「上に上がる道はまだ先だ。くれぐれもはぐれんなよ?」
迷路とも思えるような地下を進む烈我達。ガイトの案内の元、ここまで何とか迷わずに先を進んでいる。
「やっぱ組織の幹部だけあって、頼りになるな。でも、お前……俺達に協力したりして、大丈夫なのかよ?」
ガイトに対して心配するような烈我の言葉に、彼はまるでなんでもない事のように笑いながら「気にすんな」と言葉を返す。
「散々お前やミナトに迷惑かけちまったからな。これぐらいで罪滅ぼしになるとは思ってねぇが……。」
「もう気にすんなって。ありがとな、親友」
「親友か……例え冗談でもまたお前からそう言って貰えるとは思わなかったよ」
「オイオイ、俺はいつでも本気だぜ?」
「ハハ、まあありがたく受け取ってやるぜ」
ミナトに対して、少しだけ昔を振り返り懐かしみながら口元を緩ませるが直ぐに表情を切り替える。
「さて、俺以外の帝騎の奴らもまだ控えてる。生憎誰がどの地点で待機してるかまでは俺も把握してねえ、だから気ぃ抜くんじゃねえぞ?」
忠告するようなガイドの言葉、勿論二人共何時でも受けて立つと言わんばかりに気張っており、今の二人に余計な心配だったなと苦笑する。
「よし、それじゃあ先へ──」
進もうとしたその瞬間だった。突如として衝撃と共に足元がグラつく様に振動しながら何かが動くような重々しい重音が辺り一帯に響き始める。
「「「!!?」」」
何が起こったのか三人には知る由もない。だが、驚く間もなく突然周囲の通路を塞ぐかのように隔壁が降りて来始めるのだ。
「おい、どうなってんだよ!?」
「分かる訳ねえよ、ここに詳しいのはガイトだろ?」
「ッ!! つべこべ言ってないで走れ!」
突然の非常事態、訳が分からないまでもとにかくこのまま立ち往生してる場合ではない。その場を全力疾走で駆け抜けながらただひたすら先へと目指す。
***
「エヴォル、これって一体!!?」
『分からぬ! 分からぬが……ともかく今は走るんじゃッ!」
「ッ! はい!」
***
「絵瑠! 急げ!!」
「わ、分かってる!」
同じ頃、星七とエヴォル、絵瑠と光黄達とそれぞれ別の通路を歩く彼等彼女等だったが烈我達と状況を同じくして隔壁が通路を封鎖する前にその場を駆け出して行く。
『オイ烈我、早く!!』
『ミナト、テメエもだ! とっとと走れ!』
「急かされなくても分かってるよ!」
「ちょ、俺……体力には自信ねえんだっての!」
息を切らしながらも懸命に走る彼等三人。だが無情にもその先の通路は降りて来る隔壁によって今にも閉じられようとしていた。
「ヤバいヤバいヤバい!!! 急げッ!!」
「(…こいつは、どうも間に合いそうもねえな)」
無我夢中で走る烈我とは対照的に、駆け出しながらも冷静に状況を見据えるガイト。しかし、状況を見据えたからと言って素直に諦めるにはまだ早い。
「おい、ミナト!」
「!……あぁ、そういう事か」
お互い顔を交わせ、ミナトもガイトが言わんとしていることを直ぐに察し、一方で烈我は「二人とももっと早く!」と急かすように後ろを振り返るが。
「「せーのッ!!」」
二人揃って息を合わせ、そのまま勢いよく手を突き出して烈我の背中を押し飛ばす。
「なッ!!?」
「そのまま行け、烈我!!」
「振り返んなよ、さっさと突っ込めッ!!」
「!」
動揺しながらも足を止める訳には行かず、そのまま落ちる隔壁と床の隙間を滑り込むように抜け、寸での所で突破するが烈我が渡り切ると同時に隔壁は完全に閉じ切ってしまう。
「ッ!! ミナト! ガイト!」
咄嗟に立ち上がり、隔壁をバンバンと叩きながら二人に対して呼び掛ける。
「大丈夫、俺等なら無事だ。先へ行け」
「俺等も後から行く。構う必要はねぇ」
壁越しに聞こえるガイトとミナトの声に安堵するが、今は立ち止まってる場合ではない。
『オイ、烈我。行くぞ』
「……分かってる。二人共後で絶対来るって信じてるからな」
必ず後で追い付くと信じてそのままバジュラと共に先へ進む二人。
「……さて、あぁは言っちまったがこの先の道案内は頼めそうかい?」
「あぁ……ともかく何とかするよ。だいぶ予定にない通路になるが」
この先どうしたものかと道程に頭を悩ませるガイト、一方でミナトはどこか落ち着いた様子で降りてきた隔壁に触れながらじっと考え込む。
「なぁ、これってやっぱお前が俺達側に来たのが原因なのか?」
「ルディア様……じゃなくて元ボスの仕業ってか。かもしれねぇがどうも腑に落ちないな」
「というと?」
「俺は元々あの人に期待されてなかった。自分で言ってて悲しくなるが要するに、俺がどっちの側に付こうがあの人にとっては些事だった筈なんだよ」
「じゃあこの大掛かりな仕掛けは何なんだよ?」
「さぁな。少なくとも俺達帝騎は元々この地下迷路で迷わせた連中を狩り尽くす段取りだった、それ以上の指示はなかった筈だ。おまけにあの人は自分の実力に絶対の自信がある、だからわざわざこんな手の込んだやり方をする必要はねぇ筈だ」
「成程、他の奴等が失敗したら自分自身で返り討ちにする。そういう腹か」
「あぁ」
『光黄様!!』
「ッ! 絵瑠……!!」
「私に構うな! 早く!!」
絵瑠の言葉に歯噛みしながらも、覚悟を決めて滑り込むように隔壁の隙間を滑り込むが、一足遅れた絵瑠は間に合わず、彼女の目の前で道は塞がれる。
「絵瑠、大丈夫か?」
「うん。平気だ! 光黄は先に!!」
「しかし……!」
『心配するな、コイツの面倒なら俺が見る』
壁越しから絵瑠と並んで聞こえるシュオンの声、正式に絵瑠をパートナーとして認めた今となっては心強い他ない。
「面倒って……元々助けに来たのは私の方なんだからな!」
『分かってるさ。だから今度は俺の番……ただそれだけだ』
「……シュオン」
『ちょっとシュオン、見えないからって絵瑠様といい雰囲気にならないでもらえますか!』
「何言ってんだお前は……」
嫉妬に近い感情を込めて突っ込むライトに思わず呆れる光黄。こんな事態だと言うのに、自分のパートナーはまるでいつもと変わらない。
『光黄様! かくなる上は私達もベストパートナーである事をシュオン達に思い知らせましょう!』
「執事とか関係ないし、今そんな事言ってる場合じゃないだろバカ!」
軽くライトを小突き、付き合ってられないように「いいから行くぞ」と先へ進む彼女だが、壁越しに聞こえるその様子に絵瑠もシュオンも可笑しそうに笑う。
『貴様はほんと相変わらずだな……。ある意味、この状況でもそんな台詞が吐けるなら大した奴だよ』
『ソレ褒めてます?』
『それなりにな。いいからお前も早く行け』
『分かってますよ。絵瑠様の事、お任せしましたからね』
『フン、任されるまでもない。お前こそ、自分のパートナーをしっかりと守るんだな』
『それこそ分かってますよ! 何てたって、私は光黄様のパートナーにして世界一の執事ですからね!』
自信に満ち溢れた様子で豪語し、シュオンと言葉を交わし終えるとライトもまた光黄の後を追っていき、何だかんだ言いつつもシュオンもまたライトの事は評価しており、口には出さないが少しだけ笑いつつ、自分達もまた別の道へ進んでいく。
***
『いや〜、一時はどうなるかと思いましたが壁が降りてきたお陰で随分分かりやすい道になりましたね』
シュオン達と別れ先へ進むライトと光黄の二人。かなり複雑だった道も隔壁で閉ざされたお陰で幾分分かりやすくなりほぼ真っ直ぐ進むだけだ。
「(益々分からない。折角の迷路を態々単略かするなんて……俺達全員壁に閉じ込められるとでも踏んでいたのか?)」
それにしてはどうも作戦に穴があり過ぎる。ここまで雑な作戦を仮にも組織のトップであるルディアが行うだろうか。深く考えれど彼女の疑問は尽きない。
『光黄様、どうかされましたか?』
「ライト、この状況お前は違和感を感じないか?」
『違和感、ですか?』
「あぁ、誰かの掌で泳がされてる気がしてな。どうにも嫌な予感がしてならないんだ」
『確かに光黄様の言う通り不吉な予感はあります。けれどやはり今の私達には……先へ進む以外の選択肢はないかと』
「……そうだな」
重苦しいように返事を返すライト。確かに彼の言う通り、どれだけ悪い予感を巡らせた所で結局自分達のやる事は変わらない。
『ご安心ください! 光黄様、何があろうとも! このライト、執事として必ず守ってみせます!』
「だからお前は別に執事じゃ……まあ、気持ちだけ受け取っておく」
軽く笑いながら返事を返しそれに対し嬉しそうに頷くライト。そして先へ進もうとする2人だが。
『ようやく見つけた!』
「『!』」
目の前から張り上げるように響く声、そこにはやや子供の様な背丈とは裏腹にどこか大人びた雰囲気を持つ女性。
「お前は……!」
「また会えたな。あの時はお主と戦う事はなかったんじゃが」
以前光黄と絵瑠の前に現れ、そして絵瑠を下せし人物。彼女こそ帝騎が一人──ミコ。
「どうもさっきの騒ぎといい、ひょっとしてお主等の仕業か」
「……俺達にそんな真似ができると思うか? そもそもこっちからすれば、この事態がお前等の仕業だって疑いたいぐらいだ」
「何じゃと!?」
どうもこの事態については彼女も把握している様子はなく、彼女の言葉に反応する様子から演技っぽさも感じられない。互いに認識が違う事には光黄、ミコ共にどうも腑に落ちない。
「ボスとも連絡がつかないし、どうにも雲行きが怪しいようじゃの」
「……」
「まあ、いずれにしても妾はボスの命令を果たすだけじゃ。ドレイクの為にも……!」
「あの男の!?」
光黄の反応に対し、余計な事を口走ってしまったと後悔するように手で口元を抑える素振りを見せる。
「余計な話はいい、この場で妾が為す事はただ一つ!」
強い意志を込めるかのように光黄と隣にいるライトに視線を向け、その目的はやはり七罪竜の奪取。
『可愛い女性からのご指名とは光栄ですが、生憎私のパートナーは光黄様ただ一人ですよ』
「ライト、そう言うのはいいから構えろ」
ミコに対して冷静にデッキを構える光黄、当然迎え撃つつもりなのだろう。
「やる気のようじゃの、そっちがその気なら話も早い!」
今すぐにでもバトルを仕掛けんと同じくデッキを構えるミコだが。
「始める前に少しいいか?」
「何?」
「……お前達の組織のボス、その目的をお前達は知ってるのか?」
「!」
あの時ディストは言った、組織の首領であるルディアの目的を知るのは自分ともう一人、星七と戦った帝騎、ヴァンだけだと。
逆に言えば、他の団員や幹部である帝騎のメンバーもヴァンとディストを除いて、誰もルディアの目的を知らないという事になる。
「あの男の目的はこの世界の破壊。それが成就されればこの世界に住む全ての人がどうなるか、勿論お前達組織の人間も例外じゃないんだろう?」
「!」
やはり知らなかったのか、彼女の言葉にミコは驚くように目を見開いていた。
「……お主、その話誰から聞いたのじゃ?」
「ヘルさん。お前たちボスと過去に親しかったって聞いている」
「信じる根拠は?」
「計画自体の根拠はない。けど少なくとも、ヘルさんとお前達のボスが見知った関係なのは確かだと思う。そうでなければ最初にお前達のボスがヘルさんを隔離するわけないからな」
「!」
確かに、全く見知らぬ人物をいきなり警戒して分断させる事等ありえない。最初にアナウンスした事と言い、知り合いなのはまず間違いない。
「……できれば俺は、お前と戦いたくない思ってる」
「何?」
ミコに対してそう思う理由は一つ、初めてミコと絵瑠が戦った時、目的の為なら手段を択ばないディストと違い、強引な組織のやり方に彼女は些か抵抗があった。
彼女とはもしかしたら話せば分かり合えるのではないか、あの時の様子からそんな希望が光黄の脳裏に浮かぶ。
「俺達はあの男の目的を止めたいと思ってる。できるなら引いてほしい」
「……」
光黄の言葉に、暫し考えるような素振りを見せるミコだが。
「残念じゃが、答えはノーじゃ」
「!」
「別にお主の話を疑う訳じゃない、お主を信じられるかどうかはともかく、ルディア様ならそれをやりかねんという事は事実じゃからのぅ」
「それが分かってるなら何で?」
「……分かっててもなお、妾には引けない理由があるからじゃ!」
「理由?」
「あぁ、妾はここで逃げ出す訳にも帝騎としての使命も投げだす訳には行かない。そうでなければ、ドレイクは絶対に助けられない!」
「彼奴を?」
それもまた失言だったとそこで会話を中断するように言葉を伏せると、表情を変えて光黄を見据える。
「これ以上論議する気はない、ともかくバトルじゃ! お主のライトボルディグスは妾が何としても手に入れる!」
「(……バトルは避けられないか)」
話し合いで解決できるならそれに越した事は無い。だがそれが不可能なら受けて立つ他道はない。腹を括り、真剣な表情で光黄もまたミコを見据える。
「ライト!」
『はい光黄様!』
即座にカードの状態に戻り、ライトのカードをデッキに加える光黄。その所作をバトルの合意と受け取ると、ミコはキューブ状のデバイスを自分達の足元へと投げ込む。
「さぁ始めるぞ!」
「あぁ」
「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」
────第1ターン、ミコside。
[Reserve]4個。
[Hand]5枚。
「先行は妾から頂くぞ!」
勇ましいまでに声を上げ、幕が上がるバトル。先行開始早々、手札の一枚を構える。
「メインステップ! 創界神ツクヨミを配置じゃ!!」
出現したるは月の化身として言い伝えられし神話の神──常闇に生しツクヨミ。
「ツクヨミ……!」
初手から配置された創界神のカードに、光黄もまた油断できない様にその表情を険しくさせる。
「配置により神託! 妾のデッキから3枚をトラッシュに!」
トラッシュに送られたのは「ギュウキ」が2枚と「妖戒獣ヌエ」の計3枚。
「これで3コア追加でLv.2。妾はこのままターンエンドじゃ!」
────第2ターン、光黄side。
[Reserve]5個。
[Hand]5枚。
「メインステップ、夢中漂う桃源郷を配置!」
彼女が初めて使うネクサス、桃源郷という名の通り幻想の楽園とも言える風景が光黄の後ろに展開されていく。
「俺はこれでターンを終了だ」
────第3ターン、ミコside。
[Reserve]5個。
[Hand]5枚。
[Field]創界神ツクヨミLv.2
「妾のターン、ちょうちんゴーストを召喚! そしてもう一体、妖戒獣ヌエを召喚! 不足コストはちょうちんゴーストから確保」
提灯のような見た目のスピリットだが、出現と同時に維持コアを失い消滅するとその代償を糧に甲冑を纏いし妖の類として語られる獣、ヌエが雷を纏いながら現れる。
「アタックステップ! 妖戒獣ヌエでアタック!!」
「ライフで受ける!」
全身に雷を迸らせてそのままバリアに向かって体当たり、光黄のライフを砕く。
「ぐぅ……ッ!」
「ヌエの効果は続くぞ? このスピリットは「主君」か「家臣」を持つ自分のスピリットに【聖命】を与える。ヌエ自身もこの効果の対象に及び、【聖命】の効果でライフ回復じゃ!」
ライフに灯る6つ目の光、ライフ差を突き放した事で優勢に立ち、口元を緩ませながらターンエンド宣言。
────第4ターン、光黄side。
[Reserve]7個
[Hand]5枚。
[Field]夢中漂う桃幻郷Lv.1(0)。
「俺のターン、バーストセット。そしてペストコスをLv.2、さらにガトーブレパスをLv.3でそれぞれ召喚!」
一つ目に二本角を誇るガトーブレパスに加え、ワニ型のような見た目を持つペストコス、それぞれが出現すると共に桃源郷が光り輝き始める。
「ネクサスの効果でメインステップ中に、想獣を召喚する度にデッキから1枚ドロー。どっちも想獣を持つスピリットの為、2枚ドロー!」
「!」
「反撃だ! アタックステップ、ガトーブレパスでアタック!」
「ライフじゃ!」
先程のお返しと言わんばかりに今度はガトーブレパスがミコのライフにその角を突き刺すと、衝撃と共にライフが砕ける。
「ッ!!」
「ガトーブレパスの【聖命】発動! ガトーブレパスが相手ライフを削った事で俺のライフを1つ回復! 【聖命】の効果はそっちの専売特許じゃないぞ」
「フン、いい気になりおって。ライフはお互い5。振出しに戻っただけじゃ」
失ったライフに再び光が灯って回復するが、ミコの言う通りお互い攻撃を仕掛けたというのにライフ差を見ればまた振り出しに戻った状態ともいえる。
────第5ターン、ミコside。
[Reserve]6個。
[Hand]4枚。
[Field]妖戒獣ヌエLv.1(1)BP5000、創界神ツクヨミLv.2。
「飛ばして行くのじゃ! 悪鬼羅刹の魑魅魍魎! 妖集いし百鬼夜行を率いる大将! 妖戒大将カシャネコイクサをLv.2で召喚じゃ!」
フィールドに差し込む閃光の光、光の中より御旗を掲げた妖の大将、カシャネコイクサが意気揚々と現れる。
「(カシャネコイクサ……確か彼奴のキースピリットだったな)」
キースピリットの存在に当然光黄も警戒を強くし、攻撃に備える様に構える。
「アタックステップ! カシャネコイクサ、突撃じゃッ!」
大将の証である御旗を振り回しながら突っ込むカシャネコイクサだが。
「フラッシュタイミング、魂円舞! 不足コスト確保でガトーブレパスをLv.1にダウン。そして効果で妖戒獣ヌエをBP-6000し、BP0のスピリットを破壊する!」
舞い乱れる桜吹雪がヌエの周囲を包み込み、その鋭い花弁はヌエを斬り裂き、その場で倒れ伏し爆散。
「【聖命】を潰してきたのか!」
「あぁ、それ以上ライフを回復されるのは厄介だからな」
「そうか。だが甘いのじゃ! カシャネコイクサの効果、系統「妖戒」を持つ全てのスピリットをフラッシュ効果を持つマジックカードとして扱う事ができる! よってフラッシュでちょうちんゴーストを発動じゃ!」
「!」
「マジックの効果でペストコスを指定、このターン、そのスピリットはアタックもブロックもできない!」
幻影のように現れるちょうちんゴーストがペストコスへと纏わりつくと、力を奪われるようにその場に項垂れ、行動を封じられてしまう。
「さらにカシャネコイクサLv.2、Lv.3、Lv.4の効果! このスピリットにソウルコアが乗っているなら、マジックとして発動したちょうちんゴーストをノーコストで召喚できる!」
幻影だった筈のちょうちんゴーストが実際に実体化し始めると、フィールドへと現れ、陽気な笑い声を上げ始める。
「さらにツクヨミのLv.2効果を発揮じゃ! 自分のアタックステップ中、効果によってスピリットを召喚した時、相手のコア1個を除去できる! よってガトーブレパスからコアを除去じゃッ!」
ツクヨミは眼光を輝かせて視線をガトーブレパスへと向けると、神であるツクヨミの力によりコアを取り除かれ、ガトーブレパスは空を仰ぎながら悲鳴を上げるとその場より消滅。
「さらにカシャネコイクサの攻撃は継続中じゃぞ!」
ペストコスは行動を封じられ、ライフで受ける他ないが彼女とてこのままやられっぱなしではない。
「メインアタックの前に、こっちもペストコスの効果を発揮させる」
「!」
「Lv.2のペストコスは、自身を含め「想獣」をもつ自分のスピリットが相手効果で場を離れた時、デッキから1枚ドローできる。
よって、ツクヨミの効果で場を離れたガトーブレパスを対象に1枚ドロー!」
「その程度……! どの道、カシャネコイクサの攻撃は止められない筈じゃ!」
「あぁ、アタックはライフで受ける!」
そのまま両手で御旗を剣の如く振り下ろすと、衝撃と共に光黄のライフが一つ砕かれる。
「ッ! ライフ減少時でバースト発動!」
「!」
「マジック、イマジナリーゲート! バースト効果で俺は手札の黄色のスピリットをノーコストで召喚できる!」
「ノーコスト、一体何を呼び出すつもりじゃ?」
「そっちにキースピリットが出たんだ、なら当然俺の選択肢は決まってる!」
彼女もまた呼び出すのはキースピリットをおいて他にない。マジックの効果により手札の一枚を-オープンし、そして叫ぶ。
「煌めき羽ばたく堕天の龍よ! 地に堕ちしその身を再び天へと羽ばたき降臨せよッ! 堕天神龍ヴィーナルシファーを召喚!」
フィールドに降り注ぐ落雷、そして雷鳴と共に咆哮を張り上げる神龍──ヴィーナルシファー。
「おのれ! ターンエンドじゃ!!」
────第6ターン、光黄side。
[Reserve]6個。
[Hand]4枚。
[Field]堕天神龍ヴィーナルシファーLv.1(1)BP5000、ペストコスLv.2(2)BP3000、夢中漂う桃源郷Lv.1(0)。
「メインステップ。黄華の城門を配置し、ヴィーナルシファーをLv.3にアップ。さらに神罰銃ヘヴンズベンジェスを直接合体! 不足コスト確保でペストコスは破壊!」
ペストコスが消滅した直後に現れるは天より舞い降りし天使、否、天使の如く神々しい程のオーラを纏いながら現れる神罰銃、その銃をヴィーナルシファーは片手に担ぎ、咆哮。
「堕天した者が天使の武器を握るとはいい皮肉じゃの!」
「……確かにな。けれど、ヴィーナルシファーは今俺のキースピリットだ。どんな武器を手にしようと咎を受ける言われはない!」
そのままアタックステップ開始を宣言すると共にヴィーナルシファーは担いだヘヴンズベンジェスの銃口をミコへと向ける。
「ヴィーナルシファーでアタック! そしてヘヴンズヴベンジェスの合体時のアタック時効果! 俺の手札にあるマジックカード1枚をノーコストで使用できる!」
手札からマジックカードを引き抜くと同時に、その発動を宣言。
「マジック、ゴッドブレイク! 効果で相手の「起幻」を持たない創界神、ツクヨミを破壊だ!!」
「何じゃとッ!!?」
一度ミコに向けていた銃口をツクヨミへと標的を変更し、引き金に手を掛けながら吠え上がる。
「今こそ神を撃てッ! ヴィーナルシファー!!」
彼女の叫びに応えるようにヴィーナルシファーは吠えながら、引き金を引くとそのままゴッドブレイクによる鉄槌を銃弾の様に撃ち出し、放たれた一撃はツクヨミを貫き、悲鳴を上げる間もなく息絶えたツクヨミはその身を炎で包み、消滅する。
「ぐッ! 小癪な!!」
「ツクヨミの効果は厄介だからな。今の内に除去するのは当たり前だ。それに、まだこれだけじゃない」
「!」
「フラッシュ! ヴィーナルシファーの合体アタック時の効果、手札のスピリットを破棄することで俺のデッキからマジックカードが出るまで破棄! マジックカードが出ればその効果をノーコストで使用できる!」
手札からもう一枚のペストコスを破棄すると、ヴィーナルシファーは自身の効果を発動させるように全身に雷を纏わせて咆哮、その声に呼応するようにデッキからカードがオープンされていき、初めにオープンされたマジックカードを即座に手に取る。
「マジック、ディーバメドレーッ! カシャネコイクサをデッキの下に送らせてもらう!」
「ッ!!」
音色の輪がカシャネコイクサを縛ると、フィールドから追放するようにデッキボトムへと送られる。
「カシャネコイクサッ!!」
「まだだ、今度はメインアタック!!」
今度こそ銃をミコへと向けると、そのまま展開されたバリアへ銃弾を撃ち放ち、バリアと共にライフを一気に2つ砕く。
「ぐあッ!!」
「ターンエンド」
流石にライフを一度に二つ失う衝撃に堪えたのか、痛みに表情が険しくなるが直ぐに何でもない様に表情を切り替え、そしてミコのターンへと移るが。
「妾のターンじゃな」
「その前に……」
「ん?」
「一つだけ教えて欲しい。最初にお前が言った言葉、あれはどういう?」
「何じゃ、まだそんな事気にしっとたのか?」
「……」
「……まぁ、少しだけ話してやるのじゃ」
ミコの言葉に対して静かに頷き、話すべきかどうか少しだけ悩むような素振りを見せながらも光黄の表情に、何を想うのか、観念するように口を開く。
「昔の話じゃ。まだ組織にも属さなかった頃、妾とドレイクは……」
思い返す記憶、だがそれは決してミコにとっては好んで振り返りたくない記憶。忌々しい様に歯を喰いしばりながら。
「妾とドレイクは、奴隷として過ごしてきた」
「!!?」
奴隷という言葉、その言葉が余程衝撃だったのか光黄も思わず耳を疑う程だった。
「お主達の世界ではあまり聞き覚えのない言葉のようじゃな、けど……この世界ではそうでもない。力が全てのこの世界、裏を返せば、力ない者はどこまでも無下に扱われる」
「!」
「妾もドレイクも、生まれてすぐに親から捨てられた。身寄りもない、頼る宛もない妾達はこの世界の理に抗う術など持ち合わせてはなかったのじゃ」
歯噛みしながらも、当時の記憶が鮮明に彼女の記憶に蘇る。
***
『おい、餓鬼共! 今日の仕事のノルマをしっかりこなせよッ!』
胡坐をかいてふんぞり返りながら命令を下す一人の男、それに従う様に奴隷、大人の姿はなく、そのほとんどが年端もいかない子供だった。
『ハァ……ハァ……!』
奴隷の中にはミコの姿もある。一口に奴隷と言っても奉仕する内容は日によって様々。力仕事や雑用等、男女の違いや年齢による配慮なども何もなしに強制的に使役される。逆らったり命令をこなせられない時は暴力で無理矢理言う事を聞かせられる。
『おいテメェ! また仕事ミスりやがったな!!』
「ご、ごめんなさいなのじゃ……!」
『次やったらタダじゃ置かねぇからな!!』
怒鳴り声、そしていつ暴力を振るわれるかも分からない恐怖。仕事を終えて束の間の休息、彼女はいつも泣いていた。
『何で、妾が……誰か、助けて……』
『オイ、お前』
『!』
『少しは静かに出来ねぇのか? こっちは寝られねぇんだ』
彼女にそう声を掛けるのは近くいた一人の少年、その年齢は見た目的にはミコより少し離れた歳上に見えるが、恐らく実際にはミコの歳下だろう。
『ッ! そんな言い方……!』
『フン、それにな、助けなんか求めたって無駄だぜ』
『!』
『俺達は力ないから今この場にいる。俺達を支配してる奴は紛いなりにも力を持ってるから、だから俺達を支配する立場にいる』
『どういう?』
『弱者だから支配されて当然。そう言ってんだ』
『支配されて当然って、そんなの!』
唐突なドレイクの発言に対し、ミコは声を荒げようとするが咄嗟に手を突き出してその言葉を制止させる。
『どんだけ文句を言おうが、これがこの世界のルールだ。嫌、元々自然の間でも弱い生き物がそれ以上に強い生き物に淘汰される。そのルールがより分かりやすくなってるだけだ』
『…………』
『泣こうが叫ぼうが、助けてくれる誰かはいねぇんだ。自分で何とかするしかな。分かったらとっとと寝ろ、餓鬼』
『(餓鬼って、歳下の癖に!)』
『ともかく明日も早ぇんだよ。他の奴等ももう寝てる、とっととテメェも寝ろ』
『フン、分かったのじゃ』
それがドレイクとの初めての出会い、だが初対面というのに何処か上から指図するドレイクの印象は当然最悪だった。おまけに歳下の癖に、と心の中で思う。
ドレイクを毛嫌いするように彼に背を向けながらミコもその日は就寝に着く。
そして次の日、そこで事件は起こった。
"パリーンッ!"
『!』
仕事で扱う荷物をうっかり壊してしまったのだ。今は周囲に人はいないがいずれバレるのは時間の問題だった。
『う、うぅっ……!』
『オイ、何があった?』
『ど、ドレイク!』
偶々近くにいたのか、物音に気付きその場に顔を見せ、その場で固まるミコと割れた荷物を見ながら直ぐに状況を理解した。
『チッ、ミスりやがったのか』
『ど、ドレイク……妾は……』
『フン、知らねぇ。いいから向こう行ってろ』
『で、でもこれじゃあまた殴られる』
『俺が知るかよ! 今ここでテメェに泣かれるのが迷惑なんだよ! いいから向こうに行け!!』
『ッ!!』
非情なその言葉により泣きたい気持ちが込み上げるが、ぐっと堪えてその場を走り去るミコ。失敗した事に主が気づけば当然また殴られるだろう、それが怖くて泣きたくなる。
正直に告白した方がまだいいのではと思うが、恐怖にとても自分から言い出せる勇気がない。勇気もなく、いつバレて殴られるのかとその日は気が気でなかった。
しかし、どれだけ構えても何故かその日一日結局主から止められる事はなかった。
『(何んで? 気付かれてないのか? 嫌、絶対にバレる筈。なら、どうして……)』
そのままミコにとっては何事もなくその日の仕事が終わり、寝床に戻る彼女だがそれでも未だに疑問が拭えなかった。
そんな折、少し遅れて自分の寝床に戻るドレイク。
『ドレイク……!?』
振り返るとそこには体中傷だらけで顔や肌には痣が目立つドレイクの姿だった。
『ドレイク!? 何で』
『フン、俺もドジった。それだけだよ』
『そ、それだけって?』
『うるせぇ、ともかく俺は寝る』
最初はドレイク自身のミスで自分のミスが目立たずに処理されたのかと思った。
しかし、そうではなかった。
どうしても、気になった彼女は次の日から彼を観察するようにし、その結果理由はすぐに明白になった。
ミコだけでなく、他の子が失敗する度にドレイクは人知れずそのミスを庇い、他人の失敗を全て自分の失敗として処理していた。当然その度に殴られるのはドレイク、庇われた者はその事等まるで知らん振り、普段の態度からドレイクには全員無関心であったからだ。
『ドレイク、何でじゃ』
『何が?』
『何で普段はあんなに偉そうな癖に、人の事を庇ってばかりなのじゃ!?』
『あぁ? 何の話だ?』
『とぼけなくても知ってる、お主が妾達を庇って──』
そこまで言い掛けた瞬間、言葉を遮るようにドレイクは片手でミコの口を塞ぐ。
『!?』
『誰が誰を庇ってるって? そりゃテメェの勘違いだ』
軽く舌打ちながら、手を放すがそれでもミコにとっては疑問は拭えない。
『でも……!』
『しつけぇな。俺は別に庇ったりなんかしてねぇ。テメェみたいにあのクソに殴られて泣かれるのが迷惑なだけだ』
『本当に、そうなのか?』
『ったりめぇだ。俺は偽善者になるつもりはねぇ。どの道、俺はもっと力を付けてアイツをぶっ倒す!! その後、テメェ等とそれでお別れだからな』
声を荒げながらミコに言い放つドレイク、だがミコから見ればそう言ったドレイクの表情はどこか寂し気に見えて仕方なかった。
『俺は、支配される弱者じゃ終わらねぇ! 必ず俺は、もっと上に……強者の立場に上る!』
『……なら、その先は?』
『!』
『ドレイクも、支配する側に……そうなりたいのか?』
ミコの問い、それに対してドレイクはその質問に対する答えを持ち合わせていなかったのか、暫く考え込む様に流れる間。
『俺は……!』
暫く考え込みながらも、直ぐに思考を止め、落ち着いた表情を向ける。
『どうなりたいかなんて知らねぇ。力が無けりゃ、結局何者にもなれねぇんだからな』
そう言葉を残し、ドレイクは寝床に着くが、暫くミコも考え込まずにはいられなかった。そして、そこからさらに数日後、あの男が自分達の前に現れた。
『な、何だお前は……!』
『僕の名はルディア。君のとこに優秀な人材が何名かいるって聞いてね、欲しくなっちゃったんだ』
『ッ!! テメェ!』
『まぁ文句があるならお互い腕づくと行こうよ? 勿論、バトスピでね』
『じょ、上等だ!! お前みたいな奴に負ける訳が……!』
互いにデッキを構える両者、だがその決着は瞬く間に終えた。
『お、俺が……こんな奴に?』
呆気ない程の敗北を進いられないような男、そんな男に対し勝者であるルディアは笑って歩み寄る。
『僕の勝ちだね。それじゃあ約束通り、人材は貰ってくよ』
『ぐっ! か、勝手な真似を!!』
『文句ある? なんなら君が僕の奴隷になってくれてもいいんだよ?』
『ッ!!』
あくまで笑顔でその男を見るルディア、次第に男の表情はルディアの底知れなさに恐怖し、顔色を変え、悲鳴を上げながら慌ててその場から走り去ってしまう。
『アハハハハ、冗談。君みたいな雑魚、部下にもいらないよ』
立ち去る男を笑いながら見送るルディア、そして男の姿が見えなくなると、ルディアはドレイク達に視線を向ける。
『君』
『!』
ルディアが真っ先に指差したのはドレイク唯一人。
『君、僕の部下になってよ』
『俺が?』
『うん、君の実力は光る物がありそうだ、それとも僕に逆らってみるかい?』
戦ったとして結果はどうなるか、一目見て分かった。今の自分の実力では到底敵わないと瞬時に悟った。
『一つだけ』
『?』
『他の奴等はどうするんですか?』
『うーん、そうだね~。今丁度人手が欲しい所だし、手放したくないって言うのが本音かな?』
『そ、それは……!』
『でも、そうするかどうかは君の返答次第かな』
『!!』
『君さえいれば、他の人手を補って余りある働きをしてくれる。そう思うからね』
『……』
早い話が自分の答え次第で他の者を逃がせるかどうかという事だ。
『それじゃあ、君の答えを聞こうか?』
ルディアの言葉に、ドレイクは静かに拳を握りしめるが、すぐに握り締めた拳を解くと。
『……従います』
『ドレイク!!』
『テメェは黙ってろ……! 従うしか、弱者の俺に道はねぇんだよ』
『フフフ、決まりだね。これからよろしくね』
『はい、ルディア……様』
「それじゃあ行こうか」とその場を立ち去るルディアとその後に続いて歩き出すドレイク。他の奴隷の子達は状況に混乱しながらも、自分が自由になれるならと真っ先にドレイクの事は顧みずにその場を立ち去って行くが、ミコだけはどうしてもその場を離れることが出来なかった。
『(ドレイクの嘘つき、何が他に道はないじゃ。逃げれば……妾達の事なんて気にせず逃げればいいだけじゃ!)』
分かっていた、弱者だから従うしかない。ドレイクはそう言ったが決してそれは本心ではない。自分達を自由にする為に、自分から彼に従うことを選んだ、嫌、選ばせてしまった。不甲斐ない自分がとても歯痒くて仕方ない。
『待って!!』
『『!』』
叫ばずにはいられなかった。ただ、このまま見捨てては駄目だと、考えるよりも先に体が動いた。
『ミコ!?』
『妾も……! どうか、妾も、貴方様の部下として使ってください!!』
『なっ、テメェ!!?』
『へぇ~、いいよ。君も伸びしろがありそうだ』
『!……待ってください! 此奴は!!』
『ドレイク! 妾なら大丈夫じゃ。自分で選んだ道、止めてくれるな!!』
『て、テメェ!!』
『どうやら口を挟む余地なさそうだね。僕は構わないよ? 君もよろしくね、ミコちゃんでいいのかな?』
ルディアの言葉に首を縦に振るミコ、これが彼ら二人にとっての始まりだった。
***
「話は以上じゃ。ドレイクを助けたい、力になりたい! だから妾は、ルディア様に従う道を選んだのじゃ」
「お前……!」
「ドレイクは妾達の為に犠牲になった。間違った道に進む奴を止められなかった。だからこそ、今度は妾がドレイクを助ける!! こんな所で負けてられないのじゃ!!」
────第7ターン、ミコside。
[Reserve]9個。
[Hand]3枚。
[Field]ちょうちんゴーストLv.1(1)。
「妾のターン! ここからが本番じゃ!!」
「!」
突き出す手札の一枚に場の空気が一気に変わり、そしてその一枚が何であるかを直ぐに光黄は直観した。
「ハイド、カード……!」
「その通り! 今その姿を見るがいい!! 疾風の獣、雷鳴の雄叫びを上げて獲物を狩りし雷獣! 逆雷狼フェンリルドガルムを召喚!」
大地に降り注ぐ雷の嵐、その大地の上を平然と歩み寄る一匹の獣、フェンリルドガルム、フィールドへ現れると共に空を仰ぎ見ながら雄叫びを上げる。
「忘れてはおらんじゃろ? フェンリルドガルムの召喚時! 相手か自分のトラッシュにあるマジックカードを指定しその効果を使用できる! 妾はお主のトラッシュからディーバメドレーを指定!」
「!!」
「さっきのお返しじゃ、お主のキースピリット! ヴィーナルシファーをデッキの下に!!」
意趣返しのように発動するマジック、フェンリルドガルムはもう一度天に向かって遠吠えを唸らせると、空より出現する音色の輪がヴィーナルシファーを拘束し、デッキボトムへと送る。
「ルシファー!」
「スピリットの心配してる余裕はないぞ? さらにマジック! マジックオブオズを使用、手札全てを破棄して3枚ドロー!」
手札を一気に補充して準備を万全に終えると、目付きを鋭く、主の様子に巫女のスピリット達は一斉に構え始める。
「アタックステップじゃ! ちょうちんゴーストでアタック!」
「ライフだ!」
口を開いて長い舌を出すと、それを鞭のようにバリアへと叩き付けて衝撃を加えて行く。
「続け! フェンリルドガルムでさらにアタック!」
「ライフで受ける!」
今度はフェンリルドガルムが突っ込むと、全身に雷を纏って一気に加速しての電光石火。そのまま弾丸の如きスピードでバリアへとぶち当たると、遅れて伝わる衝撃にバリアが一気に砕かれる。
「ぐッ!!」
「これで残りライフは貴様も妾と同じ三つ! ターンエンドじゃ」
────第8ターン、光黄side。
「スタートステップ! 華黄の城門の効果、俺は手札から1枚を手元に置く事で1枚ドロー!」
手元に置かれたカードはシンフォニックバースト。そのカードを手元に置きそしてカードを1枚引き。
[Reserve]11個。
[Hand]2枚。
[Field]神罰銃ヘヴンズベンジェスLv.1(1)BP4000、華黄の城門Lv.1(0)、夢中漂う桃源郷Lv.1(0)。
「ライト、出番だ!」
『はい、光黄様!!』
「(来たようじゃの)」
相棒の名を呼ぶ光黄、ミコも表情を鋭くさせてこれから出て来る何かを見据えるが、彼女は構う事無く構えた一枚を呼び出す。
「瞬光雷進ッ! 色欲の咎を持つ雷竜! 戒めのない自由な天を舞い、地上の敵に轟雷の光を下せッ!! 雷光天龍ライトボルディクス、Lv.2で召喚!」
フィールドを駆ける一筋の閃光、縦横無尽に光の速度でフィールドを突き抜けていくその光の正体こそ、七罪竜の一体、ライトボルディグス。
『光黄様!! 私の出番、待っておりました! おまけに対戦相手もまた会話らしいお嬢様、俄然やる気があふれますとも!」
「ライト、集中」
『はい、勿論でございます! 光黄様!!』
注意を促す一言に対しても相変わらずなライトに、溜息突きつつもバトルに意識を戻し、一方でミコはライトボルディクスの姿に警戒しつつも少し腑に落ちず。
「天雷の効果を使わず、通常召喚じゃと?」
「あぁ。これで構わない」
彼女が腑に堕ちない理由はライトボルディクスの天雷を発動せずに召喚した事にある。
「(ライトボルディクスの一番の強みは強襲性、そして天雷による召喚が最大の武器、なのにその持ち味をわざわざ潰すとは何を考えているんじゃ?)」
「……神罰銃ヘヴンズベンジェスをライトボルディクスに合体!」
ヘヴンズベンジェスを両手で持つライトだが、ヘヴンズベンジェスの重量に少しだけ苦しそうに抱える。
『あ、あまり重い武器は扱いが……苦手でございます』
「だらしない事言ってる場合か。それより構えろよ、相手は……!」
『!、えぇ……承知しております』
ライトの目の前に立つフェンリルドガルム。睨み合う龍と狼。ハイドカードと七罪竜、どちらも強大な力を持つカード、どちらが勝つかはすべて使い手次第。
「アタックはしない。ターンエンド」
────第9ターン、ミコside。
[Reserve]9個。
[Hand]4枚。
[Field]逆雷狼フェンリルドガルムLv.1(1)BP5000、ちょうちんゴーストLv.1(1)BP1000。
「妾のターン、フェンリルドガルムをLv.2にアップ!」
『レベルアップした所で、BPはまだまだ私の方が上でございますよ!!』
ライトの言う通り、今のライトのBPは14000、対するフェンリルドガルムはBP6000とBP差は歴然。だが、それでも余裕そうなライトと違い光黄だけは全く警戒を解いていない。
「ライト、油断するな。何かある!!」
『えっ?』
「気付いた所で遅い! 差し詰めフェンリルドガルムを牽制する目的でそいつを出したんじゃろうが、逆効果であるとすぐに思い知らせてやる!」
「『!』」
「手札から、暗黒の魔剣ダークブレード(Rv)をフェンリルドガルムに合体じゃ!!」
声高らかにダークブレードをフィールドに呼び出すと黒い雷と共に地面へと突き刺さるダークブレード。
そしてフェンリルドガルムは地面に深々と突き刺さるダークブレードに喰らい付き、引き抜くとより、その場の土煙を斬り払いながら、合体スピリットとなってダークブレードを掲げて見せる。
「赤のカード!?」
「妾のデッキが黄色だけだと思うたか! 生憎そこまで浅くはないぞ!!」
フェンリルドガルムは唸りながらライトを完全に標的と見定め、ダークブレードを咥えるその牙を剥き出しに唸る。
「アタックステップじゃ! 合体スピリットでアタックッ!!」
待っていたと言わんばかりの攻撃合図、フィールドを駆けて標的である得物の姿を前に眼光を輝かせ、喜ぶ様に今一度咆哮を上げる。
「ダークブレードの効果! 合体したスピリットの系統が「創界神」でなければBPを+10000! さらに相手スピリットへの指定アタックが可能!! 対象は勿論、ライトボルディグスじゃ!!」
「!」
BPを一気にプラスされた事で今やフェンリルドガルムのBPは21000、もはや元々のBPの低さを補って余りある数値。
「ッ! ライト……!」
『分かってます光黄様、後は、お任せします!』
腹を括る様に構えると、フェンリルドガルムはそのままライトの頭上に飛び上がると力任せにダークブレードを振り下ろし、スピードで上回るライトは初撃を避けて、背後に回り込む。
しかし、ライトが反撃に転じようとした瞬間、フェンリルドガルムは天に向かって遠吠えを上げると、ライトに向かって降り注ぐ落雷、雷に打たれライトの動きが一瞬硬直。
『ぐッ! ッ!!』
「今じゃ!!」
ミコの指示にフェンリルドガルムは一気に背後のライトボルディグスにダークブレードを振り切ると、一閃にライトは悲鳴も上げる間もなくその場に倒れる。
「ライト!」
「これでバトルに勝利。じゃがフェンリルドガルムの真の効果はここからなのは先刻承知の筈じゃろ?」
「ぐッ!」
「フェンリルドガルムLv.2の効果、ライトボルディグスを妾のスピリットとしていただくぞ!!」
フェンリルドガルムに迸る電撃、その電撃を倒れるライトへと撃ち込むと、傀儡として操るかの如くライトは再び起き上がる。
『ぐッ! ぐああああッ!!』
「……ライト!」
一度フェンリルドガルムに操られれば抗う術はない。目の前の光景に彼女は静かに拳を握りしめずにはいられない。
『(光黄様の執事であるこの私が何て様!! しかし……!)』
ふと後ろにいるミコに視線を配ったかと思うと。
『(こんな可愛らしいお嬢様に使役されるのも、それはそれで悪くは……!)』
そんなライトの様子にフェンリルドガルムは若干本当に操れているのかと疑うようにライトを睨み、勘繰る視線を誤魔化す様に目線を遠ざける。
「ライト、彼奴……!」
「ごほん! ともかく続けるのじゃ、ライトボルディグスはもう妾のスピリット! ライトボルディグス、攻撃じゃ!!」
『(ッ!! 体が、言う事を聞かない……!!)』
抵抗は無意味、フェンリルドガルムに操られるがまま自分の意思とは関係なくライトボルディグスは光黄へ突っ込んで行く。
「フラッシュタイミング! リブートコードを使用! 不足コスト確保でちょうちんゴーストは破壊!」
ちょうちんゴーストは場から消滅するがマジック野効果により灯る白い光がライトとフェンリルドガルムの二体を包んで行く。
「自分のスピリット全てを回復し、合体スピリットは再アタックが可能!」
「!」
「さらにライトボルディグスの攻撃は継続中じゃ!」
光黄の残るライフは3、継続中のライトの攻撃と合体スピリットの再アタックを受ければゲームエンド。
「俺の防御札を切らせる気か」
「あぁそうじゃ! 使わなければ確実にお主の負けじゃぞ!」
「ッ! 言われるまでもない。フラッシュ、シンフォニックバーストを使用!」
相手の狙い通りと分かっていてもこの状況では使う他ない。ライトボルディグスの角がバリアを刺し貫き、ライフを破壊。
「ぐあッ!!」
『(ッ! 光黄様……!)』
残るライフは2、後はダークブレードと合体したフェンリルドガルムの攻撃が決まればそれで決着だが、ライトボルディグスのバトルが終わった瞬間、フィールド周囲に響き渡る音色のシンフォニーがこれ以上のバトルを中止させてしまう。
「ここまで、じゃな。だがお主の防御札を切らす事には成功した」
「……シンフォニックバーストが手元に見ててなお攻撃を」
「そうじゃ。どちらにせよこれでお主にもう防御札はない筈じゃろ」
「ッ!」
ミコの言葉通り、残る今の手札ではどう足搔いても次の攻撃は凌げない。
「次がお主のラストターンじゃろうな! 妾のターン、エンドじゃ!」
────第10ターン、光黄side。
[Reserve]12個。
[Hand]2枚。
[Field]神罰銃ヘヴンズベンジェスLv.1(1)BP4000、華黄の城門Lv.1(0)、夢中漂う桃源郷Lv.1(0)。
「……」
ミコの場に立つライトボルディクス、フェンリルドガルム。対して光黄の場にはもうスピリットはない。強大的な力を持つ二体を前に、戦力差は絶望的だった。
「ライトボルディクスはもうほぼ妾の手中じゃな。諦めるとしたらここらが潮時の筈じゃろ?」
勝利を確信した様子のミコ、だがそれでも彼女は。
「メインステップ、続けさせてもらうぞ!」
「まだ諦めないつもりか!」
「……あぁ。恥ずかしいが、彼奴の諦めの悪さが移っちゃったからな」
「彼奴?」
ミコに対して静かに、そしてそれほど悪い気はしない様に口元を緩ませる光黄。そして、今はミコの場に立つライトの姿を冷静に見つめる。
「ライト、悪いが少し手荒に行かせてもらうぞ?」
「な、何をするつもりじゃ! この状況でまだ抗うつもりなのか!!」
「言った筈だ。俺も、どっかのバカのせいで最後まで諦められない性格になったからな」
笑ってそう言葉を口にすると共に彼女は一枚のカードを構え、そして叫ぶ。
「新しき時代の王者! 可能性秘めしその無限の翼で飛び上がれ! 想竜王ジュラン、Lv.2で召喚ッ!」
黒雲立ち込める空の下、眼光を光らせながら舞い降りる幻獣、否、幻竜とも言うべきジュラン。
「そ、そのスピリットは!?」
「新しい俺のキースピリットだ。ジュラン、初陣しっかり頼むぞ!」
光黄の言葉に雄叫びを上げて応えるジュラン、新たなキースピリットを前にライトボルディクスとフェンリルドガルムは二体同時に構える。
「想獣を持つジュランの召喚で1枚ドロー、そして神罰銃ヘヴンズベンジェスをジュランに合体!!」
神罰銃を取り付ける様にその背に担ぎ、合体スピリットとなって咆哮を上げ、より力を増した咆哮は風を起こし、ライトボルディクスとフェンリルドガルムの二体は風圧に対し、その場に踏み留まって耐えきる。
「!」
「アタックステップ、ジュラン、行けッ! アタック時効果、ボイドからコア1個を自分のライフに置く!」
「今更ライフ回復した所で……!」
「あぁ、だからこそそれで終らない! さらにジュランの効果でコスト5以上の自分の黄色のスピリットがアタックした時、【転醒】!」
「転醒じゃと!!?」
ジュランは翼を大きく広げたかと思うと、鳴き声を上げながら身を収縮するように羽ごと体を丸め始めるが、それは力を溜め込む準備に過ぎない。
ジュランの体が光に包まれ始めると、次の瞬間、その光を解き放つように巻き起こる爆発、否、例えるなら宇宙を創造する為の
そして爆風と光が晴れ始めると、より強大な翼を広げる龍の姿、その姿こそジュランの新たな姿、想竜王ではなく火山竜王ジュランとして転醒した姿である。
"ガアアアアアアアァァァァァァッ!!”
「これが、転醒!?」
「火山竜王ジュラン! 転醒時効果発揮!」
「ッ!!」
「相手のシンボル1つのスピリットかアルティメットを破壊する! 対象は……ライトボルディクス!!」
「何じゃと!!?」
ライトに向かってジュランは両腕を翳すと、巨大な炎の塊を撃ち出しフェンリルドガルムは巻き添えを食うまいと咄嗟に左に飛んで距離を取るが、ライトボルディグスは最初は攻撃を迎え撃とうと構えるが。
「ライト、お前は俺を信じてくれてる。だから……俺もお前を信じる!」
『!』
光黄の言葉に何かが響いたように、攻撃を受け入れるように構えを解く。
「何ッ!?」
そのまま火球がライトを飲み込み、直撃を受けてその場に巻き起こる大爆発。
「自分のキースピリットを、躊躇なく……じゃと!?」
「見縊るなよ、勝つ為の覚悟だ!」
両爪に炎を纏わせ、咆哮を轟かせて突き進んで行くジュラン。
「くッ! 覚悟じゃと……お主に言われるまでもない! 勝つ為に、妾とて当に覚悟は決めておるのじゃ!! フェンリルドガルム、ブロックじゃ!」
ミコに指示にフェンリルドガルムは咆哮を上げると、雷雲を巻き起こし突っ込むジュランを迎え撃つ様に、雷雲より降り注ぐ雷で迎撃。
ジュランは落雷を炎の爪で斬り払いながらなおも突き進み、そのままフェンリルドガルムへと迫ると、一気に空いた片腕の炎爪を振り下ろし、フェンリルドガルムは咥えたダークブレードでその一撃を受け止める。
剣と爪がぶつかり合うその衝撃に周囲のフィールドが耐えきれずに巨大なクレーターを作り上げてしまう程。
「妾は負けぬ! 絶対に負けぬのじゃ!! フラッシュタイミング! マジックでギュウキを発動! 火山竜王ジュランのBPを-3000!」
「まだBPはジュランの方が上だ!」
「承知の上、だから最後の一枚くれてやる! さらにマジック! 火球アタックじゃ!」
「!」
「加えて合体スピリットのBPを-6000!」
これで現在のジュランのBPはブレイヴと合わせて8000、対してダークブレードと合体しているフェンリルドガルムのBPは11000と、完全に形勢逆転。
マジックにより力が減少させられたジュランをフェンリルドガルムは容易く押し返して行く。
「これで決まりじゃ! この勝負、妾の──!」
「その前に」
「!」
決着はついたと勝利宣言を口にしようとするミコだが、光黄の一言でその発言を止める。
「ジュランの効果で破壊されたライトは、元の持ち主……つまり、俺のトラッシュに戻ってる」
「それが何じゃ!?」
「決まってる、勝利のピースが揃えたのは……俺の方だ!」
「!!?」
意味深な光黄の発言、そして彼女もまた自分の残る手札の一枚を構える。
「フラッシュ、アクセル! 妖精神官アンドロメダ! トラッシュにある黄色のカード1枚を手札に!」
「黄色のカード……! ま、まさか……ッ!!」
「察しの通りだ! 俺のトラッシュに戻った、ライトボルディグスをもう一度俺の手札に戻す!」
再び光黄の手札に戻るライト、彼女の元へ戻るなりライトはその場で実体化して嬉しそうに飛び回る。
『光黄様! 必ず私を呼び戻してくれると、信じておりましたとも!!』
「あぁ。信じてくれてありがとう」
『いえ、勿論信じますとも! 何せ私は光黄様の執事ですからね!』
「嬉しいけど、それはそれとして執事は雇ってないからな」
「あ、有り得ん! まさか、お主等……ここまで想定通りじゃと!?」
こんな場面でも相変わらずな調子のライトに突っ込む光黄。そんな二人に対してミコは今の状況が信じられないように二人に問いかけるが、彼女は静かに口開き。
「全部が想定内って訳じゃない。けど、何が起ころうと俺は立ち止まってはいられない。想定外が起きたぐらいで諦めてられないんだ!」
「!!」
バトルではフェンリルドガルムの振るうダークブレードをジュランは両手で受け止めるが、押し切られるのも時間の問題。
フェンリルドガルムは止めを刺そうと、天に立ち込める雷雲を操ると、ジュランに向けて落雷を落とすが。
「フラッシュタイミング! 【天雷】!!」
「ッ!?」
「手札からライトボルディグスをLv.2で召喚し、このバトルに加える!」
再びフィールドに出現する閃光、その閃光はジュランへと降り注ぐ落雷を打ち消すと、閃光の正体であるライトボルディグスは再びフィールドへと姿を現す。
「そ、そんな……!」
「不足コスト確保でジュランをLv.1に、そしてライトボルディグスをバトルに加えた事で、そのBP合計は13000!! 形勢逆転だ!」
ジュランは一歩身を引き、援護するようにライトは角を振り下ろし、フェンリルドガルムはダークブレードで受けるも弾き飛ばされ、距離が開いた隙にジュランも態勢を立て直すと、一気に爪を構えてライトと共に突っ込んで行き、二体の爪と角による攻撃をフェンリルドガルムはダークブレードを振るいながら斬り合っていく。
しかし二対一という状況では流石に分が悪く、次第にフェンリルドガルムの方が押され始めいき、フェンリルドガルムは一気に片を付けようと、その場から大きく跳躍し、二体の攻撃を避けるとそのまま天を見上げて大きく咆哮
。雷雲は轟音を轟かせ、先程以上に激しい稲光と共に、雨嵐の如く一斉に雷撃をジュランとライトへと降り注がせる。
「ライト!」
『ハイ!』
攻撃に対し、ライトはジュランの後ろに退がり、ジュランは降り注ぐ雷撃に対して渾身の力を込めて火炎放射を撃ち放つと、炎は雷撃を打ち消していき、ならばとフェンリルドガルムは雷雲ではなく自身に纏う電撃を最大出力で討ち放ち、巨大な炎と雷の激突に巻き起こる大爆発、しかし次の瞬間、爆煙を突っ切り、即座にフェンリルドガルムの前に姿を見せるライト。
ジュランの放った炎を道標に、フェンリルドガルムまでの距離を一気に詰める。
「!!」
「行け、ライト!」
『ハイ! 決めますよ! 私の一世一代の大見せ場ッ!!』
角を掲げて突っ込むライトに、フェンリルドガルムは咥えたダークブレードをすぐさま振り下ろすが、ライトは角を突き上げてダークブレードを弾き落し、そのまま得物を失ったフェンリルドガルムに突き上げた角を振り下ろし、フェンリルドガルムの頭部へ叩きつけると、そのまま地面へと墜落し、大地に激突しフェンリルドガルムはそこで力尽きて爆散。
弾かれたダークブレードは自分を扱う主を失い、虚しく地面へと突き刺さる。
「わ、妾の……ハイドカードが!」
「ライトボルディグスの効果! バトルに勝利した事で、火山竜王ジュランを回復だ!」
効果による黄色のオーラを纏い、再び起き上がると共に翼を羽ばたかせ始めるジュラン。
「合体スピリットでもう一度! そしてジュランのアタック時効果でダークブレードを破壊!」
「転醒時と同じ効果か……!」
次に翼を羽ばたかせると同時に猛スピードで一気にフィールドを突き抜けると、そのまま炎爪を振るいダークブレードを引き裂いて破壊し、一気にミコへと迫る。
「ブレイヴした事で今のジュランはトリプルシンボル! これで決まりだ」
「……ッ! 認める他、ないようじゃの。妾より……お主の覚悟の方が上じゃと」
迫るジュランを前にもうミコに打つ手立てはない。負けを認めるように静かに言い放つが、「けど」と彼女は言葉を続ける。
「……何故じゃ」
「!」
「何でお主等はそこまでの覚悟を持てるのじゃ。お主等は元々この世界とは何の関係もなかった筈じゃろ! 幾ら七罪竜の相棒とはいえ……何で、無関係なお主等がそこまでの覚悟を持って……!」
「確かに、俺一人なら七罪竜がどうとか、この世界がどうとか関係ない話だったかもな」
「それなら何で……!!」
「俺と同じ元は無関係だったはずなのに、俺以上にこういうトラブルを放っておけない奴がいる、それだけだよ」
「?」
「俺も同じだよ。お前があの男、ドレイクを気遣ってるように、俺も放っておけない奴がいるんだ。いつも無鉄砲で感情的、誰かの為に余計な事にばかり首を突っ込んで、その癖、人の気持ちには碌に気付かない鈍感な大バカ」
誰の事を言ってるのか、ミコには見当が付く筈もないが光黄にとってはそれに当てはまるのは唯一人しかいない。その誰かの事を想いながら。
「それでも、俺は……俺にとっては大好きな奴なんだ。だからこそどんなに面倒事だって分かってても放っておけない。それだけだよ」
「妾と同じ、か。ならもし、その相手が、間違った道に進もうとしてるなら、お前は……!」
「その時は、ぶん殴ってでも止めるだけさ」
「!」
「どんなに想ってる相手でも、いや、想ってる相手だからこそ間違った道に進もうとしてるなら止める。綺麗事と思うならそれでもいいな」
「ぶん殴ってでも、か」
彼女の言葉に、ミコは覚悟を決めたように迫るジュランの攻撃に対して笑って見せる。
「完敗じゃ、完全に妾の負け、潔くその攻撃……ライフで受けるのじゃ」
ミコの言葉にジュランは背に担いでいたヘヴンズベンジェルと突き付け、そのまま零距離でバリアに撃ち放つと、残る三つのライフを全て砕き、勝負に決着を付ける。
***
「妾の、負けの様じゃな」
「!」
バトルを終え先に進もうとする彼女だが、バトルによる衝撃を受けてもなおミコはまだ意識を保ち、その場から立ち上がりながらも光黄を見る。
「覚悟が足りなかったのはどうやら妾の方じゃな、ドレイクの助けになりたい。そう言っておきながら、妾にはドレイクを止めようとする覚悟がなかった」
「…………」
俯きながら悲しそうに語るミコ、そんな彼女に対して光黄は。
「まだ遅くはないんじゃないか?」
「えっ」
「ルディアだけじゃない、ドレイクも……まだ止められる。後悔する暇があるなら、前を向くしかない」
「お主」
ミコに対して手を指し伸べる光黄、それに戸惑う様子のミコ。
「わ、妾は敵なんじゃぞ! 分かってるのか!!」
「分かってる、つもりなんだけどな。けど、是も多分……友達の悪い癖が映った性だろうな」
「…………」
苦笑しつつもその表情はどこか楽し気で、それにミコも気付けば無意識のうちにその手を取っていた。
「……初めて見た時、お主は冷静かと思ってたが、意外と甘いんじゃな」
「かもな。多分それもどっかの誰かさんのせいだよ」
「そうか。妾に言わせれば、そやつがお主にとってよっぽど大切な人に聞こえるんじゃが」
「べ、別に。ただの友達ってだけだ」
「ただの友達、か」
光黄の表情を見ればどんな相手かはすぐに察せた。けれどもそれを言うのは野暮だと、笑いつつもあえて彼女は口には出す事は無かった。
『いやぁ~、一件落着ですね!』
「まだ終わってない、油断するなよ?」
『分かっております! ミコ様も、是非ご協力よろしくお願いしますね』
「協力って、さっきまで妾は敵じゃったのに……軽い奴じゃの」
「こいつは元からだ。さっき操られてる時も満更じゃなかったみたいだしな」
『ご、誤解でございます! 光黄様!! 光黄様の執事として、決してそのような事は……!』
ジト目を向ける光黄とミコ、それに対して慌てて弁明するライトだが。
『ゴホン。それはともかくとして、先程光黄様が仰ってたあの言葉、嬉しゅうございました』
「はい?」
『大好きな奴ってところですよ! アレってもしかして』
「ッ!! お前、やっぱりあの時も意識が……!」
『あぁすみません!! すみません!! でも体の自由が利かなかったのは本当の事でして』
やはり意識はあったのか、自分の発言をバッチリライトにも聞かれていたことに顔が赤くなりかけるが、落ち着くように溜息を零す。
『あの言葉、当然私の事ですよね? ね?』
「ハイハイ、そう思っててくれ」
『フフ、素直じゃないところもまた魅力でございます!』
「煩い! いいから先に行くぞ」
『あっ、置いて行かないでくださいまし!』
ライトと光黄の様子を微笑ましく眺めるミコ、もし彼等のような人物ともっと前から関われていたとしたら、自分達の道は変わっていたのだろうか、ふとそんな考えが頭を過る。
「(できれば此奴等とはもっと出会い方をしたかったものじゃ。ドレイク、お主の事も、此奴等なら変えてくれる。そんな気がするのじゃ)」
そんな期待に胸を膨らませるように光黄達の後に続くミコ。残る帝騎はドレイクとヴァンの二人、混乱する状況下ではあるが、それでも烈我や光黄達は先へと進んで行くのみ。
「ぐっ、ぐぅっ……!」
舞台は再びミナト達に戻るが、あの人物を前にガイトは既に敗北しその場で倒れ伏し、今にも気を失いそうになる彼の前にはバトルフィールドの光景がモニターのように映っており、その相手とミナトのバトルは未だ続いていた。
『ぐっ……クソッ! ガアアアアアァァァッ!!』
「キラーあああああッ!!」
だが戦局は既に終盤。最も信頼する相棒のキラーさえも、相手により呆気ない程に破壊され、断末魔を上げながらミナトの目の前で爆発四散する。
「……なぁ、一体何の冗談なんだよコレは」
キラーの破壊を前に拳を握り締めながら、今目の前の光景が信じられないように彼は静かに言葉をその人物に掛けていく。
「冗談だとしても、悪趣味がすぎるだろ……こんなの嘘だよな」
「……」
「何で何も答えねえ! 嘘でもいい、代弁の一言ぐらい言ってくれたっていいだろ!!」
何を前に彼は激昂するのか、何時もの様な余裕は微塵も無く、ただただ彼自身でも抑えきれない感情を表すかのように必死に声を荒らげる。
だか、それでも相手は何も答えず静かに構えたカードで攻撃を下すと、彼の操るスピリットは容赦なくミナトへと襲いかかっていく。
「何で……何で何だよおおおおおおおおおおおおッ!!!」
悲痛な程の叫び。だか、それでも最後までその叫びに答える返事はなく、スピリットによる攻撃がミナトのライフを破壊し、バトルに決着を付ける。
「……ッ! ミ、ナ……ト」
敗れ去る親友の姿にガイトは手を伸ばすが、目の前が真っ暗になる様に意識を失い、倒れるガイトとミナト、そして勝利者となったその人物はゆっくりと二人へと近づき、倒れるミナトから彼のデッキを拝借し、その中からキラーのカードを抜き取る。
「……まず1枚」
小さく発せられた声は誰の声か性別さえも判断し辛い。しかし、そしてその人物は次に、決して聞き逃してはならない言葉を口にする。
「早くお前に会いたいものだ……強欲」
七罪を示す言葉、それが意味する物、そしてこれからの未来に待ち受けるのは何か。真相は未だ闇の中。
どうもブラストです。
最近更新が遅れて申し訳ございません。
執筆ペースが進まず先月はほとんど更新ができなかったので、
今月は少なくとも前月よりもペースを上げて書きたいものです。
余談はさておき、今回はミコvs光黄のバトル!
何気に本編では光黄のバトルを書くのが久々な気がしてます( ;∀;)
フェンリルドガルムvsライトボルディグスのバトル、いかがでしたでしょうか?
ぶっちゃけ、当初このバトルはケルルベロスを採用予定でしたが、禁止制限前のカードを使うのはどうだろうかと思考してるうちに更新が遅れ、結局バトル改修する羽目に。
そのまま続けていれば禁止になる前の10月十二更新が間にあった気がしなくもないですが、時間をかけた分、それ相応の出来になったと……信じたい←
そして物語のラストに出た「強欲」のキーワード、果たして彼は何者か。
まだ「嫉妬」の七罪竜も出てないうちから……汗
大体お気づきかと思いますが物語もいよいよ佳境に入ってます!
今後の展開、そして「嫉妬」、「強欲」どちらの七罪竜が出るのが先か!
是非ご期待いただければ幸いです。次回もよろしくお願いします!