バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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第29話【過去と未来の絆】

男は夢を見る。

それはまだ年端もいかない子供の頃の記憶、彼には幼馴染の少女がいた。

 

バトスピを通じてその少女とはほぼ毎日遊ぶ日々を送り、何時からかだっただろうか、長い時間を過ごす内に何時の間にか自分はその少女の事が好きになっていた。

その少女の事を何時か守ってあげられるような強い男になりたいと、子供ながらにそんな事を考えていたのは今でも覚えている。だが、その夢は所詮子供の空想だと嫌でも思い知る事になる。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『……しっかりして! ねえ!!』

「……」

 

ある日の事だった。好きだった少女のカードが奪われ、取り返す為に犯人にバトルを挑んだのだが結果は無惨に惨敗。バトルフィールドでのダメージにとても立ち上がれず、自分を心配するように腕を掴み、涙ながらに必死に呼び掛ける。

 

「(……情けない)」

 

少女の姿に、そんな思いが浮かぶ。無論その思いは少女に対してではなく、自分自身に向けられたものであり、起き上がろうにも立ち上がる事さえ出来ない今の不甲斐ない自分に心底嫌悪感が募る。

彼女を守れるように強くなりたいと思いながらも実際には守る所か、こうして彼女を悲しませる羽目になってしまったのだ、それ程までに自分は弱いのだと、嫌でも自覚する他ない。

 

「(……必ず強くなる。もう、アイツを……二度とマチアを泣かせたりしねぇ)」

 

この日から、強さを手に入れる事、それは自分にとって空虚な夢ではなく、必ず果すべき決意へと変わる。たった一人の想い人さえ守れないなら自分に存在価値等必要ない、強さの為なら悪魔に魂を売ったって構わない。

 

自らを追い詰める程の執念と共に力を求めるようになる少年、そんな彼が最強の力を持つ七罪竜の伝説を聞きつけ、そして求めるようになるのはそれからすぐの事だった。

 

 

 

 

「お前が、七罪竜って奴なのか?」

 

とある森林地帯の真っ只中、その少年の視線の前には周囲に囲まれる大木の中、一際巨大な山、否、山と言う程に巨大な龍の姿。まさしくその龍こそ七罪竜の一角に他ならない。

 

『如何にも。怠惰を司りし七罪竜……名はエヴォルグランド』

 

非現実的とも思える巨大な龍の姿、だが実際に目の当たりにしてよく分かる。見ただけで感じる程の圧倒的な威圧と重圧感。一言、その龍が発するだけで空気が、その重圧からかピリピリと震える様な感覚がする程だ。

しかし、その龍を前にしても彼に恐れはない。寧ろ、目の前の龍こそが自分の求める力だと確信した。

 

「お前の噂を聞いた。どんな願いでも叶える程の力を持つ最強の龍……俺はそれを求めてここまで来たんだ」

『どんな願いでも叶える龍か、少しだけそこについて訂正があるが、今は置いといて、お主は何か叶えたい願いでもあるのか?』

「……別に」

『何じゃと?』

「願いなんざどうでもいい、俺はただ力が欲しい……誰に負けない程の強い力、強いて言うなら今はお前の力が俺は欲しい! 俺が願うのはそれだけだ!」

『他の願いは要らぬということか』

「あぁ」

 

目の前の龍の言葉に静かに頷く男、エヴォルは対面するその男をじっと見つめるが、男は微塵も動じる様子はなく、エヴォルはその瞳に宿る覚悟を垣間見た。

 

『(……ただの我欲では無い。何が理由で力を求めるかは知らないが、並大抵の覚悟でない事は確かじゃな)』

 

値踏みのようにまじまじと男に視線を向けるが、暫くして。

 

『一つ聞かしてくれ、お主は儂の力を手に入れて何をするつもりじゃ?』

「……何を、か」

 

意味深に呟いたかと思うと、また男はエヴォルを直視しながら、質問の答えを口にする。

 

「力で何かをしたい訳じゃない。ただ、弱い俺に存在価値はない、それだけだ」

『……』

 

並々ならぬ程の覚悟、嫌ある意味では狂信的とでも例えるべきだろうか。十分な程に伝わる覚悟だがしかし、エヴォルから見ればまだ少年とも思える様な彼が、そこまで自分を追い込む程の覚悟を持っていたのが、見ていて辛かった。

 

『(まだ子供に近いというのに何て顔じゃ……怠惰の罪故かのぅ、出来る事なら、お主の様な物には笑ってのんびりと平和に過ごしてほしいと思ってしまうわい)』

 

のんびり過ごしたいのは儂も同じじゃがの、と小声で苦笑するように呟くエヴォルだが、改めてその男の顔を見て、色々と思う所はあるもののそれでも目の前のまだ少年に彼の思いを無下にする事は当時のエヴォルにはどうしても出来なかった。

 

『……分かった。お主の力になろう』

「本当か!?」

 

要求に対して首を縦に振るエヴォルの言葉に、男の表情は少し晴れたように見える。

 

『……けど、その前に一つだけ言わしてくれ』

「!」

『お主が力を求めている事は分かった。だがな、力は強さではない。そういう意味では、儂の力は本当の強さには及ばないかもしれない』

「どういう意味だ?」

『今は分からんでもいい、だが何れ知って欲しい。本当の強さが何かを。儂は自分のパートナーが目に見える力だけを求めるようになって欲しくはないのじゃ』

「言ってる意味が分からねぇが、ともかく俺の力に成ってくれるんだよな?」

『……あぁ。だが、もし儂の期待が叶わぬようであればその時は……。努々忘れるでないぞ』

 

首を縦に振りながら重々しい言葉を残すが、男はまだエヴォルが言ったその言葉の意味を理解出来てはいなかった。

 

『最後にお主の名を教えてくれ』

 

エヴォルが男に向かって名を尋ねる。そして男は、ゆっくりと口を開きながら。

 

「ヴァン。俺の名は……ヴァンだ」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『そらァッ!』

 

一方で烈我達と今は別行動している星七と絵瑠はと言うと、絵瑠の方では舞台はバトルフィールドで、組織の団員らしき男に対しトドメの一撃を叩き込むシュオン。

 

「ぐわあああああッ!!」

 

バトルフィールドから無事帰還するシュオンと絵瑠。だが、二人共に息を切らし少し疲れが見える。

 

「はぁ……全くどれだけ相手にすればいいんだ!」

『まぁな。だが、ようやく終わりらしい』

 

シュオン達の目の前には倒れている大勢の団員。流石に遅れを取る事は無いが、多勢に無勢。連戦を余儀なくされ、かなり体力を削られてしまう。

とはいえ、今倒した相手が最後らしく、シュオンの言葉にほっと息を吐き、胸を撫で下ろす。

 

「良かった。だいぶ光黄達とは遅れてしまったし、早く追いつかないと」

『分かっている。こんな下っ端相手だけにグズグズしてられないからな』

 

先へ急ごうと足を進めようとする絵瑠だが、瞬間、何かの気配を感じ取ったように『待て!』と突如声を張り上げるシュオン。

 

「シュオン?」

『構えろ、まだ一人残ってる』

「!」

 

シュオンと言葉に息を整え、すぐさま集中するようにデッキを構える絵瑠。

 

「上等じゃないか! こうなったら何戦でもやってやる!!」

 

誰が相手だろうが関係ない、疲労を意にも解さず闘志を燃やす絵瑠、シュオンもまた気持ちは絵瑠と同じ。出て来るであろう相手に爪を構えるが。

 

「『えっ?』」

 

物陰から姿を見せるその人物に、シュオンも絵瑠も一瞬硬直した。強く抱いていた闘志が消える程、それ程に二人の前には異常な光景があった。

 

「な、何で……貴方が……!」

『どういう事だ、説明しろッ!!』

 

『…………』

 

絶句する絵瑠と対照的に声を荒げるシュオン、だが二人の疑問に対してその人物は何も答えずただ静かにデッキを構えて見せる。

 

「『!!』」

 

問答無用という事なのだろう、その人物の意図を二人は瞬時に理解した。言葉はなくとも、やるしかないと、無言の圧力は二人にそう意識させずにはいられなかった。

 

 

 

 

***

 

 

 

『この先じゃ、急ぐぞ!』

「はい、それにしても他の皆、烈我達は大丈夫でしょうか?」

『なぁに、バジュラ達もヤワではない、きっと勝つ。だからお主も今は自分自身のことに集中して気を引き締めよ』

「……はい! 勿論、そのつもりです!!」

 

一本道の通路を掛ける星七とエヴォルの二人。先へと進む中、通路の先に光が見え始め、そして通路を抜け。

 

「『!!』」

 

通路を抜けた瞬間、驚いたように足を止める星七達、そしてその相手もまた星七の姿に気付くと。

 

「エヴォル……!」

 

怠惰の七罪竜を前に顔を歪めながら歯噛みするヴァン、エヴォルもまた静かに彼の名を呼びながら星七と共に真っ直ぐ見据える。

 

「……一応聞いてやるが、何しにここまで来た?」

「そんなの決まってる! 組織の計画を、止める為です!!」

「へぇ、テメェは組織の、ルディアの目的を知ってんのか?」

 

星七の言葉に少し興味を引くように尋ねるヴァンだが、星七達は依然押して真剣な表情を崩さず言葉を続ける。

 

「ヘルさんから聞きました。罪狩猟団の、ルディアって人の目的はこの世界を壊す事だって!」

「……」

 

必死な表情で訴える星七だが、対照的にヴァンは顔色一つ変えずに。

 

「そんな事、端から知ってんだよ」

「!!?」

 

星七は知る由もないが、ディストが光黄達に語った様にヴァンもルディアの目的については以前から知っていた。にも関わらず、その目的を知った上で彼は帝騎としてその身を組織に置いていた。

 

『ヴァン、お主……! 分かっておるのか!! この世界を壊す等万が一それが実現されでもしたら、この世界に住む者達はどうなる!! お主だって……ッ!!』

「説教臭い口弁はやめろ」

『ッ! ヴァンッ!!』

「うるせぇ……俺だって……俺だって抗おうとしたんだよ!!」

『!』

 

感情を吐き出す様に声を荒らげ、その様子に思わずエヴォル達も口を紡いでしまう。

 

「けど、俺はルディアに負けた。ハイドカード、あの力を持ってしても俺はルディアに勝てなかった」

「!」

 

ハイドカード、その言葉に星七もエヴォルも反応するように顔色を変える。

 

「ハイドカード、元々あのカードを見つけたのはマチアだ。そいつの力があれば、俺はルディアに勝てると思ってた」

「今そのハイドカードはルディアって人も使ってた。って事は……!」

「あぁ、負けて奪われた。挙句マチアも奴等に捕まった」

「!!」

 

ヴァンから語られる事実に二人共に表情が険しくなる。ハイドカードの強さは実際に戦った二人がよく知っている。にも関わらず、それが通用しなかったという事はやはりルディアの強さは並大抵のものでは無い。

 

「アレがあれば勝てる、そんな淡い期待も裏切られた。もうあの化け物には勝てる気はしねぇ。俺は……そう思っちまった」

 

「それに」と言葉を続けながら、マチアの事が気掛かりな様に頭に浮かぶ。

 

「俺はもう、アイツに逆らう訳には行かねえんだよ」

 

実力差以上にもし今の自分がルディアに逆らえばどうなるか容易に想像が付く。だからこそ従う以外の選択肢は彼の中にはもうなかった。

今の状況に憤りを感じながら拳を握り締めるが、そのやり場のない怒りをぶつけるように鋭い視線を星七たちに向ける。

 

「話は以上だ。今の俺は罪狩猟団、帝騎としてテメェ等に挑む! 」

『ヴァン!』

「くどい! テメェ等は俺を倒して先に進むか、俺がテメェ等を倒してエヴォルを奪い取るか、ただそれだけだァッ!!」

「『ッ!』」

 

その目には強い覚悟が込められ、ヴァンの形相に二人はこのバトルが避けられないものであると確信した。

 

『星七……!』

「分かってます! この勝負は逃げられない……必ず、勝ちます!』

『あぁ。それと、ヴァンの目も覚まさせてやってくれ』

「!」

『頼む』

 

エヴォルが何かを頼むこと等これが初めてであろう。それに一瞬驚きながらもすぐに彼は笑顔を向けて首を縦に振る。

 

「はい! 僕に出来る事なら!!」

『ありがとう。それじゃあ行くとするかの!!』

 

重い腰を上げて笑うと、エヴォルはカードの状態となって星七の手に収まる。

 

「前と同じだと思うなよ。今回ばかりは……俺も負ける訳には行かねぇんだ!!」

 

互いに負けられないという強い意志と共にデッキを構える両者、そしてヴァンはデバイスを足元に投げ入れると、バトルフィールドへと二人を転送するように周囲を光が囲い込む。

 

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

バトル開始のコールと共に二人はバトルフィールドへと転送され、そしてバトルはヴァンの先行からで即座に開始されて行く。

 

 

 

 

────第1ターン、ヴァンside。

 

[Reserve]4個。

[Hand]5枚。

 

「俺のターン、天騎士ナミテントウを召喚!」

 

幕明けからフィールドに出現するエメラルド、宝玉が砕けると姿を見せたのは人型サイズのテントウ虫のようなスピリット。

 

「召喚時効果でボイドからコア1個をナミテントウ自身に追加! さらにデッキの上から4枚オープンし、その中に神託条件が「殻人」の創界神カードを手札に加える!」

 

ナミテントウは手に持った小さな矛を掲げると、頭上に展開されて行く4枚のカード、そしてオープンされその中に含まれる「創界神アレス」のカードにヴァンは口角を上げる。

 

「アレスの神託条件は「殻人」! よって手札に加えて残りはデッキ下! そしてナミテントウのコアを使い、手札に加えたアレスを即配置だ!」

 

無駄なく流れる様なプレイイング、ナミテントウの余剰コアをコストにアレスを場に配置すると、アレスの幻影が出現すると共に神託の効果を発揮させ、トラッシュに送られたカードは「凸騎士カブドルム」、「神速の勇者ソニックワスプ」、「甲殻騎士ラグマンティス」の3枚。

 

「神託対象は3枚、よってアレスにコアを追加してこれでターン終了だ」

「……1ターン目から、飛ばしてきますね」

 

全く隙の無いヴァンの戦い方に冷や汗が流れる。星七にとっては以前勝った相手とは言え、到底油断できない事を対面して強く身に感じていた。

 

「ほら、次はお前の番だ」

「……分かってます。僕だって、負けてられません!」

 

 

 

 

────第2ターン、星七side。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

 

「僕のターン、バーストセット。ソウルコアをコストにしてエイプウィップを召喚です!!」

 

人猿型のスピリット、エイプウィップ。出現と共に4本の腕によるハンドクラップを鳴らし始める。

 

「ボイドからコア1個を置き、ソウルコアをコストにしたことで、さらにトラッシュにコア2個を追加! そしてリザーブのコアを追加、創界神サラスヴァティーを配置」

 

アレスに対抗するように現れるサラスヴァティー、手に持つ三味線を奏で、味方を応援するように鼓舞して行き、配置時の神託により3枚のカードが破棄され、破棄されたカードは上から「跳獣ドロップロップ」、「ゴッドシーカーチンチラスト」、「英雄獣の爪牙」の3枚。

 

「神託対象2枚でサラスヴァティーに2コア追加。さらに「英雄の獣爪牙」は緑の効果でトラッシュに置かれる時に手札に加えられます!」

「エイプウィップに、サラスヴァティー。前回と同じ手か」

「……僕はこれでターンエンドです」

 

視察するヴァンの言動、それに対して星七は落ち着いた様子でターンをヴァンへと渡すが。

 

 

 

 

────第3ターン、ヴァンside。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

[Field]天騎士ナミテントウLv.1(1)BP3000、創界神アレスLv.1。

 

「緑仙星七、だったな」

「!」

 

突然名を呼ばれ、ピクッと反応するように顔を上げる。

 

「お前と初めて戦ったあの時、エヴォルは言った。お前は俺よりも強いと……俺もその時の言葉を認める」

「!!」

 

以前戦った際、星七としては高圧的な印象だったので、今のヴァンの一言は意外だった。

 

「どうして、そんな事を?」

「別に。ただの宣言だよ」

「宣言?」

 

復唱して尋ねる星七に、「あぁ」と相槌を返しながらヴァンは。

 

「テメェは強い……だから絶対に油断しねぇ。このバトル、最初から最後まで俺の、全身全霊を掻けて、お前を潰す!! これはその宣言だ!」

「!!」

 

声高らかに告げると、一気に動き出すように手札を構える。

 

「出て来い! 海の化け物ッ!! 異魔神ブレイヴ、海魔神を召喚ッ!!!」

「なっ!?」

 

突如フィールドに荒ぶる大波と共に姿を見せる異形なる存在、唸りを上げながら現れたのは、海魔神。

 

「召喚時効果、俺は手札にある異合と殻人を持つスピリットをそれぞれノーコストで召喚できる!」

「来るッ!!」

 

そんな星七の直感を肯定するように、海魔神に続いてさらに手札の二枚を手に掛ける。

 

「刺し穿てッ! 激流と暴風の槍ッ!! 三叉神獣トリアイナと蜂王フォンニードの二体を召喚だァッ!!」

 

維持コスト確保の為、ナミテントウは場から消滅すると、海魔神は両腕にそれぞれ蒼と翠の光を纏いながら腕を翳すと、フィールド状に発生する激流と旋風の渦、そしてその渦の中央から眼光を輝かせる二つの影。

 

────激流を引き裂き、トリアイナ

────旋風を掻き消し、フォンニード

 

同時に姿を見せる二体のXレア。

 

「そ、そんな!!? 」

 

まだターンを重ねて僅か数ターンだと言うのにフィールドに出揃う二体を前にし、流石に星七もその光景には動揺せずにはいられなかった。

 

「言った筈だ。全力で叩き潰すと! 出し惜しみはねぇぞ!!」

「(この人、前とはまるで違う。以前戦った時なんかより遥かに強い!)」

 

動揺する星七を見ても一切慢心する様はなく淡々と自分のバトルを続けて行くヴァン。以前のバトルよりも圧倒的な強くなっていると痛感した。

 

「トリアイナの召喚時効果、相手のコスト3以下のスピリット2体と最もコストの高いスピリットを破壊。よってエイプウィップを破壊だ!」

 

トリアイナは鳴き声を上げて立ち上がると、前脚を海面に強く叩付け、その衝撃が激流となってエイプウィップを飲み込み、破壊してしまう。

 

「エイプウィップ!!」

「次だ、さらにフォーンニードの召喚時効果でボイドからコア3個を追加!」

「こ、コアブーストまで!」

 

これがヴァンの本気、下手をすればこのターンで勝負を決められてしまうだろう。

 

「続けて、海魔神をトリアイナとフォンニードに合体。これでアタックステップだ!」

「!!」

 

海魔神は唸りながら翳した両腕から波動をトリアイナとフォンニードへ飛ばして己とリンクし、合体した二体はさらにその力を上昇。

 

「まずは、トリアイナ! お前からだ!!」

「!」

 

トリアイナは前屈みの体勢で足に力を籠めると、そのまま強く海面を蹴り上げて駆け出し星七へと突っ込む。

 

「アタック時効果でデッキの上から5枚破棄だ!」

 

頭部にバチバチと電撃を迸らせ、それを星七へと撃ち放つと5枚のカードがデッキの上から吹き飛ばされる。

 

「トリアイナの効果! 破棄したカードの中にあるスピリットカード3枚につき、1コアをこのスピリットに追加する!」

 

破棄されたカードは「英雄獣の爪牙」、「リミテッドバリア」、「エイプウィップ」、「乙の跳獣ドロップロップ」、「音獣エイトーンラビット」。

破棄した内に含まれるスピリットカードは3枚、よってトリアイナにコア1つが追加される。

 

「ら、ライフで受けます!」

「トリアイナはダブルシンボル、ライフを二つ破壊だ!」

 

トリアイナの突進がバリアへと炸裂し、一気にライフが破壊される。

 

「うわああああッ!!」

 

衝撃によって大きく吹き飛ばされる星七、次は自分の番だと矛を突き構えるフォンニードだが。

 

「ライフ減少時で、バースト発動!」

「!」

 

ライフを砕かれながらも踏み止まり伏せたバーストを宣言し、弾け飛ぶそのカードを手に取る。

 

「大跳獣フレミッシュベース! Lv.2でバースト召喚ッ!」

 

脚部に装着された推進機を噴き上げながらフィールドへと飛来する影、翠の鎧を身に纏うスピリット、フレミッシュベースの登場である。

 

「召喚時効果発動! 疲労状態の相手スピリットをデッキの下に!」

「ッ!!」

 

鳴き声を上げて今一度推進機を点火させると、攻撃を終えたトリアイナに距離を詰め、背を向けたかと思うと次の瞬間、強烈な後ろ蹴りをトリアイナへと御見舞。

大きな巨躯が宙へと蹴り上げられ、そのままデッキのボトムへと吹っ飛ばされる。

 

「……チッ、ターンエンド」

 

軽く舌打ちながらターンエンドのコール。フレミッシュベースのLv.2のBPは16000。海魔神と合体しているフォンニードを上回る為、当然と言えば当然の選択だ。

 

「(危なかった、もしバーストを伏せてなかったら確実にやられてた……!)」

 

現在の星七の残りライフは3、そしてフォンニードには相手ライフを減らした際に回復する効果を持ち合わせている。

もし自分に防御札が無ければ間違いなくここで終っていたと、思わず冷汗が流れる中、次は星七へとターンが移る。

 

 

 

 

────第4ターン、星七side。

 

[Reserve]7個。

[Hand]4枚。

[Field]大跳獣フレミッシュベースLv.2(3)BP16000、創界神サラスヴァティーLv.1

 

「メインステップ……ッ!!」

 

ここまでは完全にヴァンに押され気味の星七だが、決して彼も負けてるままではいられない。引いたカードを力強く構えて、そして叫ぶ。

 

「数万年の時より生きし伝説! 怠惰なる龍! あらゆる環境、困難さえも己が進化する糧としろ!! 超樹進龍エヴォルグランド、召喚ッ!!」

 

巨大な山が隆起し始めたかと思うと、その真の姿は山の様に巨大な体を誇るエヴォルグランド、地響き程の唸りを上げながらヴァンの前に立ち塞がる。

 

「エヴォル……ッ!」

 

かつてのパートナーの姿、それに何を想うかエヴォルの姿に静かに声を上げるヴァン。

 

『さぁ星七、此処から逆転と行くかのぅ?』

「……はい、そうしたい所ですけど」

 

歯切れの悪い返事。エヴォルの言う通り場を整え、次はそのままアタック、と行きたい所だがヴァンの場に配置されてあるアレスを前に攻撃を躊躇ってしまう。

 

「(フレミッシュベースのBPは16000、単純なBP比べならフォンニードを越えてる。けど、アレスの神技は確か疲労状態のスピリットかアルティメットを手札に戻す効果)」

 

アレスの効果は疲労状態の相手を手札に戻す効果、その効果は例えエヴォルの進化であっても防げず、今相手のフォンニードを前に自身の場を手薄にする訳には行かない。

 

「ターンエンド」

「ハッ、やっぱり無闇に動けはしねぇか」

「ッ!!」

 

 

 

 

────第5ターン、ヴァンside。

 

[Reserve]7個。

[Hand]3枚。

[Field]蜂王フォンニード×海魔神Lv.2(4)BP15000、創界神アレスLv.2

 

「エヴォル、テメェとは色々あった……だけど今更ここで問答する気はねぇ」

『……』

「とりあえず俺は前の借りを変えさえてもらうだけだ。テメェと、テメェの相棒にな……ッ!!」

「『!』」

 

強く睨むように言い放つヴァンに間違いなく何かが来ることを予感させた。そして予想通り、ヴァンは手札の一枚を構え始め。

 

「出て来やがれッ! 闘い求める繚乱の刃! 轟牙を誇るその刃で、有象無象を錆へと帰せろッ!! 召喚、剣双鬼刃・我王牙ァッ!!」

 

天へと昇る強大な竜巻、それが空へと繋がると竜巻の一本道からフィールドへと舞い降りる緑の影、赤く光る眼光を剥き出しに刃を構えると、周囲を囲む竜巻を跡形もなく切り伏せると、巨大な刃を掲げ、鬼の様な面を被る悪鬼羅刹、ハイドカードの一角を担う我王牙の姿である。

 

「召喚時効果、俺のスピリット1体を指定、そのスピリットのレベルが1つ上になる様にコアを置ける。我王牙自身を指定、よってLv.2にアップだ!」

 

刃を構えながら自身の力を上昇させ、我王牙から放たれるその殺気と威圧感はエヴォルと同等かそれ以上にも感じられた。

 

「これが、ハイドカード!」

 

まだ星七にとって、ハイドカードと戦うのはこれが初めて。圧倒的な我王牙の姿にゴクリと、息を呑む。

 

『星七、恐れるな! どんな相手だろうと、お前なら勝つと儂は信じておるぞ』

「エヴォル、ありがとう! 必ず、勝ちます!!」

 

 

 

 

─────第6ターン、星七side

 

[Reserve]6個。

[Hand]4枚。

[Field]超樹進龍エヴォルグランドLv.2(3)BP15000、大跳獣フレミッシュベースLv.2(3)BP16000、創界神サラスヴァティーLv.1

 

「……メインステップ、マジックで双翼乱舞を使用します! 効果でデッキから2枚ドロー! ……僕はこれでターンエンドです」

 

手札を増やすも引いたカードではまだ状況を好転させるには至らない。このターンもアレスの効果を警戒してか、迂闊には動けずそのままターンシークエンスを終える。

 

「ハッ、必ず勝つって言った割には何もしねえ。そんなザマでまだ勝てると? それとも、俺の実力を過小評価してんのか?」

 

鋭く睨むように放つ一言、その殺気に一瞬肩を震わせて反応しながらも気圧されないよう星七もまた真剣な表情をヴァンへと向ける。

 

「貴方は強いです、それは分かってます。それでも……僕は勝ちたい!! 勝って、貴方に! エヴォルに相応しいパートナーだって胸張って言える程僕は強くなりたいんです!!」

「!!」

 

力強くヴァンに対して言い返して見せる星七にエヴォルは笑って見せる。

 

『よく言った星七! お主の想い、何としても儂も応えて見せよう!』

 

「……随分と、お気楽なもんだな」

「何?」

 

エヴォル達の様子に何処か気に入らないように一言零し、その言葉に突っかかる星七だが今の彼の視線はエヴォルへと向けられたまま言葉を続ける。

 

「どれだけお前らが淡い期待をした所で無駄な徒労だ。立派な決意を抱こうが、どれ程の覚悟を持とうが全て否定される、それが絶望ってもんだ!」

「……ッ!」

 

『ヴァン、お主そこまで……!』

 

「俺は忠告した筈だぜ、どう足掻こうがルディアには勝てねえ……嫌、お前らのコンビ程度じゃ、俺にすらな!!」

「!」

 

 

 

 

────第7ターン、ヴァンside。

 

[Reserve]7個。

[Hand]3枚。

[Field]蜂王フォンニード×海魔神Lv.2(4)BP15000、剣双鬼刃・我王牙Lv.2(4)BP10000、創界神アレスLv.2

 

「俺のターン! 軍神によって生まれし神の化神、堅殻の鎧で全てを跳ね除け、斬刃の一撃を刻め!! 殻神騎士ナイトオブグラディウス、召喚ッ!」

「!!」

 

メインステップ開始と同時に呼び出されるもう一体の主力カード。ハイドカードに加え、まさに圧巻の後継。

 

「そのスピリットは……!」

 

ナイトオブグラディウス、その姿を前に何かを察したような反応を示すが、時既に遅し。「手遅れだ」と一言添えながら。

 

「ナイトオブグラディウスを海魔神と合体! さらにアタックステップ!」

「ッ!」

「アレスの【神技】の効果発揮! 系統「殼人」を持つスピリット2体で攻撃できる! フォンニード、ナイトオブグラディウス行けッ!!」

 

アタックステップを開始と同時にフィールドを駆けるフォンニードとナイトオブグラディウス。アタックによりそれぞれ自らのアタック時効果を発動させ、フォンニードのアタック時効果は星七のスピリットには通用しないもの……。

 

「ナイトオブグラディウス、効果発揮! 【界放】の効果でフレミッシュベース、そして……エヴォルグランドを重疲労させるッ!!」

『ぐッ!!』

「解放の効果はアルティメットだろうが対象だ! 逃げ場はねえぞ!!」

「!」

 

幾らエヴォルの持つ【進化】の効果を使おうともナイトオブグラディウスの効果を防ぐ事は出来ない。

ナイトオブグラディウスはその場で立ち止まり、手に持つ二双の刃を交差させるように振り翳すとその衝撃は豪嵐を巻き起こし、吹き荒れる旋風にフレミッシュベースとエヴォルの二体は地面に突っ伏してしまう。

 

「エヴォル!!」

「オイ、そっちに気を取られてる場合か?」

「!」

「ナイトオブグラディウスの効果はまだ続いてる、アレスのコア2個をナイトオブグラディウスに置く事で、疲労したスピリット一体につき、相手のライフ一つをリザーブに送る!」

 

アレスからコアを受け取るとナイトオブグラディウスはさらに星七に向けて二双の刃を投げつけ、円を描きながら展開されるライフへと飛び交い、バリアを引き裂き破壊する。

 

「うわあああッ!!」

『星七ッ!』

 

余りに強い衝撃に吹き飛び、気遣うように声を上げるエヴォル。その様子を眺めつつも無情なまでに「やれ!」とナイトオブグラディウスとフォンニードへ指示を送るように手を振り下ろす。

 

「テメェのライフは残り1つ! 終いだッ!!」

『!』

 

ブーメランのように戻る刃を手に取ると、フォンニードと並び我先にと言わんばかりに星七へと向かう二体。

 

「……まだ、終わってません!」

 

しかし、迫り来る二体に対してまだ星七は闘志を失っていないように声を張り上げて見せたかと思うと、突如としてフィールドに巻き起こる豪風。

 

「何だこれは!?」

「僕のライフが減った時、自分のライフが3以下なら手札にあるこのカードを使用出来る! マジック! 真空爪破斬!!」

「何だとッ!!?」

「効果で疲労状態のスピリット2体をデッキの下に送ります!!」

 

吹き荒れる豪風に、フォンニードとナイトオブグラディウスは思わずその足を止め、何とかその場に踏み留まろうと堪えるが、風はさらに激しく吹き荒れると、二体の体が宙へと浮かび、そのままデッキボトムへと吹き飛ばされる。

 

「!!」

『流石じゃ! 見事なカウンターじゃ!」

「ッ! いい気になってんじゃねぇッ! まだ俺には、我王牙が残ってる!」

 

星七のライフはたった一つ、我王牙は刃を掲げて残る一つを奪い取るべく星七へと向けてゆっくりと歩を進めて行く。

 

「どの道無駄な足搔きだったな! 我王牙、止めを刺せッ!!」

「させません!! 僕はまだ、こんな所で負けてられないッ!! フラッシュで手札のこのカードの効果を発動! 神速封印ッ!!」

「!?」

 

強く声高らかに叫ぶと、手札の一枚を掲げ。

 

「神速の跳速跳弾ッ! 兎の十二神皇ミストラルビット! リザーブのソウルコアをライフに移し、そして召喚ッ!!!」

 

ソウルコアの赤い輝きがライフへ灯ると共に、フィールドへと旋風を巻き上げながら出現する緑の閃光。やや小さい体躯ながら、縦横無尽にフィールドを飛び駆け抜けるその正体こそ、兎の十二神皇ミストラルビット。

 

「まだ、こんなスピリットを!?」

「アタックは、ミストラルビットでブロックです!!」

 

閃光の如く現れるなり進撃する我王牙の前に一瞬で距離を詰めると、腕を向け、ミストラルビットの腕に装着されていたパーツが分離し始めたかと思うと、それは無線誘導兵器たるビットとして、我王牙にビーム砲の銃口が向けられる。

 

「ッ!!」

「ミストラルビットの封印時の効果! 【跳躍】! ブロック時で疲労状態の相手スピリットを戻す事で相手ライフをリザーブに送り、コアブースト!!」

 

左右それぞれ我王牙を射程に捉えた二機のビットは、ビーム砲を我王牙へと撃ち放ち、避けられぬ攻撃に我王牙は手札へと戻される

 

 

 

 

──かに、思えたが。

 

ビットからビームが放たれた瞬間、ヴァンは静かに口角を上げると、突如我王牙の目の前に巨大な大樹が聳え立ち、ビットによる攻撃を出現した大樹がシャットアウトしてしまう。

 

「!!?」

「我王牙の効果、フィールドのコア3個をトラッシュに送る事で、このスピリットを対象にした効果を無効にする!」

 

そのまま我王牙は目の前の大樹を切り倒すと衝撃がビットを吹き飛ばし、目の前の獲物であるミストラルビットへと視野を向ける。

対してミストラルビットは迎え撃つ構えを見せるように回収したビットを腕に填め、エネルギーを収束させた粒子の刃を我王牙へと向ける。

 

「例え【跳躍】の効果が聞かなくても、ミストラルビットのBPは12000、我王牙を倒せます!」

「ハッ、倒すだと? エヴォル以上の力を持つ此奴をか!!」

「!?」

「我王牙の効果発揮!!」

 

両腕で粒子の刃を我王牙へと振り下ろし、片腕に握られた剣で粒子の刃を受け止め、もう一方の剣を敵にしているミストラルビットではなく、海魔神へと差し向ける。

 

「一体何を!?」」

 

「見ていろ、これが我王牙の真骨頂だ! 海魔神を喰らえッ! 我王牙ッ!!」

 

我王牙はそのまま躊躇なく味方である筈の海魔神に剣を突き立てると、海魔神は悲鳴を上げながら爆散し、四散したその身は光となって我王牙の剣へと取り込まれる。

 

「我王牙は相手とのバトル中、自分のスピリットを破壊する事で破壊したスピリットのBPを加算できる! これで、我王牙のBPは15000!」

「そんな!?」

 

ミストラルビットのBPを上回って見せると、我王牙は雄叫びを上げてもう片方の剣を振り上げ、ミストラルビットを弾き飛ばし、弾き飛ばされ吹っ飛ぶミストラルビットに追い討ちをかけるように我王牙は大きく飛び上がり、二刀の剣をミストラルビットへと突き出す。

 

ミストラルビットは再び両腕のビットを射出し、飛び込む我王牙にビームを撃ち放つが我王牙は両手の剣を振り下ろし、ビームごとビットを同時に引き裂いて大破させると、そのまま爆炎の中へと飛び込み、爆風を突っ切り、その先のミストラルビットに向けて、二刀の剣を突き出してその身を貫く。

 

「そんな、ミストラルビットが……!」

「驚く間はねぇぞ。バトル終了時、我王牙は回復!」

「!」

 

ミストラルビットを貫き、巻き起こる大爆発、炎に包まれる中、爆風が晴れ、その場に悠然と姿を見せる我王牙。

 

「さぁ、もう一度行けッ! 我王牙ッ!!」

『星七ッ!!』

「ッ!!」

 

ゆっくりと駆け出しながら、二刀の刃を掲げて突き進む我王牙、剣を構えるその眼前が捕えるは星七唯一人。

 

「以前の借り、今日ここで返してやる……ッ! そしてエヴォル!!」

『!』

「テメェが本当の強さ、そんなもの俺にはどうだっていい。俺にはただ、アイツを……たった一人守れるだけの力が有ればいい!!」

『ヴァン、お前……!!』

「このバトルはその証明だ。テメェを超えて、俺にはその強さがあるって証明してやる!!!」

 

エヴォルに対し、今は何を想うのか。静かに己の感情を吐き出すように声を荒げ、そしてそのヴァンの指示に従う我王牙はそのまま星七の目の前まで迫ると、我王牙は剣を構え、二刀の凶刃を星七へと振り下ろす。

 

 

 

 




どうもブラストでございます!!!
本日第29話、ようやく公開出来ました!!

今回は星七VSヴァン!!
ヴァンにとってはリベンジになる回!!
果たして勝利の女神牙保吠えるのはどちらでしょうか。今回は前半戦!!

次回の後半戦是非とも楽しみに見ていただければと思います。
更新スピード遅いので、上げねば(戒め


次回第30話『両雄死闘 剣双鬼神vs樹進超龍』

お楽しみに!!
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