バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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第43話【世界を賭けて】

 

 

「いよいよ今日で全部終わりか」

 

太々しい態度で城の玉座に腰掛けながら言葉を吐き捨てるヘル。その名の通りこれから彼が為す事はこの世界を地獄へ、破滅へと導く事。彼の背後には破滅を実現させる力を持つオメガデッド。

 

「オメガデッド、いよいよ今日でお別れだな?」

『……』

「今日のバトル、俺が勝てばこの世界を滅ぼす。俺自身もこの世界と心中する。負けても俺が望んだ願いは達成。それでお前の役目も終わりだ」

 

淡々と告げるヘル、オメガデッドはじっとヘルに視線を向けて。

 

『ヘル、結局お前が望む物とは何だ?』

「今更だな。最初に言っただろ? 俺が求めるのは強者とのバトル、ただそれだけだ」

 

ヘルがオメガデッドに望んだ最初の願い、自分達を倒す事のできる実力者とのバトル、それだけ望んできたがヘルの人生。

 

『ヘル……。』

「つまらん質問はもういいだろ。それより来るぜ。俺の待っていた本命がな」

『!』

 

何かを感じ取るように表情を変えるヘル達、予感の通り彼等の城を前に立つ人影が。

 

 

 

 

「ここが、ヘル達の場所か」

「ルディアといい、ヘルといい世界滅亡させる奴が城を建てるのはお決まりなのか?」

『どっちも悪趣味極まりないけどな』

「違いない」

 

意気投合するかのように相変わらず毒舌気味な光黄とバジュラ、そんな二人の様子に烈我は苦笑い。

 

「光黄ちゃんもバジュラも相変わらずだね。俺は別に雰囲気出てて悪くないと思うけどね。魔王が棲むラストダンジョンって感じじゃん」

「何言ってるんだ! 負けたらこの世界全部滅ぶんだぞ! ゲームに例えるな!!」

「悪ぃ、これが俺の性分なんで。でもまっ、俺は信じてるぜ。烈我は必ず勝ってくれるって」

 

絵瑠に対して軽く謝りながらもにこやかに烈我へと笑いかける。

 

「おい、勝負前にプレッシャーかけんなっての」

「そう言うなよ。お前を信じてるってのは嘘偽りない俺の本心だからよ」

 

「はい、僕も勿論信じてます! 烈我は必ず勝つって!!」

「私も応援しているぞ! 頑張れ、烈我!」

 

「星七や絵瑠もありがとう! 必ず勝つからな!」

 

星七達の激励が送られる中、光黄はじっと烈我へ視線を向け。

 

「烈我」

「!」

「昨日俺が言った事、忘れてないだろうな?」

「!……俺が光黄との約束忘れるかよ! 無事ヘルに勝って、元の世界に帰ったらまたお前とバトルする!」

「……忘れてないならいい。俺とのバトルをふいにしたら承知しないからな」

「大丈夫、何ってたって皆が、それに光黄が、俺の事信じてくれるなら……必ず勝つ! 俺はそう自信を持って言えるんだ!!」

 

満面の笑みを彼女に向けながらそう言い切る烈我だが、隣で聞いているバジュラはジト目で。

 

『おい烈我、イチャつくのは勝ってからにしろ」

「「イチャッ!?///」」

 

バジュラからの指摘に途端に烈我と光黄の顔が赤くなり、ミナト達はにやにや顔で二人を見ている。

 

「いや~、何だか妬けちゃうな。俺等よりも烈我にはやっぱ光黄ちゃんの言葉が一番嬉しいみたいだ」

「や、やめろっての。光黄だけじゃなくて皆の応援も嬉しいからさ!」

「えー、ホントかー?」

「今更疑うなっての益々やりづらくなるだろッ!!」

「はは、冗談冗談。俺も応援してるぜ、お前の親友としてな!」

「おぉ!」

 

『話はそれぐらいでもう行こうぜ、さっさと俺はあの野郎をぶちのめしてぇんだ!』

「相変わらずだな」

『テメェもだろ? それともまさかこの期に及んで引き返すなんて言わねぇだろ!』

「誰が言うかっての!! ヘルを倒すぜ!」

『あぁ、そうこなきゃ俺の相棒じゃねぇよ!』

 

ヘルとオメガデッドの待つ居城へと踏み出し、城の扉に手を掛けて、覚悟と決意を決めると扉を力強く開き。

 

”パチパチパチ”

 

扉を開き中へ入った途端、彼等を出迎えるような拍手の音。扉を開けたすぐ正面、手を叩きながら出迎えたのは椅子に腰掛けるヘルと、その背後に佇むオメガデッドの姿。

 

「『ヘルッ!!』」

 

倒すべき相手の姿を前にし、声に覇気を込めるバジュラと烈我達だが、彼等とは対照的に余裕そうな笑みで笑い掛けながら。

 

「待ってたぜ。まずは歓迎しよう、ようこそ我が城へ、この世界を救わんとする希望の勇者様」

「!」

「ここへ来たのはお前達5人だけか? ルディア達は、この世界の住民の避難活動中と言った所か?」

 

見抜かれているかのような発言。ヘルの言う通り、ルディア達罪狩猟団のメンバーは全員世界中で起きている混乱の収拾にあたっている為、この場には来れない状況にある。

 

「にしてもルディアの奴も丸くなったもんだ、あれだけ世界を壊したいと願っていた奴が今度は世界を守る側になるとは、こういうのを皮肉って言うんだろうな」

「元々ルディアが世界を壊したいと思うようになったのもヘル、お前のせいだろ! ルディアはそれを後悔してた。これから先もずっと、アンタの性でッ!!」

「次期にその責任から解放してやるさ、この世界全部丸ごと俺の手で壊してな!」

「ッ!! アンタって人はッ!!!」

 

許せない、そんな感情が真っ先に思考に浮かぶ。静かに拳を握りしめ隣で烈我の怒りを感じ取りながらもバジュラはあくまでも冷静にヘルを睨みながら。

 

『ヘル、実際の所テメェの目的は何なんだ? 何がしてぇんだお前は』

「!」

 

バジュラからの疑問、一瞬ヘルの顔色が変わったように見えた気がしたが、すぐにまた笑みを浮かべて。

 

「言っただろう、俺の望みは俺と対等に渡り合える程の強者とのバトル!! それが叶わないなら俺は生涯を終えるつもりだ。始まりの希望だったこの世界と一緒になッ!!」

「始まりの、希望?」

「元々俺はこの世界の者じゃねぇ、お前達と同じ世界で生まれた人間だ」

「!!?」

 

突拍子もなく語られる衝撃的なヘルの言葉、烈我達に動揺が走るがヘルはそのまま言葉を続けて行く。

 

碧也流凶(へきや るきょう)、それが俺の本当の名前だ。この世界に来る前は、元はお前等と同じバトスピが好きのただのガキだったよ」

「!」

「経緯を説明させてもらうと少し昔話になるが俺はバトルがとても好きで、いつも友達や、時には自分よりは遥かに強そうな相手に挑みに行ったりを繰り返してた。自慢する訳じゃないがバトスピを始めてからずっと負け無しだったよ」

 

しみじみと記憶を遡り、過去を振り返りながら語って行くヘル。

 

「初めの内は色んな相手とバトルできる事がただ楽しかった、けれど勝負をすればいつも圧勝。何の刺激もなく退屈を感じる毎日、バトスピも辞めようかなと思い始めていた頃だ……偶然俺の前に、異世界へのゲートが開いたんだ」

「!!」

「ガキの頃の俺は好奇心の塊だからな、何の躊躇いもなくそのゲートを渡った。それが始まり。この世界に来て、バトスピの勝敗が全てを決めるこの世界のルールを知り俺の心は踊った。もはやただのお遊びじゃない、文字通りの命を賭けた全力真剣勝負、生温い勝負に飽き飽きしてた俺にはここが天国のように思えた!」

 

「だが」と先程迄の笑みを豹変させるように表情を険しくさせながら。

 

「この世界へ来て数年、最初は良い勝負が出来ていたが結局行う試合は全て俺の勝利。次第に拮抗できる相手も居なくなりお遊びだろうが真剣勝負だろうが満足出来る相手がいなきゃ何の意味もない。虚しさだけが肥大化して行く毎日だった。元の世界にいた頃と何も変わらない、何の為にここへ来たのか意味を問い続けるだけになっちまった。

俺がここへ来た意味は何なのか、その答えが欲しくて俺はこの世界について色んな事を調べた。オメガデッドの事を知ったのはそのすぐ後、後は以前話した通りだ」

 

その先はオメガデッドに選ばれ、自らの欲望を叶える為戦いへと臨んだ。勝ち抜いたその先でオメガデッドの力をも手に入れたヘル。

 

 

「けど力が手に入っても、手に入れた力を振るうに値する好敵手と言う存在。それはオメガデッドの力をもってしても手に入れる事ができない、戦う相手が居ないって事が俺にとってはどれほどの絶望か。お前らに分かるか!」

「……その為だけに、この世界を……アンタはッ!!」

「まあ最初はそう脅し文句を吐けばまだ見ぬ強者が現れるんじゃないかと、俺にとっては最後の望みを賭けた意味で言ったんだけどな。けれど、やはり望む強者はまだ俺の前には現れない。これ以上俺を失望させるようならもう沢山だ。俺はこんな世界、宣言通りに滅ぼす」

「!!」

「そして今日お前が俺の前に立った、この世界と俺にとって、お前こそが最後の希望だ!」

 

狂っていると誰もが思う。だが、目の前に立つヘルとオメガデッドには有言実行できるだけの力を持つ。だからこそ、何としてでも彼を止めなければならない。

 

「バトルを始めよう。この世界最期のバトルをな!!」

「ふざけんな、最期なんかじゃねぇッ!! 俺は、俺達は……必ずお前に勝つ!! 勝ってこの世界を守るッ!!!」

「ならばやって見せろ。勝てば英雄、負ければ破滅! 二つに一つ、全てお前次第だ!!」

「お前の思い通りなんかには絶対させない! バジュラ!!」

「オメガデッドッ!」

 

 

互いにデッキを翳しながらそれぞれの相棒の名を叫ぶと、オメガデッドとバジュラは共にカードの姿となり、カードとなった相棒を互いにデッキへと加えると準備を終えた様に。

 

「行くぞ、ゲートオープン!」

「「界放ッ!!」」

 

合図と共にバトルフィールドへと誘われる二人、次に目を覚ますと視界に飛び込んだのは暗雲の空に何もない殺風景な景色の映るバトルフィールドだった。

 

 

 

「どうだ? 派手な外観ではないが最期を飾る舞台としては上々だろう」

「ッ!!……バトルを始める前に一つだけ聞きたい」

「うん?」

「ヘルさん、アンタは……この世界を滅ぼしたいと、本気でそう思ってんのか?」

「……」

 

散々裏切らてなお、まだヘルの心の中に良心があると信じたい烈我。烈我の質問に対してヘルは。

 

「その理由に応える前に、少しだけこの世界の歴史について話そうか」

「?」

「かつての話だがな、この世界を支配しようとした者がいた」

 

唐突にかつての記録について語りだすヘル。どういう事かと言いたげな表情の烈我だが。

 

「それを阻止するために立ち塞がったのはこの世界の者ではなく、異世界から来た少年少女達だった。丁度お前等と同じような」

「俺達と、同じ?」

「壮絶なバトルの果てに最後に勝利したのはその異世界の者達だった。既にもうこの事を覚えている人間はほとんどいないが、この世界の歴史に残る程のバトルだったという事」

「何が言いたい?」

「まぁ聞け、誰かが災いを起こそうとすれば必ずその抑止力となるべき者が現れる。それは歴史が証明してきた。災いがデカければデカいほど抑止力の存在は比例して大きくなる。例え話なんかじゃない、これはもはや因果といって言い。何度も言ったよな? 俺が求めるは俺に拮抗し得る強者。だからこそ、俺は本気で世界を滅ぼすつもりだ。そうでなければお前もまた俺への抑止力となる程の強者とならないだろう?」

「ッ!! アンタって人は……ッ!!」

「今このバトルは世界全てに向けて映し出されている。世界中が注目のバトルだ、もうこれ以上の言葉はいらないだろう? 早く始めよう!! 世界に記憶に残る程のバトルを!」

「!」

 

もう言葉ではヘルを止める事はできない。負ければヘルは本気で世界を滅ぼすだろう、勝つ以外に道はなく、それ以上は何も言わず覚悟を決めた表情でヘルと向き合う。

 

 

 

 

「いよいよ始まるね。ヘルさんとあの子達のバトル」

「……俺達の命運も彼奴等次第、か」

「そうだね。でも僕らにもうできる事はない、だから信じよう。彼等の勝利を」

 

世界中に向けて映し出されるバトルの光景、烈我達は違う場からバトルの光景を眺めるルディアとドレイク、さらに世界各地に散らばっているミコ、ディスト、ガイト、マチア達や帝騎の面々を始め世界中の人間がただ静かにバトルの行方を見守る中、ついにバトルの幕が上がる。

 

 

 

 

────第1ターン、烈我side。

 

[Reserve]4枚。

[Hand]5枚。

 

「メインステップ! 煌星第三使徒テティス召喚してターンエンド」

 

 

 

 

────第2ターン、ヘルside。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

 

「俺のターンだな。まずはこれだ、緑の世界を配置!!」

「!」

「配置時効果、俺のリザーブにコア1個を追加。さらにもう一枚、新しき世界を配置! バーストセットしてターンエンドだ」

 

ヘルが繰り出すカードがフィールドに置かれると同時にヘルの背後に聳える巨大な大木のようなネクサス、緑の世界と宙に浮いた大地が並んだ新しき世界。二枚もの転醒ネクサスを配置してターンを終える。

 

「さぁお前のターンだ、見せてみろよ? お前がどう打って出るか」

「ッ!!」

 

 

 

 

────第3ターン、烈我side。

 

[Reserve]4個。

[Hand]5枚。

[Field]煌星第三使徒テティスLv.1(1)BP3000。

 

「転醒ネクサスだってならこっちは! ネクサス、創界神アポローン! さらに創界神ブラフマーを配置ッ!」

 

烈我の背後に会われるアポローンとブラフマーの幻影、それぞれ配置時による神託が行われ、アポローンは「ダークヴルムレガリア」、「煌星竜コメットヴルム」、「アドベントドロー」の三枚。ブラフマーは「ジークヴルムネクロ」、「太陽神龍アポロヴルム」、「オリン円錐山」の三枚。

 

「神託対象はどっちも2枚、コアを2つアポローンとブラフマーに追加し、アタックステップ! ステップ開始時にブラフマーの【転神(グランテーゼ)】発揮!」

「!」

 

ブラフマーの幻影が実態となってフィールドへと現れ、拳を握りしめながらヘルを睨む。

 

「転神したブラフマーでアタックだ!」

「ならこの瞬間、緑の世界の転醒を発揮させる!」

「ッ!」

「転神したブラフマーはスピリット状態、相手スピリットが疲労した事で転醒条件は満たされた! ソウルコアを緑の世界に置き、仮初の樹木から、緑司る神獣の姿となれ!! 緑の自然神へ転醒!!」

 

巨大な大木は光となって形を変化させて行くと、獣のような姿へと変貌を遂げ、大自然そのものと言える真の姿、自然神となって場に現れる。

 

「転醒完了。さてこれでブロックも可能だが」

 

不敵に口角を上げて見せながら。

 

「ライフで受けてやるよ」

「!」

 

自然神はヘルへ突っ込むブラフマーをわざと見逃す様に素通りさせ、腑に落ちないように自然神を睨むブラフマーだが、すぐに攻撃対象に視線を戻し、そのまま展開されたバリアに拳を撃ち込む。

 

「ッ!! 中々……だがライフ減少時バーストだ、選ばれし探索者アレックス!」

「くッ!!」

「これでお前のアタックステップ、終了だ」

「ッ!! ターンエンド」

 

 

 

 

────第4ターン、ヘルside。

 

[Reserve]6個。

[Hand]3枚。

[Field]緑の自然神Lv.1(1)BP6000、選ばれし探索者アレックスLv.1(1)BP4000、新しき世界Lv.1(0)。

 

「メインステップ、アレックスのメイン効果。自身を疲労させてデッキから1枚ドロー! そしてバーストセット!」

「またバーストか」

「アタックステップ、緑の自然神でアタックッ!! フラッシュでマジック、白晶防壁(Rv)。効果で自然神を回復させる!」

「ッ! ライフで!!」

 

獣の見た目にそぐわない身体能力を発揮させるかの如く遥か上空へ飛び上がると、烈我へと一気に飛び掛かりバリアへと組み突いて、両腕でバリアを粉砕し、ライフが砕かれる。

 

「ぐあああッ!!」

「相手のライフ減少時、新しき世界の転醒を発揮ッ!!」

 

間髪入れずに起動される新しき世界の効果。カードを反転させると、新しき世界は七色の龍へと進化。

 

「風雅龍エレアラクーン、転醒完了。転醒時の効果でエレアラクーン自身にコア2個を追加!」

「(またコアブースト……!)」

「これでターンエンドだ。さあ、お前の番だ」

「あぁ、言われるまでもねえ!」

 

 

 

────第5ターン、烈我side。

 

[Reserve]6個。

[Hand]3枚。

[Field]煌星第三使徒テティスLv.1(1)BP3000、創界神アポローンLv.1、創界神ブラフマーLv.1。

 

「メインステップ! 俺はビートミラージュをセットッ!」

「!」

 

カードに描かれた紋様が証となって出現し、セットされるミラージュ。

 

「まだ行くぜ! 太陽星龍プロミネンスを召喚! 召喚時効果、エレアラクーンを破壊だッ!」

 

出現と同時に火球をエレアラクーンへとお見舞いし、直撃を受けその身を焼かれながら爆発四散するエレアラクーン。

 

「フッ、邪魔者は排除って訳か」

 

自軍の破壊に対して動揺は見せず、相手の狙いを察したように呟くヘルだが、構わずターンを続行する烈我。

 

「破壊した事で1枚ドロー! バーストセットしてアタックステップ! プロミネンス、アタックだ!!」

 

鳴き声を上げながら飛び出すプロミネンス。攻撃を開始した瞬間、場に出現したビートミラージュの紋様が赤く輝き始めて行く。

 

「俺の場の星竜がアタックした事でデッキから1枚ドロー! そして、プロミネンスの効果、「占征」を持つスピリットがアタックした時、俺の場にミラージュがセットされていればこのスピリットは転醒する!!」

「!」

「今度は俺の番だ! 龍よ燃えろ!! 熱く滾る炎を糧に進化しろッ! 太陽星龍プロミネンスハンドラー、転醒ッ!!」

 

突っ込むプロミネンスの身に纏われていく炎、ベールの様に炎はプロミネンスを包み込むと体を変化させ、地面を踏み締め、拳を握りプロミネンスハンドラーへと転醒し咆哮を上げる。

 

「転醒時効果でボイドからコア2個をこのスピリットへ追加! さらにまだ行くぜ! フラッシュでアポローンの【神技】を使う! BP6000以下のアレックスを破壊し、もう一枚ドローだ!」

 

矢を構え、炎を灯した矢でアレックスを撃ち貫いて破壊。

 

「まだ終わりじゃない! プロミネンスハンドラーの効果、【超激突】ッ! このアタックは必ずブロックしてもらう! 勝負だ、自然神ッ!!」

「やはり此奴を狙ってくるよな! 緑の自然神、望み通りブロックしてやれ!」

 

真っ向から迎え撃つ様に自然神は構えると自然神とプロミネンスハンドラーは互いの相手に向かって拳を突き出し、両者の繰り出す拳はぶつかり、衝撃が周囲を吹き飛ばす風圧となって巻き起こる。

打ち合う拳は拮抗するかのように思えたがBPはハンドラーが上。さらに力を込めて自然神の拳を弾き飛ばすと、体勢が崩れ無防備となった自然神へ空いたもう片方の拳を叩き込み、そのまま雄叫びを上げながら拳を突き上げて空高くへぶっ飛ばし、自然神は上空で大爆発を起こす。

 

「俺のスピリットが全滅か、いいね! 前に戦ったよりも強くなってるじゃないか」

「舐めんなよ! 俺達は必ずお前なんかに負けはしない! さらにテティスでアタック! アタック時効果とビートミラージュの効果を合わせて、2枚ドロー!」

 

ヘルの場にスピリットは無く絶好の攻撃のチャンス、ガラ空きとなったフィールドを突っ切り、バリアに向かって拳を振りかぶり、渾身の力を込めて殴りつけライフを砕くが。

 

「ライフ減少時でバースト発動、二枚目のアレックスだ」

「!」

 

流石にそこまでヘルも甘くはない。ライフを削られど、抜かりなくバーストを起動させるヘル、しかし烈我もまた手札の一枚を切り。

 

「相手のバースト発動時、俺は手札から超星使徒スピッツァーを1コスト支払う事で召喚するッ!」

「何!?」

「この効果で召喚することで相手のバーストを破棄だ!」

 

颯爽とフィールドへ舞い降りるスピッツァー、腕を突き出し発動されるバーストカードに向けて炎を放ち飲み込むが、放った炎はすぐに掻き消されるように打ち払われてしまう。

 

 

「無駄だ。バーストセット中のアレックスは如何なる効果も受けない。スピッツァーの効果による破棄は不可能だ」

「分かってる、けど無駄なんかじゃない! スピッツァーの効果で俺はボイドからコア2個をスピッツァー自身に追加!」

「次に備えたコアブーストと言う訳か。だが、アレックスをバースト召喚し効果でお前のアタックステップを終わらせる!」

 

ヘルに対し必死に喰らい付く様に烈我も負けてはいない。しかしアレックスの効果そのものを止める術はなくアタックステップを強制終了された事で自動的にターンはヘルへと移る。

 

 

 

 

────第6ターン、ヘルside。

 

[Reserve]10個。

[Hand]3枚。

[Field]選ばれし探索者アレックスLv.2(2)BP6000。

 

「さて、それじゃあ俺のターン! 今度はこれなんてどうだ? まずはアレックスのメイン効果、疲労させることで1枚ドロー、そして俺のライフ1つをトラッシュへ送る事で、黒皇龍ダークヴルムをコスト3として扱い、召喚。Lv.2だ!」

 

ライフを喰らう事で自らのコストを軽減し、雷と共に飛来する漆黒のヴルム。

 

「そしてオリン円錐山をLv.2で配置。これで俺の赤のスピリットは手札に戻らなくなった、そしてアタックステップ!」

「ッ!!」

「ダークヴルム、行けッ! アタック時効果でBP5000以下の相手スピリットを破壊だ!」

 

最初の標的としてテティスを視界に捉えるとどす黒く染まった炎を得物へと吐き付け、躱す術なく炎に焼かれ破壊される。

 

「次に俺がどうするか、一度戦ったお前なら当然分かるよな?」

「ッ!!」

「今一度此奴の姿を見せてやる! 赤きビッグバンを輝かせろ!! 黒皇龍ダークヴルムを超新星龍ジークヴルムノヴァへ煌臨ッ!!!」

 

先行の如く輝く炎を纏い、炎から強大な竜の咆哮が轟いたかと思うと、炎を吹き飛ばし現れる最強の一角に君臨する龍────ジークヴルムノヴァ。

 

「くッ! やっぱり出て来たな、ノヴァ」

「この程度で驚いてる間は無いぞ! ヴルムの名を持つスピリットに煌臨した事で俺のライフは5になるように回復!! そしてダークヴルムのLv.2、3の効果、このスピリットが系統「星竜」のスピリットに煌臨した事で相手ライフ1つをリザーブへ!」

 

ライフ2から5へと完全回復したばかりか、追い討ちを掛けるかの如く展開されるバリアに向かって火炎放射を放ち、バリアを焼き焦がしライフが砕ける。

 

「うぐッ!!」

「ここまでが効果の処理。そして次が、ジークヴルムノヴァ本来のメインアタックだ!」

「ッ!! ライフで受けるッ!!!」

「ダブルシンボルの攻撃だ、踏ん張って見せろッ!」

 

鋭い爪を掲げ、そのまま黒く焼き焦げたバリアを引き裂きバリアは完全に破壊され、今度は一気に2つのライフが砕け散る。

 

「がああああああああッ!!!」

 

強烈な痛みと衝撃がライフを通じて全身へと駆け巡る。モニターに移る光景に思わず光黄達は声を上げそうになるが、それでもダメージを堪えて仲間に心配をかけまいと踏み止まる烈我。

 

「……負けねえッ!! これぐらいで倒れてたまるか! ライフ減少時でバースト発動! エクステンクションウォール!!」

「ふふっ、そう来るか」

「バースト発動時に失ったライフ分、俺のライフを回復! さらにフラッシュ効果、コストを支払ってお前のアタックステップを終了!」

「さっきのお返しのつもりか。いいだろう、ターンエンド」

 

 

 

 

────第7ターン、烈我side。

 

[Reserve]9個。

[Hand]4枚。

[Field]太陽星龍プロミネンスハンドラーLv.2(3)BP9000、超星使徒スピッツァーLv.2(2)BP8000、創界神ブラフマーLv.1、創界神アポローンLv.1。

 

「(ジークヴルムノヴァ、此奴のアタック時効果は相手スピリットをBP20000まで破壊、もしくはお互いの手札を全て破棄する効果。どっちにしても厄介すぎる)」

 

もしこのまま無傷の状態でターンを返せば間違いなくヘルはノヴァのアタック時効果を使用して来るだろう。そうなればほぼバトルの主導権をヘルに握られたも同然だ。

 

「どうする? 今のお前に此奴の対抗手段があるか?」

 

笑いながら問い掛けるヘルに同調するかのように吼えるノヴァ。対して烈我は息を整えるように深呼吸して目を見開くと。

 

「やってやるッ! 今お前と戦ってるのは俺だけじゃない!! このカードでそれを見せてやるぜ!!」

 

声高らかに宣言して見せると。

 

「行くぜ! まずは絵瑠、お前の相棒の力を借りるぜ!」

 

「って事は私のキースピリットの出番か!!」

 

一枚のカードを構える烈我、モニターを見ている絵瑠もまた息を合わせるように叫ぶ。

 

「「抗う事の出来ない死への呪縛、今こそ絶望のカウントダウンを下す! 召喚、辰の十二神皇ウロヴォリアス!」」

 

二人の声が導くかのように紫の閃光を放ちながらフィールドを裂き、大地より翼を広げて現れる龍皇────ウロヴォリアス。

 

「頼んだぞウロヴォリアス、烈我の力になってやってくれ!」

 

”グオオオオオオォォォォォ────ッ!”

 

バトルフィールドの外であっても絵瑠の声が届いているのか、「任せろ」と言わんばかりに咆哮を上げて応えるウロヴォリアス。

 

「仲間のカードか、そいつでノヴァを攻略する気か?」

「あぁ! そのつもりだッ! ウロヴォリアスの召喚時効果、【封印】! ソウルコアを俺のライフへ!!」

 

ウロヴォリアスが吼えると共に赤く光るソウルコアがライフへと灯る。

 

「マジック、デスアタラクシア! 効果でジークヴルムノヴァのコア3個をリザーブへ、不足コスト確保でスピッツァーとプロミネンスハンドラーを消滅! 力を借りるぜ!」

「!」

 

スピッツァーとプロミネンスハンドラーは後を託すように振り返り、コアを失って場から消滅。そしてマジックによる紫の波動がノヴァへと放たれ、両腕を構えての防御姿勢で受けコアが3個取り外されるがそれでもまだノヴァに置かれたコアは5個。最大レベルを維持したまま変化はないが。

 

「これで俺はターンエンド」

「成程そう言う訳か。ならば俺のターン!」

「この瞬間、ウロヴォリアスの効果! 【呪縛】発揮!」

 

ウロヴォリアスの胸のコアが輝き始めたかと思うと、コアから放たれる紫炎が無数龍となってノヴァへと降りかかり、その身を縛り付ける。

 

「ウロヴォリアスの呪縛で相手の各ステップ開始時に、コア一つずつトラッシュへ! まずはスタートステップ!」

「!!」

「次にコアステップ!」

 

身動きの取れぬまま龍に締め付けられ、力を削ぐかの様にコアを次々と取り除いて行く。

 

「さらにドローステップ、さらにノヴァのコアを除去!」

「生憎ステップ開始時で発動する効果はウロヴォリアスだけじゃない。こっちもオリン円錐山のLv.2効果で2枚ドローさせてもらう!」

「けど次のリフレッシュステップ、さらにノヴァのコアを除去、そしてメインステップ!!」

 

ステップ開始と同時についにノヴァの最後のコアが取り除かれ、断末魔を上げながら紫炎の龍に拘束されたノヴァはフィールドから消滅。

 

 

 

 

────第8ターン、ヘルside。

 

[Reserve]8個。

[Trash]1個。

[Hand]3枚。

[Field]選ばれし探索者アレックスLv.2(2)BP6000、オリン円錐山Lv.2(3)。

 

「俺のターン、バーストセット。そして焔竜の城塞都市を配置。そしてアレックスの効果、疲労させ1枚ドロー。さらに残りのコア全てをアレックスへと追加」

「!」

「今アレックスのコアは7個。呪縛の効果だけで削り切れるか?」

「ッ!」

「アタックステップ!」

 

ステップ開始した事でアレックスもまたウロヴォリアスの生み出す紫炎の龍に縛られ、コアを取り除かれるがまだアレックスのコアは大量に残る。アタックできるスピリット不在によりエンドステップへ移りウロヴォリアスの効果でさらにコアを取り除くがそれでもまだ残るコアは5個。

 

 

 

 

────第9ターン、烈我side。

 

[Reserve]13個。

[Hand]3枚。

[Field]辰の神皇ウロヴォリアスLv.1(1)BP10000、創界神ブラフマーLv.1、創界神アポローンLv.1。

 

 

「メインステップ! マジック、サンダーテンペスト! 効果でアレックスを破壊して1枚ドロー!」

「こっちのアドバンテージを潰してきたか」

 

アレックスへと降り注ぐ閃光の雷、直撃を受けその身を黒く焼き焦がされてアレックスは爆散。

 

「そして今度はミナト、お前の力を使わしてもらうぜ!」

「!……待ってたぜ、俺の番!」

 

烈我の言葉と構えるカードで察した様子で口角を上げながら共に叫ぶ。

 

「「三つ首の獣、本能のままに叫び! 敵を威圧する咆哮を! 勝利の雄叫びを上げろッ!! 戌の十二神皇グリードッグ、Lv.3で召喚ッ!!」」

 

地の奥深く煉獄の鎖に繋がれし獣、ウロヴォリアスと肩を並べし「戌」の十二神皇たるグリードッグは目を覚まし、鎖を引き千切ると地上へと飛び出して吼え上がる。

 

「グリードッグ! 烈我の、嫌、俺達の勝利に喰らい付きにいけ!」

 

自らの相棒と烈我へエールのように言葉を送るミナト、そしてウロヴォリアスと共にグリードッグはヘルに牙を向けて構える。

 

「辰の次は戌か、随分と個性豊かなフィールドになったじゃないか」

「余裕ぶってんのもそれまでだぜ! アタックステップ!! グリードッグ、行けーーッ!!!」

 

烈我の指示に地面を蹴り飛ばして全速力で駆け抜けるグリードッグ、攻撃を開始すると同時に咆哮を上げると、声に呼応するかのようにヘルの手札が宙へと浮かび始め。

 

「グリードッグ、封印中のアタック時効果! 【強奪】発揮!!」

 

上空にヘルの手札が映し出され、オープンされたのは「フォースブライトドロー」、「ソウルオーラ」。

 

「グリードッグの効果、相手のマジック! フォースブライトドローを破棄してその効果を俺が使う!」

 

宙にオープンされたフォースブライトドローのカードを飛び上がって咥え取ると、その牙で咥えたカードをバラバラに噛み砕く。

 

「マジックの効果、俺は手札が4枚になるようドロー! さらにLv.3効果で回復!!」

「ははは。癖の悪い犬っころだ。後で躾てやるとして……アタックはライフで受けよう」

 

三つ首の牙がバリアへと突き刺さる。先程同様自慢の牙でバリアも数秒も経たぬ内に噛み砕きヘルのライフも同様に破壊される。だが。

 

「ライフ減少時でバースト発動! 絶甲氷盾!」

「何!?」

「バースト効果でボイドからコア1つをライフに追加、さらにコストを支払いお前のアタックステップを強制終了。手札に気を回してバーストの警戒を怠ったな」

 

回復し再度牙を向けようとするグリードッグだがバーストによる吹雪に吹き飛ばされ、これ以上の攻撃を阻むが如く築き上げられる氷の壁。

 

「……ターン、エンド」

 

続くヘルのターン、ウロヴォリアスの呪縛は継続して発動されるがスピリットのいないヘルに対してリザーブのコアをトラッシュに送れるが、メインステップまで進めた場合を想定すれば精々コア1個をトラッシュに送れる程度。既に十分コアブーストを行ったヘルに大した影響はない。

 

 

 

 

「オリン円錐山の効果で俺はこのターンも2枚引かせてもらう」

 

手札1枚の状態から新たに2枚のカードを加えて引いたカードは。

 

「……どうやら面白い物をお前に見せてやれそうだ」

「面白い物?」

 

 

 

 

────第10ターン、ヘルside。

 

[Reserve]12個。

[Trash]1個。

[Hand]3枚。

[Field]焔竜の城塞都市Lv.1(0)、オリン円錐山Lv.2(3)。

 

「メインステップ、見せてやろう憤怒の化身を!」

「憤怒って……まさか!!」

 

ヘルの浮かべる不敵な笑みと言葉の意味に予感がした。そして烈我の予感はすぐに確信へと変わる。

 

「怒り狂え! 暴れ滾れ! 紅蓮の暴龍よッ!! 爆我炎龍バジュラブレイズ、Lv.3で召喚ッ!!!」

 

フィールドに赤く降り注ぐ流星群。土台を作り上げるかのように周囲を抉り中央の舞台に一際巨大な隕石が降り落ちる。隕石は地面へ激突すると爆炎と業火を逆巻きながらフィールドへ姿を現す赤き龍、憤怒を司る七罪竜、バジュラブレイズ。

 

光黄やミナト達、そして何より烈我にとっては何度も見慣れた筈の光景、だが今この場において目に映った光景に思わず絶句。しかしそんな沈黙をぶち壊すかのようにバジュラブレイズは咆哮を轟かせ、怒り狂うかのような怒号はまさに自らの罪である"憤怒"の証明。

 

「何で、お前がバジュラを……!?」

「『何で』、わざわざ説明するまでもないだろう。既にオメガデッドはバジュラの力のほぼ大半を吸収してる。もう一度バジュラを生み出すぐらい訳ないだろ」

「!!」

 

"グルアアアアアァァァァァ────────ッ!!"

 

今一度吠えるバジュラ、自我は無く荒れ狂う獣でしかないがその存在は確かにバジュラそのものとも言える。

 

「今までお前が使ってきた相棒が、このバトルではお前を追い詰める一手となる。こう言うのを皮肉って言えばいいのか?」

「ッ!!」

「続けようか、マジック、ソウルオーラ! 効果でこのターン、俺のスピリット全てにBP+3000、ソウルコアが置かれたバジュラブレイズにさらにBP3000を加算!! そして残りのコアを全てバジュラブレイズへ! さぁ、お待ちかねのアタックステップ!」

「ぐッ! ウロヴォリアスの呪縛の効果!」

「無駄だ」

 

ウロヴォリアスが生み出す紫炎の龍がバジュラを拘束すべく飛び掛かるが、向かってきたソレを片手で掴み取ると冷酷無慈悲に握り潰す。

 

「その程度の効果でバジュラを止められると思うなよ。バジュラブレイズ、アタックだ!」

 

両腕に炎を滾らせヘルの命令に拳を打ち鳴らしながら突っ込むバジュラ。

 

「バジュラブレイズのアタック時効果、【火力推進(ヒートアップ)】発動!」

「!?」

「今更お前に効果の説明は不要だよなぁッ! BPをさらに加算し、手札を破棄して強制ブロックしてもらう!」

 

ソウルオーラと合わせて今のバジュラブレイズのBPはこれで23000、ウロヴォリアスやグリードッグ、どちらのBPも上回っている。

 

「ウロヴォリアス……ブロックを頼むッ!」

 

突っ込むバジュラにウロヴォリアスは口内にエネルギーを溜め込んでからの破壊光線を放つが、バジュラもまた一度その場で踏み止まると豪炎を散らしながら口を開き火炎放射を吐き出してウロヴォリアスの攻撃を迎撃。炎と光線がぶつかり合い激しい閃光と共に巻き起こる大爆発。

爆風に二体の龍は包み込まれ、視界が遮られウロヴォリアスは一時退避すべく翼を広げて飛び上がろうとするがその瞬間、煙の向こう側から伸びる腕が地面から足を離した直後のウロヴォリアスを尾を掴み、そのまま地面へ引き摺り落とす。

地面へと叩き付けられ直ぐに態勢を立て直そうとするがもはや手遅れ。起き上がるよりも前に既に振りかざしたバジュラの拳がウロヴァリアスへ突き刺さると、断末魔を上げながら爆散し破壊されるウロヴォリアス。

 

 

「ウロヴォリアスッ!」

 

自分のキースピリットが破壊される姿にバトルの光景を見ている絵瑠は思わず声を上げる。烈我もまた託されたキースピリットが破壊され、悔しさに拳を握りしめる。

 

「絵瑠、ごめん。ウロヴォリアス……守りきれなかった」

「悔やむ事はない、これは当然の結果だ」

「何ッ!?」

「お前も七罪竜を扱うものとして分かってる筈だ。ただのXレアと七罪竜じゃ圧倒的に格が違うって事をな!」

「そんな訳──」

「『そんな訳ない』、って言いたいんだろ?」

「!」

 

烈我が次に何を言うのか理解しているように先の言葉を代弁しながら笑って見せ。

 

「認めたくないよな? けど直ぐに認めざるを得なくなるだろうさ。バジュラの効果、相手スピリットを破壊した時回復!」

「ッ! でももう手札は……!」

「甘いな。ネクサス、焔竜の城塞都市の効果。相手を破壊した時一枚ドロー!」

「!」

「俺に死角はない。さぁ、回復したバジュラブレイズでもう一度アタック! 【火力推進】の効果、手札を破棄して強制ブロックをしてもらうッ!!」

「くそッ! グリードッグでブロック!!」

 

BPで敵わないと分かっていてもブロックを強制されている以上、拒否する事は出来ない。グリードッグに指示を送ると、バジュラを迎え撃つようにグリードッグもまた駆け出して行く。

 

「【強奪】の効果はブロック時でも発揮される……が、今の俺の手札はない。無い物は奪いようがないよなぁ?」

「!」

 

ヘルの言葉通りグリードッグの【強奪】は実質無効も同然。雄叫びを上げながら突っ込むバジュラにグリードッグは迎え撃つように飛び掛る。

その姿にいち早く気付くと一歩身を引いてグリードッグを避け、追撃を掛けるべくグリードッグは牙をバジュラへと向けるが向かって来るグリードッグの左右の頭を両腕で掴んで受け止める。

 

完全に勢いを抑え込まれるがそれでもまだ中央の首が残る。食いかからんと牙を向けるが、牙がバジュラへと届く前に両腕に炎を込め、掴んだ左右のグリードッグの頭を焼き焦がすと堪らず悲鳴を上げ、隙が出来た瞬間にグリードッグを蹴り上げ、ガラ空きの胴体に炎拳を叩き込み、グリードッグは爆発四散を起こす。

 

 

「グリードッグ……ッ! 安心しろ、お前は充分役目を果たしてくれた。決して無駄死になんかじゃない」

 

ミナトもまた自分のキースピリットの破壊に心を痛めるがそれでもよくやった、と労いながら先のバトルから目を逸らさずに見守り続ける。

 

 

「ミナトのキースピリットまで……!」

 

「効果によりバジュラブレイズは回復。そしてここからだぞ、バジュラの本領は!」

「ッ!」

「再びバジュラブレイズでアタック、ターン中三度目のアタックによりバジュラブレイズの【超爆火力(オーバーヒート)】発揮ッ!! 一枚ドローし、そして回復!」

 

腕に灯る炎が全身へと燃え広がり、怒号を上げて吠えるバジュラ。

 

「これでもうバジュラは止まることは無い。お前のライフを全て削り切るまでな。さぁ打つ手はあるのか?」

「くッ!」

 

試されているかのようなヘルの言葉に表情を険しくさせながらも、このまま負ける訳には行かない。

 

「フラッシュタイミング! マジック、リミテッドバリア!! このターン、コスト4以上のスピリットのアタックじゃライフは削られない!!」

 

バリアがより強固となって光り輝き、構う事なくバジュラは炎を込めた両腕をバリアへ叩き付けるが、破壊する事は叶わず拳が弾かれる。

 

「ハハハ、やるじゃないか。まぁこの程度で終わってもらっちゃ俺も張り合いが無い」

 

攻撃を防がれながらも依然として余裕を崩さずに笑うヘル、「けど」と不敵な表情で言葉を続けて見せると。

 

「リミテッドバリアはあくまでライフを守る為の効果、俺のアタックそのものを止められる訳じゃない」

「どういう意味だ?」

「すぐに分かる。バジュラブレイズでもう一度アタック!」

「!?」

 

再び眼光を灯し拳を振りかざすバジュラ。バリアに拳を突きさす衝撃に多少足元が揺れるがそれでもライフは無傷の状態。

 

「幾ら攻撃したって、俺のライフは破壊されない!」

「あぁ、分かってるよ。だから俺の狙いはライフじゃない」

「……もしかして、狙いは……!」

「そういう事だ」

 

察した様子の烈我にヘルは口角を上げると。

 

「バジュラのアタック時で俺は1枚ドローできる、そして回復したバジュラでアタックしもう一枚ドロー!!」

「ぐッ! 最初から手札補充が目的かよ!!」

 

烈我の言葉通り、ヘルの狙いはバジュラの攻撃によるドローのアドバンテージ。気付けば先程まで0枚だった筈のヘルの手札は既に3枚まで補填されていた。

 

「気付いた所で今更お前に止める手段はないだろ? 再びバジュラでアタック!!」

「ッ!!」

 

そこからは4度目、5度目と何度もライフを殴り続けるバジュラ。例えダメージはなくとも血気迫る姿で攻撃をバジュラの姿には誰しも少なからず恐怖を感じずにはいられないだろう。

 

 

「俺の手札はこれで5枚。手札は充分、これで俺はターンを終了」

「ッ!!」

 

手札もライフもヘルの場は十全、対して烈我の手札もライフもヘルには劣りフィールドにはスピリットもいない状態だが。

 

「(皆と約束したんだ、必ず勝つって! だから、負けてたまるか!!)」

 

心の中で強く叫びながら、迎える自分のターン、デッキに手を翳す烈我。

 

『(……ハッ、まだ心は折れてねぇみたいで安心したぜ、烈我ッ!)』

「(バジュラ!)」

『(とっとと反撃行くぞッ!)』

「あぁ!」

 

 

バジュラの言葉に強気な笑みを浮かべてカードを引き、その手に来たのは勿論唯一無二の相棒。

 

 

 

 

────第11ターン、烈我side。

 

[Reserve]15個。

[Hand]4枚。

[Field]創界神ブラフマーLv.1、創界神アポローンLv.1。

 

「俺のターン! 極限憤怒の大烈火!!! 怒りが吹っ切れる程に豪快過激に燃え上がれッ!!!! 獄神火龍バジュラレッドイグニール!!! 召喚ッ!!!!」

「!!」

 

フィールド中央で起こる大爆発、轟音と共に空へと届く程の爆炎を噴き上げ、灼熱の火柱の中に輝く眼光。極炎をその身に纏いながら現れる龍の姿。

 

”グオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ─────ッ!!!!!!”

 

地面に刻み付ける様に強く踏み締めながら咆哮を轟かせるもう一体のバジュラ、バジュラレッドイグニール。

 

「ここで来るか……! バジュラ、嫌、イグニールッ!!」

 

バジュラレッドイグニール、その姿に歓喜な表情のヘルに対し、イグニールは敵意剥き出しの表情で睨む。

 

『俺の登場を待ち望んでたか、ヘル……俺の偽物を従えて大将気取りとはいいご身分だなオイ!』

「偽物とは言ってくれる……こいつはお前の力を取り込んで生まれた存在、偽物ではなく正真正銘のバジュラだよ」

『どっちだっていいッ! 例えそいつが偽物だろうが本物だろうが、俺がテメェに従わされる姿を見てるだけで、怒りが抑えきれねぇんだよッ!!!』

 

激昂に声を荒げながら、憤怒と殺意に満ちた目のバジュラレッドイグニール。

 

「気に入らないか? だったら来い、何時でも受けて立つぞ?」

 

以前ヘルは余裕綽々の表情、そして彼の傍らにいるバジュラブレイズはヘルと同じくイグニールを迎え撃つ気万全の様子で拳を打ち鳴らしている。

 

 

 

 

「バジュラ、落ち着け。彼奴に乗せられるな!」

『分ぁってるよ。だがこの怒りは奴の面をぶっ飛ばすまで晴らせねぇぞ!」

「あぁ。だから倒すぞ、俺達で!!」

 

烈我の言葉に、軽く笑いながら気合を入れる様に、シャァ!と意気込むイグニール。

 

「行くぜ、アタックステップ! バジュラレッドイグニールでアタックッ! アタック時効果、【超爆龍王(オーバーロード)】ッ!」

「!」

「バジュラブレイズに指定アタック! そして相手に他のスピリットがいなければバジュラレッドイグニールを最高レベルとして扱う!!」

 

『派手に過激に、昂るぜェェェッ!!!』

 

にらみ合う二体のバジュラ。全身の炎を燃え滾らせながら突っ込むイグニールに、ブレイズもまた真っ向から受けて立つべく拳を構えながら駆け出し、イグニールとブレイズ、双方の繰り出された拳が激突し、衝撃が周囲一帯を吹き飛ばす風圧となって吹き荒れ、ヘルも烈我も風圧に吹き飛ばされまいと、身を構えながら踏み止まる。

 

 

 

『偽物野郎、テメェは所詮過去の俺! テメェなんか相手じゃねぇんだよ!!』

『グルアアアッ!!』

『るせぇ、俺の前からとっととどけぇッ!!!』

 

力比べの様に拳に力を籠める両者だが、力に分配が上がるのはイグニール。そのまま拳を前へ突き出し、ブレイズを弾き飛ばし、後方に弾かれながらも口を開いて轟炎を吐き付け、防御姿勢を取って轟炎を受け止めるイグニール。

 

『……足りねぇな』

「!」

 

炎を受けながら呟くイグニール。

 

『俺達七罪竜が司る罪は魂があってこそ、テメェの炎には全然怒りが足りてねぇ! 中身のねぇテメェの攻撃なんざ俺には通じねぇぞッ!!!』

 

強く吠え叫ぶと炎を拳で打ち払い、そのままブレイズへ突っ込み迎撃する様に拳を振りかざすが、ブレイズの拳を片腕で受け止めて見せると。

 

『怒り、憤怒! その身に教えてやらァッ!!!』

 

腕を払い除け、そのまま繰り出す右ストレートがブレイズへと突き刺さり、声を上げる間もなく連続で繰り出される拳が炸裂し、数十発以上の打撃を撃ち込まれそして止めの一撃を叩き込むと、遥か後方まで吹っ飛び、ヘルの真横掠めながら壁に減り込む程叩き付けられ、その場に崩れ落ちて爆散するブレイズ。

 

「自分自身が相手なのに容赦ないなお前」

『ハッ、何言ってやがる。俺の前に立ち塞がる敵なら誰だろうとぶっ飛ばすだけだ、たとえそれが俺だろうとな! 全部ぶっ飛ばして、勝つ!! そうだろうが!』

「……あぁ!!」

『さぁまだまだ行くぜ!』

「おぉ! バジュラレッドイグニール、【超爆怒獄焉(ブラストバーン)】発揮ッ!」

 

息を合わせる烈我とバジュラ、発動するその効果はBPを比べ、倒した相手を上回ったBP差10000につき、相手のライフを破壊。破壊されたバジュラブレイズのBPは120000、そしてバジュラレッドイグニールのBPは35000。

 

「BP差は23000、つまりお前のライフを二つ破壊だ!!」

『喰らいやがれッ!! ヘルゥッ!!!』

 

「!!」

 

大きく振りかぶった炎拳をヘルへと振り下ろし、瞬時にバリアが展開されるが強大な程の衝撃に巻き起こる大爆発、バリアを木っ端微塵に粉砕しヘルのライフ2つを一気に砕く。

 

「ッッッ!!!!!」

 

強力すぎる程の一撃、衝撃を受け止めきれなかったように吹っ飛ばされるヘル。

 

『どうだ思い知ったか!! これが、俺達の力だ!!!』

 

一撃を喰らわせ手応えを感じるバジュラと烈我、強烈な一撃に仰向けに倒れるヘルだが。

 

 

 

 

「………………フフ」

「『!』」

「……ハハッハハハ! これがイグニールの力か!! 十分理解した!!」

 

不気味さを感じさせる程の高笑い。ゆっくりと立ち上がりながら相対するイグニールの姿を見つめ。

 

「お前の力、しかとこの身で理解した。確かにお前の力は元のお前以上の様だな。だが、それでもまだ、オメガデッドには及ばない」

 

「!」

『テメェ、負け惜しみのつもりか?』

 

「負け惜しみ? 可笑しな事を言うな。負け惜しみは追い詰められた側が使う言葉だろ?」

「『何!?』」

「この程度じゃまだ俺の優勢は覆っていないという事だ」

 

烈我の場にもう攻撃できるスピリットは無く、自動的にターンはヘルへと移る。

 

 

 

 

────第12ターン、ヘルside。

 

「オリン円錐山の効果で再び二枚ドロー!」

 

[Reserve]16個。

[Hand]7枚。

[Field]焔竜の城塞都市Lv.1(0)、オリン円錐山Lv.2(3)。

 

 

「メインステップ。さぁ今度は此奴の出番だ、夜を統べる影の支配者にして暴食を司りし龍王よ! 闇影夜龍エルドラシュオン!! Lv.3で召喚ッ!!」

 

ヘルの背後から発生する黒い瘴気、辺りを黒く覆い隠しながら霧の中に蠢く龍の影。そして少しずつ闇が晴れて行き、影の中に蠢く正体こそ暴食を司る七罪竜、エルドラシュオン。

 

 

「シュオン!?」

 

黒龍の姿に動揺を隠せない烈我、彼だけではない絵瑠もまた空に映るシュオンの姿に反応せずにはいられなかった。

 

 

「七罪竜の力、その全てがもはや俺の物だ」

『チッ、俺達七罪竜をいいように扱ってやがってッ!!』

「オメガデッドに認められたんだ。その分身であるお前達を扱うのは当然の権利だろう」

『テメェ……ッ!!』

「さっきお前は言ったな、「怒りが足りない」と。俺から言わせればお前の怒りもまだまだ俺には及ばない」

『何だとッ!?』

「お前だけじゃない、お前達二人、その程度じゃ俺を止める事等出来はしない」

「『!!』」

「だからもっと証明して見せろ! お前達の力はこの程度じゃないと!!! 俺を、心行くまで楽しませろぉッ!!!」

 

"グオオオオオオオオォォォォォォ────ッ!!"

 

狂気に満ちたヘルの叫びに、共鳴するかのように咆哮を轟かせるシュオン。世界全ての命運がかかったバトル、その行方はまだ始まったばかりにすぎない。

 

 




お久しぶりです。ブラストでございます。
最近ほぼ更新せぬままサボり倒しておりました、許してつかぁさい。
仕事に仕事にウマと仕事と原神を←

とまあ本編の話に切り替えまして、いよいよ最終決戦に突入!もはや語るまでもないでしょう。最終回まで残り数話、このまま走り抜けますので是非とも今後ともよろしくお願いします!!!




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