バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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第41話【立ち上がる者達】

「この世界の、最期!?」

 

舞台は変わりスピリッツエデン全土に向けて発信されるヘルからのメッセージ、彼からの衝撃的な発言に烈我達は勿論、彼と同じく世界中の誰もが動揺せずにはいられない。

 

『おい、オメガデッド! テメェとヘルは一体何を企んでやがる!!』

 

到底聞き捨てならないヘルの言葉に、オメガデッドに睨むような視線を向けながら問いかけるバジュラ。

 

『焦らずとも今にヘル本人から語る。どの道我の要件はこれだけだ』

『あぁ! おい待ちやが──!」

 

呼び止めるバジュラの言葉も聞かずオメガデッドはワープの如く光となってその場から消え去り、先程迄この場にいた筈のオメガデッドの姿はヘルと共に上空に映し出され、既にオメガデッドはヘルの元へと帰還していた。

 

 

 

 

「オメガデッド、戻ったか」

『あぁ。キラーのカードはきっちり回収して来たぞ』

「上々。こっちもさっさと済ませようか」

 

オメガデッドの姿を一瞥しつつ、ヘルはモニターの向こう側、つまり全世界へ向けての言葉を続けて行く。

 

「まずは初めに紹介しておこう。今俺の傍らにいる龍、此奴の名はオメガデッドノヴァ。七罪竜の頂点に君臨する絶対的王者、嫌、絶対なる神とでも言おうか。最凶を誇る俺の相棒だ」

 

モニター越しと言えど威風堂々たるオメガデッドの迫力に多くの人々がただならぬ重圧を感じ取っていた。ざわつく世界の様子を察しているようにヘルは笑いながら言葉を続けて行く。

 

「一体この世界の何人が七罪竜の存在を知っている事だろう。まずは此奴の力がどれ程の物か、知らぬ者にも分かるように説明しようと思う」

 

振り返りヘルの視線の先に映るのはとある町の風景、そしてヘルの傍には大勢の人間の姿があり、彼ら全員屈服させられているようにヘルの前に膝を突く態勢で俯いている。

 

「バトルの実力こそが全てのこの世界、ルールに乗っ取り彼等の街を全員奪わせていただいた。無論今私の隣にいる彼等を全員打ち破った上でね」

 

敗者である彼等は何も言い返せない様にただ屈辱に耐え、悔しさに表情を歪めるのみ。

 

「さて今から見てもらうのはオメガデッドのほんの力の一端だ」

 

ヘルが告げると同時にオメガデッドは街へと視線を向け、片腕を街に向けて翳し、何をするつもりなのか、この世界全て視線がヘルとオメガデッドへと向けられ。

 

「オメガデッド、やれ」

『!』

 

オメガデッドは瞳孔を見開くと小さなボールサイズの光弾を作り出して街へと向けて撃ち飛ばし。

 

 

 

刹那の瞬間だった。ヘルが口角を上げたと同時にボールサイズの光弾は突如として弾け炸裂するかのように爆発起こす。ヘル達との街全てを呑み込む規模の爆炎と化して。

 

「「「「「!!!!!!!!」」」」」

 

街一つが簡単に炎の中に飲み込まれ焦土と化す。映画や空想の中でしか有り得ないような光景が今現実として目の前で行われる。あまりにも非現実的な光景を前に世界中の誰もが衝撃に言葉を失った。

 

「……何だよ、コレ」

 

誰もが絶句する中、数秒間を置いてようやく烈我から放たれる一言。だが言葉を発してなおまだ目の前の光景を現実としてすぐには飲み込めなかった。

 

「ハハハハハハ!! いかがだったかな? これがオメガデッドの力だ! 全ての欲望を司る即ち全知全能の神だ。最も、是はこれは力の一部に過ぎないけどな」

 

ただいるだけで神々しく、立っているだけでも圧倒される程の迫力、オメガデッド。相棒であるヘルだけは唯一高らかに笑い、周りから見れば狂気としか思えなかった。

 

「安心してくれ、今破壊したあの街の住人はここに居る彼等だけだ。あの街は無人、神に誓って誰も巻き込んでいないと宣言しよう。最も神が実在するとしたら私はオメガデッド以外に見た事はないがな

まぁそんな話は別にどうだっていい、早速本題に入ろうか」

 

火の海に包まれた街から視線を外し、この光景を見ている全員、世界中に向けてヘルは腕を構えて。

 

「三日後」

 

指を三つ立てて彼は告げる、悪魔の言葉を。

 

「今から三日後、俺はこの世界の全てを壊す!」

「「「「「!!!」」」」」

 

何言っているのか、悪魔の言葉を理解する為に、全世界が一瞬静寂と包まれた。だがそんな静寂のぶち壊すかのように悪魔はさらに言葉を続ける。

 

「今オメガデッドの力の一端を見せたのは俺の言葉が唯のでまかせでないと信じてもらう為だ。また今この場にいる彼等をこれから違う街々へ送り届ける。

この光景をまだ信じられないと思う者達も彼等から直接話を聞けばいい」

 

淡々と言葉を述べて行き、指を鳴らすとオメガデッドは目を光らせ先程までヘルの傍にいた大勢の人間達の姿は一瞬にして消え、ヘルの言葉通り消えた人々はそれぞれバラバラに各地の街へと強制ワープさせられてしまう。

 

「これで余計なのは減った。さて全世界の諸君、ここまで聞いてなお俺の言葉が単なる嘘かハッタリだと思うか? 生憎だが、諸君が今見てるのは正真正銘全て現実、俺の言葉も真実だ! 

オメガデッドの力を全て引き出せば、世界一つ簡単に消せる。もとよりこの世界を作り出したのもオメガデッド自身。ならばこの世界を消せるのも道理!!」

 

衝撃的な言葉の連続だが、驚く間もなくヘルはまた笑みを浮かべ。

 

「だがあくまでも俺はこの世界のルールに則る。猶予は三日。もし、その間に俺とオメガデッドを倒せる猛者がいなければこの世界を滅ぼす。

滅ぶのが嫌なら道は一つだけだ。俺を倒して見せろ、以上。放送をこれにて終わる。待っているぞ」

 

空に映る画面の向こう側で指を差すヘル、光景を眺めている烈我達にはヘルの示すのが自分達に思えて仕方なかった。

画面に映る光景はヘルの笑みを最後に、ブツと切断される。

 

 

 

『ヘルの野郎オオオオオッ!!!』

 

煮え滾る程の憤怒を込めて吼え叫ぶバジュラ、だが気持ちは烈我達も同じように怒りを抑えられない様に拳を握りしめる。

 

「烈我……!」

「分かってる止めるぞ!! 俺達で絶対、ヘルの奴をッ!!!」

 

光黄に対して強く答えながら、それ以上は言葉に出さずとも強い使命感と覚悟を表情に表す彼等、そこへ。

 

『ここに居たんだ。無事探せてよかった』

「!」

 

彼等へと合流する一人の人物、情報屋であるマチアであった。

 

「マチア!? 何でここに!?」

「だから探しに来たって言ったでしょ。それよりさっきのヘルって奴の放送見てたよね?」

「あぁ」

「だったら余計な説明はいらないよね。今すぐ来て」

「どこに!?」

「罪狩猟団の元本拠地、ルディアが目を覚ましたみたいでさ」

「「「!!?」」」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

"こんな世界、滅べばいい。"

 

これはとある一人の少年が抱く感情。

 

少年は自らが生まれたこの世界、スピリッツエデンに対して幼い頃から想い続けてきた。

 

実力だけが全てのこの世界、力が無ければ虐げられ、居場所を失われ、縋れる者すら一人もいない。この世界全てが力だけで支配される無秩序というわけではないが、少なくとも少年が生きてきた環境はそのような場所だった。

 

生まれながらにして両親もなく、一人で生きてきた少年。だが幼さ故孤独で力を持ち合わせなかった彼は世界の憎しみだけを抱えてこの世界で果てる運命だった。

 

 

だが果てるしかない運命に救いの手を差し伸べる者がいた。

 

 

男は少年を助け、生まれて初めて人の温かさに触れる事ができた。命の恩人である男に感謝の気持ちを言い表せい程。だがしかし、それでも少年が世界に対する憎しみは消えなかった。

 

この世界で過ごした地獄は、もはや一時の幸せでは癒えない程に憎悪を抱き続けていた。だからこそ少年は力をつけ、世界を滅ぼす道を選ぶ事となった。

 

 

 

少年の名はルディア。世界に虐げられたゆえに、世界を壊す道を選んだ悲しき少年にして偽りの記憶による憎悪を抱かされし、愚かな少年。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ッ!!」

 

魘されるように飛び起きる一人の男性、罪狩猟団首領のルディア。

 

「…………まるで悪夢、だったな」

 

小さく呟きながら青年はこれまでにあった記憶を思い返す。

 

自分を捨てた両親、否。

 

自分を裏切る友の存在、否。

 

死を待つしかいない自分の運命、否。

 

彼がずっと抱え続けてきた憎しみの記憶は全て嘘偽り、そんな記憶など存在しない。ならば何故、答えは単純だ。他者によって植え付けられた記憶であるからだ。

 

誰の仕業か?他でもない、自分に救いの手を差し伸べたと思っていたあの男────ヘルが全ての元凶だ。

 

 

"ッ!!!"

 

痛みが走るような感覚と共に、徐々に浮かび上がるルディアの本当の記憶が蘇る。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『ルディア、もし何でも願い事を叶えられると聞いたらお前は信じるか?』

「えっ?」

 

ルディアに近い容姿の男性、他でもない彼の父親だ。今の今まで忘れていた筈の肉親がハッキリと記憶に甦る。

 

「父さん、何言ってるの?」

『私は選ばれた。どんな願いでも叶えるチャンスを与えられた!』

「チャンス……?」

『……母さんを、生き返らせたい』

「!」

 

ルディアの両親は決して息子を傷つける非情な人間等ではなかった。父親である彼は寧ろその逆、息子であるルディアの事を本当に愛していた。

そして母を生き返らせたいと口にする理由、言葉の通り既にルディアの母親はこの世を去っている。ルディアを生んですぐの事だった。父としての願いは家族三人でまた暮らしたいという欲望。

 

 

 

 

だがそれが叶う事はなかった。

 

 

***

 

 

 

 

「……父さんッ!!!」

 

まだ幼いルディアの目の前で倒れる父親、ルディアの方へ視線を向けながらゆっくりと腕を伸ばし。

 

「ルディア……ごめん、な」

 

涙染まるルディアの頬を触れながら、最期の言葉を告げる。もはや遺言だった。最期の声をルディアに届けると腕を下ろし彼が次に動く事はもう二度と無かった。

 

「あ……あぁ……あ゛ああああああああぁぁぁッ!!」

 

まだ幼い少年にとって目の前の光景を絶望と言わず何と言えるだろう。だが、彼にとっての絶望はまだその先にあった。

 

『さて、漸くこれで終わりか』

 

足音を立てながら奥から姿を見せるは父親と戦った相手、他でもない当時のヘルの姿だった。

 

「お前は……此奴の身内か」

「ッ!!!」

 

他でもない仇の姿、ルディアの内に初めて憎悪、否、ドス黒い殺意の感情が沸き上がる。

 

「お前が……父さんをッ!!!」

「おぉ、随分な殺意だな。とても幼い子供とは思えねぇ」

「お前だけは、絶対に────」

「許さない、ってか。一つ言っておくが勝負自体は正当にやったつもりだぞ。俺とお前の親父だけじゃねぇ、ここにいる奴ら全員、命を捨てる覚悟を以てこの勝負に臨んだ。そしてその結果の勝者が俺ってだけだ」

 

ヘルの周囲に横たわる多くのバトラー達、だが全て彼ら自身の欲望が招いたが末の結末、願いを望み命を賭した。当然の結果だ。

 

だが、まだ幼いルディアにとっては今目の前で起きた事全てを飲み込める訳がない。例え頭でヘルの言葉を理解したとしても、父の仇であるヘルに、溢れる憎悪を止める術などある筈もない。

 

「黙れ! 父さんの仇……どんな手を使ってでもお前を殺す!!」

「どうやって? 今ここで俺と戦う力もないお前に何ができる?」

「ッ!!?」

「まぁ、その歳でそれだけの殺意を込められるのは大したものだな。けどな、どう足掻いても今のお前じゃ足りないんだよ。実力も、俺に対する殺意も……!」

「何だと────」

 

『決着は着いたようだな』

 

「「!」」

 

見下すヘルに反論しよう声を放つ瞬間、頭の中に直接響くような声。声の咆哮を見上げると二人の前に姿を現す金色の光を放つ巨大な竜の姿、神と言うべき七罪竜の頂点、オメガデッドの姿。

 

「!」

「おぉ、お前が……願いをかなえてくれる神か」

 

『オメガデッド、それが我の名だ。人間の尺度で測る神という存在に我が同一かどうかは知らぬが好きに例えればいい』

 

それより、と勝ち残ったヘルから今度はルディアへと視線を向ける。

 

『どうやら部外者が紛れ込んでいたようだな』

「!」

『案ずるな人の子よ、危害は加えぬ。だが……暫し眠っていろ』

「……ッ!!!」

 

圧を込めるかのようにルディアを一瞥し、その瞳を見た瞬間、ルディアは眠るように意識を失ってしまう。

 

「おいおい、どんな手品だよ。これが神様の力っていう事か」

『さぁな、余計な事を言うつもりはない。手早く本題に入ろう』

 

オメガデッドは再びヘルへと視線を戻し、品定めするかのような目でヘルを見る。

 

「言え、お前の望みは何だ?』

 

勝ち残った者にのみ願いを叶える資格が与えられる。そしてヘルが望むものは。

 

「決まっている。俺が望むのは、生涯に一度とない最高のバトルをする事だ」

『最高のバトル、何だそれは?』

「決まっている。最強と言うべき力と、その力を使うに足りる強敵だ。俺はこの生涯、その為だけに人生を捧げてきたつもりだ」

 

拳を握り締めながら飢えるような目で願いを言い放つ。これまで長きに渡り様々な人間の願いを叶えてきたオメガデッドではあるが、そのような願いを聞いたのは生まれて初めてだった。

 

『分からないな。我がここに呼び寄せたのはお前を含めこの世界で最強と言うレベルにふさわしい強者ばかりだ。そしてお前は願いを叶える為、その者達を打ち倒す程の力を持っている。最強の力とそれを振るうに相応しい強者、二つとも既にこのバトルで満たされているのではないのか?』

 

不思議に思う疑問をそのままヘルへ訪ねるが、オメガデッドの言葉にヘルは舌打ち。

 

「……そんな訳ねぇだろうが。確かにここの奴らとのバトルはそれなりに楽しかった。だが、ただそれだけだ! こんな奴らじゃ、俺の魂は何一つ満たされねぇ!!! こんな奴らを倒した程度でどうして俺が最強だと実感できる? 違うだよ、俺が求める強者も力もこんなもんじゃねぇ。もっともっと最強を実感できる強さ、そして俺の力全てを突き込んで戦うに値する強者が欲しいんだよッ!!」

『最強の力と、それを扱うに足りる強者……。』

「最強の力、例えるならお前の力が俺は欲しい」

『我自身をだと?』

「あぁ、神様の力。俺は確信してるお前こそが最強の存在だと。そんなお前の力を手にして、そしてその力を出し尽くせる相手が俺は欲しい!」

『我自身を求めるか、やはり人間はどこまでも、強欲だな』

「それが人間だ」

 

ヘルと言う人間と真正面から向き合い、暫く無言のまま考え込むと。

 

『ヘルだったな。残念ながらお前のその願い、叶えられない』

「何だと!?」

 

あっさりと告げるオメガデッドの言葉、聞き流せない一言にヘルの目付きが鋭くなる。

 

『我を望むというなら、この力、お前にくれてやってもいい』

「!」

『だがそれだけだ。ハッキリ断言しよう、ただでさえお前は強すぎる。その上で我の力を振るうというならそれに拮抗できる強者などこの世界、嫌、全世界に存在せぬ』

 

数多の世界を渡ってきたオメガデッド自身がハッキリとそう告げる。最初は諦めきれないようにオメガデッドに訴えかけようとするが、声が喉元まで差し掛かった所で力を抜く様に腕を下ろし、出かかった言葉を止める。

 

「……そうか。他ならぬ神様がそう言うなら、そうなんだろうな」

『……』

 

願いを叶えられない、ヘルにとってただ唯一の欲望だというのにそれがかなわない願いであるという事はどれほど絶望と言えるか、当時の本人の気持ちはおよそ計り知れなかった。けれど。

 

『一つ提案がある』

「?」

『今現在お前の満たせる程の強者は存在しない。だが可能性のある者なら或いは……!』

「可能性?」

『簡単な話だ。お前が望む強者を一から育て上げる。我の魂を分け、可能性のある者をお前が望む強者へと成長させる!』

「!!」

 

オメガデッドからの提案にヘルの目の色が変わる。

 

「ハハハ、成程可能性のある奴を育てるか。その発想はなかったぜ、流石は神様だな!!」

『あくまでも可能性があるという話だけだがな』

「それでいい、その話、俺も乗らせてもらう。仮にダメならダメでまた考え直すさ。それよりも」

 

早速と言わんばかりに傍で倒れているルディアの方を向き、笑みを浮かべたかと思うと。

 

「可能性のある者、第一候補は彼奴がいい」

『何だと?』

「俺に対する恨み、憎悪、人が強くなるのには十分な感情だ。彼奴は必ず強くなるだろう。こいつの親父は結構な実力者だった。その血族ならまず可能性は十分だ。ただし、このままだけなら不十分だけどな」

『どういう意味だ?』

「個人への恨みなどたかが知れている。どうせならもっと、そう! 世界全てを憎むほどの憎悪があればより一層強大な力を持った魔王って奴に育つだろうぜ」

『…………』

「出来るよな、オメガデッド? 俺の願いの為に……!」

 

悪魔とも思える言葉と共に無慈悲に笑うヘル、オメガデッドはただ黙ってヘルの言葉に首を縦に振った。

 

 

 

 

そこから先は以前ヘルが烈我へ語った通りだった。オメガデッドの力でルディアの記憶は改竄。オメガデッド自身は6体の龍へと魂を分けそれぞれの主を選ぶ事となり、6体の内の一体、嫉妬を持つフリーミラルドはルディアを選び、偽りの記憶と共に力を手にしたルディアは罪狩猟団を組織し世界を滅ぼす為に、七罪龍を求める事となり、そして今現在へと至る。

 

「……」

 

全ての記憶を取り戻した上で、これまでの自分の行動を振り返る。記憶を作り替えられすべてのヘルの思惑通りに行動させられていた事。本当に愚かだったと自分自身を呪いたくなる程だ。

 

「はは……何年も何年も自分の父親の仇を忘れて世界を滅ぼそうなんて……滑稽だよね。ホント僕」

 

絡まる複雑な心境に自分はこれからどうすればよいのか、何一つ答えが出ないまま自問自答を繰り返すルディアだったが、そこへ"ガチャ"と部屋のドアが開き。

 

「よぉ、ようやくお目覚めだなボス。嫌、ルディア」

 

部屋へと入ってきたのはドレイクの姿、すぐ傍の椅子に腰かけ荒々しい態度で声をかける。

 

 

「……ドレイク。何の用?」

「フン、一応確認と状況報告しに来ただけだ。立場上俺はまだテメェの部下だからな」

「今更部下だなんて別に思ってないくせに」

「……否定はしねぇ。けど、状況が状況だ。余計な話は抜きでとりあえず今の状況を簡潔に伝えるぞ」

 

ルディアが目覚めるまでの出来事を、そして今はヘルが全世界に向けて宣戦布告した内容を手短に話し伝えていく。

 

「ヘルが」

「『猶予は三日、俺とオメガデッドを倒せる猛者がいなければこの世界を滅ぼす』、奴はそう言った」

「……」

「野郎の宣戦布告のせいで今この世界全体で混乱が起きてる。事態の収拾と出来る限りの住民の避難が優先事項だ」

「…………それで、僕にどうしろっていうのさ」

「言わなくても分かってんだろ。混乱を落ち着かせる為に多くの人員、組織が必要不可欠。今この事態の収拾に動けるのは他でもねぇ俺達、罪首領団しかねぇ!」

 

ドレイクの言う通り今の事態を落ち着かせるために動ける組織は罪狩猟団をおいて他にない。

 

「組織全員お前が指揮しろ。臭ェ台詞で言いたくねぇが非常時だ。この世界を守る、それが今の俺たちの役目だろ」

「……この世界を守る?」

 

ドレイクの言葉を静かに呟いたかと思うと、軽く鼻で笑って見せると。

 

「何で今更そんな事が言える? 僕はこの世界を滅ぼそうとしてたんだよ。なのにこの後に及んで世界を守るだなんてどの面下げて言えばいいんだよ!!」

 

世界を滅ぼす為だけにこれまで組織を動かしてきた。にも拘らずいざ世界の滅亡が目の前に迫れば今度は世界を守るために動くというのは確かに虫のいい話にも思えるが。

 

「どの面も何も、俺達がこれまでやってきた事はもう覆せねぇ。だったらこれからどうするかで動くしかねぇだろうが。償う気があるなら今はとにかく世界を守るしかねぇだろ」

 

「テメェはどうなんだ?」と、鋭い視線のままルディアへと疑問を投げつけるが、ドレイクからの問いに答えられないまま俯くルディア。

 

「分かんないよ僕には……自分がどうしたいのか、自分がこれからどうすればいいのかなんて

僕はこの世界を滅ぼしたいと思ってた。けど、その目的は今はもうヘルに奪われた。一番憎むべき相手を忘れて、その相手にまんまと利用され尽くした……僕はただの愚か者にすぎない」

「何だと?」

「世界を救うだのなんだのもう僕には何一つ資格なんてないよ。組織が必要なら君が指揮すればいい、この世界がどうなろうが、もう僕はどの道存在価値のない人間なんだから」

 

全てを諦め、もう何もかもどうでもいい。それがルディアの心境だった。俯いたままの彼にドレイクは立ち上がると、ルディアの胸倉を掴み。

 

「テメェ、何時からンな腑抜けになりやがった! あァ!? 仮にも俺の上に立ってた人間だろうが!!」

「ハハ。怒らせちゃったかな。けど君にも悪いと思ってるよ。僕が愚か者だったせいで君もミコちゃんやディスト、ガイト君にヴァン君も、他の皆も全員巻き込んじゃった」

「今更な事言ってんじゃねぇ。テメェの意思はねぇのか!!」

「僕の、意思?」

「あぁ。言っとくが俺はどっかの甘ちゃんみたく善意だけで世界を救いたいだなんて思っちゃねぇ! 散々俺達を利用してくれたあの野郎に必ず一矢報いたい! お前も同じじゃねぇのか? ルディアッ!!」

「…………」

 

詰め寄るドレイク、けれどまだルディア本人とって答えは出ない様に沈黙したまま。煮え切らない態度がもどかしいように胸倉を掴む手により力を籠めるが、すぐにルディアを突き返す様に手を離す。

 

「今のテメェに何を言っても埒が明かねぇ、手っ取り早く此奴で済ますぞ」

 

懐からデッキを取り出し、ルディアへと突き付けながら言い放つドレイク。

 

「待ってよ、ドレイク。僕は……!」

「何を言おうが罪狩猟団のトップは今もテメェで変わりはねぇ。だからこそテメェをぶっ倒さなきゃ団員全員指揮するなんて無理だ。いいからバトルしろ、お前を倒して罪狩猟団は俺が引き継ぐ」

「……」

 

ドレイクを前にこれが避けられないバトルである事を理解し、「分かったよ」と首を縦に振り、場所を変え改めて向い合う二人。

 

「このバトル、本当に意味があるのかい?」

「一々説明する義理はない。ただ始める前に一つだけ言っとく」

「何かな?」

「俺やミコに罪悪感を感じてるなら、このバトル手加減抜きの本気で来い。いいな?」

「……君がそう言うなら」

 

ドレイクからの要求を承諾し、戦う準備を終えると互いにデッキを構えて叫ぶ。

 

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「先行は俺から行くぞ! スタートステップ!!」

 

バトルフィールドへと転送される二人、ドレイクからの先行でバトルは幕を開ける。

 

────第1ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]4個。

[Hand]5枚。

 

「俺のターン、創界神アヌビス、スサノオを配置!」

 

開始早々現れる二体の創界神、配置時によりそれぞれ神託が発揮されアヌビス、スサノオ共に神託対象は2枚の為、コアが2個追加される。

 

「ターン終了」

 

 

 

 

────第2ターン、ルディアside。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

 

「僕のターン、こっちも創界神クリシュナ、ヴィシュヌを配置」

 

ドレイク同様、ルディアをまた序盤から2枚の創界神を展開すると、神託を発揮させ同じく神託対象は両方とも2枚ずつの為、コアが2個ずつ置かれる。

 

「バーストセット。僕もこれでターン終了」

 

 

 

 

────第3ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]5個。

[Hand]4枚。

[Filed]創界神アヌビスLv.1、創界神スサノオLv.1。

 

「メインステップ、暴走竜バリオウをLv.2で召喚。召喚によりスサノオとアヌビスに神託。さらにマジック! 護国の威光だ。デッキから3枚ドローした後、手札を3枚かもしくは系統「地竜」か「海首」を持つカード1枚を破棄、俺は轟将龍ゴルゴノオビトを破棄。

アタックステップだ、バリオウ! 行けッ!!」

 

最初の攻撃を仕掛けたのはドレイク。指示に対してバリオウは振り返りながら頷くと、ルディアに向かって突っ込んでいく。

 

「アタック時効果で1枚ドロー、さらにトラッシュのゴルゴノオビトの効果。俺の地竜がアタックしたならトラッシュの此奴を手札に戻せる!!」

「……手札6枚、容赦ないね。ライフで貰うよ」

 

ライフで受ける事を宣言し、バリオウは遠慮なく爪を掲げバリアを切り裂きライフが砕く。

 

「ッ!!」

「ターンエンド。どうした? その程度じゃねぇだろ?」

「言ってくれる……人の気も知らないで」

「腑抜けた奴の気持ちなんざ知る訳ねぇ。知りたくもねぇ! いいからとっとと全力を出しやがれ、ルディア!!」

「……君がそう言うなら!」

 

捲し立てる様な言葉に対し僅かながらルディアの目が変わるのを見逃さない。少しだけ警戒を強めるようにドレイクも表情を切り替える。

 

 

 

────第4ターン、ルディアside。

 

[Reserve]7個。

[Hand]3枚。

[Field]創界神ヴィシュヌLv.1、創界神クリシュナLv.1。

 

「行くよ、永久凍土の輝きを持ちし龍! 絶望を指し示すその光を焼き付けろ!! 宝龍アブソドリューガ!!」

 

空より降り注ぎ雷が大地を穿ち、衝撃によって突き出る巨大なクリスタルの結晶。結晶の中に眠りし巨大な龍が目を覚ますと、クリスタルを砕き飛び出し姿を現すはハイドカードの一体、宝龍アブソドリューガ。

 

「来やがったか。ハイドカード」

「アタックはなし。僕はこれでターン終了だ」

 

 

 

 

────第5ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]4個。

[Hand]7枚。

[Field]暴走竜バリオウLv.2(2)BP5000、創界神スサノオLv.1、創界神アヌビスLv.1

 

「俺のターン、来い! 神に宿る紅蓮から生み出されし龍の化神ッ! 恐竜武神ムラクモレックス、来やがれッ!!」

 

コスト確保によりバリオウはレベルダウンするも、代償を引き換えに大地を足跡を刻みながら現れるムラクモレックス。スサノオの化神でもあるムラクモレックスはアブソドリューガを前にしても怯む事無く雄叫びを上げる。

 

「幾らハイドカードでもまだレベルもBPたかが知れてる。アタックステップ! 遠慮はいらねぇ。やれ! ムラクモレックス!!」

 

指示とほぼ同時に駆け出しルディアへと迫っていき、自陣のアヌビスとスサノオは化神であるムラクモレックスに力を授ける様に構え。

 

「アタック時効果、【天界放】! アヌビスのコア2個をムラクモレックスに置く事でこのスピリットのBP以下の相手を破壊。コアが追加された事でムラクモレックスはLv.2、BP10000以下の相手を破壊する!!」

 

握りしめた草薙剣に炎が灯り、行く手の先に立ち塞がるアブソドリューガに向けて、炎を斬撃をアブソドリューガへと振り下ろす。

 

「無駄だよ」

「!」

 

ルディアの一言と共にに"ガキィイイッ!"と斬撃音が響き渡りアブソドリューガにムラクモレックスの一撃が炸裂する。だがその身で斬撃を受けた筈のアブソドリューガの身体には傷一つ入っておらず、まるで平然とした様子で笑いながら受けた剣を弾き返す。

 

「アブソドリューガは如何なる効果でも破壊されない。ムラクモレックスの効果は通じないよ!」

「ッ! 鉄壁は健在か。だがムラクモレックスの能力はまだある! 俺の場に青のシンボルがあればさらに相手の創界神からコアを2個取り除き、ターンに一度ムラクモレックスは回復する。まずはクリシュナのコアを寄越せ!」

「!」

 

アブソドリューガから離れ、クリシュナを標的に定めると剣を振るい斬撃を飛ばし、クリシュナは防御の構えを取って攻撃を受け止めるも自身に乗っていたコア2個を除去されてしまう。

 

「ムラクモレックス、メインのアタック!」

「ライフで受ける!」

 

進撃の足音を鳴らしながらルディアへと歩み寄り、展開されたバリアを一太刀で切り払いライフを破壊。

 

「くッ!」

「もう一撃だ! ムラクモレックスで再アタック! 再びアヌビスのコアをムラクモレックスへ置きLv.3、さらに今度はヴィシュヌのコアを貰う!」

 

再度放たれる斬撃波がヴィシュヌへと直撃し、力を削ぐようにコアが奪われ片膝をつき、その神の横を走り抜けながら二撃目の攻撃をルディアへと繰り出す。

 

「フラッシュタイミング、マジックロープ!」

「ッ!?」

「バリオウを指定。ムラクモレックスの攻撃はライフで受けさせてもらうよ」

 

少ない手札の内の一枚を切って発動するマジックだが、ムラクモレックスには何ら影響は無く、ムラクモレックスは構う事無く剣での斬撃をライフによるバリアに叩き込み、間髪入れずそのまま大口を開けてバリアに喰らい付いて噛み裂き、ライフを破壊する。

 

「ぐ……ぅッ!!」

 

衝撃と痛みが堪えるように表情を歪ませるが、一筋縄で行く程甘くはない。

 

「まだ終わりじゃないよね? マジックロープの効果で指定したバリオウは可能なら必ず攻撃してもらう!」

「チッ、バリオウ行け!」

 

白い光の縄がバリオウを拘束し戦場の場へと引きずり出される。腹立だしく思いながらもアタックを強制された以上、ドレイクに拒む手はない。

やむ無くバリオウを突っ込ませるが。

 

「アブソドリューガでブロック」

 

待っていたとばかりに目を輝かせるとアブソドリューガは突っ込んで来るバリオウを片手で掴み上げると、勢いよく地面へ投げつけ叩き付けられたバリオウは爆発四散してしまう。

 

「アブソドリューガの効果! バトルで相手を破壊した時、ライフ一つを回復する!」

 

勝利に吠えるアブソドリューガの咆哮、それは恵みを齎す様にルディアのライフの一つが再び光を取り戻して再生。これこそがルディアの狙いであり初めからムラクモレックスではなくBPの低いバリオウを誘き出し、失ったライフのリペアを見越してアブソドリューガを呼び出していたのだ。

 

「ハイドカードの力、やっぱり面倒だな。それとも、流石はボス、って言った方がいいか?」

「別に。少しは満足してくれたかな?」

「少しは、な。けど別にまだお前もこれで全力って訳じゃないんだろ?」

「…………」

「余計な事は語らねえか。まあいい、テメェが全力だろうが無かろうが勝つのは俺だ。ターンエンド」

 

 

 

 

────第6ターン、ルディアside。

 

[Reserve]9個。

[Hand]2枚。

[Field]宝龍アブソドリューガLv.1(1)BP5000、創界神ヴィシュヌLv.1、創界神クリシュナLv.1

 

「僕のターン、まずはアブソドリューガをLv.3にアップ!」

 

宝龍は高まる自身の力を鼓舞するようにさらに金属音のような咆哮を轟かせるが、レベルアップのみで終わる筈がない。

 

「もう一枚、僕はこのカードを使わせてもらうよ」

「!」

「ネクサス、ダイヤモンドの月をLv.2で配置させる!」

 

ルディアの背後から、空へと昇る白銀の月。フィールドを照らす白銀の光、アブソドリューガは心地良いかのように歓喜の声を上げるが、対照的にムラクモレックスは身を照らす光を嫌うかのように影に体を隠す体制で盾を構える。

 

「なッ!? それは……!!」

「悪く思わないでよ? 僕の本気を望んだのは君だ」

 

当然ドレイクにとってそのカードの効果は把握している。自分にとって、それが最も最悪のカードである事を。

 

「(ッ!! 相手とバトルした赤のスピリットは問答無用で破壊される効果……厄介なんてレベルじゃねぇな)」

 

自身のデッキはスーパーディラノスやダイノブライザーを筆頭とする赤デッキ。勿論赤のスピリットがデッキの大半を占め、赤使いのバトラーにとっては天敵と言って良いだろう。

 

「僕のターン、終了だ」

 

 

 

 

────第7ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]6個。

[Hand]6枚。

[Field]恐竜武神ムラクモレックスLv.3(5)BP13000、創界神アヌビスLv.1、創界神スサノオLv.1

 

「(……ネクサスの効果は面倒だが赤のスピリットじゃなきゃ問題はねぇ!)」

 

たかがカードを一枚場に出されたぐらいで止められてたまるか、と奮起するようにターンシークエンスを進めていくドレイク。

 

「メインステップ! ライデンハイドラ、召喚だ!! 召喚時の効果で系統「地竜」を持つムラクモレックスにコアを追加!」

 

双頭の龍の姿を持つライデンハイドラ、鳴き声を上げながらムラクモレックスを潤すようにコアを追加。青のスピリットであるライデンハイドラならばネクサスの効果が及ぶことは無いが。

 

「相手の召喚時効果発揮後によりバースト、貰うよ?」

「!」

「バースト発動! 甲竜封絶波!! バースト効果によりまずはムラクモレックスをデッキの下に!!」

 

白く輝く鱗粉のような光がムラクモレックスを囲い、辺りを見回すが逃げ場はなく次の瞬間、嵐の様にムラクモレックスの周囲は吹き荒れ、抗う術はなく為すがままに吹き飛ばされ、デッキボトムへと送り返されてしまう。

 

「まだだよ、さらに相手の「起幻」を持たない創界神を破壊する! 僕が選ぶのはスサノオ!!」

「!!」

「化神共々、退場してもらうよ!!」

 

白き光は一つに収束されレーザーの如くスサノオへと放たれると、高速のレーザーはスサノオの身体を貫き、声を上げる間もなくスサノオは絶命し、破壊されてしまう。

 

「(……ッ!! 完全にやられた。これが彼奴の狙いか……!)」 

 

ダイヤモンドの月に意識を集中するあまり、他への意識は完全に疎かになるがあまりの油断。主力であるムラクモレックスの消失と己の判断に苛立ちを覚えるが、今この状況への打開策は無く、無い袖を振るう事は出来ない。苛立ちと悔しさ交じりの声で「ターンエンド」、と宣言するが。

 

「アブソドリューガ、Lv.2、3の効果を発揮。相手がこのターンアタックを行っていないなら2枚ドローさせてもらう」

「……チッ、好きにしな」

 

三度目となるアブソドリューガの咆哮、デッキのカードはアブソドリューガの声に共鳴するかのよう引き込まれ、2枚のカードがルディアの手札へと加わっていく。

 

 

 

 

────第8ターン、ルディアside。

 

[Reserve]3個。

[Hand]4枚。

[Field]宝龍アブソドリューガLv.3(5)BP12000、ダイヤモンドの月Lv.2(3)、創界神ヴィシュヌLv.1、創界神クリシュナLv.1

 

「マジック、リカバードコア。効果でボイドからコアを一つ、アブソドリューガに追加。さらに僕自身のライフを一つ回復させる!」

「またライフを……!」

 

現在のルディアのライフは4、まだライフ差はドレイクが勝っているが全体の状況を見ればどちらが優勢なのかは明白であった。

 

「さらにアブソドリューガをLv.2にしてもう一枚、ネクサス、機巧城を配置!」

 

ダイヤモンドの月に並び新たにルディアの場に築き上げられる要塞とも言うべき巨城。その効果は相手が自分のライフを減らさねば2枚ドローする強力な効果であり、ルディアの場の一枚一枚が着実にドレイクを追い込んでいた。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

────第9ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]9個

[Hand]6枚

[Field]ライデンハイドラLv.3(4)BP7000、創界神アヌビスLv.1

 

「(このままじゃジリ貧だな。どうにか奴の防御を崩さなきゃ話にならねぇ)」

 

無理に攻めようとすれば自分のスピリットが犠牲になるのは必須。けれどこのまま何もしなければルディアの手札を増やすのみ。

 

「ライデンハイドラをLv.1にダウン。白の鉄壁、ぶち破らせてもらう!! 此奴でなッ!!!」

「!」

 

力強く構えるその一枚は。

 

「俺の怒り、憎悪……その全てを喰らえ! 己が身を焦がす程の獄炎を滾らせろッ!! 獄炎龍バーニングドラゴン、Lv.2で来やがれッ!!」

 

火山の噴火するかの如き衝撃と地響き、高温のマグマがフィールドを赤く染め上げ、獄炎に溶けた大地から拳を突き上げ飛び出す黒龍。アブソドリューガ同様、ハイドカードの一種、バーニングドラゴン。

 

”グオオオオオオオォォォォォ────ッ!!!”

 

マグマに拳を叩きつけながら叫ぶバーニングドラゴン。アブソドリューガはバーニングドラゴンの姿を前にまるで因縁のある相手かの様に睨み、バーニングドラゴンもまたガンを飛ばし睨み返す。

 

「バーニングドラゴン、やっぱり使って来たね」

「お前が俺に渡したカードだ。使うのは想定済みだろ」

「……」

「アタックステップッ!!」

 

ステップ開始と共に、まだ指示を受ける前から既にバーニングドラゴンもアブソドリューガも戦闘態勢に入るように構え出す。

 

「バーニングドラゴン、風穴を開けて来い!! アタックだッ!!!」

「アブソドリューガ、ブロック!」

 

””ガアアアアアアアアァァァァァ────ッ!!!””

 

獄炎龍と宝龍の咆哮。互いに突っ込み、力比べの様に組み合う二体の龍。両者共にLv.2。BPはバーニングドラゴンが10000に対し、アブソドリューガのBPは9000。

 

「BPはこっちが上だ!!」

「まだだよ、ダイヤモンドの月の効果発揮!」

「!」

「ダイヤモンドの月の効果、相手スピリットをブロックしたスピリットをBP+3000!」

 

最初は力で勝るバーニングドラゴンが押して行くが、ダイヤモンドの月光が二体を照らし、月の光にバーニングドラゴンは力が抜かれるように体勢を崩し、好機を掴む様にアブソドリューガは吼えながらバーニングドラゴンを押し返し始める。

 

「アブソドリューガのBPは12000、このまま決めるよ!」

「バーニングドラゴンの力がこの程度じゃねぇのはテメェが一番知ってるだろ!」

「!!」

「フラッシュタイミング! マジック、ダイノパワー! 不足コストはライデンハイドラから確保ッ!!」

 

不足コスト確保によりライデンハイドラは場から消滅。そしてダイノパワーの効果によりBP+3000されるバーニングドラゴンだが、ここからがバーニングドラゴンの本領。

 

「バーニングドラゴンの効果、自分のアタックステップ中、自分のスピリットのBPが上がった時、俺の赤のスピリット全てをさらにBP+3000!」

 

バーニングドラゴンのBPは16000まで跳ね上がりアブソドリューガの剛腕を一気に弾き返すと、拳に炎を込めてアブソドリューガの身体に叩き込み、強烈な鉄拳による一撃はアブソドリューガを遥か後方まで吹っ飛ばす。

 

壁際まで吹っ飛ばされ、勢いよく壁に激突するアブソドリューガ。土煙を巻き上げるが、アブソドリューガ耐えきるように煙の中から立ち上がる。

 

「決めろ、バーニングドラゴン!!」

「甘いよ!」

「!?」

「フラッシュタイミング、鉄壁ウォール! 不足コストはアブソドリューガ自身から確保!」

 

この状況においてまさかのレベルダウン。力の減少にアブソドリューガは地面に手を突く態勢で体を支え、バーニングドラゴンは止めを刺すべく尻尾を地面に叩きつけて飛び上がると最大パワーを込めた炎の拳をアブソドリューガの頭上へ叩き込み巻き起こる大爆発。勝負合ったかと思われるが。

 

「鉄壁ウォールの効果、このバトル終了時に相手のアタックステップを終了。さらにソウルコアを支払った時、バトルした自分のスピリットは破壊されない!」

「!?」

 

爆風の中に煌めく眼光。バーニングドラゴンによる渾身の一撃を受けてなお堪えて見せるように拳を払い除け起き上がるアブソドリューガ。

 

「バトル終了。そして忘れてないよね? この瞬間、ダイヤモンドの月の効果発揮!! バトルした相手の赤のスピリットを破壊する!」

「ッ!!!」

 

如何にハイドカードと言えど赤のスピリットであるバーニングドラゴンもその効果の例外ではない。力を出し尽くしたように疲労し片膝を突く龍をダイヤモンドの月光が強く照らしつけ、月の光にバーニングドラゴンの身体は光となり、泡となってフィールドから消え去ってしまう。

 

「これでアタックステップは終了。もう手はないよね?」

「……バーニングドラゴン! ぐッ、ターンエンド」」

「エンド時の効果、機巧城の効果でライフが減ってなかった場合にさらに2枚ドロー!」

 

相手の防御を崩す為に呼び出した筈のバーニングドラゴンだが、結果を見れば相手の防御を崩す事は叶わずアブソドリューガも健在。完全にルディアが一枚上手だった。

 

 

 

 

────第10ターン、ルディアside。

 

[Reserve]12個。

[Hand]5枚。

[Field]宝龍アブソドリューガLv.1(1)BP6000、ダイヤモンドの月Lv.2(3)、機巧城Lv.1(0)、創界神ヴィシュヌLv.1、創界神クリシュナLv.1

 

「ドレイク、もう勝負はあったみたいだよ」

「あァ? どういう意味だ!」

「君も僕も実際にハイドカードを触れて分かってる筈だよ。このカードがどれ程強大な力を持つか、バーニングドラゴンが破壊された今、もう勝負は決した」

「……」

「圧倒的な力の差、この世界で君は何度も味わって絶望してきた筈だ! そして今この世界の頂点に立つヘル。奴の力は僕も、ハイドカードも凌駕する。どんなに怒っても悲しんでも何も結果は変わらない。どれだけ足搔いたってどうしようもない壁に人は唯、無力でしかないんだ。それこそが絶望だ!!!」 

 

ルディアの言葉、少なからずドレイクにも思う所はある。ルディアと同様ドレイクもずっと力に虐げられ、誰かの支配から逃れるために力を求めてきた。より強い力を、その為の目標がバジュラだった彼だが。

 

「……それがお前の本音か?」

「何?」

「絶対的な力の差、俺はずっとお前にそれを感じてたよ。どうすれば勝てるのか、バジュラさえあればお前を超えられると思ってたが結局俺はバジュラに選ばれなかった」

 

「でもな!」と目に強い力を込めて。

 

「もう俺は壁を前に言い訳すんのは止めたんだよ。絶望したくなるような力の差、それを見せつけられてもなお俺に勝ちやがった馬鹿がいた。だから気付いたんだよ。絶望を前に諦めんのはただ自分がそれ以上カッコ悪く傷つかない為の口実でしかねぇ!!」

「!?」

「だから俺は戦う! 誰に何を言われようが構わねぇ。どれだけ惨めでもいい、黙って滅びを受け入れたくねぇんだよ、俺はこの世界を……彼奴と生きて行く決めてんだよ!」

 

どれだけ力の差を見せつけても決して諦めず真正面からぶつかってきた烈我とこれまでずっと自分を支えようとしてくれたミコの表情が脳裏に浮かぶ。

 

「ルディア、もう一度聞くぞ? お前はどうなんだ?」

「ッ!!」

「絶望したままで終るつもりか? お前は本当にそれで後悔しねぇのか!!」

「……僕は、僕は……!!」

 

ドレイクの言葉に、ルディアの頭の中に様々な感情が巡る。自分がどうしたいのか、どうするべきなのか、正解のない答えに未だ迷いが晴れないが。

 

「ルディア、言っとくがただお前が強いってだけ俺やヴァン達はお前に従ってた訳じゃねぇぞ」

「えっ?」

「お前がどんな理由で彼奴ら引き込んだにせよ、ディスト達はお前に恩義を感じて着いて行くと決めた」

 

誰からも必要とされなかったディストと、自分の居場所を求めていたガイト。利用する目的があったとはいえ、確かに二人はルディアに救われたと本心で感じ、恩義に答えると心に誓った。

 

「ミコは俺に着いてきただけに過ぎねえが、俺やヴァンはお前の強さに平伏して従った。けど単純な力だけでお前が強いと思ってた訳じゃねぇ。俺達がお前が強いと思ってたのは実力だけじゃねぇ、何事にも揺るがないお前の信念、その全てにおいて俺達じゃ及ばねぇと思い知らされてた」

「僕の信念……!」

「そうだ! 今の俺たちじゃテメェにはどう足掻いても勝てねえ、悔しいがそう思っちまう程の覇気がテメェにあった。今のままじゃ勝てねえ。だから俺達はお前の部下になってその背中を見続けてきた。いつかお前を超える為に……! なのに……!!」

 

耐え切れない程の怒りを拳に込め、絞り出すように拳を強く握り潰しながら。

 

「今更お前が腑抜けたら今までお前に着いてきた俺達の思いはどうなるる? 腑抜けたお前に今まで仕えてきただけの惨めな想いを俺達全員にさせるつもりか?」

「!」

「ふざけんじゃねえぞッ!! 今更テメェが折れてどうする? 一度でも俺達の上に立ったなら責任を最後まで果たせ! 少しでもいい、テメェの部下で良かったと思わせてみろ!!! どんな事があっても成し遂げようとしたテメェの信念、今度は世界を守る為に使いやがれッ!!」

 

「ぜェ、ぜェ」と息を切らす程のドレイクの怒号。初めてルディアにぶつける本音の叫びにルディアは。

 

「……話は、もういいかい?」

「!」

「君の本音、よく分かったよ。だから僕の君の想いに答えるよ。このバトル、僕の全力全てを出し切った上で……!!」

 

先程まで悩み迷いのあった目は、人が変わったかのように真っ直ぐただ力強くドレイクへと向けられる。空気が変わり、ルディアの視線にドレイクは察したように軽く口角を上げる。

 

「ハッ、この不器用が!」

「君ほどじゃないけどね。さあ行くよ、僕のターン!」

 

バトルを再開した所で、手札を構え勝負を決めるべきカードを掴む。

 

「メインステップ、バーストセット。行くよ、ドレイク! 白き鋼を持つ神の現身、神撃甲龍ジャガンナート、Lv.2で召喚ッ!!」

 

皹割れるように地面に走る亀裂、裂け目から白き輝きを放ちながら大地を飛び出す巨大な龍の姿。クリシュナより生み出されし神の化身、ジャガンナートの降臨である。

 

「ッ! 出たな、お前のキースピリット!」

「ジャガンナートの召喚でクリシュナとヴィシュヌにコアを追加、さらにアブソドリューガをLv.3にアップ!」

 

ジャガンナートとアブソドリューガ、白の鉄壁を体現する2体の龍の咆哮が共鳴してフィールド全域に響き渡る。

 

「アタックステップ、ジャガンナート! アタックだ!!」

 

ジャガンナートの巨体が動き、その進撃は地面を揺るがしながらドレイクへと突っ込んで行く。

 

「ジャガンナート、Lv.2、3のアタック時効果! ヴィシュヌにコア2個を追加! さらにジャガンナートのもう一つのアタック時効果、【界放:3】! 今追加したコア含めたヴィシュヌのコア3個をジャガンナートに置く事で相手の手札にあるカード3枚につき、このスピリットにシンボル一つを追加! さらにブロックもされない!」

「!」

「今君の手札は4枚、よってジャガンナートはダブルシンボルッ!!」

 

コアが追加された事でジャガンナートLv.3となり、より力が増したように咆哮を張り上げるジャガンナート、だがまだドレイクのライフは5つ全て健在。例えを振るアタックを仕掛けても全て削り切る事は出来ないが。

 

「テメェの事だ、このターンで決着をつけるつもりだろう?」

「あぁ。ご明察だよ! フラッシュ! 白晶防壁(Rv)、効果でジャガンナートを回復させる!」

「ッ! ライフで受けてやる!!」

 

ジャガンナートの牙が展開されたバリアへ深々と突き刺さり、軽々とバリアを噛み砕く。

 

「ぐあッ!!!」

「もう一度、ジャガンナートでアタックッ!! 今度はクリシュナにコアを追加し、クリシュナのコア3個をジャガンナートに移動させ再びダブルシンボルに!」

 

再度ジャガンナートへの攻撃指示、振るアタックが決まればドレイクのライフ全てが破壊されてしまう。勝負を決めるべくドレイクへ襲い掛かるようにジャガンナートの巨体が迫るが。

 

「簡単に終わってたまるか! 俺もフラッシュだ! マジック、絶甲氷盾!」

「!」

「バトル終了時、お前のアタックステップを終了させる!!」

 

ジャガンナートの巨体が展開されたバリアへと圧し掛かり、衝撃にライフが砕け散るも、ライフが砕けたと同時に吹き荒れる吹雪がジャガンナートを払い除け、ドレイクを守るように氷壁が広がって行く。

 

「……決め切れなかったか。ターン終了」

 

 

 

 

────第11ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]18個。

[Hand]4枚。

[Field]創界神アヌビスLv.2

 

「俺のターン……!」

 

現在ドレイクの場にスピリットは皆無。対してルディアの場にはジャガンナートとアブソドリューガの二体、誰が見ても分かる劣勢だった。

 

「(状況は最悪。ホント、諦めたくなるかもな)」

 

ふと弱気に思える言葉が漏れる。実際以前の自分ならこの状況に諦めていただろう。だがそれでも、今のドレイクにとってもうその小言は本心ではない。

 

「(……絶体絶命の状況なのに、何でだろうな。絶対に諦められねぇ、まだ勝ちたいと思っちまう。これも全部……あの馬鹿(烈我)のせいだな!)」

 

小さく呟いたドレイクの表情には言葉とは正反対に笑っていた。

 

「今日、俺はテメェを超える!」

「!?」

「まずは此奴! ネクサス、焔龍の城塞都市を配置! さらにもう一枚! 暗黒の魔剣ダークブレード(Rv)召喚!」

 

黒い雷と共にフィールドに降り注ぎ、大地へと突き刺さる漆黒の剣──ダークブレード。

 

「行くぜルディア! 俺の新しい相棒、その目でよく見届けろッ!!」

「!」

「来い。地の底に燃え滾るマグマに染めた斬撃の龍! 闇輝石六将 冥恐斬神ディノヴェンジ、召喚ッ!!!」

 

”グオオオオオオオォォォォォ────ッ!!!” 

 

地の底より響く龍の声と共に、大地の中央に突如赤い斬撃がX字を描くように刻まれると、刻んだ大地を底から突き破り飛び出す黒き龍──ディノヴェンジ。

 

「ディノヴェンジとダークブレードと合体ッ!! 合体スピリットとなれ! ディノヴェンジッ!!!」

 

荒々しく大地に突き刺さったダークブレードを引き抜き、自身の刃とダークブレードを地面に叩き付けながら吼え叫ぶ。

 

「アタックステップ! ディノヴェンジ、お前の力全て出し尽くせッ!!! アタックだッ!!!」

 

ダークブレードと刃を振り翳しながら駆け出し、ディノヴェンジを迎え撃たんとアブソドリューガとジャガンナートはそれぞれ構えを取る。

 

「ディノヴェンジのアタック時効果! 合計BP1200になるよう相手スピリットを破壊ッ! 俺が選ぶのはアブソドリューガッ!」

 

ディノヴェンジの持つ二本の刃が赤く染まり始め、そのまま二刀の斬撃をアブソドリューガへと振り下ろすが、アブソドリューガはまるで脅威を感じていない様に余裕の笑みを見せると真っ向からその身でディノヴェンジの斬撃を受け止めて見せる。

 

「無駄だよ、アブソドリューガは相手ネクサス、スピリット、マジック、ブレイヴの効果じゃ決して破壊されない!」

「……そいつぁ、どうかな?」

「!?」

 

意味深な発言、視線をアブソドリューガに移すと斬撃受け止めた筈の光景に変化が訪れる。鉄壁を誇るアブソドリューガは斬撃を弾き返そうとするが、ディノヴェンジは抗う様に力強く吠えて二刀の刃を押し込み、次の瞬間、最高硬度を誇る筈のアブソドリューガの身体に亀裂が走り始める。

 

「なッ!?」

「ディノヴェンジの効果、此奴の効果は装甲以外じゃ決して防げねぇ!! たとえそれがハイドカードだろうとなッ!」

「ッ!!!」

 

”ガアアアアアアアアァァァァァ────ッ!”

 

渾身の力を込めて刃を押し込み、アブソドリューガの硬い体を切り刻み、赤い斬撃をその身に受け、アブソドリューガは仰向けに倒れ爆発四散を起こす。

 

「アブソドリューガを……!」

「ディノヴェンジの効果はまだあるぞ、この効果発揮後! アヌビスのコア2個をディノヴェンジに追加する事で相手のライフのコア1個をボイドに送る!」

 

ディノヴェンジの猛攻は止まらない、アブソドリューガを破壊してなお刃を地面に叩き付けると、振り下ろした斬撃が衝撃波となってルディアへと放たれ、展開したバリアを両断し、ライフを破壊。

 

「ぐッ!!!」

「焔龍の城塞都市の効果、アタックステップ中で相手スピリットを破壊したなら1枚ドロー! そして手札が増えた事でアヌビスの【神域】!」

「!」

「手札の地竜を持つカードを全ての軽減を満たして召喚する! 出て来い、豪将龍ゴルゴノオビトLv.2で召喚!」

 

新たに地面から飛び出る一体の巨大龍、ゴルゴノオビト。ディノヴェンジと並び立って咆哮を上げる。

 

「ダークブレードの効果、創界神を持たないスピリットとの合体アタック時、BP+10000! さらにジャガンナートに指定アタックだッ!」

「受けて立つ! ジャガンナートでブロックッ!!」

 

ジャガンナートに向かって吠え、ディノヴェンジの敵意を感じ取るとジャガンナートは真っ先に口を開き、ディノヴェンジに向かって凍て付く吹雪を吐き付けるが。

 

対してディノヴェンジは自身の刃に炎を込めて大地に突き立てると、炎を巻き起こすと炎を壁として吹雪を防ぎ、さらに逆巻く炎に乗ってジャガンナートの頭上高く飛び上がる。

ジャガンナートは今一度上空のディノヴェンジに向かって吹雪を吐き付けるが、ディノヴェンジはダークブレードを振り下ろし、炎の一閃が吹雪ごとジャガンナートを両断。絶命し爆発四散する。

 

「焔龍の城塞都市の効果、一枚ドロー!」

「まだ終わらせないよ! こっちは相手による自分のスピリット破壊後でバースト! リカバードコア(Rv)!」

「二枚目か!」

「リカバードコアのバースト効果は、このバースト発動時に破壊されたスピリットをノーコストで召喚できる! もう一度甦れ、ジャガンナート!!」

 

地響きと共に大地の底から再び甦るジャガンナート。

 

「コストを支払いさらにリカバードコアの効果! ボイドからコアを自分のライフとジャガンナートに追加!」

 

ディノヴェンジが削った筈のライフの光が灯り、ルディアのライフが元に戻る。

 

「またライフが……!」

「これが白の鉄壁だ、絶対に守りは崩させない! そしてダイヤモンドの月の効果! バトルした赤のスピリットを破壊する!」

 

再び宝玉の光がディノヴェンジを消滅させるべく照らしつけるが、ディノヴェンジは光をものともせずに吠え上がる。

 

「!?」

「ディノヴェンジの効果、地竜を持つコスト6以上のスピリット全ては疲労状態なら相手の効果を受けねぇ!! ダイヤモンドの月はもう効かねぇ! さらにゴルゴノオビトの効果! 地竜のバトル終了時、相手ライフ一つを破壊ッ!!」

 

ゴルゴノオビトは巨大な火球弾をルディアへと撃ち出すと、ライフを再度破壊。

 

「ぐッ!! うあっ!!!」

「ライフを回復するなら何度だってやりやがれ、強大なスピリットを並べるなら並べやがれ!! だがそれでも俺は諦めねぇ。勝つまでな!」

「!!」

「七罪竜やハイドカードが無くたっていい。ただ力が有るだけが強さじゃねぇと知ってる。強大な力が無くてもある強さを俺はもう知ってる!」

 

目に強い意志を込めてルディアを睨みながら。

 

「ゴルゴノオビト、行けぇッ!! ディノヴェンジの効果で疲労状態のゴルゴノオビトにBP+5000!」

 

強靭な足で大地を蹴り飛ばし地を駆けるゴルゴノオビト。

 

「まだBPはジャガンナートの方が上だよ! ジャガンナートでブロック!!」

 

突っ込むゴルゴノオビトに真っ向から迎え撃つジャガンナート、二体の龍は激突し正面からぶつかり合う。

 

「ジャガンナート、決着をつけろ!!」

 

力で勝るジャガンナート、ゴルゴノオビトを押し返して突き飛ばされ倒れるゴルゴノオビト、そのまま口を開いて止めの一撃を繰り出そうと構えるが。

 

「フラッシュタイミングッ!!」

 

直後、ゴルゴノオビトの身体が赤く光り、止めの一撃を下そうとしたジャガンナートに、伸びた腕が口塞ぐ様に掴む。

 

「!?」

「敵を砕け! 壊せ!! ぶっ潰せ!!! 本能のままに蹂躙し尽くせッ!!!! 暴双恐龍スーパーディラノスッ! ゴルゴノオビトに煌臨だぁッ!!!」

 

赤く光るゴルゴノオビトの姿がスーパーディラノスへと完全な変貌を遂げると、ジャガンナートを掴んだまま唸りを上げる。

 

「ぶちかますぞ! 相棒!! スーパーディラノスッ!!」

「スーパーディラノスのBPは20000か、けどまだスーパーディラノスの効果を使ってもライフをゼロには……ッ!!」

「それがどうした? それで俺が諦めてたまるかよッ! フラッシュ、アクセル! ステゴイラプト!」

 

ステゴイラプトのアクセル効果は12000以下のスピリットを破壊する効果、ルディアの場にそれに該当するスピリットは存在しない。だがステゴイラプトの効果はまだ先がある。

 

「ステゴイラプトのアクセル発揮後、俺の場に煌臨を持つスピリットがいるなら手元ではなく、スーパーディラノスの煌臨元に追加できるッ!」

「何!?」

「ディラノスッ!!」

 

相棒の名を強く叫ぶと、スーパーディラノスは応えるかのように吠え巨大なジャガンナートをそのまま持ち上げて遥か上空へとぶん投げる。巨大な体が天高く放り投げられて落下するジャガンナート、対してスーパーディラノスは両腕を構えて、目の前まで落ちてきたタイミングに合わせて突き出す両腕を叩き込み、彼方の先までぶっ飛ばし、耐えきれずジャガンナートは絶叫の声を上げながら大爆発を起こす。

 

「ッ!! でもそれでもまだスーパーディラノスの煌臨元は2枚、僕のライフは3。どうする気だい!」

「一つ忘れてるぜ」

「!?」

「相手スピリットを破壊した事で焔龍の城塞都市の効果で1枚ドロー!」

 

手札に加わる一枚、そのカードに対してドレイクは口角を上げて。

 

「アヌビスの効果で手札が増えた時、地竜を持つスピリットを召喚。俺が引いたのは鉄面のダスプレトン! コイツの軽減を満たして召喚する!」

「そのスピリットは……ッ!?」

「察しの通りだ、不足コスト確保でディノヴェンジを消滅!」

 

コアを失いディノヴェンジの体が光となって消滅していくが、苦しむ様子はない。ドレイクの掴む勝利の為、ディノヴェンジは笑いながら消え去り、入れ違いに出現するダスプレトン。

 

「召喚時効果発揮、相手ネクサス、又はブレイヴを破壊。俺が選ぶのはダイヤモンドの月!」

「!」

 

ダスプレトンの放つ火球は上空を照らす月へと撃ち込まれ、月は炎に飲まれ太陽のように赤く光ると共に爆散し砕け散る。

 

「ダスプレトンの効果はまだ続くぞ! 相手のネクサスかブレイヴの破壊後、スーパーディラノスの煌臨元へ追加!!」

「!!!?」

「これで煌臨元のカードは合計3枚、終わりだ! ルディアアアアアアアッ!!!」

 

爆風の中で煌めく眼光、爆風を掻き消しスーパーディラノスは力一杯息を吸うかのように炎を溜め込むと、一気に解き放つ様に極大の炎を吐き出し、ルディアの前に展開されたバリアを飲み込む。

 

「(ドレイク……これが君の強さ、なんだね。本当に君は、強くなったよ。僕なんかより、遥かに)」

 

炎の中で敗北を受け入れると、攻撃に耐えきれなくなったバリアは崩壊し全てのライフは砕け散り決着となる。

 

「……僕の負けだよ。ホント、以前の君とは比べ物にならなかったよ」

「フン」

 

ルディアからの感想を素直に受け取らず、つれない態度を見せるドレイクだが。

 

「はは、相変わらずだね。まぁともかく君は僕に勝った。好きに僕を使いなよ」

「……ならまずは」

 

ルディアへ一歩前に出たかと思うと、一枚のカードをルディアに差し出し、差し出したそのカードはハイドカードの一枚であるバーニングドラゴン。

 

「!? ドレイク、これ!!?」

「バーニングドラゴン、もう強いだけの力は俺には必要ねぇ」

「……分かった」

 

手渡されたバーニングドラゴンに驚きつつも、ドレイクの表情にルディアはそれ以上何も言わずにカードを受け取る。

 

「君は、本当に変わったね」

「お前だって同じの筈だ。変わる気のない奴があんなバトルするかよ」

「!」

「もう一度立て、ルディア。俺達はこれまでの事を償う、だからこれが始めの第一歩だ」

「はは、世界を救うのが始めの一歩か……随分でかくて、大変な一歩だね」

「大変なのはお前だけじゃねぇよ。俺も、嫌、俺達も同じだ」

「?」

 

明後日の方角に視線を向けるドレイクに、ルディアも同じ方角に視線を向けると。

 

「「ルディア様!!」」

「!!」

 

真っ先にこちらに駆け寄るディストとガイト、その後に続いて歩み寄るヴァンとミコの姿。

 

「君達……!」

 

「ルディア様、私達も一緒です。私を救ってくださったのは貴方です。だから貴方が世界を守ると言うなら、私もその為に尽くします!」

「俺もだ。居場所をくれたアンタに仕えるのなら、利用されたって構わない。世界を守るなら喜んで俺も協力する」

 

「ディスト、ガイト……!」

 

「まっ、妾はドレイクに着いて行くだけじゃ」

「俺は、正直お前に恩を感じた覚えはねぇ。けど、世界が滅ぼされるって言うなら話は別だ。俺は、この世界を彼奴(マチア)と生きて行きたい。だから、もう一度テメェの部下にでも何でもなってやるよ」

 

「ミコちゃんや、ヴァンは相変わらずだね。はは、でも皆、ありがとう」

「此奴等の気持ちは分かっただろ。後はお前次第だ、どうするんだ……ボス?」

「また君に、そう呼んでもらえるとはね」

 

ドレイクに対して笑いながらも、ルディアもようやく覚悟が決まったように表情を切り替えて。

 

「決めたよ。この世界を守る……もう資格だなんだってつまらないことは言わない。ただ失いたくないから、このまま滅ぼされるのは嫌だから、だから僕達は戦う! この世界を守るために、だから皆、もう一度僕についてきて欲しい!!」

「「あぁ」」

 

元帝騎である彼ら全員、迷いなくルディアの言葉に頷く。経緯はどうあれ、今この時この瞬間、彼等の想いは一つだ。

 

「それじゃあ行こうか。彼等も来るんだよね?」

「あぁ。今マチアの奴の奴が連れてくる筈だ」

「分かった、僕体も早速できる事に取り掛かろうか!」

 

全ては打倒ヘルの為、そしてこの世界の為に。今戦うべき者達全てが立ち上がった。

 

 

 

 

 

 





お久しぶりです。第41話、いかがでしたでしょうか!!!
長らく更新遅れてすみませんでした!!

今回はルディアVSドレイク、首領とその部下としてこれまで並々ならぬ関係だった二人でしたが、改めて互いの想いをぶつけバトルとなりました。


ダイヤモンドの月は出た当初は赤にとって究極のメタカードだと思ってましたが、強カードが増え続けてる現在、今はそうでもないかなと思ってました。

ただ今回小説で書いてみて分かりましたが、やっぱヤベェメタでしたわ笑


そしてついにヘルによる世界滅亡を宣言される中、役者はすべてそろいました!
いよいよここからはラストスパートに向けて全力全開で書いていきます!!!

是非どうぞ、今後とも宜しくお願いします。
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