バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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第35話【七罪竜の真実】

「どういう事だよ、ヘルさん!!」

 

烈我達の目の前に立つヘル、動揺隠せずにはいられずどういう事かと問い正したい心境で一杯だった。

 

「僕も聞かなきゃね。何で貴方がここにいるんですか? ヘルさん?」

「!」

 

口を挟む様に烈我同様、ヘルに問いかけるルディア。

 

「貴方に邪魔されたくなくて、地下の檻に閉じ込めたんだ。それなのに何でここに来られた?」

 

ヘルに今回の作戦について邪魔をさせないよう彼を烈我達から分断。そして閉じ込めたつもりだった。烈我達に解放されたなどの報告は一切ない。にも拘わらず今こうして自分の目の前にいる事が不思議でならない。

 

「あれで閉じ込めたつもりだったのかい?」

「何?」

「元々、この場所を設計したのは私だ」

「は?」

 

突拍子もないヘルの言葉、それに思わず呆気に取られたような声が出る。

 

「この場所の構造はすべて把握してる。お前は知らないだろうが非常用の脱出口まで全てな」

「嘘つきなよ、この場所は全部僕が……!」

「いいや、違う。この場所は……嫌、罪狩猟団という組織そのものを作り上げるように私が仕向けた」

「……アンタ、何言ってんの?」

「まあ急にこんな話してもお前にとっては信じられる訳ないか。何せ、お前にとってはこの計画の実現の為だけに生涯を捧げてきたもんな」

「あぁ、そうだよ! この世界を滅ぼす! それだけが僕の全てなんだ!! 誰かに命令された訳じゃない、僕の意思で──」

「その意思自体、私が作り上げてやった物。そう言っているんだ」

「!!?」

 

一瞬言われた言葉の意味が理解できない様に、否、理解出来る筈がない。

 

「ふざけんな! 僕の意思を作り上げた? 要するに、僕はただ利用されていた……そう言うつもりなのか?」

「つもりも何もハッキリそう言ったんだが?」

「黙れ!! とっととこの場から失せろ! アンタは目障りなんだ!!!」

「それは奇遇だな。私も敗者に用はないんだ」

「何?」

「今解放してやる」

 

意味深な言葉、そして指を鳴らしたかと思うと。

 

「ッ!!?」

 

突然その場から倒れ込み、頭を抱えるルディア。何が起こったのか、烈我は勿論ルディア本人ですら何をされたのか分からない。

 

「うぐッ……ぼ、僕に……何をした……!!」

「言ったろ? お前の記憶は俺が作り上げたものだと。だからその前の状態、つまりお前の記憶をリセットしてる。機械で例えれば初期化作業だな」

「!?」

「安心しろよ。元通りの記憶に戻すだけだ。記憶を消したりとかそんな怖い真似はおじさんしないから。まぁ改竄前と後の記憶が一度に頭の中に流れるから、負荷が掛かってかなり辛いけどな」

「ッ!! ぐあああああああッ!!」

 

「!?」

 

何が起こっているのか状況の整理がつかず訳が分からないままその場に立ち尽くす烈我、一方で倒れるルディアに歩み寄り、足元に落ちているフリーミラルドのカードを拾い上げる。

 

「ッ!! やめろ……フリーは……僕の……!!」

 

取り返すべくヘルに腕を伸ばすルディアだが、それに対してヘルは優しく微笑んだかと思うと、ルディアを起こし上げて見せ。

 

「がっ!」

 

鈍い音を響かせながらヘルは自分の拳をルディアの腹へ捻り込み。

 

「何度も同じ事を言わせないでくれ。お前はもう用済みだ、だから寝てろ」

「ヘ……ル……ッ!!」

 

腕を掴み、怒りを込める様に握り締めながらも意識が果て、その場に倒れ伏すルディア、そして倒れた彼からもう1枚のカードを抜き取り、それは光黄から奪ったライトボルディグスのカード。

 

「ヘルさん……!」

「やあ烈我君、随分待たせてごめんね」

「!」

 

先程までのやり取り等なかったかのように平静な態度で笑うヘル、この状況に置いてその笑みはより一層不気味さを感じずにはいられなかった。

 

「ヘルさん……さっきの、どういう意味だよ?」

「……どういう意味とは?」

「今更とぼけんなよ!! 彼奴の記憶を作ったとか、今回の事仕組んだとか……全部本当のことなのかよ!!」

「……嘘だと言えば、信じてもらえるのかい?」

「!!」

 

ヘルの言葉に対し、頭の中ではヘルにそう言って欲しい気持ちがある。否、あったというべきだろう。だが、冷酷に語る今のヘルに、例え嘘と述べたとしても烈我にとっては到底受け入れられないと本能で理解した。

 

「ヘルさん……! アンタ……ッ!!」

『要するに、今まで俺達を騙してた、そういう解釈でいいんだよなッ?』

「!」

 

誰よりも真っ先に核心に触れるバジュラ。言葉に圧を込め、今すぐにでもヘルに喰らい付かんとばかりに憤怒の感情を、ヘルを睨むその目に込める。

しかし、その目に対してヘルは全く動揺する無く落ち着きを払って見せ。

 

「……騙した、か。随分人聞きの悪い言い方だな」

『実際そうだろうがァ』

「違うよ。少なくとも、バジュラ……今回の件については君は了承済みの筈だ」

 

「!?」

 

突拍子もないヘルの言葉に、驚く様にバジュラを見る烈我。

 

『あぁ? テメェ急に何言ってやがる? ふざけた戯言を言うんじゃねぇよ』

「戯言じゃないさ。まぁ君は覚えてる訳ないだろうがね」

『覚えてるも何も、俺が端からテメェに利用される事を良しとする訳ねぇだろうが。あるのはテメェに対する怒りだけだよォッ!!』

 

ヘルの言っている意味が分からないが、少なくともバジュラが裏切るような真似をする事は無い。これまでずっと相棒として接してきたのだ、それだけは確信を持って言える。

 

「ヘルさん、アンタに聞きたいことは山程あるけど、まずはライト……それは光黄の相棒だ。返してくれ」

「……残念だけど、それはできない」

「!」

 

首を縦に振らず応えるヘルに、緊張が走りバジュラも眉間に皺を寄せる。

 

『テメェ、本当にどういうつもりだ?』

「あぁ、ヘルさん……この際ハッキリ答えてくれ! アンタ、何を企んでるんだ? ルディアみたいにこの世界を壊す事なのか?」

 

「違うよ。私はルディアのような恨みだとか、そんな目的では動いてない。カードバトラーにとってもっとも単純な欲望のままに動いてるに過ぎない」

「?」

「まぁそれは置いておこうか。それより今、私が欲しいのはバジュラ……お前だよ!」

 

「ヘルさん……!!」

『ッ! テメェ……ついに本性見せやがったか?』

 

「おいおい勘違いしないでくれよ。これは必要な事だ、お前にとってもな?」

『あぁ? テメェ、また訳の分かんねぇ事を……!』

「フフフ、色々聞きたいがあるんだろう? 全部教えてあげるよ。無論バトルを通じてね」

「!」

 

不敵に笑いながらデッキを取り出し、烈我へと突き付けるヘル。そして彼は再び指を鳴らすと、二人の周囲を光の輪が取り囲み始める。

 

「これって、バトルフィールド!!?」

『!?』

 

「申し訳ないが、君達に拒否権はないよ」

 

通常ならデバイスを起動させ展開している筈のバトルフィールド。それが前触れもなく展開されていき、完全に不意を突かれ逃げる間もなく、強制的にバトルフィールドへと連れていかれ。

 

「!!?」

『コイツァ!』

 

そして次に目を覚ますと視界に映ったのは、今まで見ていたバトルフィールドとは完全に異質の光景だった。

 

空は光のない黒雲、大地は焼き尽くされたかの如く黒く、随所に見える地割れと隙間から時折噴き出す炎、そして亀裂から覗く地面の底に流れるマグマがフィールドを赤く照らし、その光景を一言で言い表すならば正に地獄。

 

「何だこれ……今までと違う。本当にここがバトルフィールドなのか?」

「あぁ。正真正銘バトルフィールドさ。アイツの力で作り上げたな」

「アイツ……まだ他に何かあるのかよ?」

「さっき言った通り全部教えてあげるさ。バトルが終われば全部ね」

「!」

「断っておくが、今更逃げ出さないでくれよ。私はこのバトルを楽しみに待っていたんだから」

 

本心なのか、笑い掛けるように語るヘルに思わず息を呑むが、それに対してバジュラは烈我の肩に跨ると。

 

『烈我、もうやるしかねぇぞ』

「バジュラ……!」

『結局あの野郎が何企んでんのかは分からねぇ。だからバトルの後でキッチリしめればいい。今はそれよりも……俺はあの野郎にこの怒りをぶつけなきゃ気が済まねぇ。お前だってそうだろ!!』

「……!」

 

バジュラの言葉に烈我は静かに頷く。どの道、逃げ場がない以上ヘルからの挑戦を避ける術はない、ならば受けて立つだけだ。

 

「あぁ。ヘルさん……いや、ヘル! アンタが何を考えてるのか知らない。けど! 挑んで来るからには勝つ!! そしたら洗いざらい全部吐いてもらうぜ!」

『そうだ、覚悟しやがれヘル! 俺らにぶっ飛ばされるのをなァッ!!』

 

血気盛んな目を向け、拳を打ち付けるように意気込む烈我。バジュラもまた荒々しい程に吠えながら構え、そして『行くぞ』と合図を送るようにバジュラはカードの姿へと切り替わると烈我の手に収まる。

 

「それでいい。この状況で今更戦えないなんて拍子抜けもいい所だからね」

「うるせぇ! アンタをぶっ飛ばしたいと思ってるのは俺もバジュラと同じ気持ちなんだ! 負けるつもりはねえぞ!!」

 

正直まだヘルに対して動揺する気持ちはある。しかしそれは二人にとって決してバトルから逃げる理由には成り得ない。バジュラも烈我も覚悟を決め、そして今ヘルに対峙する。

 

 

「始めようか……お互い、悔いが残らぬよう」

「?」

 

そっと小さく吐き捨てるヘルの言葉にどこか不信感を感じながらも、気を取られないよう今はとにかく目の前のバトルに集中する。

 

「それじゃあ始めようか」

「あぁ!」

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

開戦を告げる合図、幕を上げるかのように大地から今一度噴き上げる炎。賽は投げられた今、もう誰もこのバトルを止める者はいない。例え、どういう結末を迎える事になろうとも。

 

 

 

 

 

 

 

 

────第1ターン、ヘルside。

 

[Reserve]4個。

[Hand]5枚。

 

「私のターン、まずはブレイドラを召喚。そしてバーストセット」

 

ヘルの先行。呼び出されたのは小さな羽をパタパタを動かすブレイドラ、そして即座にバーストを伏せ。

 

「(いきなりバースト、何を仕掛けて来るつもりだ)」

「さてまずはこれから。黒皇龍ダークヴルムを召喚!」

「!」

「このスピリットは本来のコストは6、けれどライフのコア1個をトラッシュに送る事でこのスピリットのコストを3へ。よってダークヴルムを召喚」

 

黒い雷がフィールドへ降り注ぐと、眼光を輝かせながらフィールドに姿を見せる黒皇龍、ダークヴルム。

 

「!」

「ダークヴルムの効果でライフを減らした場合バーストは発動できない。だが、伏せたこのバーストは例外だ」

「何!?」

「ライフ減少時でバースト発動! 選ばれし探索者アレックス(Rv)! 不足コストはブレイドラから確保し、召喚」

「!!?」

 

ヘルの言う通りアレックスはバーストセット中、お互いの効果を受けない唯一のスピリット。ダークヴルムでライフを減らせば問題なくバースト効果が発揮される。

 

「アレックスの効果、メインステップ中にこのスピリットを疲労させることでドローかコアブーストを行う事ができる。今回はコアブーストを選択させてもらうよ」

 

アレックスは手を重ね祈りを捧げると恵みを齎す様にコアが置かれる。

 

「さて、私はこれでターンエンドだよ」

 

 

 

 

────第2ターン、烈我side。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

 

「俺のターン! 煌星の第五使徒テティスとレイニードルを召喚!」

 

赤いルビーが砕けると共に連続して出現するテティスとレイニードル、意気込む様にフィールドに降り立つとそれぞれ勇敢な鳴き声を上げる。

 

「(相手が何かを仕掛ける前に、速攻で行く!)」

「……」

「こっちもバーストセット! アタックステップ、行け! テティス!! アタック時効果で1枚ドロー!」

 

先陣を切るようにテティスに指示を送ると、その場を駆け出しヘルへと突っ込むテティス。

 

「甘いな。ダークヴルムのBPは4000? テティスじゃ勝負にならないよ?」

「甘いのはそっちだぜ! フラッシュで【煌臨】!」

「!」

「このカードはコスト3か4のスピリットに煌臨する場合、ソウルコアを支払う事無く煌臨できる! よってテティスをダークヴルムレガリアに煌臨ッ!!」

 

駆け出すテティスの身体が紫電に包まれ輝くと、地を駆けるテティスの身体が宙へと浮いたかと思うと、翼を広げて宙を羽ばたくダークヴルムレガリアへと進化を遂げていく。

 

「いきなり煌臨、中々やるじゃないか」

「煌臨時効果でコア1個の相手スピリットを全て破壊する! 対象はダークヴルムだ!」

 

対峙する二体のダークヴルム、レガリアは紫電をダークヴルムは黒炎を互いの相手へ撃ち放ち、ぶつかり合う雷と炎に巻き起こる爆炎。レガリアは爆炎を突っ切りダークウルムへとそのままぶち当たり、上空へ突き上げると再度紫電を撃ち放ち、雷撃によってダークヴルムは身体を貫かれ爆散する。

 

「破壊したスピリット1体につき、さらに1枚ドロー! そしてメインアタックだ!!」

「ライフで受ける」

 

そのままレガリアはヘルに向かい、展開されたバリアへ喰らい付きバリアを破壊。

 

「レイニードルも続け!!」

「それもライフで受ける」

 

間髪入れずにレイニードルは尾をバリアへ叩きつけ、先程の攻撃と合わせて一気にヘルのライフが二つ砕かれていき、これでヘルの残りライフは2つ。

 

「……」

「(何だ……随分呆気なさすぎるような……嫌、このまま決め切るだけだぜ!)」

 

違和感を感じながらも一気に決めきるため気持ちを強く持つ烈我、当然そこに油断等全くないのだが、まだ彼は気付いていない。

 

 

 

 

────第3ターン、ヘルside。

 

[Reserve]7個。

[Hand]3枚。

[Field]選ばれし探索者アレックス(Rv)Lv.2(2)BP6000。

 

「さて私のターン、アレックスのメイン効果、自身を疲労させることでこのスピリットにボイドからコアを追加。さらに黒皇龍ダークヴルムをもう一度、Lv.2で召喚。ライフのコアをトラッシュに送る事でコスト3として召喚する!」

「!!?」

 

残りライフは2つ、ただでさえ追い込まれているというのにそれでもなおライフを犠牲にしてまでダークヴルムを呼び出すのは完全に烈我にとって予想だにできない事。

 

「なんで態々ライフを減らしてまで!?」

「すぐに分かるさ。さらにバーストセットし、マジック! フォースブライトドロー! 手札が4枚になる様にドロー!」

「(一気に4枚!?)」

 

一気に手札を増やしにかかるヘル、そして増やした手札を視線に入れ一瞬口元を緩ませると。

 

「さらにマジック、フェイタルドロー! 自分のライフが2以下ならデッキから3枚ドロー!」

「ッ! 序盤からライフを削ってたのはこの為だったのかよ」

 

これでヘルの手札は一気に6枚、どんな手が繰り出されるのかと構える烈我だが。

 

「アタックステップ。ダークヴルム行け、アタック時効果でBP5000以下の相手スピリットを破壊!」

「!」

 

翼を動かし地を這うように飛び出すと、黒炎のブレスをレイニードルに向けて放ち、炎に飲まれたレイニードルは爆散し、その爆風を突っ切って一気に烈我へと迫る。

 

「これで終わりじゃない。さらにフラッシュで【煌臨】!」

「何ッ!?」

 

ダークヴルムの身体は呼応するように赤く輝き、そしてヘルが繰り出すそのカードは。

 

「赤きビッグバンを輝かせろ! 黒皇龍ダークヴルムを超新星龍ジークヴルムノヴァへ煌臨ッ!!」

「ノヴァ!!?」

 

ダークヴルムの身体が赤い炎に包まれ、そしてその身を完全に覆い隠したした瞬間、ビッグバンの如く放たれる眩い閃光。光に一瞬視界が遮られながらも直ぐに烈我達は前を向くと、そこに映ったのは巨大で炎の如く赤い身体に白の装甲を纏う龍──超新星龍ジークヴルムノヴァ。

 

「これが……ノヴァ!」

「ジークヴルムノヴァの煌臨時効果、トラッシュのコア全てをこのスピリットに置き、さらに「ヴルム」を含むスピリットに【煌臨】していたなら、ライフが5になるようにボイドからコアをライフへ」

「!!!」

 

ライフを減らした本当の目的はジークヴルムノヴァによるリペアを狙っての事。あと一つだと思っていた筈のライフが一気に元の状態にまで戻される事は、対戦相手からすれば絶望的にも思える。一瞬言葉を失うが、そんな烈我の動揺を他所にノヴァは止まらない。

 

”グオオオオオオオォォォォォ────ッ!!”

 

「!」

 

大地や空気までをも振るわせる程の咆哮を轟かすノヴァの咆哮、それに思わず言葉を失っていた烈我も咄嗟に我に返るが。

 

「煌臨元となったダークヴルムの効果を発揮、このカードに煌臨したスピリットが「星龍」を持つ時、相手のライフの一つを破壊する」

「!?」

 

口を開き、溜め込む炎。だがその色は純粋な赤ではなくダークヴルムの時と同じ黒い炎、それを烈我に目掛けて撃ち放ち、即座にバリアが展開されるが黒煙の炎はバリアを飲み込みライフを砕く。

 

「ぐあッ!!」

 

衝撃に思わず仰け反る烈我だがあくまでこれはジークヴルムノヴァの効果に過ぎない。本命となるジークヴルムノヴァ自身のアタックはこれからであり。

 

「ジークヴルムノヴァはダブルシンボル、どうする?」

「ライフで受ける!!」

 

ブロッカーがいない以上それ以外に手はない。ジークヴルムノヴァは両腕に炎を込めて行くと、炎を込めた両拳をバリアへ打ち付け、二つのライフを一気に砕く。

 

「がああああああッ!!!!」

 

一気にライフを削られる衝撃と痛み、痛みを堪えるように歯を喰いしばりながらも伏せているバーストに視線を向け。

 

「ライフ減少時で……バースト!! エクスティンクションウォールッ!!!」

「!」

「バースト発動時に失ったライフ分、ボイドからコアを追加。よってライフ2つを回復!!」

「ほぉ……やるね。けれど」

 

再びライフに灯る光。そして一方で攻撃を終え、ジークヴルムノヴァは悠々と自陣へその場から引き返して行くが、直後烈我は思わずその場に膝を突き。

 

「ゼェ……ゼェ……!」

「随分と苦しそうだね。もう限界かい? いや君はとっくに限界なんて超えてるか」

「うぐっ……!!」

 

休む間もない連戦。ヘルの指摘通り、嫌、誰の目から見ても烈我の状態など明らかだろう。

 

「(ッ……駄目だ、視界も霞んで来た。けど……まだ……!)」

『(そうだ、まだ倒れんじゃねぇぞ!! 烈我ァッ!)』

「!」

 

頭に響くバジュラの声、その声に烈我も目を見開く。

 

『(あと少しだ。あの野郎に勝てば全部解決だ! だからまだ寝んなよ? 踏ん張って俺にバトンを繋いでみろ!)』

 

喝を入れるようなバジュラの言葉、それに対し先程迄荒れていた息遣いも落ち着き、口元を緩ませると、踏ん張るようにその場から立ち上がる。

 

「言われなくても! 一度立ったバトル、降りる訳ねぇだろ!! 勝つ瞬間まで最後まで俺は立ってやる!!」

『あぁ、そうでなきゃなッ!!』

 

バジュラの声に応える様に叫ぶ烈我、その様子にヘルは。

 

「バジュラから何かしら激励があったみたいだね。ともかくバトルを続行で安心したよ」

「……ヘルさん、アンタの目的が何かは知らねぇ。アンタがやろうとしてることが何か俺には分かる筈もねぇ」

「それじゃあ、どうする気だい?」

「決まってる。アンタの目的が何であれ、今回の事全部アンタが仕組んだのならここで全部終わらせる! アンタをぶっ倒してライトやキラー達も取り返す!! それだけだ!!」

「……あぁ、それでいい。君はそうやって真っ直ぐぶつかってくればいい。有言実行できるだけの強さを、見せてくれ」

 

まるで烈我を試すような物言い。だが、今更そんなヘルの態度に心情を乱される事は無い。息を整え、集中するように自分のターンを迎え、カードをドロー。

 

 

 

 

────第4ターン、烈我side。

 

[Reserve]8個。

[Hand]4枚。

[Field]魔界皇龍ダークヴルムレガリアLv.1(1)BP7000。

 

「メインステップ! 創界神アポローンを配置、配置時の効果で神託だ!」

 

神託によって落とされたカードは順に煌星の第五使徒テティス、ライトブレイドラ、龍星の射手リュキオースの3枚。

 

「神託対象は2枚でアポローンにコア2個を追加! さらにダークヴルムレガリアをLv.3に!!」

 

力を増す様に吼えるレガリアだが、BPはジークヴルムノヴァに及ばない。しかしそれでも、今は烈我にとって攻撃のチャンス。

 

「(ノヴァのアタック時は相手の手札を全て破棄するか、BP20000まで好きなだけ相手を破壊する効果……ここで打ち倒すしかねぇ)」

 

ノヴァの存在をそのままにしておけば間違いなくこのバトルの主導権は相手に握られたも同然。だからこそ確実にこのターンでノヴァは倒さなければならないが、倒すべきその存在はあまりにも強大。

 

「かかっておいで。それともまさか、たった数ターンで諦めるのかい?」

「誰が……ッ!!」

「失礼。君には愚問だったね」

 

ヘルは確信している。当然このターン、烈我が仕掛けて来る事を。

 

「アタックステップ! ジークヴルムレガリアでアタックッ!!」

 

勇猛果敢に突っ込んでいくレガリア、紫の雷を込めた牙を剥き出しに前へと飛び羽ばたいて行く。

 

「フラッシュタイミング! 行くぜ、マジック!! シーズグローリーッ!!」

「!……ルディアを下したカードか!」

「効果でジークヴルムノヴァのBPを-7000だぜ!!」

 

マジックにより放たれる電撃、その稲妻の閃光は真っ直ぐジークヴルムノヴァを捕え直撃。迸る電撃に体が痺れ硬直して行くが。

 

 

 

 

「その程度……ノヴァには通じない。弾き返せ」

 

ヘルの言う通りBP-7000程度では到底破壊するには至らない。ヘルの指示に体を痺れさせながらもノヴァはニヤリと笑うと腕を振り上げ即座に体に走る電撃を掻き消して見せた。

 

「どうやら無駄撃ちだったのかな?」

「いいや、これでいい!」

「!」

 

圧倒的な力を誇るノヴァの姿、だがそれを目の前にしてなお烈我は意に介す事が無いように、彼もまた笑って見せた。

 

「フラッシュ! ダークヴルムレガリアをさらに【煌臨】!! 紫電と紅蓮を纏いし魔界の龍! 闘志に震える魂をもう一度呼び起こせッ! 魔界幻龍ジークフリードネクロ! ダークヴルムレガリアに煌臨!!」

 

レガリアを包み込む黒い炎、そして次の瞬間紫電を帯びながら炎を振り払う龍の姿────魔界幻龍ジークフリードネクロ。

 

「ジークフリードネクロの煌臨時効果!! コスト0、1、3、6、9のスピリットをそれぞれ召喚できる! 俺が選ぶのは勿論こいつらだ!」

 

手に持つ杖を振り上げると黄泉から舞い戻るようにその場に姿を現すレイニードルと煌星の第五使徒テティス、そして。

 

「俺のキースピリット! 此奴を前に絶対はねぇ! 鉄壁の壁だろうが無敵の相手だろうが一撃必中必殺の矢を叩き込めッ! 龍星の射手リュキオース、召喚ッ!!」

 

ネクロが開くた紫の渦から吹き上げる紅蓮の火柱、そして真っ赤に染まるその炎を駆け抜け飛び出す白獣に跨りし龍。その龍こそ正しくリュキオースの姿である。

 

「一気に揃えて来たか」

「……こっからだ! リュキオースの召喚時効果、【超祈願(スーパーブースト)】。赤の創界神すべてにコア3個ずつ! 対象スピリット召喚による神託と合わせて合計コア4つをアポローンに追加!」

 

リュキオースより持たされる光がアポローンを照らし、その輝きを受け取るようにアポローンに追加されていくコア。

 

「まだリュキオースの効果は続いてる! 【龍射撃】の効果でBP20000以下の相手を破壊!! 標的は唯一つ、狙えリュキオースッ!!」

 

矢を構え定めた標的はジークヴルムノヴァ、紅蓮の炎を灯したその矢を勢いよく射貫くとノヴァへと真っ直ぐ放たれ、咄嗟に攻撃に対しノヴァは両腕を構えて受け止めていく。

ノヴァのLv.3のBP25000、対して龍射撃の上下は20000。龍射撃の矢などノヴァの力ならば簡単に弾き返せるだろう、そう本来ならば。

 

「!」

 

瞬間、ガクッと膝を崩し態勢を傾かせると矢の威力を受け切れないように足を引き摺らせて行く。

 

「この為に、転醒の効果を捨ててまでシーズグローリーを発動させた訳か」

「あぁ。今のノヴァのBPは18000! 射程圏内、捕えたぜ!!」

 

懸命に押し返そうと力を籠めて行くが、矢はなおも止まらない。そして受け止めた両腕を払いのけ、矢はノヴァを貫き絶叫を上げながらその場で大爆発を起こす。

 

「アポローンの【神域】の効果! 星竜を持つスピリットがアタックステップ中、相手スピリットを破壊した時、ライフ一つを破壊だ!!」

 

フィールドを包む爆風の中に赤く輝く一筋の光、爆風の向こう側でアポローンは静かに矢を構えると、先を見据えたように直線状に閃光の矢を放ち、爆風を突っ切って放った矢はバリアを穿ち、ライフを破壊。

 

「ッ!!」

「まだ行くぜ! フラッシュタイミングでアポローンの【神技】! 効果でアレックスを破壊する!!」

 

アポローンが放つ第二矢、一切の狂いもなく今度はアレックスを正確に捕え射抜かれたアレックスは炎に包まれて爆発四散し、アポローンの効果によりさらに一枚カードをドロー。

 

「そのままジークフリードネクロのメインのアタックッ!! 行っけぇッ!!!」

 

間髪入れずに接近するネクロ。腕を翳して紫電の雷を至近距離で放つと、再展開されたバリアを即座にまた破壊し、なおもヘルのライフが砕かれて行くが。

 

「ぐッ! 中々やる……だけど、ライフ減少時でバースト発動! 選ばれし探索者アレックス(Rv)!!」

「なッ……二枚目!?」

「アレックスをバースト召喚し、その後アタックステップを終わらせる」

 

その手に握られた杖を振るうと、まだ動けるはずのテティスやリュキオース達の動きが一瞬に強いて静止させられ、身動き一つできずこれ以上のアタックを封じてしまう。

 

「!……俺はこれで、ターン終了」

 

このターンで決め切る算段ではあったのだが、叶わず打つ手が無ければターンを明け渡す以外にできる事は無い。一先ず脅威であったノヴァを退ける事が出来たとはいえ、まだ相手のライフもそして手札も十全。何より烈我にとっては未だ底知れぬ気配を感じるヘルを前にして、とても一息すら付ける間もない様に思えた。

 

 

 

 

────第5ターン、ヘルside。

 

[Reserve]12個。

[Hand]6枚。

[Field]選ばれし探索者アレックス(Rv)Lv.2(2)BP6000。

 

「私のターン、まずはアレックスのメイン効果。自信を疲労させることでボイドからコア1個をこのスピリットに追加」

 

不気味な程、静かに淡々とメインステップを進めて行くヘル。だがこれはあくまで嵐の前の静けさに過ぎなかった。

 

「まずは戦竜エルギニアス、続けてワイズドラゴンをLv.2で召喚」

 

手札を切って呼び出したるは闘牛のような外観を持つエルギニアスと、杖を持ち魔術師の様な姿を持つ龍、ワイズドラゴン。

 

「ワイズドラゴンの召喚時効果、相手ネクサス1つを破壊」

 

烈我の場にはネクサスのカードはない。一見ワイズドラゴンの効果は不発に思えるが。

 

「さらにワイズドラゴンのLv.2、Lv.3の効果! 本来のコスト5以上の自分のスピリットが持つネクサスの破壊効果は、「起幻」を持たない創界神の破壊も可能とする!」

「!!」

 

ワイズドラゴン自身のコストは5。つまりワイズドラゴン自身もその効果の対象となり、手に持つ杖を翳すと降り注ぐ落雷がアポローンを貫き、フィールドから消滅してしまう。

 

「次にワイズドラゴンからコア1個、アレックスからコア2個をリザーブへ」

「(コアを溜めている? 今度は何を……!)」

「フフフ」

 

不穏な空気に包まれる中、ヘルは静かに微笑すると次の手札を構え。

 

「行くよ。烈我」

「……!」

「青き大海に眠りし傲慢の王!」

「!?」

 

召喚口上の様に告げるヘル、その言葉に対してヘルが口にした「傲慢」の言葉に思わず耳を疑うように反応する烈我、何を呼び出そうとしているのか、まさかと有り得ない筈の思考が一瞬脳裏を過るが。

 

『(彼奴……!)』

 

バジュラもまた烈我同様の思考が頭に浮かび、それでもなお有り得ないと頭に浮かんだその思考を否定するが、へルはなおも先の言葉を続けそして、二人の思考が確信である事を証明させてしまう。

 

「その牙で全ての愚者を噛み裂けッ! 召喚……海牙龍王キラーバイザーク!」

「『!!?』」

 

ヘルが呼び出したる一枚、瞬間フィールドを満たす様に海面が広がり、そしてエルギニアスの足元に黒い影が浮かび上がったかと思うと、その影は次の瞬間エルギニアスを一瞬で海の中へと引き摺り込み、暴れる間すらなくその影に飲み込まれ。

 

「!?」

「不足コスト確保の為、エルギニアスは破壊。そしてLv.2で今こそ姿を見せろ、キラーッ!!」

 

膨れ上がるように海面が浮き上がり始めたかと思うと、爆発するかのように膨れ上がった海面が吹き飛び、弾き上げられた水飛沫を浴びながら姿を見せる影。

 

「な、何で……!」

『(あの野郎、どういう事だッ!!)』

 

その姿を前に烈我も、バジュラも当然動揺を隠せる筈がなかった。正真正銘ヘルが呼び出したのは七罪竜の一体である、キラーバイザークの姿そのものであった。

 

”ガアアアアアアアァァァァァァ────ッ!!!”

 

傲慢を司るキラー、その咆哮はフィールドに広がる海を一瞬にして荒れ狂わせてしまう程、だがその咆哮を聞いてなおヘルは高らかに笑い。

 

「ハハハハハハ!! まだだ、まだこの程度で驚かないでくれ。勝負はまだまだ序盤なんだから!」

「何を言って!?」

「私の、いいや……俺の!!」

「!」

 

これまでずっと被っていたその仮面を脱ぎ捨てるかのようにヘルはその本性を曝け出す。

 

「俺のバトルはここからだ。最後まで足搔け、それがお前の役目だ!!」

「役目だと、どういう意味だ?」

「考える必要なんざねぇ。お前ただ俺を滾らせてくれればいい、ただそれだけだ!!」

 

歪んだ笑みと共に高らかに声を荒げるヘル、それに呼応するようにキラーバイザークは今一度吼える。

 

 

 




皆様お久しぶりです!!
ブラストです!!
第35話如何でしたでしょうか!!!

まずまた更新期間が空いてしまい、申し訳ありませんでした。
最近ウマで娘なアレにすっかりドハマリしてしまい(›´ω`‹ )←
4月こそは、高頻度での更新を……!!

そして35話はついにヘルvs烈我戦!開幕!!ラスト、ヘルによって呼び出されたのは傲慢の七罪龍、キラー!!果たしてバトルの行方は!そしてヘルの目的は!!
次回も堂々更新して行きますのでどうか是非、どうぞご期待ください!!!!
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