バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

55 / 71
第三章 七罪竜集結
第33話【嫉妬の氷龍】


長い通路を駆け抜ける烈我と光黄と二人、そして彼ら二人は遂に罪狩猟団の本拠地であるその最奥部へと辿り着き。

 

『やぁ、いらっしゃい。侵入者君達』

「「!!」」

 

辿り着いて早々、彼等に二人の前に立つ人物。まるで彼等二人を労うかのように無邪気に笑う男だが。

 

以前面識のある光黄とは違い、烈我にとっては実際に会うのは初めての筈。それでも、その男から感じる底知れぬプレッシャーに彼が組織の首領であるルディアだと確信した。

 

「お前が……! ルディアだな」

「初めましてだよね。そう、僕がこの組織のトップ、ルディア。以後宜しくね」

 

にこやかに笑うルディア、その表情は一見友好的に見えるが、以前ルディアから感じるプレッシャーが絶えず圧し掛かるばかり。これまでにないその感覚に思わず息を呑むが。

 

「……お前には色々言いたい事があるけど、先に言いたい事がある!!」

「何かな?」

「光黄を酷い目に合わせた事、それを謝ってもらう!!」

「?」

 

当事者である彼女以上に怒りを見せる烈我だが、そんな烈我の言葉に対しルディアは首を傾げたかと思うと。

 

「光黄……? えっと、何の事かな?」

「俺とバトルした時の事だ、忘れてはいないだろう?」

「…………」

 

とぼけた様子のルディアに対し、烈我に代わるように前へと出る光黄、しかし彼女を前にしながらも態度を変えず記憶を思い返そうとする素振りは見せるのだが。

 

「う~~ん、ごめん。やっぱり思い出せないや」

「何?」

「何時だったっけな、本当にごめん。頑張って思い出そうとはしてるんだけどね……印象に残った相手なら少なくとも記憶に残ってると思うんだけど」

「それはつまり、俺とのバトルが印象にも残らない、取るに足らない物……そう言いたい訳か?」

「あれそう、聞こえちゃった? ごめんね。怒らせる気はなかったんだけど」

 

明らかに自分の事を格下と見下しているのだろう。烈我は彼女の侮辱とも思える言動に「ふざけるな!」と声を荒げようとするが、そんな烈我を光黄は黙って手を突き出し、制止させる。

 

「光、黄?」

 

烈我を制止させる彼女。だが、彼女にとってルディアの言葉は自分のプライドを傷つけられたに他ならない。普段冷静な彼女だがその表情には静かに怒りが篭っていた。

 

「おやおや、怖い。でも悪く思わないでよ。あんまり記憶力は良くない方でさ、それに……覚えてたってどうせ全部滅ぼすんだから、余計な記憶は抱え込まない方がいいでしょ」

「「!!」」

 

全部滅ぼす、無邪気な笑顔からは連想出来ない程、その恐ろしい野望。ルディアの目的を指す言葉に烈我も光黄も一層身構える。

 

「あれ? もしかして僕の目的知らなかった? 当然知ってるものだと思ってたけど」

「……何で、何で世界を滅ぼすなんてそんな真似を!」

「……」

 

烈我の言葉に、ルディアは少しだけ間を置くと。

 

「それは、許せないから……かな」

「!」

「君達もこの世界をそれなりに見て来たと思うけど、この世界はまだまだ君達の目に映ってない残酷な事が多すぎる。力だけで全てが支配され、弱ければ簡単に虐げられる。ドレイクにミコちゃん、ヴァンにディストとそれぞれ事情は違えど少なからず彼等もこの世界の闇を見て来た」

「……」

「幼い頃、力が無かった僕はただ呆然とこの世界の隅で生きるしかなかった。人と交わろうとすれば痛め付けられ、蔑まれ……親もなく友も行き場もなく、孤独なまま雲を眺めて、自らの死が今日か明日かと待つだけの毎日だったよ」

「……!!」

 

涼し気な表情で口にするルディアの過去、「もう昔の事だけどね」と付け足しながら口元を緩ませてはいるがそれがどれ程壮絶な物なのかは想像に堅くない。

 

「でも、それを助けてくれたのがヘルさんなんだろ!」

「……うん。そうだね、あの人が僕を助けてくれた。死ぬ時を待ってた僕に手を差し伸べてくれて、家族のように扱ってくれて……あの人には正直今でも感謝してるよ」

「だったら何で!!」

 

「……夢を見るんだ」

「!?」

 

何を思うのか、ルディアは目を瞑りさらに続ける。

 

「ヘルさんが僕を拾ってくれて約五年。不自由は無かった、無かった筈なのに……僕は毎日決まって同じ夢を見る」

「それって」

「自分がヘルさんと出会う前の、一番辛かった時の記憶を毎晩毎晩鮮明に思い出して、五年間ずっと僕はその悪夢に魘されてきた」

 

親に捨てられた事、自分を平気で傷つけ蔑んできた者の表情、力が無く飢えと疲労で倒れ、それでも気にもかける事なく見て見ぬふりをする他人。そんな記憶がずっと、どれだけの年月を経ても頭から決して離れる事は無かった。

 

「何で僕だけがこんな悪夢をずっと見続けなきゃ行けないのか。嫌、そもそもどうして僕にこんな記憶があるのか……毎日苦しくて、夢を見る度に自分自身の心の奥で、『過去を忘れて、怨みを果たさずそれでいいのか?』と問われているような気がしたよ」

「……」

「君達の世界にも行ったけど、いいよね。君達の世界は……笑顔が溢れてきっとそんな過去に魘されることなんて無いんだろうね、嫉妬しそうなぐらいだよ。それに比べて……僕達の住む世界は力だけを求めて醜いったらありゃしない……だから、思ったんだ」

 

あくまでも笑顔を絶やすことなく、にこやかに烈我達に笑いかけたかと思うと。

 

「この醜い世界、滅んじゃえばいいって」

「「!!」」

 

その笑顔とは裏腹に、ゾッとするような狂気を感じ、思わず烈我も光黄もたじろぐように一歩身を引いてしまう。

 

「その為に、この世界の人達も巻き込もうってのかよ!!」

「狂ってる。そんなの、許される訳が」

 

烈我に続いて光黄も言葉を続けるが、ルディアは平然とした様子でまた笑ってみせる。

 

「生憎、理解されるつもりも許しを乞うつもりもない」

「「!」」

「これでも僕もずっと耐えて耐えて耐えて、忘れようとずっと無理して……それでも……もう僕も限界でさ。こんな醜い世界が存在する限り、僕はずっと過去に苦しむ。僕だけじゃない、力が無くこの世界に苦しむ人は決して尽きることは無い」

 

「だからこそ」と強調するように付け足しながら。

 

「全部壊すんだよ、綺麗さっぱり平等にね。その為に僕は七罪竜を集める!! 力があれば全ての支配権を得る。無ければ支配を受け入れるしかない。僕はこの世界のルールで虐げられてきた。なら今度は、そのルールに則って僕がこの世界を支配し、そして全部滅ぼすだけさ!」

「そんな事、させる訳ねえだろ!!」

「無理だよ」

「何!?」

「悪いけど君達程度じゃ、僕は止められない。だって今の僕、誰にも負ける気がしないからね」

 

「「ッ!!」」

 

笑顔ながら爽やかに語るルディア、だがその言葉は決して余裕から来るものでも、キラーのような傲慢さでもない。ルディア自身がそう言えるだけの実力の持ち主だと2人は確信した。

 

だがそんなルディアの言葉を物怖じる事なく、自分達への挑戦と受け取るように烈我と光黄の懐から飛び出す二体の影。

 

 

『光黄様を侮辱するとは、失礼な男です! 全く!! 光黄様、こんな奴さっさとやっちゃいましょう!』

『ハハ、テメェの相棒もいい怒りだな。だが、生憎こんなクソッたれ組織をぶっ潰してぇと思うのは俺達の方だ!』

 

光黄達に加わるようにその場に実体化し、ライトもバジュラもそれぞれルディアを睨み付けるが、二体の姿を目に少しだけ表情を変えたかと思うと、直ぐにまた笑顔を向けて。

 

「随分とそっちの七罪竜達は血気盛んなようだね。君とは大違いだよ、ねぇフリー」

「フリー?」

「紹介するよ、出ておいで」

 

『承知しました』

 

「「『!!』」」

 

肌寒い冷気が風のように吹き抜けたかと思うと、ルディアの傍に現れるは白銀の如く体表を白い氷に包む龍の姿、その姿を目に烈我達は目の前の龍がバジュラ達の同類(七罪竜)である事を瞬時に理解できた。

 

「これが僕のパートナー、嫉妬を司る七罪竜の一体、名をフリー」

「嫉妬、6体目の……七罪竜! まさかもう組織の手に」

 

フリーの姿に驚きを隠せない烈我、そしてその隣で光黄はフリーの姿をじっと見て。

 

「……?」

「光黄、どうかしたか?」

「い、嫌……何でもない。それより七罪竜が敵の手にある以上、油断ならない相手という事だけは分かる」

 

フリーの姿に何かを感じ取る光黄、そしてそれは相棒であるライトも同じなのかフリーの姿にライトは突然震え始め。

 

「ライト、お前も何か感じたのか?」

『……光黄様、私には分かります。あの竜……あれは……!!』

 

フリーの事を何か知っているのか、震えながらもライトは口を開き、そして。

 

 

『あの方は、きっと女性です!』

「は?」

 

唐突なライトの発言にバジュラと烈我は思わずズッコケ、「馬鹿な事言ってる場合か」と軽くライトの頭に手刀。

 

「アハハハハハハ、君の七罪竜は随分と面白いね。フリーも気に入られてるみたいで良かったじゃん」

 

ライトの言動が余程面白かったのか、高笑いするルディアにフリーは無言のまま軽く会釈を返す。

 

「ライト……お前は一々話の腰を折るな」

『ハッ! 申し訳ありません。当然私は光黄様の執事として戦うだけですので!』

「だからお前は執事じゃない」

 

『ったく、端からテメェを頼りにはしてねぇよ、この色欲魔! オイ烈我、此奴等は俺等で──ッ!』

 

ライトには構ってられないと言わんばかりに名乗りを上げようとするバジュラだが、烈我に視線を向けた瞬間、突然彼はその場に膝を突いてしまう。

 

「『烈我!?』」

「……な、何でも……ない。大丈夫だから」

 

動揺するバジュラと光黄達に心配を駆けまいと気丈に振舞うが、呼吸は乱れ立ち上がろうとする足元もフラつき、その様子に光黄は慌てて烈我を支える。

 

「こ、光黄……!」

「バカ烈、無茶しすぎだ」

 

ガイト、マチア、そしてドレイクと強敵たちと立て続けにバトルを繰り広げ、もうルディアと戦う気力はとても残ってるとは言えない。

 

「俺がやる、お前は下がってろ」

「でも、アイツは……俺が!」

「お前はもうとっくに限界だろう。これ以上心配かけるな!」

「けど……!」

 

引き下がれない烈我、だがそんな烈我に対して光黄は微笑む様に笑ったかと思うと。

 

「言った筈だ、自分の借りは自分で返す。このバトルはお前にだって譲る気はない!」

「……光黄」

「安心しろ。勝つのは俺だ。それとも、俺が同じ相手に負けるとでも?」

 

彼女の言葉に、そんな事は無いと言葉よりも先に首を横に振りながら否定し、それに彼女は笑うと。

 

「だったらこの場は俺に任せてお前はそこで休んでろ。このバカ烈」

「バカは余計だっての! けど、お前がそう言うなら……俺は信じるからな」

「あぁ」

 

心配する気持ちは拭い切れないが、自信満々な彼女の言葉であるならば信じるしかない。なんてたって彼女は自分よりもずっと強いのだから。

 

『ちょっと、隙あらば光黄様と良い感じの雰囲気出すのやめてもらえます?』

「「!!」」

 

「な、何だよ。別にお前には関係ないっての!」

『関係大ありですよ! 光黄様の執事であるこの私を差し置いて!!』

 

「お前みたいな執事は雇ってない」

 

そんな二人に割って入るライト、邪魔された事に腹立つように張り合ってライトに食ってかかる烈我とそれに呆れる光黄。こんな状況にも関わらず何時もの調子ですっかり緊張した様子はない。

 

『ケッ、本当は俺が暴れてぇんだが烈我がこれじゃあ仕方ねえ。色欲魔、テメェに譲ってやるよ』

『誰が色欲魔ですか!! 全く……ともかく、貴方にはできない紳士的なバトル見せてやりますよ!』

『フン、何でもいいがよ……負けんじゃねえぞ?』

『!』

 

バジュラなりの激励、普段はどうあれ少なからずバジュラもライトの実力を買っているからこその台詞だろう。それが意外だったような顔を浮かべるが、直ぐに口元を緩ませ、言葉を返す。

 

『まっ、見てるといいですよ。私と光黄様のコンビなら誰にだって負ける気はしませんから!』

 

 

「どうやら決まったみたいだね」

 

彼等の様子にルディアは静かに自分のデッキを取り出しながら声を掛け、光黄も同じく自分のデッキを構えると、フリーとライトは自分達の相棒に寄り添う。

 

『さて、女性が相手と言えどバトルにおいては手加減できませんので、どうかご容赦くださいまし!』

『お気遣いなく。私はマスターの命令に従うだけですので』

 

普段のノリで声を掛けるライトだが、フリーはそれを冷たくあしらいながらカードの状態となり、そのカードをデッキに加える。

 

「ライト、気を抜くなよ。このバトルは……」

『分かっております! このライト、必ずや光黄様に勝利を齎して見せます!!』

 

ミナトと同じ女性相手に対してはどうしてもお調子者な一面はあるが、それでもバトルに対しては誠心誠意そのもの。それが分かってるからこそ、光黄もまたライトも信頼を置くように「任せるぞ」と相槌を返す。

 

「ライト!」

『はい、光黄様!!』

 

フリー同様、ライトもまたカードの状態へ切り替わるとそのカードをデッキへと加え、そしてルディアをに正面から向かい合い。

 

「嫉妬の七罪竜……どんな力を持つのかは知らないが、遠慮なく叩きのめさせてもらう!」

「強気だねぇ。いいよ、頑張って善処してね!」

「ほざけ! 行くぞ!!」

「はいはい、女の子の割には血気盛んなんだから」

 

平静な態度を崩さず懐からバトルの為のデバイスを取り出すと、それを足元に投げ入れると、二人をバトルフィールドへと誘う為、光が二人の周囲を包み込んで行く。

 

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

試合開始の宣言と共に二人は、バトルフィールドへと転送されて行き、戦いの舞台へと足を降ろし、烈我達はその光景をじっと見守る。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「先行は譲るよ、どうぞ」

「余裕のつもりか? 後悔するなよ」

 

光黄の先行から幕を開けるバトル、彼女にとって負けられない雪辱戦だが、冷静に手札を見ながらターンシークエンスを進めて行く。

 

────第1ターン、光黄side。

 

[Reserve]4個。

[Hand]5枚。

 

「メインステップ、俺は創界神ラーを配置。配置時効果で神託!」

 

出現するラーの幻影、そして神託の効果によってデッキからトラッシュへ送られるは、「光の覇王ルナアークカグヤ」、「タマモノイン」、「パニックヴォイス」の3枚。

 

「神託対象は2枚。ラーにコア2個を追加。さらにバーストセット! これでターンを終了する」

 

 

 

 

────第2ターン、ルディアside。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

 

「さて、それじゃあ僕のターンだね。メインステップ!」

 

罪狩猟団のトップであるルディア、彼がどんなバトルを行うのか一度バトルしたことのある光黄を除き、烈我は知っている筈もない。どんな使い手なのかと警戒を覚えるようにモニターを注視するが。

 

「まずはコレから。マジック、ホワイトフィールドを使用!」

「!!」

「メインの効果、僕のデッキの上から3枚カードをオープン。その中にある系統「起幻」を持つコスト5以下のスピリットカードか、白のネクサス1枚をノーコストで召喚、又は配置できる!」

 

マジックによってデッキからオープンされる3枚、そのカードを見てルディアは不敵に口元を緩ませ。

 

「じゃあこれを選ぼっかな。指定する対象はネクサス、要塞都市ナウマンシティー!」

 

ディスクにカードを置いた直後、ルディアの後方に聳える巨大な要塞都市、ナウマンシティー。そのカードが場に出現した途端、要塞都市の内部から聞こえる強大な咆哮が要塞内部から外へと広がり始め。

 

「ッ! この咆哮……!」

「フフ。ナウマンシティーの配置時効果、僕は手札にある白のスピリットをさらにノーコストで召喚できる。そして選ぶのは!」

 

手札の1枚を静かに抜き取り、そしてそのカードをフィールドへ呼び出すべくディスクへと叩き付けながら、叫ぶ。

 

「出番だよ。永久凍土の輝きを持ちし龍! 絶望を指し示すその光を焼き付けろ!! 召喚! 宝龍アブソドリューガッ!」

「なッ!!?」

 

ルディアが呼び出したカードはまさかのハイドカードの一体、アブソドリューガ。モニターに映る光景に思わず烈我は驚かずにはいられなかった。

 

そしてフィールドでは大地を突き出るように出現する巨大なクリスタルの結晶、そのクリスタルの内部から巨大な龍の姿が映り、眼光を輝かせたかと思うと、瞬間クリスタルに亀裂が走り始め、そして轟音とともにクリスタルが砕け散り、出現する白銀の龍────アブソドリューガ。

 

「……いきなり来たか、ハイドカード」

「あんまりリアクションはないね。まぁ使うのは二度目だし仕方ないか」

「無駄口はいい、来るなら来い」

「じゃあお言葉通り。アタックステップ! アブソドリューガッ!」

 

名を呼ばれるとアブソドリューガは咆哮を上げて、一気に飛び出し大きく腕を振りかぶる。

 

「ライフで受ける!」

 

展開されるライフのバリアにアブソドリューガは腕を振り上げ、削り取るかのようにバリアを抉り、破壊する。

 

「ぐッ! ライフ減少時でバースト発動! 妖雷スパーク!」

「おっ!」

「バースト効果で相手スピリットをBP-5000!」

 

トリガーが引かれた発動する妖雷スパーク、カードから放たれる雷撃がアブソドリューガへと直撃するが。

 

「ハハハ、アブソドリューガLv.1でBP6000。-5000程度じゃ破壊されないよ?」

 

余裕を見せるルディア、アブソドリューガもまた妖雷スパークによる雷撃を受けてなお平然と笑うかのような鳴き声を上げて見せる。

 

「別に破壊が目的じゃない。コストを支払う事でフラッシュ効果発揮! 手札を追加し、スピリット1体のBP+2000」

「へぇ~、折角BPを下げたのに、また増やしてくれるんだ」

 

揶揄う様にクスクスと笑うルディア、アブソドリューガの他に対象がない故の選択だがそんなルディアの態度にも表情は変えず、冷静に手札に目を配る。

 

「フフ、それじゃあ次に君がどういう手で来るか、お手並み拝見だね。ターン終了」

 

 

 

 

────第3ターン、光黄side。

 

[Reserve]6個。

[Hand]5枚。

[Field]創界ラーLv.1

 

「俺のターン」

「あっ、そうそう。ホワイトフィールドの効果、発動したこのマジックはフィールドに残り、このカードが場にある間、相手の創界神のシンボルは失われるから気を付けてね」

「(……厄介な効果だな)」

 

先の展開を見越して創界神のラーを配置していたのだが、ホワイトフィールドによりラーのシンボルが失われ、他のスピリット召喚の為の軽減ができなくなってしまう。

 

「だが、これぐらいで詰むような軟な構築はしていない。メインステップ、タマモノインを召喚! 召喚によりラーに神託。そしてアタックだ! タマモノイン!!」

 

呼び出したタマモノインにすぐさま攻撃指示を送ると、一度光黄へ視線を向けて頷いて見せながらルディアへと駆け出す。

 

「ライフで受けるよ」

 

跳び上がるとその場で即時反転。尻尾による一撃をライフに叩きつけ、ルディアの砕き返す。

 

「【聖命】発揮、俺のライフを一つ回復!」

「……うん、中々の一撃。ライフ差も逆転されちゃったし、結構やるね」

 

ライフが砕けてなお動じておらず、未だ涼しげな顔を浮かべて微笑むルディア、それに少し気味悪さを感じるが、それでも一歩も退かないようにルディアを睨む。

 

「……甘く見るなよ。俺は同じ相手に二度も負ける気はない」

「成程、それは楽しみ。君がどこまで僕を楽しまさせてくれるか、ね」

「言ってろ。俺はただここで借りを返す、それだけだ」

 

得体の知れないルディアだが、それでも彼女は一歩も退く様子はなく、普段と変わらない強気な姿勢を見せながらターンエンドをコール。

 

 

 

 

────第4ターン、ルディアside。

 

[Reserve]6個。

[Hand]4枚。

[Field]宝龍アブソドリューガLv.1(1)BP6000、要塞都市ナウマンシティーLv.1(0)、ホワイトフィールド(Magic)

 

「僕のターン、ゴッドシーカーヴァーマナ召喚! 召喚時効果、デッキを4枚オープン!!」

 

デッキから捲られる4枚のカード、その中から目当てのカードを見つけたように笑みを零すと、「創界神ヴィシュヌ」と「神撃甲龍ジャガンナート」のカードを手札と加えて行く。

 

「続けるよ、さらに宝龍アブソドリューガをLv.2にアップ、さぁアタックステップだ!」

「!」

「ヴァーマナ、やっちゃって!」

 

鋼鉄の翼を広げ、光黄のライフを削るべく攻撃を開始するヴァーマナ。だがその攻撃のタイミングに合わせ、彼女は目の色を変えて。

 

「フラッシュタイミング!」

「!」

「神の力を携わり、新たな姿と生まれ変われッ!! タマモノインを太陽神獣セクメトゥームに神煌臨ッ!!」

 

ラーのコアがタマモノインへと託され、コアを受け取ると神々しくタマモノインの身体は光り輝き始め、眩い光に思わずヴァーマナは立ち止まるように一度地面へと降り、アブソドリューガも目が眩むのか、腕を上げて視界を青うような素振りを見せる。

 

「セクメトゥームの煌臨時効果、相手のスピリットを煌臨元にしたスピリットのコスト1につき、相手スピリットをBP-10000!」

 

光に目が慣れ始め、次に視界に映ったのは神々しく輝くラーの化神、セクメトゥーム。その効果を発動させると、自分の周囲に光の球体を展開させていき、その球体から放たれる雷撃がヴァーマナとアブソドリューガの二体を直撃し、体を痺れさせながらヴァーマナは破壊されるが。

 

「アブソドリューガの効果、このスピリットは相手のスピリット、マジック、ネクサス、ブレイヴの効果では破壊されない」

 

セクメトゥームの放つ雷撃に確かにアブソドリューガのBPは0にまで引き下げられるが、笑みを浮かべながら攻撃を耐えきって見せると、眼光を輝かせ自身の身に走る電撃を振り払いながら咆哮。

 

「!」

「残念。まだまだその程度じゃ、アブソドリューガは倒せないよ? まっ、とはいえアタッカーが減っちゃったし、ここはターンエンドなんだけどね」

 

攻撃のチャンスを失った事に苦笑するルディアだが、まだ勝負も序盤という事もあってかそれ程悲観しておらず、まだまだ余裕が見て取れる。

ターンは移り今は光黄にとって反撃のチャンスだが、ルディアに対して迂闊な攻撃は逆に自分が追い込まれると彼女も理解していた。

 

 

 

────第5ターン、光黄side。

 

[Reserve]6個。

[Hand]4枚。

[Field]太陽神獣セクメトゥームLv.1(2)BP7000。

 

「俺のターン、セクメトゥームをLv.2に、さらにラーの【神技】を発揮、デッキから3枚オープン!」

 

ラーの神技はオープンした中に含まれる想獣を持つカードをコスト合計8になるまで手札に加えられる。オープンされたカードは「西風獣フウジャイウイ」、「ガトーブレパス」、「黄金の鐘楼」の3枚。

 

「俺はガトーブレパスとフウジャイウイの二体を手札に加え、ネクサス、黄色の聖遺物を配置。続けてガトーブレパス召喚!」

 

後方に出現するネクサスと同時にパールが砕け、現れるガトーブレパス。二体の幻獣達は並んで一斉に鳴き声を上げていく。

 

「さらにバーストセット。アタックステップだ! 行け、セクメトゥームでアタック!!」

「アブソドリューガ、止めて」

 

四本脚を駆使して全力で駆けだすセクメトゥーム、その行く手をアブソドリューガが立ち塞がると、セクメトゥームによる突進を受け止めて行く。

 

「BP差はセクメトゥームが上だ!」

 

セクメトゥームのBP11000に対してアブソドリューガはLv.2でBP9000。セクメトゥームを止めきれない様に徐々に足を引き摺らせて行く。

 

「ハハ、フラッシュタイミング頂くよ?」

「!」

「マジック、ディフェンシブオーラ! 効果でブロックしている自分のスピリット全てをBP+6000!」

 

レベルが下がれど、マジックの効果によりアブソドリューガのBP合計は12000。セクメトゥームのBPを上回ると、アブソドリューガはその力を増し、セクメトゥームの身体を持ち上げて見せるとそのまま天に向かって投げ飛ばし、大きく口を開いて空中に投げ飛ばしたセクメトゥームに荷電粒子砲を撃ち放ち、その巨大な光へと飲み込まれセクメトゥームは光の中で大爆発を起こして破壊される。

 

「ッ!」

「アブソドリューガの効果、バトルによって相手スピリットを破壊した時僕のライフ1つを回復!」

 

アブソドリューガは勝利に歓喜するかのように咆哮、その雄叫びに呼応するようにルディアのライフに光が灯ると、失った筈のライフが回復されていくが。

 

「まだだ、続け! ガトーブレパスでアタック!」

「ライフで受けるよ」

 

爆風を切って飛び出すガトーブレパス。アブソドリューガは地面に項垂れながらその姿を見上げるが疲労状態の為、止める術はない。そのままルディアの前に展開されるバリアに角を突き差し、ライフを破壊。

 

「ガトーブレパスも【聖命】を持つカードだ。よって俺のライフを1つ回復する」

 

光黄もまたライフを回復させ、ライフ差は再びルディアを上回る。

 

「俺はこれでターンエンド」

 

 

「すげぇ、どっちも……ライフを回復しては攻めて」

『あぁ、互いに打ち合ってターンを重ねれば重ねる程、さらに激しくなるだろうよ』

「今はまだ光黄が優勢だ。問題は……あいつがこの先どう出るか……!」

 

ライフ差だけで結果が分かる程バトルとは浅くない。ましてや相手は罪狩猟団のトップ。どんな手を打ってくるのか、烈我も光黄も片時も油断できないように息を呑む。

 

 

 

 

────第6ターン、ルディアside。

 

[Reserve]9個。

[Hand]5枚。

[Field]宝龍アブソドリューガLv.1(2)BP6000、要塞都市ナウマンシティーLv.1(0)、ホワイトフィールド(Magic)。

 

「さて僕のターン、アブソドリューガをLv.3にアップ。さらに創界神ヴィシュヌを配置」

 

ヴィシュヌによって破棄される三枚、「クリシュナーガサトラェ」、「クリシュナーガリグガンナ」、「ゴッドシーカーコルハープル」の3枚。

 

「対象三体で3コアを追加。さらにもう一体、呼び出させてもらおうかな」

 

軽い調子でそう言いながら手札の一枚に手を掛け。

 

「白き鋼を持つ神の現身、神撃甲龍ジャガンナート、召喚!」

 

平然とした表情で呼び出したのはクリシュナの化神たるスピリット────ジャガンナート。

 

「アタックステップ。ジャガンナート、行っちゃって!」

「!!」

 

ルディアの指示にジャガンナートは眼光を輝かせると、背中の翼を大きく広げ羽ばたかせると、凍て付く鋼鉄の羽が巻き起こす強風にガトーブレパスは吹き飛ばされ、光黄の手札へと戻る。

 

「くッ!」

「アタック時効果の【界放】で悪いけどガトーブレパスは手札。しかもまだだよ、ジャガンナートの効果でヴィシュヌのコア3個を自身に置く事で、相手の手札3枚につきこのスピリットにシンボル1つを追加。よって今のジャガンナートはダブルシンボル! さらにLv.2になった事でジャガンナートの効果によりヴィシュヌにコア2個を追加」

「ライフで受ける!」

 

展開されるバリアに、ジャガンナートは圧し掛かる様にその巨躯をバリアへと押し付けると、重量にライフは砕かれる。

 

「うああああああ……ッ!!」

 

「光黄!!」

 

痛みに仰け反りながら苦痛の声を上げる彼女にモニターを見ている烈我は思わず叫んでしまうが、それでも痛みに堪え踏み留まり、攻撃を待っていたように目を開くと。

 

「ライフ減少時でバースト発動! 妖雷スパーク!!」

「二枚目だね。でも生憎ジャガンナートもアブソドリューガも破壊されないよ」

 

ルディアの言葉通り、妖雷スパークの雷撃を受けるがジャガンナートもアブソドリューガもまるで動じないが。

 

「分かっている。コストを支払いフラッシュ効果、デッキから1枚ドロー。さらに黄色の聖遺物の効果、マジックを使用したときさらに1枚ドロー!」

「へぇー、態々バーストのタイミングで手札を増やして、ジャガンナートのシンボルの増加を減らしたんだね。もしかして読まれてた?」

「さぁな……それより、まだ続けるか?」

 

笑い掛けるルディアに対して全く自分のペースを崩さず、冷静に言い返して見せる光黄、視線を合わせながら緊迫した空気が流れるが。

 

「ふふ、僕はこれでターン終了するよ」

 

 

「ふぅー、光黄……何とか凌いだみたいだな」

 

バトルの様子に安堵するように烈我も一息つく。

 

「けど、苦しい展開だぜ。光黄がスピリットを展開してもジャガンナートがいる限り、また手札に戻される」

『あぁ、しかもあのハイドカードって奴も健在だ。どうにかしねぇと打つ手はねぇぞ』

「……大丈夫、光黄ならきっと何とかする筈さ!」

 

 

 

────第7ターン、光黄side。

 

[Reserve]11個。

[Hand]7枚。

[Field]黄色の聖遺物Lv.1(0)、創界神ラーLv.1

 

「俺のターン、ガトーブレパスとペストコス、どちらもLv.2で召喚。さらに黄色の聖遺物をLv.2にして、バーストセット。俺はこれでターンエンドだ」

「へえー、アタックしないんだ? 後悔はない?」

「あぁ、変更はない」

 

無闇にアタックを仕掛けた所でアブソドリューガに返り討ちにされてしまえばまたライフを回復される。戦力が整わない内は守りを固めるのが賢明だが、ターン終了と共にアブソドリューガは目を輝かせ。

 

「あぁ、そう。ならこの瞬間アブソドリューガの効果を発揮させるよ? 相手のエンドステップ時、相手がこのターン一度もアタックしていないのならデッキから2枚ドロー」

 

どこまでも抜け目なく手札を増やし、そのカードを見ながらルディアのターンへと移り。

 

 

 

 

────第8ターン、ルディアside。

 

[Reserve]4個。

[Hand]6枚。

[Field]神撃甲龍ジャガンナートLv.2(4)BP12000、宝龍アブソドリューガLv.3(5)BP12000、要塞都市ナウマンシティーLv.1(0)、創界神ヴィシュヌLv.1、ホワイトフィールド(Magic)。

 

「メインステップ。ネクサス、No.18 グッドラックウェルを配置。さらにマジック、メビウスリングを使う」

「!」

「君のネクサス。即ち黄色の聖遺物をデッキの下へ」

 

マジックによって出現する白く輝く光輪。その輪は黄色の聖遺物の周囲を囲い込むと、フィールドから跡形もなく消し去り、デッキのボトムへと送られる。

 

「さてこれで厄介なネクサスは消えた。アタックステップに行くよ!」

 

吠えるジャガンナートとアブソドリューガの2体、その咆哮にガトープレパスとペストコスは吹き飛ばされまいと必死にその場に踏みとどまるのが精一杯だった。

 

「ジャガンナート、アタック! アタック時効果でヴィシュヌにコア2個を置く。さらに【界放】の効果で君のスピリットを2体を手札に戻す」

 

ジャガンナートは再度翼を羽ばたかせて強風を起こすと、風に煽られガトープレパスとペストコスは踏ん張りも虚しく手札へと戻されてしまう。

 

「ペストコス、Lv.2の効果。想獣を持つスピリットが相手の効果で場を離れた時、1枚ドロー」

「ふふ、関係ないね。こっちはその後ヴィシュヌのコア3個をジャガンナートに置く事で、相手手札3枚につきシンボルを1つ追加!」

 

現在の光黄の手札は合計7枚、それを受けて今ジャガンナートのシンボルは3つにまで増加する。

 

「今度はさっきのより強烈だよ?」

「そのまま受けようものならな」

「ん?」

 

意味深に思える言葉に首を傾げるルディアだが、直ぐにその意味を証明するように彼女は手札の1枚を掲げる。

 

「フラッシュタイミング、マジック! メロディアスハープ!」

「!」

「効果でジャガンナートはこのターン、一切の効果を失う。シンボル増加による効果も無効だ!」

 

天使が奏でし琴の音色。その音色は光となってジャガンナートへと注がれると、弱体化されるように項垂れ、自身の持つ効果が打ち消されるが。

 

「中々やるね。でも、今度はこっちのフラッシュ、貰うよ? ヴィシュヌのコア1個をジャガンナートに置く事で【神煌臨】!」

「ッ!?」

「森羅万物を維持せし無限なる力を授かりて、世界を調和する神の龍! 維持神龍トリヴィクラマをジャガンナートに【神煌臨】!」

 

ジャガンナートは項垂れた状態から覚醒するように大きく翼を広げ、自身の身を眩く輝かせ、目を覆う程の光に視界が遮られるが、次に光が晴れた瞬間、視界が捉えたのは白銀の輝きしヴィシュヌの現身、トリヴィクラマ。

 

煌臨は煌臨元となったスピリットの情報全てを引き継ぐ。その場合、ジャガンナートが受けていたメロディアスハープによる効果も当然引き継がれるが。

 

「Lv.3のトリヴィクラマは【重装甲】、赤白青、そして黄色を持つ。メロディアスハープによる効果も受けない」

「ッ!」

 

メロディアスハープによる音色を跳ね返すように弾くとトリヴィクラマは再び力を取り戻すように光黄へと飛び出していく。

 

「煌臨時効果、相手スピリット、又は相手のバースト1つを手札に戻す。よってそのバーストも手札に戻させてもらうよ」

 

伏せていたバーストは「イマジナリーゲート」、破棄されればその効果を無条件で発揮させることの出来る1枚だが、トリヴィクラマの前には為す術なく手札へ戻されてしまう。

 

「さらにトリヴィクラマは回復! さあ、どう受ける?」

「ライフだ」

 

シンボル増加の効果は無効になってるとはいえ、それでもトリヴィクラマによる攻撃は有効。そのまま展開されたバリアへ迫ると両腕を翳して冷気を撃ち出し、バリアを凍らせるとそのまま拳で殴り付け凍ったバリアをガラスの如く砕いてしまう。

 

「うぐッ!!」

「まだだよ! トリヴィクラマで再アタック!」

「ライフで!」

 

再び光黄へと迫っていくと、今度はバリアに膝蹴りを叩き込みライフをさらに破壊。

 

「ッァ……!」

 

シンボル増加の効果は打ち消されてるとはいえ、立て続けにトリヴィクラマによる攻撃に流石に彼女も息を切らすが、まだルディアのターンは終わっていない。

 

「アブソドリューガも続けてアタック」

 

彼女を追い込むようにアブソドリューガにも指示を送るとその場で構える様に口を大きく開き、荷電粒子砲を撃ち放ち。

 

「フラッシュ!」

「!」

 

だが彼女もやられっぱなしではない。アブソドリューガの攻撃を狙っていたように手札のカードを切り。

 

「マジック! 救世神撃破!」

「!……ここで赤のマジック?」

「あぁ、そうだ。フラッシュ効果で1枚ドロー! さらにその後、手札にあるバーストカードをセットできる!」

「!」

 

手札に戻された筈のバーストカードを再セットして見せると、アブソドリューガの攻撃に対して迷わず「ライフで受ける」とコール。

アブソドリューガによる強烈な一撃に顔を歪めるが、痛みに耐え切って見せながら彼女はバーストに視線を置き。

 

「俺のライフ減少時でバースト発動! イマジナリーゲート!! バースト効果により俺の手札にある黄色スピリットをノーコストで召喚!」

 

高らかな宣言と共に、彼女が手札から呼び出す一枚、それは。

 

「来い! 新しき時代の王者! 可能性秘めしその無限の翼で飛び上がれ! 想竜王ジュラン、Lv.2で召喚ッ!」

 

黒雲立ち込める空、そしてその黒雲を裂くように雄々しき翼を広げて眼光を光らせながら舞い降りる幻竜の王、ジュラン。

 

「わお、ここまでやるとは」

「お前にもうアタックできるスピリットはいない、ターンエンドだろ?」

「そうだね。でも、まだ勝ち誇るのは早いよ? エンドステップ!」

 

ステップ開始と共に指を軽く鳴らすと、ルディアの場に配置されたネクサスは光り輝いたかと思うと、その光は連動するようにアブソドリューガとトリヴィクラマにも灯り、疲労状態から回復し再びその場に立ち上がる。

 

「グッドラックウェルの効果で僕の白のスピリット全ては回復。さて、この牙城、君に崩せるかな?」

 

BPだけでなく、アブソドリューガには破壊による耐性、そしてトリヴィクラマには【重装甲:黄色】と、正に鉄壁の構え。並のカードバトラーではまず突き崩す事など不可能に近い。しかしそれでも彼女は。

 

「無論、勝つ為ならそうするだけだ!」

 

圧倒的な力を持つスピリットに対しても全く恐れる様子はなく、強気に言い放つとジュランもまた主に同調するかの如く、アブソドリューガ達に向けて勇ましく吼え立てる。

 

 

 

────第9ターン、光黄side。

 

[Reserve]13個。

[Hand]7枚。

[Field]想竜王ジュランLv.2(2)BP10000、創界神ラーLv.1

 

「メインステップ。手札にあるこのカードの召喚する時、フィールドだけでなくトラッシュにあるシンボルも軽減コストとしてカウントする!」

 

彼女のデッキの中でその効果に該当するのは一つしかない。

 

「出陣だ! 煌き羽ばたく堕天の龍よ! 地に堕ちしその身を再び天へと羽ばたき降臨せよッ! 堕天神龍ヴィーナルシファー、Lv.3で召喚ッ!!」

 

雷鳴轟かせる黒雲から唯一差し込む光、その光よりゆっくり地へと舞い降りる龍の姿、龍の降臨を祝福するかのように降り注ぐ雷と雷鳴。そして龍、否、ヴィーナ・ルシファーは鳴り止まぬ雷鳴を掻き消すほど強大な咆哮を上げ、強大な咆哮は黒雲さえも吹き飛ばす。

 

「君のキースピリットだったかな。でもお生憎様、メビウスリングがフィールドにある限りお互いデッキを破棄する事は出来ないよ?」

 

ヴィーナルシファーの合体時効果は、手札のスピリットカードをコストにマジックが出るまでデッキを破棄して、破棄されたマジックの効果を使用できる。従って、デッキ破棄そのものを封じられてしまえばヴィーナルシファーの特徴を十二分に発揮することは出来ない。

 

「承知の上だ。この程度で立ち止まる訳がないだろ」

「!」

「アタックステップ! ヴィーナルシファー、行けッ!」

 

龍の咆哮がフィールド中に響き渡り、黄金の翼を広げながらルディアへと迫る。

 

「その程度じゃ、BP差は歴然だよ。トリヴィクラマでブロック!」

 

トリヴィクラマは両腕を翳しての吹雪を、ヴィーナルシファーは大きく口を広げての雷をそれぞれの相手に向けて撃ち放ち、雷と吹雪が相殺され、それならばとヴィーナルシファーは爪を構え、トリヴィクラマへと振りかざす。

だが、素早い動きで振り下ろす爪の一閃を避けると、ヴィーナルシファーに強烈な蹴りを叩き込み、その一撃をモロに受け、後方へ弾き飛されながらヴィーナルシファーは体勢を大きく崩されてしまう。

 

「悪いけどこのまま決めさせてもらうよ? トリヴィクラマ!」

 

トドメを刺すべくトリヴィクラマはヴィーナルシファーへと一気に迫るが。

 

「させるか! フラッシュ、【天雷】発揮!」

「!」

 

『待ってました光黄様! ビュンビューンと参りましょう!!』

 

手札を構えた瞬間に響く意気揚々としたライトの声。その声に「あぁ」と頷く光黄に対して、ルディアもまた笑顔で細めたその目を開き、その時を待っていたように「遂に来るか」と言葉を落とすが、それに構う事無く彼女は相棒であるそのカードをディスクへと叩き付ける。

 

「瞬光雷進! 色欲の咎を持つ雷竜! 戒めのない自由な天を舞い、地上の敵に轟雷の光を下せッ! 雷光天龍ライトボルディグス、天雷召喚ッ!!」

 

トドメを刺そうと腕を振り翳すトリヴィクラマ、だがその攻撃を遮るように目の前を突っ切る一筋の閃光。突っ切るそれを見上げ、視界に映るその正体こそ色欲を司りし七罪竜、ライトボルディクス。

 

『さぁここ一番の見せ場、頂いちゃいますよ!!』

 

トリヴィクラマはライトを打ち落とそうと腕を翳して吹雪を放っていくが、ライトは雷速の如く目にも止まらぬ速さで吹雪を華麗に避けて見せ、それに気を取られてる隙にヴィーナルシファーは体勢を立て直すと、トリヴィクラマへと突進し大きく後方へ突き飛ばす。

吹っ飛ぶトリヴィクラマに追い討ちをかけるべく、ライトは急降下し頭部の角を、ヴィーナルシファーは腕に爪を掲げそれぞれの武器に電撃を込め、二体同時に角と爪による一閃を振るい、トリヴィクラマを切り裂くと、トリヴィクラマは耐えきれずに大爆発を起こす。

 

「ライトボルディグスの効果! BPを比べ相手だけを破壊した時、ライト自身を回復させる! そして次はお前だ、想竜王ジュランでアタック!!」

 

ジュランによるアタック時効果で再び光黄のライフに光が灯り回復するが、ジュランの力はその程度では終わらない。

 

「コスト5以上の黄色のスピリットがアタックした事で、ジュランの【転醒】を発揮!」

「!!」

「今こそ紅蓮の炎を纏い新たな力を宿せ! 想竜王ジュランを火山竜王ジュランへと転醒ッ!!」

 

自身のシンボルを象徴する無数のパールがジュランへと集まり始めたかと思うと、パールを取り込んで行きその力を高めていき、パールだけでなく今度は赤を象徴するルビーのシンボルをもジュランはその身へ取り込んで行くと、取り込んだ力を介抱するかのようにジュランの身体が赤く染まったかと思うと、次の瞬間、超新星化の如き巻き起こる爆発、そして爆風が晴れると想竜王ではなく、火炎の力を纏う火山竜王ジュランへとその身を生まれ変わらせる。

 

"ガアアアアアアァァァァァーーーーッ!!!"

 

天へと轟く龍の咆哮、その身に炎を宿しながら火山竜王となったジュランは大きく吠える。

 

「火山竜王ジュランの転醒時効果、シンボル一つの相手スピリット1体を破壊ッ!」

「もう忘れちゃった? アブソドリューガはスピリット、マジック、ネクサス、ブレイヴの効果じゃ破壊されない!」

 

ジュランの放つ炎を真っ向から受け切ると、アブソドリューガはまるで平気な様に己を包む炎を振り払う。

 

「これで終わりかい?」

「まだだ!!」

「!」

「フラッシュの効果で、相手ネクサスを破壊する事で火山竜王ジュランは回復する!」

 

もう一度今度は先程よりも強大な火球を撃ち出し、アブソドリューガはまた弾き返そうと構えるが、その炎はアブソドリューガではなく、真横を通り過ぎながら後方に配置されたナウマンシティーへと直撃すると、要塞都市は一瞬にして炎に包まれ場から焼失し、破壊した事でジュランは再び回復する。

 

「アブソドリューガ、ブロック!」

 

ジュランの行く手を阻むべく迎撃に向かうアブソドリューガ。ジュランはそのまま真っ直ぐアブソドリューガへと突っ込み腕を振り上げ、アブソドリューガは攻撃に対して弾き返そうと構え、ジュランもまた迷う事無くその腕に炎を込めて振り下ろし、打ち付けた衝撃が火花となって周囲に飛び散る。

 

「ジュラン、行けッ!!」

 

””グオオオオオオオォォォォォーーーーーッ!!””

 

呼応する二体の龍による咆哮、互いに力を込めてその光景に彼女はただ自分のキースピリットを信じるように言葉を送り、ジュランもまたその声に応えるようにより強く吼えると、ついにジュランの爪がアブソドリューガの鋼鉄の身体を貫く。

攻撃による痛みと何より自身の体が傷つけられたという衝撃から大きく声を荒げるアブソドリューガ。そのままジュランは腕を振り切り、アブソドリューガを一閃。その一撃に絶命するようにその場に倒れ伏し大爆発を起こす。

 

「…………!」

 

アブソドリューガの破壊、その光景にこれまで笑っていたルディアの表情が始めて切り替わる。その光景に何を想うのか、だがそれに構う事無く光黄達は決して攻撃の手を緩めない。

 

「ジュランで再アタック! さらにフラッシュ、イエローリカバーッ! 不足コストはヴィーナルシファーから確保!」

 

マジックの使用によりレベルダウンし肩を落とすヴィーナルシファーだが、その引き換えとしてジュランの体を包む黄色の光が、ジュランを再び回復させる。

 

「ライフで受ける!」

「転醒したジュランはダブルシンボルだ! ライフを二つ破壊する!!」

 

赤き翼を広げて一気にルディアの目の前まで迫ると、腕を振り上げてライフによるバリアを斬り裂き、間髪入れずに炎を込めた拳を叩きつけ、ルディアのライフを破壊する。

 

「……ッ!!」

「最後だ! フィニッシュを決めろ、ジュランッ!!」

 

ルディアの残るライフは2つ、そのライフを削り取るべくジュランは大きく吠えながら自分の力を全て込めるようにこれまで最も巨大な火球を作り上げると、それをルディアへと向けて撃ち放ち、極大サイズの火球は地面を砕き周囲を焼き焦がしながら向かって行く。

 

「フラッシュタイミング! マジック、フェーズチェンジ!」

「!?」

「このターン、コスト4以上のスピリットとスピリットによる効果じゃ僕のライフは0にならない。ジュランの攻撃はライフで受けるよ」

 

ジュランが撃ち放つ火球がバリアへと直撃し、巨大な衝撃と共に爆炎が巻き起こるが、突如として吹き抜ける吹雪が炎と爆煙を吹き払い、そしてルディアは未だ一つ健在だった。

 

「ッ!!?」

 

 

「そんな、あと一歩だったのに……!!」

『打ち損ねちまったか』

 

恐らく彼女にとって自分の全てを出し尽くした最大の攻撃。それが耐え凌がれた事にバトルを見ている烈我もバジュラも思わず言葉を失う。しかし、まだバトルは終わってない。モニターに映る彼女の表情を見て、すぐに気持ちを切り替える。

 

「大丈夫。相手の場にはスピリットもない、次の光黄のターンで確実に決まりだ!!」

『……だと、いいがな』

「?……バジュラ? どういう意味だよ?」

 

唯一バジュラだけは顔を顰め、バトル状況に小さく呟きその様子を不思議に思い尋ねる烈我だが。

 

『確かに今の状況はあの女の優勢だ。だが、まだ奴には手が残ってる。それは……!』

「七罪竜!!」

 

バジュラの言葉に烈我も察した様子で、その反応に対しバジュラは静かに首を縦に振る。

 

『言うなりゃあれはブラックボックスだ。あのフリーって言ったか? 嫉妬の奴がどんな効果を持つか、俺もライトも把握してねぇんだ』

「バジュラも知らない嫉妬……!」

 

此処までまだその嫉妬の七罪竜の姿はない。だが、もしそれがフィールドに現れようものなら一体勝負はどう動くのか思わず息を呑み、そしてバトルフィールドに立つ光黄もその不穏な空気を感じ取る中。

 

 

「……フフ」

「?」

「ハハッハハハハ!!」

 

突然ルディアは高らかに笑い始めたかと思うと、驚く光黄を他所にルディアは歓喜の表情を見せる。

 

「何が可笑しい?」

「いやぁー、ごめんね。随分と手ごたえのあるバトルだから嬉しくて」

「何?」

「君の事もようやく思い出せたよ。確か君達の世界に行った時、そこで戦ったよね」

 

本当に今まで忘れていた様に、当時の記憶を今更ながらに振り返り感慨深かそうに言葉を続けて行く。

 

「随分君は強くなったみたいだね。あの頃とは比べ物にならないよ」

「何が言いたい?」

「嫌ね、君みたいな強いバトラーが好きでさ。ねぇ良かったらさ、君、僕の組織に入る気はない?」

「何?」

 

突然のルディアからの勧誘、笑みを浮かべながらそう言葉を掛けるルディアだが彼女はそれに対して、「ふざけるな!」と一蹴。

 

「お前みたいな奴に誰が加担するか! 冗談にも程がある!」

「あらら、フラれちゃった。これでも本心なんだけどね」

 

少しだけ残念そうなリアクションだが、すぐに「まぁいいか」と気を取り直す様に。

 

「君みたいな強い子がいてくれたら僕も嬉しかったんだけど、それならそれで……バトルを続けようか!」

「……ッ!」

 

冗談にも思えるルディアだが、言動とは裏腹に彼から感じるプレッシャーがより重々しくなるのを感じ、この状況に置いてもなお少しも油断できない様に構える彼女。そして次はルディアのターンへと移り。

 

 

 

─────第9ターン、ルディアside。

 

「僕のターン……。」

 

ターン開始と共に手札に加えた一枚、そのカードを見た瞬間、ルディアの表情が変わり、バトルフィールドに張り詰める空気が一変。

 

「!」

「仲間に出来ないのは残念だけど、君みたいな強い子とバトルできて嬉しいね。お陰で、僕も本気で戦える!」

「今までは、本気じゃなかったと?」

 

肯定するように微笑み一つで返事するルディア、一見唯の強がりにも思えるが、それでも益々強くなるルディアからのプレッシャーにそれが唯の強がりではない事は明白。そしてそのすぐ直後に、フィールドに冷たい冷気が流れ始め。

 

「!」

『な、何か急に寒くなったような……!』

「……!!」

 

冷気に戸惑うライト、そして一方で何か違和感を感じる様にふと光黄は自分の手に視線を置くが、視線に映るその手は突然震え始めていた。

 

「!?」

『光黄様? どうかされました!?』

「…………ッ!!」

 

寒さによる震えではない。まるで何かを拒絶するように、無意識であるにも関わらず本能的にその何かを体が受け入れられない様に震えとして現れていた。

 

「これを君に使うのは、二度目だね」

「!!」

「一度目の時は、時間がなかったし素早く決着を付けたくて使わせてもらった。でも今度は違う。正真正銘全力を出す為に、僕はコレを使わせてもらう!!」

「!!?」

 

狂気に満ちた笑み、そして冷気の中、ルディアの前に寄り添うように現れる龍の姿。

 

『いつでもご命令を、マスター』

「あぁ、行こうか! フリー!!」

 

[Reserve]20個。

[Hand]5枚。

[Field]創界神ヴィシュヌLv.1、ホワイトフィールド(Magic)。

 

 

 

 

「……嫉妬の七罪竜、来るのか!」

「あぁ。今見せてあげるよ。嫉妬の七罪竜、その姿をね!」

 

手に持つフリーのカードを掲げ、そして叫ぶ。

 

「嫉妬の咎を背負いし氷龍、妬むその感情の元、世界の全てを終焉の氷河に閉ざせ!! 氷装鏡龍フリーミラルドをLv.3で召喚ッ!」

 

嫉妬を司り七罪竜。フィールドへ飛び出し、光に包まれながらその力を解放させると、次に姿を現したのは青白い体表を持つ巨大な龍の姿。自身の周囲に吹き荒れる極寒の冷気がフリーミラルドを包み、青白い体と翼が氷に覆われ、それを鎧の如く身に纏いより大きく自身の体躯を見せしめながら鳴き声を上げ、その龍こそ七罪竜が一体、フリーミラルド。

 

「これが、嫉妬の氷龍……!」

『美しい姿ですが……その反面、感じるプレッシャーは重大ですね』

 

「これがフリーミラルドだよ。覚えてるかな? 君と戦った時の事」

「……ッ!!」

 

その姿に彼女も無意識の内に一歩下がり、その様子にルディアは笑みを浮かべ。

 

「その様子だと覚えてないみたいだね?」

「何?」

「僕もさっきまで君のことを忘れたけど、君もまた勝負の事を全部覚えてる訳じゃないだろ?」

「!」

「君は今の今まで、フリーの事を忘れていた。嫌、忘れさせられていたという方が正しいか」

「どういう意味だ?」

「言葉通りだよ。人はあまりに過度な恐怖を感じると本能的にその記憶を思い返さない様封じ込めてしまう。君にとってフリーミラルドがまさにそれに当たるだろう?」

「俺が、恐怖を感じてるだと?」

「違うと思うなら、思い返してみると言いさ。直ぐに思い出せるだろう?」

「ッ!?」

 

頭痛がする様に過去の記憶が鮮明に脳裏を過る。腕の震えを隠す様に両手を抑える彼女だが。

 

『光黄様!!』

「!」

 

彼女の様子を案じる様に叫ぶライト。

 

「ライト……!」

『ご安心ください光黄様。以前の事は存じませんが、今の光黄様にはこの私がおります!! 執事として、必ず光黄様をお守りいたします! だから、安心して下さいませ!』

 

笑顔を向けるライト、何時もと変わらないライトらしい言葉だが、その言葉が何より暖かく何時の間にか腕の震えは止まり、ライトの言葉に彼女は口元を緩ませると。

 

「何度も言うが、俺はお前みたいな執事は雇ってないからな」

『え~、こんな時ぐらい認めてくれてもいいじゃないですか!』

「……ハイハイ。それと、ありがとな。ライト」

『いえ! これぐらい、何時でもお役に立って見せます!』

 

「仲睦まじい良い光景だね。でも、こっちも続けさせてもらうよ?」

 

「『!!』」

「フリーミラルドの召喚時効果、【氷鏡(アイスミラー)】発揮! さぁ、フリー! やっちゃって!!」

 

『承知しました』

 

ルディアに振り返りながら応答を返しながら、再び鳴き声を上げると、その声に連動するように地面から飛び出す氷の柱。

それはそれぞれ光黄のスピリット達の前に聳え、それぞれの氷の柱はライトボルディグス、ジュラン、ヴィーナルシファーの三体の姿を映し。

 

「何をする気だ?」

「【氷鏡】の効果、相手のスピリット1体につき自分のデッキの1枚を裏向き状態でフィールドに置き、コア1個以上を置く事でそのスピリットをBP4000のスピリットとして扱う! 君のスピリットは三体、よって【氷鏡】によるスピリットを3体を召喚させてもらうよ!」

「!!」

 

氷の柱が砕けたかと思うと、その氷の柱は氷に映ったヴィーナルシファー、ジュラン、ライトボルディグスの姿を形作った分身態へと変化する。

 

「!!」

『な、何ですかこれは!? 私!?』

 

「これがフリーの力の一端だよ。相手のスピリットの数に合わせてフリーは氷の分身を生み出せる」

「数で圧倒するつもりか、だが……!」

 

ルディアの場にはフリーを合わせ4体のスピリット、しかしフリーを除いて分身態のスピリット達のBPは4000。ライトボルディグスにはバトルに勝利すれば自分のスピリットを回復させることができる。

 

『数を並べた所で無駄ですよ! 光黄様には指一本触れさせやしませんとも!!』

 

「確かにその七罪竜の効果は驚異的だね。けど、フリーも退けは取らないよ?」

「まだ何かあるのか!?」

「勿論。フリーの真骨頂はここからさ。さらにフリーの効果、【氷装(アイスアームズ)】発揮!!」

「今度は何を……!!」

「見てれば分かるさ。フリー!」

 

フリーは眼光を輝かせたかと思うと、三体の分身態のスピリットはフリーの元へと集まり始め、そして。

 

「【氷装】の効果、それは……【氷鏡】の効果で召喚されたスピリットを任意の数、指定のスピリットに装備させることができる!」

「何!!?」

「氷鏡のスピリット3体全て、フリーへ装備ッ!!」

 

分身たちのスピリット達はさらに巨大な氷の鎧としてフリーの身に装着されると、その体をより強大に、雄々しく広げていく。

 

『ご命令を、マスター!』

「オーケー、それじゃあやろうか? アタックステップ!! フリーミラルドで、アタックッ! 【氷装】の効果で装備したスピリットは、装備した数一つにつき、BP+4000!!」

 

「!!」

 

フリーミラルドの元々のBPはLv.3で11000、そして三体の分身態を装備した事で今やそのBPは23000。今居る光黄場のどのスピリット達をも軽く凌駕していた。

 

「くッ! フラッシュ! マジック、イエローリカバー!!」

「へぇー、二枚目か」

「火山竜王ジュランを回復。攻撃は、ジュランでブロックだ!!」

 

フリーを迎え撃つべく吼えながらジュランはその翼を羽ばたかせ、迫るフリーをその剛腕で受け止める。

 

「BPでは勝てなくても、このターンは凌ぐ!」

「そう上手く行くかな?」

「何!?」

「言い忘れたけど、【氷装】の効果にはまだ続きがあってね、自分のアタックステップ中、【氷装】の効果で装備したスピリットはターンに装備した数まで回復できる」

「なッ!!?」

「これが、どういう事か分かるよね?」

 

【氷装】の効果で三体を装備した事で、ターンに3回まで回復できる。つまりこのターン、フリーは合計で4回攻撃が可能。

 

「そんな……ッ!!」

「ふふっ、どうやらフィニッシュを決めるのは僕たちのようだね。フラッシュでフリーを回復。さぁ、フリー! 好きなだけ暴れておいで!」

 

『それがご命令とあらば』

 

フリーはそのままジュランを弾き飛ばし、弾き飛ばされながらもジュランは両腕に火球を作り出しそれをフリーへと飛ばすが、迫る火球に対してフリーは避けようとはせず咆哮を上げ、身に纏う冷気を吹雪の様に放出すると、あまりの冷気に炎は一瞬にして消え去ってしまう。

 

「!!」

 

驚く間もなく、そのままフリーは今度はジュランに向けて直接冷気を放出し、ジュランは防御姿勢を取って受けようとするが、極度の冷気は一瞬にしてジュランの身体を凍らせ、凍ったジュランに容赦なく激突すると、氷ごとジュランの身体はバラバラに砕け破壊されてしまう。

 

「ジュランが……いとも簡単に!」

『光黄様、来ます!!』

「!」

 

「次だ。フリーミラルドで再アタック!!」

「ッ!! ライトボルディグスで、ブロックッ!!」

 

咄嗟にライトにブロック指示を送り、すぐさまライトはフリーへと自身の最高速度で突っ込みまさに閃光の弾丸、フリーへとぶち当たると、後方へ弾き飛ばすが。

 

『いかに美しい方と言えど、バトルなれば容赦はしませんよ!!』

『どうかお気遣いなく。私は唯の道具ですので……。』

 

『それに』と言葉を続けながら。

 

『どうせ勝つのも私ですので』

『!?』

 

違和感に気付くように自分の体を見ると、自身の羽が凍り付き始め、自分の状態を把握してようやく体が凍える感覚が遅れて流れ始める。

 

『(近付いてだけで、これ程とは……!!)』

「ライト!!」

 

体が凍り、羽もまともに動かさせず、自身の武器であるスピードはこれで完全に殺されたも同然。フリーは一気に決めるようにその凍て付く翼を刃の如く構える。

 

『ッ!!』

 

「フリーは効果により回復。色欲の七罪竜、討ち取らせてもらうよ! フリー!!」

『承知しました。どうか、ご容赦を!』

 

そのまま一気にライトへと迫り、無慈悲なまでにその氷の翼でライトを斬り裂き、斬り裂かれた衝撃が一気に全身へと回る。

 

『ぐァ……こ、光黄様……申し訳、ありません』

「ライトおおおおおッ!!!」

 

彼女の叫びも虚しく斬り裂かれたライトは力尽きる様に爆発四散し、相棒が破壊される光景に、彼女は胸に痛みを感じながら歯噛みするが。

 

「まだ終わらないよ。フリーミラルド三度目のアタック! そして効果により回復!!」

「……ッ! ライフで、受ける」

 

腕を振り上げ、氷を纏って振り下ろすその一撃は斧の如く、展開されるバリアを両断し破壊。

 

「ぐぁッ!!」

「さぁ、終わらせるよ?」

「!」

 

「光黄!!!」

 

モニターに映る信じられない程の光景、追い詰められる彼女の姿に我慢出来ないように必死に叫ぶ烈我だが、ルディアはニッコリと笑みを向けて。

 

「フリーミラルド、最後のライフ砕いちゃって!」

『承知、しました!!』

 

光黄の目の前までゆっくりと迫りながら、近付くだけで展開されたバリアが凍り付き始め、そのままフリーは両腕を振り上げると、両腕に纏うその氷の刃で凍ったバリアを刺し貫く。

 

「うああああああぁぁぁぁぁぁーーーッ!!!」

 

悲痛な叫びと共に彼女の最後のライフは砕かれ吹き飛ばされる光黄、そして最後に勝者となったフリーは勝利の凱歌を思わせるように猛々しく吠える。

 

 

 

 

***

 

 

「光黄いいいいッ!!!」

 

バトルフィールドから弾き出される様に吹っ飛ばされる光黄、咄嗟に飛び出して彼女の身体を受け止めるも、受け止め切れず二人とも地面に体を引き摺らせる。

 

「ぐッ!! 光黄、大丈夫か!!」

「れ、烈我……ごめん……俺……うぐッ!」

「無理に喋んな! それより!」

 

視界の先には遅れてバトルフィールドから元の場所へと帰還するルディア。そして彼の足元にあるライトボルディグスのカードを拾い上げる。

 

「ら、ライト……!」

「色欲の七罪竜、確かに頂いたよ。これであと残りは4枚」

「!!」

「全ての七罪竜、今日こそ頂く。さぁ次は君の番だよ、烈我君」

「ッ!!」

 

次に狙うは憤怒の七罪竜。フリーの姿にバジュラも静かに構え、今正に嫉妬と憤怒の七罪竜による激突が繰り広げられようとしていた。

 

 




どうも皆さま、ブラストでございます!!
やっと第33話更新完了、遅くなって申し訳ありません!!

ですがようやく、念願だった6枚目の七罪竜、嫉妬を司るフリーミラルドを書く事が出来ました!!!漸く登場させれた事に誰よりも感動しております!( ;∀;)

そして早速その効果をチェック!


氷装鏡龍フリーミラルド/8(3)/甲竜、罪竜
Lv.1(1)BP7000、Lv.2(2)BP10000、Lv.3(3)11000
Lv.1、2、3『このスピリットの召喚時』【氷鏡】
相手のスピリット一体につき自分のデッキの上から裏向きでフィールドに置き、コア1個以上を置く事でゲーム終了時までコスト0、Lv.1BP4000のスピリットとして扱い、この効果発揮中、このスピリットと【氷鏡】の効果で召喚したスピリットは相手の効果を受けない。
Lv.2、Lv.3 フラッシュ【氷装】
自分の【氷鏡】スピリット以外のスピリットを指定し、【氷鏡】のスピリットを任意の数、指定したスピリットの下に重ねる。この効果でカードを下に重ねた自分のスピリット全ては、カードを重ねている間、次の効果を全て得る。
・このスピリットの下にあるカード1枚につきBP+4000。
・このスピリットは相手の効果によって手札デッキに戻らず、コアは1個以下にならない。
・このスピリットは自分のターン中、ターンに下にあるカードの枚数と同じ回数だけ、フラッシュで回復できる。
・このスピリットが相手の効果によって場を離れる時、下にあるカードを破棄する事で同じ状態でフィールドに残す。


以上がフリーの効果になります。
今回は光黄vsルディアの対戦カードでしたがリベンジならず。今後どうなってしまうのか!!次回も是非ご期待ください!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。