「我王牙! 殺れぇッ!!」
星七に一撃を下すべく突っ込む我王牙、その迫力に一瞬気圧されそうになりながらも、星七は正面からその姿を見つめ。
「僕だって、負ける訳には行かないんだ! ヘ音獣リスクレフを音速召喚!」
「!」
「我王牙をブロック!」
颯爽と姿見せる小動物の姿を模したリスクレフ、我王牙の目の前に現れるは否や果敢に飛び掛かるが、力の差は歴然。我王牙は剣を盾の様に突き出し、リスクレフを弾き飛ばし、リスクレフはそのまま光となって四散する。
「ターンエンド」
「(ふぅー、何とか凌いだ。けど……!)」
次は星七のターン。だが今星七の場に残っているフレミッシュベースとエヴォルグランドはまだ重疲労状態。例え自分のターンを進めても疲労状態のまま、打つ手が無ければ二体はまだ動く術すらない。
────第8ターン、星七side。
「(ともかく、何とか態勢を立て直さないと……!)」
[Reserve]8個。
[Hand]4枚。
[Field]超樹進龍エヴォルグランドLv.2(3)BP15000、大跳獣フレミッシュベースLv.2(3)BP16000、創界神サラスヴァティーLv.2。
「メインステップ! 手札から大神剣アラマンディーをサラスヴァティーに直接合体!」
天を裂いて降り注ぐ大剣、アラマンディー。目の前に突き刺さったアラマンディー。サラスヴァティーはそれを引き抜いてヴァン達へと向けながら構えて見せる。
「神話を持つブレイヴの召喚でサラスヴァティーに神託! そしてもう一体、行きますよ! 女神より生み出されし蒼白の獣! 美麗なるその姿をいざ現せッ! 神聖天中獣ガーヤトリーフォックス、Lv.2で召喚ッ!」
激昂の輝きと共にフィールドへと降り立つ神獣────ガーヤトリーフォックス。
「召喚時効果、【界放】! インディーダを持つ創界神にコア2つを追加できる! 神託と合わせて合計コア3個をサラスヴァティーに追加!」
「!」
「まだですよ、さらにサラスヴァティーのコア1個をガーヤトリーフォックスに置く事で相手はこのターン、バースト効果を発揮できない!」
「フン、端からバーストは伏せてねぇよ」
「分かってますよ! だから続けて行きます! アラマンディーを今度はガーヤトリーフォックスに
バトンを繋ぐかのようにサラスヴァティーは手に持ったアラマンディーを自らの化神であるガーヤトリーフォックスに投げ渡すと、アラマンディーを咥えながら唸りを上げる。
「アタックステップです! ガーヤトリーフォックスでアタック! アタック時効果、BP10000以下の相手スピリットを破壊して1枚ドロー! 破壊対象は我王牙です!」
咥えた刃をそのまま我王牙に向かって振り下ろすが、我王牙は手に持つ剣を地面に突き刺すと、目の前に再び巨大な大樹が芽吹き始める。
「忘れたか? 我王牙を対象にした効果はフィールドのコア3個を払う事で無効にできる! 我王牙上のコア3個をトラッシュに送り、破壊は無効だ!」
突き出た大樹が振り下ろすガーヤトリーフォックスの攻撃を遮断し、弾かれてしまう。
「ッ! ガーヤトリーフォックスの効果はそれだけじゃないです! アタック時でサラスヴァティーと自分自身にコア1つずつを追加! そしてメインのアタック!!」
「甘ぇよ! アレスッ!!」
ヴァンの叫びに応えるかのように、アレスが腕を振るうとガーヤトリーフォックスに吹き荒れる逆風。
「【神技】の効果! アレスのコア3個をボイドに送る事で相手スピリット、アルティメットを手札に戻す。当然対象はガーヤトリーフォックス! 失せろッ!!」
アレスが巻き起こす風に抗えず、ガーヤトリーフォックスはそのままフィールド外へと吹き飛ばされ、星七の手札へと戻る。
「ぐッ! アラマンディーは残さず手札に戻します」
サラスヴァティーの効果はあくまでバトル終了時にバトルした遊精を回復させる効果。フィールド外に追いやられてしまえば、その効果は全く意味を為さない。
『(まずいな。此処まで防戦一方。ヴァンのライフはまだ5つ。反撃にすら転じられん)』
攻撃も防御も完璧な布陣。誰の目からも見ても圧倒的星七の不利な状況にエヴォルは苦虫を噛み潰したように表情を険しくさせるが、それでも。
「エヴォル、まだ僕は戦えます!」
『!』
「だから心配しないでください、僕は……絶対、勝ちます!」
『星七……!』
「ハッ、この状況でもまだそんな強がりが言えんのか?」
星七の様子に挑発気味に言葉を投げかけるヴァンだが、星七は表情を崩さず真っ直ぐヴァンを見ながら。
「いえ、強がりなんかじゃない。まだ僕にはライフが残ってるし、エヴォルだっている……だから、絶対に諦めない!!」
『!』
ヴァンに対して強く言い放つ星七、それはエヴォルが初めて会った時のひ弱な少年の姿ではなかった。
『星七、言うようになったな。儂が思ってた以上にお主は強くなっておる』
「エヴォル?」
『こっちの話じゃ。それよりお主がまだ勝つと信じておるのなら、儂もまた! 最後までこの勝負諦めぬぞ!』
「はい、ありがとう! エヴォル!!」
「どこまでも生温ぃ……ドレイクだったなら、腸煮え繰り返すんだろうな」
「『!!』」
二人の様子に静かに呟くヴァン。
「別に俺は、お前等がどんな期待を抱こうがそれを否定するつもりはない。けどなぁ、どれだけ期待を持ったとしてもどうにもならない時はどうにもならねぇんだよ」
「それでも、何もやらずに諦めたら本当にそれまでじゃないですか」
「……かもな。けど、抗うだけ抗ってそれでもどうにもならなかった時こそ、絶望が深いと思わねぇか?」
「ッ!」
「俺はそうだったぜ。抗って抗って……それでもどうしようもなかったんだ。だからよ、テメェ等がどこまでも淡い期待を抱くって言うなら、俺が……その絶望を教えてやるよ!」
「!」
続くヴァンのターン、まるで殺気を込めるかのような凶相。場の空気が一気に変わり自分を強く睨むその表情に一瞬戦慄が走る。
────第9ターン、ヴァンside。
[Reserve]17個。
[Hand]3枚。
[Field]剣双鬼神・我王牙Lv.1(1)BP6000、創界神アレスLv.1
「行くぞ! 我王牙をLv.2にアップし、もう一体神速の勇者ソニックワスプLv.3を召喚! 召喚時効果、スピリットを指定し、互いのトラッシュから指定した種類を全て除外する!」
「!」
ソニックワスプは両腕を翳すと、そのまま互いのトラッシュにあるカードは除外される。
「アレスに神託。さらにマジック! バグズリバース! 効果で俺の手札を全て破棄し、相手の同じ枚数ドロー!」
「!」
現在星七の手札は合計で5枚、それと同じ枚数のカードがヴァンの手札へと加わる。
「まだだ、甲殻剣士ラミニフェンサーLv.2で召喚! 再びアレスに神託!」
ソニックワスプとラミニフェンサーはそれぞれ尖兵のように我王牙の前に立ち、特攻を仕掛ける様に構え始める。
「アタックステップ! アレスの【神域】効果、ラミニフェンサーとソニックワスプで同時にアタックだ!!」
アタック時効果でソニックワスプにボイドからコア1つが追加され、そして一気に星七へと迫って行くラミニフェンサーとソニックワスプ。
「テメェにブロッカーはねぇ。決まればゲームエンドだッ!」
「ッ!!」
二体の攻撃を止めるスピリットはなくそのまま止めを刺すべくラミニフェンサーは剣を、ソニックワスプは大きく構えて蹴り掛かるが。
「フラッシュタイミング! マジック、リミテッドバリアを使用します!」
「!」
「効果でこのターン、コスト4以上のアタックでは自分のライフは減らない!」
星七のライフに覆い重なる白き巨大な盾、コスト3であるソニックワスプは対象外である為、大盾を擦り抜けるがラミニフェンサーは盾の前に弾かれてしまう。
「このターン、僕のライフを削れるのはソニックワスプだけ。ラミニフェンサーと我王牙じゃライフは削れません!」
「ハッ、しゃらくせぇッ! その程度で防いだつもりか!!」
「!」
ヴァンの攻撃はまだ終わらない、奥の手と言わんばかりに手札の一枚を構える。
「もうテメェに選択肢はねぇ、これで終れッ!」
「!!?」
「俺のアタックステップ時、手札のフラッシュ使用時、その効果発揮前にこのスピリットを召喚できる! テメェのリミテッドバリアを無効にしてな!」
「!!」
「さぁ出ろ! 歴戦戦士ドルクエヴィデンスをノーコストで召喚!!」
突如として襲来するドルクエヴィデンス、腰に差した太刀を抜き取り、ラミニフェンサーたちの目の前に展開されている大盾を一閃、真っ二つに引き裂いてリミテッドバリアの効果を掻き消してしまう。
「……!」
「足搔いてもどうしようもねぇ絶望ってのはこういうこった。少しは俺の気も知れたかよォ?」
最期に星七に投げかけるヴァンの言葉、これで勝負はあったと誰もが思う。もはや星七も返す言葉がないのか、その表情は俯いていた。
「……」
「どうやら勝負は見えたな。エヴォル、テメェも悪く思うなよ?」
『……あぁ、正々堂々行ったバトルの結果なら、儂は文句はない……じゃが』
ヴァンの問いに対して、エヴォルは言葉を続けたかと思うと。
『星七はさっき言うた筈じゃ。必ず勝つと、そして儂はそれを信じた、だからこそライフが0になるまでは絶対に諦めんぞ!』
「!!」
エヴォルの叫び、それに星七もまた同調するかのように俯いていた顔を上げると、手札を引き抜きながら。
「フラッシュタイミング! マジック、ブリザードウォール! 不足コストはエヴォルグランドとフレミッシュベースから確保し、フレミッシュベースは消滅!」
「なッ!?」
二枚目のフラッシュ、流石にそれは予想外だったのかヴァンの口から動揺を隠せない声が漏れる。そのままマジックの効果が発動され、吹き荒れる猛吹雪にラミニフェンサーとソニックワスプの足が止まりかけるも、力を込めて一歩踏み出し、そのままラミニフェンサーは剣を、ソニックワスプは飛び蹴りをそれぞれ繰り出し同時にバリアに直撃するが砕ける星七のライフは1つのみ。
「ぐッ!!」
ライフが砕ける重い衝撃に表情を歪めながら、それでも強く意思を見せるように踏み留まる。
「ッ! ブリザードウォールの効果は確か……!」
「はい、ブロックされたなかったスピリットのアタックじゃ、ライフは1つしか減らない。例えアレスの二体同時の攻撃でも、ライフは1つしか減らされません!!」
「お前……俺の、手を読んでやがったのか……!!」
ヴァンの言葉に対し、静かに星七は笑顔で返しそれが肯定と受け取るには充分だった。
「ヴァンさん、さっきあなたは言いましたよね。抗うだけ抗ってそれでもどうにもならなかった時こそ、絶望が深いって」
「……それがどうしたよ?」
「確かにどれだけ努力してもヴァンさんが言う様にどうしようもないときはどうしようもないかもしれません。どれだけ足搔いても無駄な徒労に終わる事だってあるかもしれない」
「……」
「けど、絶望を理由に僕は足搔く事を、努力することを諦めたくはない!」
「何!?」
「一度足搔いてそれが駄目だったとしても、もう一度足搔く。何もできなくなるまで足搔き続ける。一度駄目だったなら次で成功すればいい! それでも駄目なら三回目で、上手く行くまで、努力して良かったと思えるまで僕はずっと足搔き続けます!!」
「努力して良かったと思えるまで、足搔き続けるだと……そんな事……ッ!!」
できる訳がない、そう言葉にしようとヴァンは口を開くが、ヴァンがその言葉を発する前に星七は首を縦に振りながら「そうかもしれません」と話を続けて行く。
「僕は、エヴォルに出会う前までは虚弱で何もできない奴でした。けど、それが嫌だと僕は抗って、エヴォルに出会って、烈我達に会ってここまで変わる事が出来たんです!」
「!!」
「一人だったら僕はとっくに挫折してたと思います。でも、今はもう一人じゃない。支えてくれる仲間や友達がいる。どんなに辛くても立ち上がれる勇気をくれる! だから僕は最後まで努力し続けられます! そしてその努力を無駄にしたくないから、必ず勝って先へ進むんです!」
強い意志を込めての主張、それに対し反論する言葉を静かに飲み込むしかなかった。例え自分がどう反論した所で、星七は決して自分の主張を曲げないと理解したからであった。
「…………」
(『何れ知って欲しい。本当の強さが何かを』)
かつてエヴォルに言われた言葉が脳裏を過る。
「(エヴォル……テメェが言ってた本当の強さ、ようやく理解できたよ)」
目の前の星七の様子に何を想うか、エヴォルと目線を合わせながら静かに息を零す。
「(俺は、ずっと、目の前の壁を打ち破れる事が強さだと思ってた。けど違った、お前が言いたかったのは壁を破れる人間じゃなく、目の前の壁に挑み続けられる人間だって事だったんだろ)」
険しい壁の前にこれ以上打ち破ることはできないと自分はそこで道を諦めた。けど目の前の彼は違う。自分が諦めた壁を前にしても決して折れる事は無く、何度でも挑み続ける。
ありきたりな言葉であり、口にするのは簡単だろう。それでも、それが自分にはない強さであると分かってしまった。
「……エヴォル、結局お前の言う通りだったって訳かよ」
『何の話じゃ?』
「フン、こっちの話だよ。それより……!」
エヴォルから視線を外し、再び真っ直ぐ星七と目線を合わせ星七の表情にヴァンは静かに口元を緩ませる。
「エヴォルがお前を認めた理由、ようやく理解できたよ」
「!」
「だがなァ! それでも俺は負けてやるつもりも、負けるつもりもねぇッ!! テメェの言う努力って奴を俺に見せてみろッ!! その努力とやらで、俺を超えれるもんなら超えて見せろッ!!」
「……はいッ!」
ヴァンの叫びに対し、星七も声高らかに答える。もはや言葉は不要だった。
「バトル終了時、ソニックワスプは俺の手札に戻す。これでターン終了だ」
ヴァンもまた覚悟を決めるように前を向き、そして迎える星七のターン、勝負の行方はこのターンに掛かっている、それだけは確かだった。
────第10ターン、星七side。
[Reserve]15個。
[Hand]4枚。
[Field]超樹進龍エヴォルグランドLv.2(3)BP15000、大神剣アラマンディーLv.1(1)BP5000、創界神サラスヴァティーLv.2。
『さぁ儂の罪は怠惰じゃが、休憩はもう終わりじゃ! なんせ勝ちに行くんじゃからのぅ!!』
ようやく疲労状態から解き放たれ、勇ましく咆哮を上げて立ち上がる。
「行きます! メインステップ開始時の効果! エヴォルに系統「遊精」を追加! さらに場のアラマンディーをサラスヴァティーに直接合体し、ガーヤトリーフォックスをLv.2で再召喚!!」
手札に戻されたキースピリットを再び場に呼び出すと、ガーヤトリーフォックスの【界放】の効果で再びサラスヴァティーにコアが追加されていき、サラスヴァティーのコアの1つがガーヤトリーフォックスへと託される。
「(これで今サラスヴァティーのコアは合計9個。狙いは当然連続アタックか)」
「まだですよ、アラマンディーの効果! 創界神との合体時、このネクサスのシンボルを全色として扱える! そして、マジック! フォースブライトドローを使用します!」
「!」
「効果で手札が4枚になるよう、デッキから3枚ドロー!」
宣言と共にカードを引き抜くと、「来たッ!」と待ち望んでいた一枚を引き当てたように口角を上げる。
「ネクサス! 侵されざる聖域を使用します!!」
「なっ!? 白のネクサスだと!?」
瞬間、星七のフィールドに配置されるは氷華に包まれし聖域、西域から差し込むその光はエヴォルグランドは照らしていく。
「コスト8以上の自分のスピリット全てに【装甲:紫/緑/白/黄/青】を与える! これでもうアレスの効果はエヴォルには効きません!!」
「対策は十全って訳か!」
「はい! 行きますよ!! さらに大神剣アラマンディーをエヴォルグランドに合体!」
今度はガーヤトリーフォックスではなく、エヴォルグランドに神剣を託すと、エヴォルの身体に合わせアラマンディーはその名の通り巨大な大剣へと変化すると、その巨大な神剣を咥え取り、合体スピリットとなって咆哮。
「アタックステップ! エヴォル行きますよ!!」
『おぉ!!』
「エヴォルグランドで、アタック! アタック時効果、ドルクエヴィデンスを破壊!!」
咥えた大剣を地面に叩きつけると、衝撃に大地より炎が噴き上げ、その炎はドルクエヴィデンスを飲み込み破壊されてしまう。
「我王牙は自分自身に対しての効果を無効化するだけ。我王牙以外に対してなら防げない!」
「だからどうした、俺にはまだブロッカーも残ってる! フラッシュ、ソニックワスプをLv.3で神速召喚!」
「!」
「召喚時の効果で今度はマジックを指定。互いのトラッシュから指定した種類を破棄!!」
再び颯爽とフィールドへ飛来するソニックワスプ、その召喚時効果によりまた互いのトラッシュからカードを除外するが。
「無駄です! フラッシュ!!
「!!」
「ソニックワスプを重疲労させます!」
獣が爪を振り下ろすような風がソニックワスプへと吹き荒れ、その風はソニックワスプを地面へと叩き落し、その場から身動きが取れなくなってしまう。
「これで残るは我王牙!」
「ハッ、充分だ!! 我王牙さえいればな! ブロックしろ、我王牙ァッ!!」
突っ込むエヴォルに真っ向から立ち塞がり、アラマンディーを咥えながら突進するエヴォルを正面から二刀の刃で受け止め、勢いに少し足を引き摺らせ、後退しながらも踏みとどまり、ガッチリと受け止めて見せる。
「エヴォルのBPはアラマンディーとの合体で合計BP20000!!」
『ウオオオオオオォォォォォッ!!』
さらに力を籠めるように唸ると、そのまま一気にアラマンディーを振り切り我王牙を弾き飛ばし、我王牙はさらに後方に追い詰められていくが。
「負けるかァッ!! 我王牙の効果発揮! ラミニフェンサーを喰らえッ!!」
弾き飛ばされながらも、咄嗟に近くにいるラミニフェンサーに視線を配ると、片膝を突き疲労状態のラミニフェンサーに対し背後から剣を突き刺す。
「ッ!」
「まだだ、さらにソニックワスプも喰らえッ!」
「なッ! 二体目!?」
「悪ぃな。此奴の効果に際限はねぇんだよ!!」
さらに今度はもう片方の剣で地面に突っ伏すソニックワスプを貫くと、さらにそのBPを喰らって行く。
「これで我王牙の合計BPは25000、さぁ、終わりかァッ!!」
我王牙は力の上昇に呼応するように叫ぶと、そのまま二刀の剣を地面に突き刺すと、巨大な大樹が連なるように地面から突き出し、それは真っ直ぐエヴォルへと向かい咄嗟にアラマンディーで目の前の大樹を切り倒すが、切り倒れされた大樹を踏み台に我王牙は飛び上がると、空中で剣を構え、そのままエヴォルへと振りかぶる。
「終わらない!! 僕もエヴォルもまだここで終る訳には行かないんだ!!」
「ッ!!!」
「これが最後のフラッシュ、マジック! キズナブレードッ!!」
「!!?」
「効果でガーヤトリーフォックスを疲労、そのBPをエヴォルに加算!! これで合計BP30000ッ!!!」
「な、何だとォッ!!?」
「エヴォル、決めてくださいッ!!」
『あぁ、任せよ!』
星七に視線を向けて応えると、そのまま迫り来る我王牙に対し、咥えたアラマンディーはまるでエヴォルの闘志を顕すかのように炎が篭り始め、そして火炎を込めたアラマンディーを振りかざし、我王牙の二刀の剣と真っ向から切り合う。
”ガキイイイイイィィィィィン”
激しい金属の打ち合う衝撃がフィールド中に響き、両者の力は互角なのか鍔座り合いながらも互い互いにそれぞれの得物に力を込めて行く。
『ヴァン、お主の覚悟。存分に伝わったぞ』
「!」
バトル中、エヴォルの声が語り掛けて来るように頭の中に響く。
「エヴォル!」
『もしもっと早く、今のお主に会えていたのならまた違う光景があったじゃろう』
「…………」
『じゃが儂はこの
「フン、今更思い出ふけってんじゃねぇ、そういうとこが爺臭ぇんだよ」
『ハハハ、耳が痛いわい』
かつてのパートナーだった二人、今やっと心を通わす事が出来たのかエヴォルもヴァンも互いに笑いながら。
『それじゃあ決めさせてもらうぞ!』
「やれよ、最後まで……テメェと、嫌、テメェ等と向き合ってやるよ! 我王牙ッ!!」
まだバトルは続く、ヴァンも最後まで足搔き続けると言わんばかりに目の前の我王牙の名を叫び、我王牙はさらに剣を強く押し込んで行き、エヴォルと張り合って見せるが、次第に我王牙の剣に皹が走り始め、得物は当に限界だったのか、大きく音を立てながら剣は砕けると、そのままエヴォルはアラマンディーを振り切り、炎の剣が我王牙を一閃。
一撃をその身に刻まれ、我王牙は絶叫を上げながら仰向けに倒れていき、大爆発を起こす。
「バトル終了時効果! サラスヴァティーのコア3個をボイドに送り、遊精を持つエヴォルは回復! 再アタックッ!」
「ライフッ!」
そのままバリアに巨躯を活かしての体当たり。地震のような揺れと衝撃と共にライフが一気に砕ける。
「がああッ!!!」
「バトル終了時、もう一度エヴォルは回復! アタック!」
「ライフで受けてやるよ!」
アラマンディーを振り下ろしての一撃、さらにヴァンのライフが削られ、残るライフは一つ。
「サラスヴァティーの効果でエヴォルは回復! これで最後です!エヴォルで、アタック!!」
「ライフだぁッ!!」
トドメとなる最後の攻撃、アラマンディーをバリアへと叩きつけ、火花を散らしながらライフは皹割れ始めていく。
「ぐぅッ! ッ!!」
痛みに堪えながらも最後にエヴォルに視線を向けると。
「(悔いは……ねえ。エヴォル……目を覚ましてくれて、サンキューな)」
最後にそう呟くと、衝撃に耐えきれなくなって最後のライフは粉々に砕け散る。
「があああああああッ!!!」
決着。バトルフィールドから元の場所へと帰還する二人、その場に倒れるヴァン、星七もまたバトルを終え、息を切らしながらもそっと胸を撫で下ろす。
「……何とか、勝てた」
『お疲れ様じゃ。最高のバトルじゃったぞ』
エヴォルからの労いに笑顔で返事を返す星七、それにエヴォルもまた笑いながらも「それと」と今度はヴァンへと表情を向ける。
『お主もな、ヴァン。いいバトルじゃったぞ』
「フン、余計なお世話だ。第一俺は敵だぞ」
エヴォルに対し、まだ少し素直に慣れないように憎まれ口を返すヴァン。しかし起き上がる気力はないのか、立ち上がれる様子ではなかった。
『すまんの。思った事を口にしてしまう性分でな』
「フン、変わんねえな。お前は」
『いいや、儂だって変わったよ。お前と同じ、儂もまた星七のお陰で変えられた所は大きい。本人はそんな事を思ってはおらんじゃろうが』
「……そうか」
相槌を返して、エヴォルを見ながら。
「なあエヴォル、一つだけ聞いていいか?」
『何じゃ?』
「もう一度俺と組む気はあるか?」
『……今のお主なら、また組むのも吝かではないのぅ』
ヴァンの質問に対して考え込むような仕草を見せながらも、暫くして口元を緩ませる。
『だが悪いの。今の儂のパートナーは他でもない星七じゃ、これからもそうでありたいと儂は願う』
「エヴォル……!」
「……成程。野暮だったな」
少しだけもっと早くエヴォルの言葉の意味に気づければと惜しむ気持ちはあるが、それでも全て自分が選んだ道だ、ならば受け入れるしかない。
「エヴォル、それと星七……頼みだけ聞いてもらっていいか?」
「頼み、ですか?」
「……俺の代わりに……マチアを、頼む」
「マチアさんって……確か」
「あぁ。彼奴を……!」
『その必要は無いよ』
「「!」」
不意の声、声の方角に視線を向けるとそこには紛れないマチア本人の姿があった。
「マチア!? お前……何で!?」
「まあ色々あるんだけど、光黄や烈我達のお陰でね」
「え? 烈我達に会ったんですか!?」
マチアの言葉が聞き逃せないように反応を示す星七。
「向こうの道から真っ直ぐ進めば多分合流できる。アタシはアイツ等に助けられたクチだからね」
「それじゃあ……!」
「うん。君は先に進みなよ、ヴァンの事はアタシに任せて」
マチアの言葉に大きく頷くとそのままマチアが示す方向に駆け出し、エヴォルは気になるようにヴァンに視線を向けながらも、すぐに星七の後に続いてその場から立ち去り、その後ろ姿を見送り。
「……結局、俺の手なんか不要だったみたいだな」
「そんな事ないよ、さっきのバトルもアタシの為だったんだよね」
「!……お前……全部聞いて……!!」
「まあね。アタシは嬉しかったよ」
「ッ!!」
何時から聞いていたのか殆ど会話の内容がマチアにとっては筒抜けだった様子で、恥ずかしそうに顔を背けるだが、マチアは悪戯気味に笑ったかと思うとその場に座り、突然ヴァンを膝の上に乗せ始める。
「お、オイ……何の真似だ?」
「さあね。唯のお礼、かな」
「お前は全く……!」
より恥ずかしいように顔を赤くしながらも、反論する元気もないのか溜息を零して受け入れるしかなかった。
「……ねぇ、ヴァン」
「あぁ?」
「まだ力に拘り続ける?」
「……」
ずっと求め続けていた物、今でも変わらないのかと尋ねるマチアの言葉にしばらく考え込みながらも。
「もういいさ。必要以上の力はもう要らねえ。お前さえ無事なら、俺は……それでいいんだ」
「!」
ヴァンの言葉に一瞬反応を見せながらも、それ程表情は崩さずただ静かにクスリと笑い。
「何だ、アンタも素直に言ってくれるんだね」
「一々揶揄うな。お前のそういうとこ嫌いだ」
「拗ねないでよ、これがアタシの性分なんだからさ」
「……フン」
また恥ずかしそうに横を向き、わざとらしくマチアから視線を外すヴァンだが。
「ところでさ、さっきのバトル何だか楽しそうだったね」
「俺が、か?」
「普段見ない表情、そんな気がしたよ。あたしの勘違いかもしれないけどね」
「……楽しそう、か。まあ、否定はしねえよ」
「!」
そう答えた彼の表情はとても穏やかで笑っているように見えた。その表情は彼女がずっと見たかった笑顔であり。
「ヴァン、ちょっともう一回笑ってみてよ」
「ハァ!? 誰がするか! というか、笑ってすらねえよ!」
「え〜、本当に?」
「喧しいわ! とにかくしんどいんだ、少しでいいから……休ませてくれ」
照れ臭そうにまた顔を赤くしながらも、流石に体力の限界なのか最後にマチアにそう告げると彼は静かに目を閉じて。
「ヴァン?」
「……」
穏やかな表情で眠るヴァンに、マチアもまた微笑みながら。
「今はゆっくり休んで。それと、本当にアタシの為に、ありがとう」
***
「ヴァンさん達、きっと大丈夫ですよね」
『あぁ。そうじゃ! それより儂等は先へ急ぐぞ!』
「はい! 早く烈我達と合流しないと」
先へ急ぐ星七達だが。
『待ってたよ』
「『!!』」
突然目の前に現れる人物の姿、その影に2人は咄嗟に足を止める。
『お主!?』
「あ、貴方は……! 何でここに……!!?」
その人物を前にエヴォルも星七も動揺を隠せなかったが、次に彼ら二人に映る光景に思わず言葉を失った。
彼等の目の前に移るのはその人物の足元に倒れている絵留の姿。
「絵留さん!!」
そしてその人物は左手を上げ、その手には絵留から奪ったであろうシュオンのカードが握られていた。
『どういう事じゃ、何故お主がシュオンを!!』
「何で、こんな……説明してください!!」
「…………」
目の前の人物はその問いに対して答える様子はなくただ静かにデッキを構えるのみ。
『悪く思わないでくれ。必要なのさ……最後の罪を目覚めさせる為に』
「『!!』」
***
同じ頃、先へと進む烈我達。
「この先にルディアが……!」
「あぁ、そうなのじゃ。次の部屋を抜ければ、ルディア様がいる部屋まですぐじゃ!!」
ミコの言葉に俄然闘志を燃やすように拳に力を込める烈我。
「よっしゃあ! ならさっさと突っ切ってルディアの野郎をぶっ倒す!! 光黄の仇、俺が討つぜ!!」
「オイ、勝手に進めるな。自分の借りぐらいで自分で返す。組織の首領を倒すのは俺だ」
『そうですよ、罪狩猟団なんて私と光黄様で充分! バカと短期恐竜はお帰りいただいて大丈夫ですよ』
「『誰が帰るか!!』」
相変わらずバジュラや自分のパートナーである光黄に馴れ馴れしい烈我には敵意剥き出しに煽るがそれは烈我もバジュラもライトに対しては同じであり睨み合いながら火花を散らす。
「お前らはこんな状況でも全く」
「揉めるのはそこまで。まもなく次の部屋に出るのじゃ!」
「「!」」
ミコの言葉に全員の顔色が変わる。そして通路を抜けて次の部屋へと辿り着く烈我達の前に。
『やはり……ここまで来やがったか』
「「!!」」
苛立つような口調、その人物の姿に驚く烈我達だが、ミコだけは最初から予想していたのか「やはり」と言葉を漏らし、そして彼らの前に立ち塞がったのは。
「ドレイクッ!!」
彼の名を叫ぶ烈我、罪狩猟団最後の幹部である帝騎、ドレイクが今彼の前へと立ち塞がる。
皆々様、新年あけましておめでとうございます!
年末更新は出来ませんでしたが、こうして年明け最初の更新ができてほっとしております←
去年後半から目に見えて執筆ペースが落ちてるので、新年では切り替えたいです!!リアルとの両立、何とか頑張りますのでどうかご容赦を…!(›´ω`‹ )
そして第30話、前回のヴァンvs星七、今回はその後半戦…!我王牙vs樹進超龍決着!!緑vs緑のバトルは案外書きやすかったです。そう紫に比べればね!←
そして前々回に続いて暗躍する謎の人物、次の標的は星七。
謎の人物、正体について気付いてる人は気付いてるかと思いますがどうかネタバレなしで見ていただければと(›´ω`‹ )(汗)
さらに一方で烈我の前に立つドレイク!!一体どうなるのか!
次回31話、『烈火の決闘』お楽しみに!!
それでは皆様新年もどうぞよろしくお願いします!