁ! 私もお前を信じる! お前が信じてくれるのなら私は、嫌! 私達は……誰にも負けないッ!」
力強く勝利を見据えるように宣言するシュオンと絵瑠、二人の様子に対し少しだけ気に入らない様にディストは舌打つ。
「必ず勝つですって? 甘く見ないで、私だって負けるつもりなんてない。勝って必ずシュオンをもう一度手に入れる! ルディア様の御役に立ち続ける!! その邪魔は絶対誰にもさせないッ!」
ディストもまた負けられない理由がある、互いの主の心情を代弁するかのようにデュアルベルガスは唸りを、エルドラシュオンは咆哮をフィールド一帯に響かせる。
────第11ターン、ディストside。
[Reserve]5個。
[Hand]3枚。
[Field]死神デュアルベルガスLv.2(4)BP10000、月魂鬼神スメラギンガLv.2(3)BP12000、シキツルLv.1(1)BP2000、創界神ツクヨミLv.1。
「いよいよ最終局面ね」
ディストのターン、このターン手札に加えたカードを見るなり小さく呟き、空気は張り詰め、見ているだけで緊迫した状況が伝わる。
「スメラギンガをLv.3にアップ。そしてシキツルは消滅」
シュオンの効果を警戒してだろうか、シキツルはその場でジタバタともがきながらも維持コアを失った為、消滅するが対照的にスメラギンガは力を漲らせるように剣を振ってその力をアピールして見せる。
「さぁ、アタックステップ!!」
ついに嵐が巻き起こる時が来たように声高らかに、攻撃開始をコールするとデュアルベルガスとスメラギンガは唸りを上げるが、シュオンもまたその時が来るのを待っていたように眼光を輝かせる。
「相手のアタックステップ開始時! エルドラシュオンの効果発揮、【
黒い霧を吐き付け、闇はデュアルベルガスとスメラギンガの二体を飲み込むが、シュオンの効果は前もって折り込み済み。この程度で止まる気等毛頭ない。
「攻撃あるのみよ! 行きなさいッ!!」
二体を包む闇を引き裂く閃光、闇を裂いてそこから姿を現したのは死神デュアルベルガスの姿。
「BPならシュオンの方が上だ!」
「フフッ、ただのBP勝負ならね! フラッシュタイミング、マジックでストームアタックを使用!」
「ここで緑マジック!?」
「効果でエルドラシュオンを疲労、そしてデュアルベルガスは回復よ!」
荒れ狂う暴風にシュオンはその場に項垂れ、疲労状態となり反対にデュアルベルガスは風に力を滾らせるように回復状態となり、鎌をより力強く振るって見せる。
『絵瑠!!』
「分かってる! フラッシュタイミングでスクランブルブースターを使用! 効果によりシュオンをこのバトルの間、疲労ブロッカーとして扱う!」
シュオンの呼び掛けに応えるかのようなマジックの使用、周囲に吹き荒れる防風を斬り払い、デュアルベルガスを迎撃するべく飛び出して行く。
「デュアルベルガスの攻撃はシュオンでブロック! BPはこっちが上だ!!」
デュアルベルガスの鎌とシュオンの爪が交差し、ガキィッとまるで剣で斬り合うような金属音と火花を散らしながら激突。
一見互角かに思えるが、BPで勝るのはシュオン。少しずつデュアルベルガスの鎌を押し返して見せると、そのまま爪を一気に振り下ろしデュアルベルガスを弾き返すが。
「甘いのよッ! フラッシュタイミング! デモンズフィンガーッ!」
「!!?」
「効果により、相手スピリット全てのコアが1個だけになる様にリザーブに送る!」
この土壇場で更なるマジック。一気にデュアルベルガスを追詰めようと迫るシュオンだが、紫の落雷がシュオンへと降り注ぐと、力を奪われる様にコアを失い、レベルダウン。
「ハハッハハハ!! 残念だったわね! これでエルドラシュオンはLv.1、BPは9000!! デュアルベルガスで討ち取れるッ!!」
完全に形勢逆転となり、シュオンを蹴り飛ばし一時態勢を整えるべくシュオンは黒霧を吐いて身を隠すが、死神から決して逃れられない。
何も見えない筈の闇の中を見極めているのか、黒霧に隠れるシュオンの動きを目で追って見せると、次の瞬間、黒霧ごとシュオンを一気に鎌で斬り裂く。
「シュオンッ!!」
『グッ……ガッ!!』
「アッハハハハハ!! これで終りね、勝つのは……私よッ!!」
そのままもう一度鎌を振り下ろしてシュオンの息の根を断つとその場で爆発四散し、爆風に闇が吹き飛ばされ、その光景は絵瑠に答えたのか思わず顔を伏せてしまう。
「破壊により、デュアルベルガスの効果発揮! さらにあなたの手札を破棄させてもらうわ!」
再び絵瑠の手札から一枚弾き飛ばされトラッシュへと送られ、完全に勝負あったとディストは自分の勝利を確信する。
「さて、エルドラシュオンの【闇影】はまだ継続されてるみたいだけど、それももう意味はないわね」
「……」
まだスメラギンガは闇の中に飲まれたままだが、彼女の言葉通り後は押し切るだけ。
「貴方からエルドラシュオンを奪ったら、その次はライトボルディグス……それに他の3体の七罪竜も全てこの私が奪って見せるわ! 全ては、ルディア様の為にッ!!」
狂気と言えるまでの忠誠心、そして残る絵瑠のライフを削るべくデュアルベルガスは鎌を向けながらゆっくり近づいていく。
「これで終りよ! 式音絵瑠!! あのお方の野望の為、貴方には礎になってもらうわよ? デュアルベルガス!!」
「…………」
「やれ」、と言わんばかりに名前を叫ぶとデュアルベルガスは鎌を掲げて一気に絵瑠へと突っ込むが。
「まだだ!」
「!」
先程まで俯かせていた顔を上げ、彼女の目は決してまだ諦めてはいない。
「フラッシュタイミング! アクセル、ブラックライダーを使用!」
「!」
「効果によりトラッシュからエルドラシュオンを再召喚するッ!!」
「何ですって!!?」
突如としてデュアルベルガスの前に現れる黒い霧、まるで脈を打つ様に霧が光輝いたかと思うと、次の瞬間、霧を引き裂いて再びエルドラシュオンがフィールドへ舞い戻り、咆哮する。
『信じていたぞ、絵瑠! もう一度俺を呼び戻してくれるってな!』
「あぁ! 信じてくれてありがとう! シュオン!!」
「信じてたって、まさか……自らの破壊を想定していたって言うの!?」
肯定するように笑って見せるシュオンと絵瑠の二人。
「……どうして、どうしてよ!! 散々人を蔑んできた貴方が、どうしてただの小娘にそこまで信頼できるのよ!!」
『さぁな。俺にも分からないさ』
『ただ』と一言呟きながら、一瞬振り返って絵瑠を見るとシュオンは静かに言葉を続けて行く。
『俺は唯、俺を受け入れてくれた奴の為に……俺を本気で信じてくれたアイツの為に戦う! それが俺にとっての今の欲望だ。それ以外に、もう何も要らん』
「!!?」
『誰かの為に尽くす、その点で言えばお前も彼奴と同じかもしれん。けど、俺が選ぶパートナーは、アイツだけだ』
「シュオン! デュアルベルガスをもう一度ブロックだ!」
『あぁッ!!』
デュアルベルガスはシュオンに向かって鎌を振り下ろすが、その切っ先を爪で受け止めると、空いたもう片腕を即座に振るい鎌を叩き落す。
『これで、終わりだァッ!!』
最期に両爪を一気に突き出して死神の体を貫くと、デュアルベルが断末魔の叫びを上げながら大爆発を起こす。
「ば、バカな!!」
「シュオンの効果、【
爆風を突っ切って、黒爪に光を纏わせるとそれを一気に振り下ろし、巨大な斬撃波となった光の刃が闇に包まれたスメラギンガを両断し、闇が晴れると同時にスメラギンガは力尽きその場から消滅してしまう。
「(ッ! 【闇殺】は単なる破壊効果じゃない、そのせいでキャメロットナイトXの【不死】も機能しない)」
コスト6か8のスピリットが破壊された時、キャメロットナイトはトラッシュから再召喚できる【不死】の効果を持つが、【闇殺】の効果はあくまでもスピリットをトラッシュに送る効果。
厳密に言うと破壊による効果ではない為、破壊に誘発する【不死】の効果が発生されず、これ以上彼女には打つ手はなかった。
「ターン、エンド」
────第12ターン、絵瑠side。
[Reserve]10個。
[Hand]2枚、(手元)4枚。
[Field]闇影夜龍エルドラシュオンLv.3(4)BP15000、シヴァの破壊神殿Lv.1(0)、破壊の創界神シヴァLv.1
「私のターン、メインステップは何もしない!」
「!」
まだディストの残るライフは3、このターンで決めるつもりはないのか。ディストにとっては絵瑠の狙いが分からない様子だが、シュオンだけは言葉がなくとも絵瑠の意思を把握しているように静かに構え始める。
「行くぞ! エルドラシュオンでアタック!!」
『あぁ。最終局面、これで幕引きにさせる!』
シュオンが突っ込むと同時に彼女は先程引いた一枚を構えて見せる。
「シュオンを破壊神龍ヴァルドラムに煌臨ッ!!」
「七罪竜を使っての煌臨ですって!?」
シュオンの体が光に包まれると共に、ヴァルドラムの姿へと進化するがまだシュオンの意識は残ってるのかそのまま突き進み続ける。
「ッ! 煌臨した所でダブルシンボル!! 私のライフはまだ一つ残る!!」
「いいや、これで終らせる! ヴァルドラムのフラッシュ効果!」
「!?」
「私の手元にある裏向きのカード4枚をゲームから除外する事で相手ライフ1つをトラッシュに送る!」
裏向きで沈黙していたカードがオープンされると同時に除外されるが、その代償としてヴァルドラムは目を迸らせると、ディストのライフの一つが黒く変色すると同時に砕かれる。
「ぐぁッ!! そ、そんな……嘘よ。こんな事って!!」
「ヴァルドラムのメインアタック! これで終わりだああああッ!!」
「嫌……認めない! こんな所で……私は勝って、あのお方の御役に……ッ!」
ヴァルドラムは両腕を重ね、自身に流れる雷撃を統べてディストに向けて撃ち放つと、バリアへと直撃し、衝撃にバリアと彼女の残る最後のライフを粉々に撃ち砕く。
「ぎゃああああああああああああああッ!!!!」
衝撃に悲鳴を上げ光の中へ消えて行くディスト、決着となったバトルフィールドでヴァルドラムはエルドラシュオンの姿へと戻ると、勝利に歓喜するように雄叫びを上げ絵瑠もそんなシュオンにピースサインを見せて高らかに笑って見せた。
***
「そんな、私が……負けるなんて……! ルディア、様……!」
バトルフィールドへと帰還するディストと絵瑠の二人、ディストはまだ自分の敗北を受け入れがたい様子だが、流石にバトルの衝撃を受け限界だったのか、忠誠の想いを口にし、気を失ってその場に崩れ落ち、絵瑠もまたそれなりに疲れ切ったよう息を切らしながら膝に手を突く。
「はぁ……はぁ……勝った」
「絵瑠、大丈夫か?」
「何とか。シュオンもお疲れ様」
光黄に対して笑顔を返しつつ、シュオンに対しても労う様に声を掛け、シュオンも少しだけ笑って相槌を返す。
『シュオン、貴方……大分絵瑠様といい関係を築けるようになりましたね』
『別に』
『全く素直じゃない、パートナーは彼奴しかいないって! 堂々と宣言していた癖に!』
『ッ!!』
自分の発言を蒸し返すライトに少しだけ恥ずかしそうに顔を赤くしながらも、一瞬絵瑠に視線を向け、溜息を零しながら落ち着きを払って見せる。
『……今更否定はしない。笑いたければ笑えばいいし、言いたい事があるなら好きに言ってくれて構わん』
『別に笑ったりとかしませんよ、いいパートナーと巡り会えたと思えて、多分私も今の貴方と気持ちは同じですよ」
『フッ、そうか』
『はい! 何せ絵瑠様も光黄様と同じぐらい素敵な御方ですからね!! そんな方と絆を結べるなんて嫉妬しちゃうくらいですよ!』
『オイ待て、前言撤回だ。貴様と同列に語るな、この色欲魔!!』
『え~、またまたぁ?』
『心外にも程があるぞ貴様!』
揶揄うようなライトの態度に、怒り気味に突っ込むシュオン。その様子に光黄は「バカ」と愚痴る様に呆れており、その隣で絵瑠は可笑しそうに笑っている。
「ともかくシュオンは取り戻せたけど、まだこれで解決って訳には行かないよな」
「あぁ。俺もまだ借りを返したい相手がいるからな」
以前自分を負かした相手、願わくば今度こそそのリベンジを果たしたいという気持ちは少なからずある。
「私も最後まで戦うぞ! 世界を滅ぼす何て事を計画する奴等を放っておくわけにも行かないしな」
『あぁ。今日で奴等とは決着を付けてやるさ』
『ふふん、この私も忘れないでくださいよ、光黄様と私のコンビなら誰が相手でも負けませんからね!』
今度は自分達が戦うと言わんばかりに自信に満ち溢れた様子のライト、多少恥ずかしさを感じながらも、ライトのパートナーである光黄にとっても素直に心強い。
「ともかく先を急ごう。いつまでも此処でじっとはしていられない」
「そうだな。ミナトや他の皆とも合流したいしな」
迷路のように広い地下、それでも迷わず先へ進もうとする二人。だが光黄は一つだけ気掛かりが残るようにその場を立ち去る前にシュオンが閉じ込められていた鉄格子を一瞥する。
「(そう言えば檻の傷……比較的新しい物だった。一体誰が)」
あの時錠前についていた傷、それなりに深く、また傷自体も以前からではなく、自分達が来る少し前に付けられていたかのような印象だが、誰が何の目的で付けた傷なのか。
「(ディストの様子から見て……組織の人間が付けたとは思えない。じゃあ一体誰が?)」
恐らくあの場に近かったのは自分達だろう。だとすれば、組織に突入したメンバーの誰かの仕業とも思えない。
「(俺達とも、組織とも違う誰か?)」
『光黄様?』
「!」
重々しい顔で思考を巡らせる光黄の様子を案じてか、心配そうに声を掛けるライト。それに対し、咄嗟に彼女は平気そうな顔色を浮かべながら「何でもない」と返事を返す。
『そうですか。ならよかったです』
「あぁ。心配かけて悪い、いいから進もう」
『はい! そうですね!!』
判断材料も乏しく状況の断定はできない。曖昧な事は伝えるべきではないと、今はまだ自分の胸の内にしまい先へ進んで行く。
しかし光黄にとってはそれが唯の思い過ごしであって欲しい、はっきりとした理由はない、けれど何故か彼女はそう思わずにはいられなかった。
果たして彼女の予感は……。
***
『報告します。ただいま、全ての準備が整いました』
地下のとある場所、組織の下っ端の一人だろうか、誰かと通信を交わしながら何かの準備を終え、その報告を相手に告げていた。
『……ご苦労。次の作戦に移れ』
通信機越しに相手から告げられる端的な指示、その相手はルディアなのだろうか。ノイズ混じりに誰の声かが判別できない。
「はい、分かりました。■■様」
下っ端らしき男は小声でその相手の名を呼びながら返事を返すとそこで通信を終えて、ゆっくりとまたどこかに向けて歩き出す。
彼等の目的は何なのか、不穏な陰謀が今動き出す。
お久しぶりですブラストでございます!
やっと…やっと久々の本編更新が出来たよ(真っ白に燃える作者の図
今回はディストvs絵瑠のバトル!
早速今回使われたハイドカード、チェック&チェック!
【死神デュアルベルガス】7(3)紫、スピリット/魔影・幻魔
Lv.1(1)BP5000、Lv.2(3)BP7000、Lv.3(4)BP10000。
Lv.1、Lv.2、Lv.3『自分のアタックステップ時』
系統:「魔影」を持つ自分のスピリット全ては疲労状態のスピリットを指定してアタックできる。
Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』
このスピリットが疲労状態のスピリットにアタックした時、回復する。
Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』
このスピリットがBPを比べ、相手のスピリットだけを破壊した時、相手スピリットのコア1個をトラッシュに送る。又は、相手の手札一枚を破棄する。
何気にこのカードが1番私が最初に書いたオリカなので、数年ぶりに書けて感深いものがあります!(;ω;)ブワッ←
とまあ余談は置いといて、本編では七罪竜vsハイドカード!今回制したのは七罪竜側のシュオンでございました!
書いてて何ですが結構シュオンの効果が運要素絡むので、ご都合展開にさせてますが小説だし是非もないよね!(唐突なメタ発言
次回も現在進行形で書いておりますので是非ともよろしくお願いします!
それではまた次回!