「いやぁ~、来たよ来たよ!! 晴天の空、灼熱の太陽! まさにこれぞ夏!!」
車を走らせ窓を開けて外の景色を見ながら、声高らかに語るるみか、暫くは走らせた後に目的地に辿り着いたように車を止める。
「さぁて着いたよ! やっぱ夏の醍醐味と言えば!!」
車を降りて眼前に広がる光景は蒼白に輝く海、そしてるみかに続いて車から降りる烈我や光黄、星七にミナトや絵瑠の面々。
彼等6人は今回、この海に旅行に来ていたのだった。
「夏と言えばやっぱり欠かせない海ッ! 満海のサマーシーズンだよッ!!」
景色は絶景なのだが、周囲に彼女達以外の人影はなく、安心する様にバジュラ達も人目を気にせず車から降り始める。
『ここが海かァ、いい景色じゃねぇか!』
『そうですね、素敵な海です。野郎がいなければ、もっと最高でしたけど』
初めて見るのか、海の景色に目をキラキラと輝かせるバジュラ、その隣でライトは小さく愚痴を呟くが、相変わらずの事なのでその点については触れない様、聞こえないフリ。
「姉ちゃん、よくこんな場所知ってたな」
「まぁね。私だけが知ってる穴場スポット、バジュラ君達も楽しめる場所ならここぐらいしかないと思ってね」
ピースサインを見せながら得意げに語って見せた。
「あの、僕まで誘ってもらってよかったんでしょうか?」
「私も……何だかお呼ばれされてしまって」
「うん? あーいいのいいの。こういうのは大人数で来た方が楽しいからそんな気使わなくて大丈夫」
まだるみかと面識が少なく気遣うような様子の星七と絵瑠だが、余計な気は不要と二人の肩を叩いて笑いながら、「それに」と小さく言葉を続け、ある方向に視線を向けると、その視線の先には烈我と光黄の二人。
「(今回来た目的は二人の仲を進展させる事なんだよね)」
何か企むような笑みを浮かべるるみか、今回海に遊びに来ることを計画したのはるみかであり、そして彼女がそう計画したのは数日前に及ぶ。
────数日前、天上家にて。
「(あー、暇すぎる)」
夏真っ盛りの季節、自宅でソファーに寝転がりながら彼女は雑誌を読んでそんな事を呟き、雑誌の内容にはアウトドア用のスポットが掲載されており、流し目で雑誌の内容を読むが、それでもまだ退屈そうに溜息を吐き捨てる。
「(色んな施設やスポットがあるけど、ただ一人で遊びに行くってだけじゃ退屈だよねー、もっと大人数で楽しみたいし……ん!)」
次のページを開いた瞬間、ページ一面に記事に海の特集が取り上げられ、記事に書かれた次の内容に目を惹かれる。
「(へぇー、家族や友達などの団体でも楽しめ、そして何より……カップルにもオススメ、か!)」
見出しに書かれた内容、そしてふと彼女の近くでテレビを見ている烈我を見ると、狙いが決まったように不敵に口角を上げて見せ、そして携帯を取り出すと少しその場から席を外して、どこかに電話を掛け。
「もしもし、光黄ちゃん?」
『?……るみかさん、当然どうしたんですか?」
「いやぁ~、大した内容じゃないんだけどちょっと海に行こうかなって思ってさ。なるべく大人数で行きたいから光黄ちゃんもよかったらどうって思ってさ」
『俺も、ですか?』
「そうそう、寧ろ光黄ちゃんにはぜひ来てもらって思ってるからさ」
『……るみかさん、何か企んでます?』
「えっ!? な、何で?」
『いえ、何となくです。ただそんな気がして』
「(あ、相変わらず鋭い)」
積極的に誘おうとする自分の態度に何か感づいたのか、思わず光黄からの質問に彼女は言葉を詰まらせるが。
「暇しててね。折角の夏なんだしどこか行かなきゃもったいないって思って」
相手に疑念を抱かれた時の対処法は下手に嘘をつかず、正直に話す事。ただし、全てではなくその一部だけを。そして極めつけは。
「それと烈我も来るって言ってるけど、どうする?」
『!』
こう言えば恐らく反応する、私には一目瞭然だった。電話越しだろうが今の彼女の様子が私には容易に分かる。
『な、何でそこで烈我が出て来るんですか!』
「う~ん? 私はただ弟も来るって言ってるだけだけどな~!」
『~~ッッッ!』
「まぁでも光黄ちゃん行かないって知ったら烈我も落ち込むだろうなぁ」
本当は烈我にはまだこの事は一切知らない。しかし、次に彼女がどういう言葉を返すかすぐに想像がつく。
『お、俺は別に……行かないとは言ってないじゃないですか』
「ふふっ、それじゃあどうする?」
『い、行きます。俺も行きます!』
「ありがと。それじゃあ詳しい事は連絡するからね!」
最後に端的に伝えるとそこで電話を切る。光黄ちゃんさえ、誘えれば後は楽勝だ。
「姉ちゃん、誰と電話してたんだ?」
「うん、ちょっとね。それより烈我、来週海行こうかと思っててさ、大人数で行きたいし、烈我も当然参加してね」
「ちょ、勝手に! 来週俺、ショップバトルに出ようと──」
「光黄ちゃんも来るよ?」
「行く!!」
返事まで約1秒、即答である。我が弟ながらチョロすぎるとしみじみ思う。先程まで自分の予定を言おうとしていたにもかかわらず、今は即座に二階に上がって荷物を準備する姿はまるで遠足を心待ちにする子供の様。
「(光黄ちゃんといい、烈我といい、こういう時は手間がかからなくて助かるね)」
弟はずっと光黄という幼馴染に片思いしている、嫌、実際の所片思いではなく光黄もまた烈我に思いを寄せているので両想いではあるのだが、それなのに何故かあまり二人の仲は進展しておらず、友達程度の関係が続いてるだけであった。
「(二人共このままじゃいつくっつくのかまるで分かんないし、ここは姉が一肌脱いでやらないとね)」
でも正直是は建前、本音はというと。
「(私の暇潰──じゃなくて、楽しい夏の思い出にしないとね!)」
そんなるみかの思惑もあり、今の状況に至るという訳だった。その後るみかから、「じゃあ水着に着替えてまた集合ね」と一旦男女に分かれて各自水着に着替え、先に男子組は着替えを済ませて先に合流場所へ顔を見せる。
「んだよ、烈我。こんなに暑いのにパーカーなんか羽織って」
「いいだろ、別に日焼けしやすいんだよ俺」
そう言うミナトは頭の上にサングラスを乗せ、その様に相変わらずチャラいなと思うものの今は突っ込まず、スルー。
『海か、暑っ苦しい水浴びしてサッパリしてもんだぜェ!』
『ハハ、海での泳ぎも当然俺様がナンバーワンだけどな!』
『へぇ言うじゃねぇか! 後でどっちが早いか試すか!』
『試すまでもねぇと思うが、いいぜ? その無謀な挑戦、受けてやるよぉ!』
『やれやれ彼奴等は海でもどこでも相変わらずじゃ』
勝負勝負と火花と散らすキラーとバジュラ、その様子にエヴォルは遠い目を向け、星七はその隣でどういっていいものかと、ひとまず笑うしかない。
「で、でもこうしてみんなと遊びに来れて僕は楽しいです」
『儂は正直海より山派なのじゃが。けれど楽しい場でそんな事も言うのは無粋か』
『いえ、もっと言っていいと思いますよ』
『!』
エヴォルの言葉にまるで同調するかのように口を挟んだのはライト。
『何じゃライト、お主も山派だったかのぅ?』
『まぁ。私海ってどうにも好きじゃないんですよね……羽も濡れますし』
『羽が濡れる……お主、まさかとは思うが泳げんのか?』
『!?』
エヴォルからの言葉に分かりやすい程の動揺。
『ば、馬鹿言わないでくださいよ! 私が!? 別に泳げないとかそんなんじゃなくて、私は空を自由自在に飛べますし! 青い日差しの下飛び回れる喜びを知ってるのに、態々暗い海の底に潜る必要がないだけですし!』
言い訳がましく早口で語るライトに、『(泳げないのか)』と瞬時に理解し悟ったような目線を向ける。
『ともかく、私は海なんてきr──』
「お待たせ!」
ライトの言葉を紡ぐ様に先に着替え終えて烈我達と合流し、「どう? 私の水着姿!」と感想欲し気に自分の姿を披露するるみか、それに真っ先に目を輝かせるライトとミナト。
『るみか様! 凄く素敵でございます!! まさに美の女神を顕すかのような美しさ! この場に下ります貴方はまさに人魚。本物は幻想でしかありませんが、今まさにあなたの魅力が現実で見られる事に感激しております!』
「べた褒めだね。でもありがとう! ライト君も折角の海、満喫してね!」
『はい、私! 海は大好きですとも!!』
『『『此奴!!』』』
180度自分の発言を変えるライトに、エヴォルだけでなくバジュラやキラーも白目を向け、一方でシュオンとは言うと。
『相変わらず騒々しい連中だ。付き合い切れん』
何処か調達して来たのか、1人だけパラソルを張って、日陰の下、海の家から調達して来たであろう焼きそばやとうもろこし等を優雅に蝕し、それなりに満喫している様子ではあった。
「ねぇミナト君は、私の水着姿どう思う?」
「そうっすね。ライトみたいなキザな台詞は言えないですけど、大人の魅力が溢れてとっても素敵だと思いますよ。恥ずかしくて言えないですけど、人魚の様に綺麗だと思ってます」
「それ言っちゃってるよ。相変わらず褒めるのがうまいんだから! 星七君はどう思う?」
「えっと、似合ってていいと思います」
ミナトや星七からの言葉に満足げな優越に浸るるみか、そして最後に烈我に視線を向け。
「よし、最後に久々に見たナイスバディの姉の姿に、弟からの感想を聞かせてもらおうか!」
「ごめん、正直どうでもいい」
「オイコラ弟」
「そんな事より光黄達は?」
「『そんな事』って貴様!!」
若干苛立ちを覚えながらも、烈我が自分に関心がない事は分かってたので、溜息を吐きつつ、「光黄ちゃんならもうすぐ来る筈だけど」と明後日の方角に振り返り。
振り返った先には物陰に身を潜める光黄の姿が。
「おーい、光黄ちゃん! 着替え終わったなら早くおいでよ!」
「そ、そんな事言われても! まだ心の準備が」
「此処まで来て何言ってんの、ほらほら!」
「ちょ、るみかさん!!」
「あっ、光──ッ!!」
物陰に隠れる様な彼女だったが、るみかによって無理矢理引きずり出され、その姿に烈我も気付き声を掛けようとするが、目の前の光黄の姿に喉元まで出かかった言葉は一瞬にして止まり。
「れ、烈我……その、これは」
白い肌に黄色の水着、普段のボーイッシュな言動からは打って変わり女性らしさを強調して顕す様な空いた胸元、そんな自分自身の恰好に恥ずかしさを感じているのか、顔を赤く染めながら、体を隠す様に片腕で肩を掴むような仕草を取り、そんな光黄の姿に烈我も思わず赤面してしまうが。
「あ、あんまりジロジロ見るな!」
「ご、ごめん」
咄嗟に視線を外すが、それでもやはり光黄の姿が気になる様子で、光黄もそれにまだ羞恥心を拭えない様に顔を赤くしながらも。
「……へ、変だと思うか?」
「!」
そんな彼女からの質問に烈我は。
「(変じゃないよ!)」「世界一に可愛い!!」
『烈我、お前本音と建て前入れ替わってんぞ?』
「!!」
バジュラからの突っ込みに我に返り、「違っ! 俺は……!!」と慌てるように言い訳の言葉を暗中模索する烈我だったが、そんな様子に少しだけ呆れた様子で「もういい」と言葉を返す。
「へ、変じゃないならいい。それだけだ」
「ちょっと、待っ──」
「ッ!」
その場を後にしようとする光黄、それを止めようと言葉よりも先に彼女の手を掴んでしまい、二人ともに益々顔を赤くしてしまう。
「あ、あの光黄。とりあえず
「いや、今暑いぐらいなんだけど」
「嫌、その……色々危ない気が……して」
自分の着ていたパーカーを光黄に渡し、それにやや困惑しながら受け取る光黄。
「烈我ー、別にここのビーチ、ほぼ俺等の貸し切り状態なんだし危なく無くね?」
『そうですよ! 執事の私がいるんですから危ない事などありませんし』
ミナトとライトからの言葉、しかし烈我は二人に振り返らずに「お前等いるから危ないんだよ」と小声で一言。
『ところで光黄様! 水着とても素敵です! やはり女神のように美しい!!』
「わ、分かったからやめろ!!」
何時ものように褒めちぎるライトに収まりかけていた表情をまた赤くさせられるが、一方でミナトは辺りを見回し、「そう言えば絵瑠は?」と辺りが気になる様に
「おーい、遅くなった!!」
遅れてしまいそれに慌てるように息を切らしながら合流し、少し時間が掛かった事を不思議に思い、るみかは「何かあった?」と尋ねる。
「えっと、少し前に買った水着なんだけどサイズが合わなくなったのか着替えるのに時間が掛かって」
「それ大丈夫なの?」
「いえ、ちょっと胸がキツイかなってぐらいで特には」
「……」
苦笑いしながらるみかに答える絵瑠、紫の水着に女性らしいラインが一際強調されており、そんな彼女に光黄は静かに自分の胸に手を当てて絵瑠を見ながら少し表情を俯かせているがその横でミナトは絵瑠の前へと出て。
「よぉ絵瑠、水着姿すっごく似合ってんじゃん」
「!」
「可愛くて、すごく好きだぜ。俺」
「ミナト……!」
率直なミナトからの感想に嬉しそうな反応を見せたかと思うと、次の瞬間、ミナトの手を掴み。
「何て、そう簡単に流されると思ったか?」
「え、絵瑠?」
「私はまだお前の事は許してないし、後、どうせ光黄やるみかさんにも同じような事言ったんだろ?」
「えっ!? そりゃ光黄ちゃんやるみかさんも綺麗だとは思ってるけど」
「それ見た事か! やっぱりお前なんか知るもんか!」
「おい、絵瑠! ちょっと待ってくれって!」
普段はちゃらけた様子のミナトだが、絵瑠が絡むと形無しだった。その様子を見ながら苦笑いする烈我達だが。
「ミナト達、仲直りはやっぱ難しそうって、光黄!?」
ふと隣にいる光黄に視線を向けると、先程まで暑いから着ようとしていなかったパーカーを何時の間にか羽織っており、そして胸元までジッパーを上に引き上げる。
「『光黄(様)!?』」
「ふむ、仕方ない! 光黄ちゃん、ちょっといい?」
「?」
手招きでるみかは光黄を呼び、そして人目を避ける様に物陰に移動すると。
「るみかさん、一体どうしたんですか?」
「まあまあ、そんな怖い顔しないで」
何となく嫌な予感がするのか、ジト目になって視線を向ける光黄に彼女は笑いながらも宥めるような素振りで手を振る。
「光黄ちゃんの考えてる事は大体分かるよ、大方絵瑠ちゃんと自分のを見比べて自信無くしたとかそんな所でしょ」
「な、何の話ですか!!」
分かりやすい反応を見せてしまったとは言え、それを他人に指摘される事程恥ずかしい事は無い。否定しつつもどうしても表情が赤く染ってしまい。
「大丈夫! 光黄ちゃんの悩み! 私がズバリ解決してあげるよ!」
「俺はまだ何も言ってないんですが」
「いいからいいから、とにかくちょっと後ろ向いてくれる?」
「一体何する気ですか」
「いいからいいから!」
振り回され気味になる光黄、溜息を付きながらも渋々指示の通りその場を振り返る。
「はい、これでいいですか?」
「うん、それじゃあちょっとしたテクニックをと!」
「嫌、言ってる意味が良く分から──」
彼女が続きの言葉を言いきろうとする瞬間、突然るみかは何を思ったのか後ろから彼女の水着に自分の手を突っ込み始める。
「ちょ、ちょっと! きゃっ!!?」
抵抗するようにるみかの手を掴むが、彼女は「良いではないか〜!」とまるで悪代官さながらの台詞を口にしながら、なおも遠慮する様子はない
「るみかさん! や、やめっ!!」
「これも絵瑠ちゃんに対抗する為! 少しでも大きく見せるならこうやって周りを寄せればさ!」
「ど、どこ触って! ひゃぁっ!!」
「光黄!?」
堪えきれず思わず声を上げ、そんな光黄の声に不安を感じて咄嗟にその場に駆け寄る烈我、るみかと光黄は、烈我がその場に来る前にすぐに離れるが。
「光黄、大丈夫か──よ!!?」
「烈我!?」
慌てて駆け寄った為か、砂に足を取られ、前のめりに体勢を崩し、咄嗟に光黄は支えようと前へ出るが、支えきれず二人ともその場に倒れてしまい。
「う、うぅ……!」
倒れた後、即座に目を開けるが何故か俺の視界は真っ暗なままだった。けど特に痛みはない、何か柔らかいクッションに受け止められたようにって……え? クッション? ちょっと待って、まさか。
嫌な予感を感じて少し顔を上に向けると、すぐに自分の状況が分かった。
光黄の胸に顔を埋めている今の自分の状態が。
「れ、烈我……いいから、離れろ!」
「ご、ごごごごごごめんっ!!!」
顔を真っ赤にして怒り気味に言い放つ光黄、烈我もまた顔を赤くし、怒られた事よりも自分の今の状況に罪悪感を感じながら即座に離れるが、先程の状況に混乱したままどう謝っていいのかもわからず、脳内にはっきりとした言葉が全く浮かばない。それでも無理矢理に思考を回転させるが、暴走を起こすように顔を真っ赤に、あまりの体温に湯気を噴き上げながら。
「お、おおお俺そそそそののの────!」
「わ、分かったから一回落ち着け!」
「で、ででででででももももも、おおおおお俺っっっっっ!!」
「烈我!!?」
舌もまともに回らずオーバーヒートしたように、とうとうショートを起こし、その場で仰向けに倒れてしまう。
「烈我!! おい烈我ッ!!!」
***
暫くしてるみかや絵瑠、光黄達はビーチで遊んでいる様子だったがその一方で。砂浜で体育座りの体勢で落ち込む様な烈我。
「……絶対光黄に嫌われた」
まるでこの世の終わりかのように絶望した表情、ミナトとは苦笑いしながら肩をポンポンと叩いてる。
「烈我、大丈夫ですか?」
「まぁ相当応えるだろうなぁ……何せあんないい思いしてんだから」
「ざけんな! 俺にそんな気はねぇッ!!!」
まるで意図的だったと疑うようなミナトの言葉に怒り、ムキになる様に強くミナト睨み付けるが、すぐに「もういい!!」と不貞腐れた様にその場を後にし、そんな彼らの様子がるみか達の視線に入り。
「ねぇ光黄ちゃん、烈我の事、許しに行ってあげてくれないかな?」
「……許すも何も俺は別に、もう怒ってはないですけど」
「とは言っても本人は相当気にしてるみたいだからさ。光黄ちゃんから一言言ってもらえれば、気が楽になると思うし、ね?」
「……分かりました」
早めに烈我に一言話す為、後を追い駆けようとするが道中ふとミナトと星七の会話が耳に入る。
「烈我さん、大丈夫でしょうか?」
「まぁ気にしなくていいって。言うて本人はいい思いしてる訳だし。まぁ絵瑠みたいなサイズならもっといい思いだっただろうけど」
「えっ?」
「まぁ要するに男は大きい方が好みって話だよ」
「いや、言ってる意味が良く」
「分からないならそれでいいよ、星七君にはまだ早い話ってだけ」
「???」
ますます意味が分からないと言ったように首を傾げる星七だが、隣で聞いてるエヴォルは『知らんでええ』と釘を刺し、一方でその会話を聞いてた光黄には、星七と違いミナトの言ってる意味が理解できており。
「…………」
少しだけ思いつめたような表情を浮かべながら、先に烈我と合流すべくその場を後にし、そして烈我の元に追い付くと。
「烈我、少しいいか?」
「こ、光黄!?」
合流したものの先程の一件もあって、まだ烈我はどこか気不味そうな様子。
「その、さっきはホントごめん!」
「……もういいって。事故だったのは俺も理解してるから」
「そ、それじゃあ許してくれんのか?」
「許すも何も怒ってないから、別に」
「よ、良かったぁ」
光黄からの言葉にほっと一息つく烈我だが、それはそれとして光黄にとっては一つ聞きたい事が一つあった。
「烈我……少しだけ質問していいか?」
「うん?」
「……お前ってさ、その……バトルが強い奴の事が、好きなんだよな」
「?、まぁ強い奴と戦うのは確かに好きだけど」
「そ、それじゃあさ……その……やっぱり、女性は……大きいのが、好きなのか?」
「えっ? 何だって?」
小さく尋ねる光黄の言葉に所々聞き取れず、彼女自身は自分の口から言い辛いのか恥ずかしい様に「い、いいから答えろ!」と手早く済ませたいように催促。
「(えっと、大きいって……スピリットのコストとかの話か? 質問の意味はつまり低コストスピリットが好きか、高コストスピリットが好きかっていう話?)」
最後の方だけ聞き取れており、その性で光黄の質問の意図とは違う解釈を捕え、しばらく悩む様な素振りを見せながら。
「えっ~と、まぁ好きなのは大きい方かな」
「!!」
烈我からの答えに思わず彼女の眼の色が変わる。本当は互いに思い違いをしているのだが、それに気づかないまま思考だけが進んでいく。
「……そうか。それなら、俺と絵瑠比べるなら……?」
「絵瑠、それに比べる?」
「う、うるさい! いいから答えろ」
「答えろって言われても」
疑問符を頭に浮かべながらも話の流れから察するに光黄と絵瑠のスピリットを比べてどっちのスピリットが好きかという話だろうか。嫌、本当は全然違う意図の質問なのだが、質問された当人はまるで違う解釈のまま質問の答えを考え始める。
「(えっと絵瑠のスピリットはウロヴォリアスとかで、光黄ならヴィーナルシファー……どっちもカッコいいし、両方好きなんだけどな)」
「れ、烈我?」
「その、何て答えたらいいのか」
「思った通りでいい、ただ正直に答えてくれ」
「正直に?」
暫く思考を巡らせるが、それでもやはり悩みが残る様に。
「ごめん、やっぱ選べない」
「!?」
「どっちも好きだけど、今急に選ぶのはまだ無理って言うか」
「そ、そんな!!」
「光黄?」
烈我からの答えによる今の彼女の動揺はとても計り知れなかった。以前から烈我からは積極的に想いを伝えてもらってはいたものの、正直自分はそれにあまり反応を返せておらず、その報いなのかと後悔の念が過る。
「(烈我、つまり今は絵瑠の事も、気になってる……そんなの、俺……!)」
もし自分から気持ちを伝えていれば、烈我も迷う事なんてなかった筈なのにと、と勘違いに拍車をかけたままそんな思考を彼女の脳裏を過るが。
「こ、光黄?」
何故か嫌な予感がした、もしかして適切な解答ではなかったのか?とその点だけは大正解なのだが、深く追及する前に、「大丈夫」と彼女は返事を返す。
「正直に言ってくれって言ったのは俺だからな。むしろ隠さないでくれてよかった」
「(そんな重い話なのか!?)」
やはり何か誤解されてるような気を感じ、光黄から詳しく事情を聞こうとするが、ふと何やら浜辺の方が騒がしいような気がした。
「「?」」
疑問に感じつつも、二人も浜辺の方へ向かうと。
「ほら、やっぱりないだろ? 帰ろうぜ」
「ヤダヤダ! せっかくここまで来たのに!!」
何やら言い争っている様子で見た感じは兄妹だろうか。どちらもまだ幼く、妹らしき少女が何か駄々をこね、その様子に兄である少年は困り果てた様子だった。
「僕達、どうしたの?」
状況を見兼ねたるみかが二人に声を掛け、ミナトや絵瑠達もその場に居合わせ、光黄と烈我も何があったのか聞くためその場に駆け寄る。
「すみません、実はこの辺りでバトスピのイベントがあるって聞いてたんですけど」
「?……それって確か中止になったんじゃ」
二人の言うイベントについてるみかは勿論知っている。元々ここのビーチでは集客目的に有名なカードバトラーを招いてエキシビジョンマッチを執り行うイベントが前々から計画されていたらしいが、予算や設備の準備、そして当事者たちのスケジュールが間に合わず中止になったらしい。
その上で今なら人が少ないであろうと判断した上でるみかも此処に遊びに来る事を計画した訳だが。
「はい。でも妹の好きなカードバトラーの試合だって事で、ずっと楽しみにしてて……なのでもしかしたらと思って一応ここに連れてはきたんですけど、やっぱり納得してくれなくて」
「ふむふむ。君たちはこの辺りの子?」
「はい。俺達二人共バトスピ好きなんですけど、この辺り海はあってもあんまりバトスピショップとかもなくて、だからこういうイベントが余計に楽しみだったんですけど」
「成程ね」
事情を聞いた限りどうにも放っておけず、どうにかできないものかと思考を巡らせるが。
「あ! それならさ、イベントの代わりって訳じゃないけどそのエキシビジョンバトル、私達が代わりにやるていうのは?」
「「えっ!?」」
「こう見えてお姉ちゃん達皆凄腕のカードバトラーだからね! それに誰も見た事のない超強力なスピリットだって持ってるんだよ!」
「超強力スピリット、何それ見たい!!」
誇らしげに語るるみかに妹である少女は目を輝かせており、一方でるみかの発言に烈我や光黄達は慌てたように「ちょっと!」とるみかの手を引き。
「るみかさん! 超強力なスピリットってまさかライト達の事じゃ!!」
「そうだぜ、バジュラ達はあんまり人目に付かないよう、ヘルさんからも言われてんだし!」
「えぇー、でも折角楽しみに見に来てくれてたって言うからどうしても放っておけなくて」
「でも!!」
『まぁまぁ、烈我さん。構わないじゃないですか!』
「ライト!?」
瞬間、突如実体化して兄妹の前に現れるライト、その行動に光黄は思わず驚き、一方でライトの姿に兄妹達は初めて見るライトの姿に驚きつつもまだ幼い彼等にとって、恐怖よりも興味の感情が強く、怖がる事無くライトに興味津々の様だった。
「す、すげぇ! 何コレ生きてるの!?」
「わー、可愛い龍さんだあ! もしかしてスゴイスピリットってこの子?」
『フフフ、そうですとも。未来の可愛いお嬢様! 私光黄様の執事をしておりますライトボルディグスと申します。どうぞお見知りおきを』
「ライト、お前勝手に!」
『どうぞお許しを。ですがまぁレディの期待に応えるのが紳士としての務めかと思いまして』
「全くお前は……!」
頭を抱えて呆れるように溜息を吐くが、ライトなりに兄妹を気遣っての行動なのだろう。怒る気になれず承諾するしかなかった。
『まぁ、いいんじゃねぇか』
「バジュラ!?」
ライトに同調するかのようにバジュラも実体化して姿を見せ、軽い様子で言い、それには烈我も驚くが、驚く間もなくエヴォルやキラー、そしてシュオンも実体化し始める。
『どうせそいつらまだ餓鬼だし、見られたって別にどうこうしねぇよ』
『あぁ。俺様も構わないぜ、何てたって俺様は寛大だからな! 見たいというなら見せてやっても構わん。俺様のバトルをな!』
『全く、まぁ子供のリクエストというなら儂も答えてやらねばのぅ』
『相変わらずお人好し共が、まぁ絵瑠の命令するなら従ってやらんでもないが』
何だかんだ言いつつも、全員バトルする事に関しては問題ないようで、「じゃあ仕方ないか」と全員承諾。
「よし決り! それじゃあここにいるお兄ちゃんお姉ちゃん達全員バトルの準備はOKだけど、誰のバトル見たいとかある?」
「え~っと」
少女は一瞬考える様に迷いながらも、光黄の方に視線を向けて。
「私、お姉ちゃんのバトルが見たい!」
「お、俺でいいのか?」
「うん。私白いドラゴンさんの活躍が見たいです!」
『フフフ、レディに期待されて悪い気はしませんね』
「全くお前は!」
ライトに白い目を向けながらも、すぐに妹の前にしゃがみ込んで頭に手を置く。
「分かった。じゃあ期待に応えられるよう頑張ってバトルするよ」
「うん! 私お姉ちゃんのバトル応援してるね!」
「光黄、なら俺とバトルしようぜ!」
「待て待て! 折角の場、光黄のライバルとして私が相手になる!」
真っ先に立候補したのは烈我と絵瑠の二人、そして二人とも譲れない様に、「俺が先だ!」、「私だ!」と言い争う二人に光黄は落ち着けと宥める。
「……バトル相手は、絵瑠とやらせてくれ」
「え!? 何でだよ光黄!!」
「お、お前とはいつもやってるだろ!」
「ふふ! 決まりだな!! 久々にやるお前とのバトル! 対戦戦績は最近は離されてしまったがこれを機にして取り戻して行くからな!」
「何でもいい。やるからには負けるつもりはない!」
しかし、今回彼女が絵瑠とバトルする事を選んだのはただ単に普段烈我とバトルしているからというだけではない。
「(もしこのバトル、俺が……絵瑠よりいい所を見せれれば、お前はまた……俺を選んでくれるだろうか)」
まだ烈我が絵瑠の方に気があるのではという勘違いが続いており、改めてアピールするために今回絵瑠とバトルすることを選んでいるのだった。そんな事を知る由もない烈我、今はただ自分がバトルできない事に涙目で落ち込み、星七やミナト達に励まされているのだった。
「それじゃあ始めるぞ!」
バトル準備の為、絵瑠はキューブ状のデバイスをお互いの足元に投げ入れ、バトルフィールドが展開され始めて行き、そして両者デッキを構える。
「シュオン、今日も全力でやるぞ!」
「ライト、頼りにさせてもらうぞ」
『光黄様の為なら喜んで!』
『全く俺は業腹だがな。まあいい、食後の運動代わりに付き合ってやる!』
それぞれカードとなったシュオンとライトのカードをデッキに加えて、そして準備を整えると両者コール。
「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」
開始の合図と共に二人はバトルフィールドへと舞台を移し、二人の姿はモニターの様に兄妹達の前へと映し出される。
「お姉ちゃん達頑張れー!」
***
そして繰り広げられる光黄と絵瑠のバトル、光黄の先行からバトルを幕を開けた。
第1ターン、光黄はネクサスである「黄の聖遺物」を配置してターン終了。
第2ターン、絵瑠はレッドライダーを召喚後、1枚ドローしてアタック。光黄のライフを一つ削りてターンを終了。
第3ターンはネクサスをLv.2に、そしてガトーブレパスをLv.2で召喚してアタック。ライフを削り返した上、【聖命】の効果でライフを回復し、ターンエンド。
────第4ターン、絵瑠side。
[Reserve]6個。
[Hand]6枚。
[Field]戊の四騎龍レッドライダーLv.1(1)BP3000。
「私のターン! バーストセット。さらにクリスタニードル、さらに騎士龍グレイザスを連続召喚!」
「!」
「さぁアタックステップ! グレイザスでアタックだ! アタック時で自分の他のスピリットの破壊時、消滅時効果を破壊消滅せずに発揮! クリスタニードルの破壊時効果を使用だ!」
グレイザスがアタックすると同時にクリスタニードルに向けて鎌を振るうと、その鎌はクリスタニードルの身を一切傷つけず、代わりにオーラのような物を刈り取ると、振り下ろして思念態となったクリスタニードルを黄の聖遺物へと飛ばし、思念体はネクサスを貫いて破壊する。
「ネクサスを狙って来たか」
「あぁ、お前の戦い方はよく知ってる。そのネクサスは相当厄介だから先に潰させてもらった! さらにグレイザスのメインアタック!」
「ライフで受ける!」
グレイザスの鎌がバリアを引き裂き、ライフを破壊。
「これでお互い残りライフは4、また同点だな」
「そうだな。続けて来るか?」
「当然! 行け、クリスタニードル!」
ブロッカーもなく続けて追撃を掛けるが、光黄もただ黙って攻撃を通す訳はない。
「だったらフラッシュ、イエローリカバー!」
「!」
「回復しろ、ガトーブレパス! そしてブロック!」
突っ込むクリスタニードルをガトーブレパスはその角で受け止めると、鳴き声を上げながら突き上げて、クリスタニードルを上空に跳ね上げると、クリスタニードルはそのまま空中で四散してしまう。
「!?」
「既にネクサスが破壊されてるならクリスタニードルの効果を警戒する必要はないからな」
「ムムッ、やるな! 私はこれでターンエンド!」
────第5ターン、光黄side。
[Reserve]6個。
[Hand]4枚。
[Field]ガトーブレパスLv.2(2)。
「俺のターン、創界神ラーを配置。配置時の効果で神託」
神託で落ちたカードは「タマモノイン」、「光の覇王ルナアークカグヤ」、「シアーハートアタック」の3枚。
「神託対象2枚でラーにコア2個を追加。さらにシアーハートアタックはラーの神託でオープンされた事で、コアをラーに追加しそのままの手札に加える」
「来るか!」
「あぁ、バーストセットしてさらに闇輝石六将 幻想獣神キリンクスを召喚! リザーブのコア全てをキリンクスに追加。」
「(リザーブのコア全て!?)」
現在光黄のリザーブのコア全ては5個。それを全てキリンクスに乗せるのは、紫のコア除去を警戒しての事だろうか。それならば多くコアを乗せることは不思議ではないが。
「神託対象が召喚された事でラーにコアを追加。そしてアタックステップ! キリンクス、アタックだ! Lv.2、Lv.3のアタック時効果、俺は手札が5枚になるようにドロー!」
手早く手札を補充すると共にキリンクスは絵瑠に突っ込んで行くが、それが単調な攻撃でない事は、絵瑠にはよく分かってる。
「私のフラッシュだ! アクセル、クルセイダージェネラス!」
「!」
「アクセルの効果でお互いにスピリット1体を破壊、私はレッドライダーを破壊だ」
「ガトーブレパスを破壊だ」
互いに指定したスピリット達は紫炎に飲まれて破壊されるが、それでも光黄は表情を変えずに「今度はこっちの番だな!」と手札を構える。
「俺もフラッシュだ!!」
「ッ!!」
「神の力を携わり、新たな姿に生まれ変われッ!! キリンクスを太陽神獣セクメトゥームへ神煌臨ッ!」
ラーのコア一つをキリンクスへと移し、キリンクスは光に包まれ、眼光を輝かせて小さな体躯は巨大な神獣へとその姿を変え、翼を生やしセクメトゥームの姿へと生まれ変わる。
「煌臨時効果発動! 煌臨元となったスピリットのコストと同じ回数、相手スピリットをBP-10000だ!」
絵瑠の場にはグレイザスが一体。そしてセクメトゥームは吠え上げながら雷撃をグレイザスへと撃ち込み、直撃を受けたグレイザスは爆発四散を起こす。
「ふっ、やはりそう来ると思っていた!」
だがそんな光黄の一手は絵瑠には分かっていた。その上で先程アクセル効果を使ったのには意味がある。
「セクメトゥームの効果は破壊だけじゃない、確かLv.3になっていればBP0になって破壊したスピリットのコアをボイドに送るんだったよな」
「……あぁ。だからこそ、あえてアクセルで自分のスピリットを破壊し、グレイザスだけを残したって訳か」
「その通り! グレイザスの上に載っているコアはソウルコアだけ! コアをボイド送りにする効果でソウルコアだけは対象に出来ないからな! 対策はバッチリだ」
「流石にお前には読まれていたか。けど、お前に読まれてる事も俺の想定内だ」
「!!」
言葉通り絵瑠の考えもまた光黄には分かっていた、それでも行動に踏み切った理由は当然それで終わりではないからだ。
「さらにフラッシュ! マジック、シアーハートアタック!」
「!!」
「このターン、相手はBP10000以下のスピリット、もしくはBP20000以下のアルティメットでのアタックとブロックは不可、さらにラーのコア3個をボイドに送れば、系統「想獣」を持つセクメトゥームを回復させる!」
黄色の光を纏いながらセクメトゥームは回復状態となりより強く眼光を輝かせながら絵瑠へと向かって行く。現在の絵瑠の残りライフは4、そしてセクメトゥームはダブルシンボル。このターン、セクメトゥームで2回攻撃すれば、それで決着がつく。
「ライフだ!!」
セクメトゥームは上半身を起こしてそのまま前脚の爪を構えると、そのまま両爪を振り下ろして展開されたバリアを引き裂き、一気に絵瑠のライフを2つ破壊する。
「ぐああああああッ!!」
「これで終りか?」
「……冗談! 私がこの程度でやられるものか!!」
衝撃による痛みを堪えながら光黄の問いに答えて見せると、大胆不敵に笑てみせながら彼女は「バースト発動!」と声高らかに宣言。
「エクステンションウォール発動! バースト効果により、このバースト発動時に失ったライフを全て回復できる!!」
「!」
「セクメトゥームはダブルシンボル、だから失ったライフ2つ分そのまま回復! さらにコストを支払い、フラッシュ効果! お前のアタックステップを強制終了だ!」
フィールドに吹き荒れる猛吹雪、急激に大気が冷却され、セクメトゥームの足元は凍り付き始め、これ以上の行動を止めてしまう。
「やるな、それでこそお前とはやり甲斐がある」
「当然! なんたって、私はお前のライバルなんだからなッ!」
自慢げに語る絵瑠、それに対して光黄も面白そうに笑いながら、「ターンエンド」とコールし、二人のバトルには烈我達は勿論、兄妹の二人も楽しんでいるように魅入っていた。
「お姉ちゃん達すごい! どっちが勝つの?」
「まだ分からないけど、どっちも凄く強いのは変わりない! これからもっともっと凄くなるぜ!!」
少女の言葉に答える烈我、その言葉に兄妹たちは益々これからの展開を楽しむようにバトルの様子を脇目も振らずに注目しきっていた。
そして続く絵瑠のターン。
────第6ターン、絵瑠side
[Reserve]10個。
[Hand]3枚。(手元)クルセイダージェネラル。
[Field]なし。
「私のターン、破壊の創界神シヴァを配置! 配置時により神託」
絵瑠の場にも配置される創界神のカード、そして神託により捲られた3枚は「紫魔神」、「龍魔神」、「ウロヴォリアススカーレット」の3枚。
「神託対象は1枚、よってコア1個をシヴァに追加!」
「どうやら結果はそんなに良くはなかったみたいだな」
「嫌そんな事は無い! 寧ろ上々!」
「何!?」
「今見せてやるさ! 私はさらに手札から水晶龍アメジストドラゴンを召喚!」 召喚時効果発揮、手札、又はトラッシュの「異魔神」を持つカードをノーコストで召喚できる!」
「!!」
「今現れろ! 紫を象徴する闇の魔神! 紫魔神をフィールドに現れよ!」
紫の瘴気がフィールド中央に球体上となって収束され始めると、次の瞬間、瘴気の中より眼光を光らせ、紫を振り払い紫魔神がその姿を見せる。
「アメジストドラゴンはこの効果で「異魔神」を呼び出した時、デッキから2枚ドロー! さらに紫魔神の効果で、相手スピリットのコアをリザーブに、効果でセクメトゥームからコア1個を除去だ」
合掌するように手を合わせると、紫の波動がセクメトゥームへと放たれコアを取り除かれるが、多くコアを乗せていた為、コア1個除去された程度ではレベルも変動させることはできず、何でもないかのようにセクメトゥームは首を振りながら、睨むように紫魔神に視線を向ける。
「そして紫魔神をアメジストドラゴンに合体!」
先程迄合唱の様に手を合わせていたが、絵瑠の指示にその構えを解いて剛腕をアメジストラゴンへと突き出し、波動を飛ばして己とリンクさせ合体スピリットとなる。
「さぁアタックだ! アメジストドラゴン!! 行けぇッ!!」
アメジストドラゴンは翼を軽く羽ばたかせて宙へ浮く程度に飛ぶと、低空飛行のまま滑空するように飛び出して行く。
「(セクメトゥームのBPは16000、BPは相手の合体スピリットよりも上だが、それでも突っ込んでくるって事は、何かあるな)」
事実その通り、絵瑠は何かを狙うように手札を構えて見せる。
「行くぞ! 全てを灰塵と消し去れ! 絶対破壊の漆黒龍! アメジストドラゴンを破壊神龍ヴァルドラムに煌臨だぁッ!!!」
今度は絵瑠による煌臨、アメジストドラゴンの身に輝く水晶の光は漆黒へと染まり、シヴァの化神たるヴァルドラムへとその姿を変貌させていく。
「煌臨時効果発揮! このスピリット以外のネクサス、アルティメット、スピリットを全て破壊!」
「!!」
「私の手元に裏向きカードは4枚以上ないと巻き添えを喰らってしまうが生憎私の場にはヴァルドラム一体。気にする必要はない! さぁ暴れろ! ヴァルドラム!!」
ヴァルドラムは眼光を輝かせ、そして耳を塞ぐ程の咆哮を轟かせると、その咆哮はまるで衝撃波となってフィールド全域に広がって行き、セクメトゥームはその衝撃波に飲み込まれ破壊されてしまう。
「セクメトゥーム!!」
「これで終りじゃないぞ! ヴァルドラムのメインアタックは継続中の上、ヴァルドラムの元々のシンボルは2つ。そして紫魔神も同じダブルシンボル、合体している事でそのシンボルの合計は4つ! これで決まりだ!!」
光黄に止めを刺そうと、ヴァルドラムは腕に粒子を溜め込んで行き、そして拳を展開されるバリアへ撃ち込もうとするが。
「フラッシュ! アブソリュートゼロ! ヴァルドラムのシンボルを0に!」
「何ぃッ!!?」
アブソリュートゼロの効果によって、電撃がヴァルドラムへと撃ち込まれ、それに怯んだのか腕に溜め込んでいた粒子のエネルギーは掻き消えてしまい、攻撃のチャンスを逃したようにヴァルドラムは大人しく身を引き、その攻撃を終えてしまう。
「流石光黄、一筋縄じゃいかないか」
「あぁ。お前がライバルと認めてくれている以上、俺だってそう簡単に終われないからな」
「……仕方ない。ターンエンド!」
互いに一進一退の攻防、まさに拮抗する光黄と絵瑠。果たしてどちらが勝つのか、勝負はこれからさらに目が離せない程、過激さを増すのであった。
突然の特別編!!!
最初に言っときます。悪ノリ全開で書きました(笑)
今回は夏という事で、水着回書かせていただきました!
前にもツイッターで水着回書きたいと言っていたので、今回かけて大満足!
そして今回絵瑠と光黄のバトル! 作中でずっと絵瑠は光黄の事をライバル視していますが、ふと気付くと本編中で二人のバトルを正式には書いていなかったので今回二人のバトルの決意しました。
バトルは前半、次回後半戦! 果たしてバトルの結果は! そして光黄の勘違いの行方はどうなるのか(笑)
既に7月なので、作者も海に行きたいと思うこの頃。去年はいてないのでまた友達誘って海に行きたいものです。何ていう私語はされおき、続きの後半戦は近い内にすぐ更新するよう頑張りますので、何卒お待ちいただければと。
それでは次回もよろしくお願いします!