バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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第46話【お前の願い】

 

『ルディア様』

「フリー!?」

 

ライト達同様にオメガデッドから解放されたフリー。現場に向かうとする彼の下へ合流し、フリーの姿に驚くように声を荒げた。

 

「どうして、君が……」

『私は貴方を最後まで見届けると誓った身です。だから貴方の元に戻りました、それだけです』

「……いいのかい? また僕の傍にいる事に?」

『はい。貴方が許可いただければですが』

「……うん。じゃあお願いするよ、フリー」

『承知しました』

 

淡白な言葉のやり取りのみ。けれどこれが彼等なりの信頼なのだろう。第三者の目から見ればそれが直に伝わる。

 

彼等(烈我達)は?」

『ご案内します。ですがその前に、貴方に伝えるべき事が』

 

一部始終を見届けていたフリーは、その全てをルディアへと伝える。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

バトルを終えた烈我達だが、勝者である筈の彼等全員ただ崩れた城を眺めたまま言葉も掛けられない状態だったが、そこへ合流するルディア達。

 

 

「やぁ皆、無事で何より」

「ルディア……!」

「事情はフリーから聞いてる。先ずは全員ここから離れよう」

「でも!」

「分かってる。後の事は僕達で済ましておく。とりあえず君達は落ち着ける場所に移動しよう」

「…………」

 

一先ずこの場でもう烈我達に出来る事は無い。ルディアの言葉に首を振ると烈我達はこの場を後にし、罪狩猟団の面々が瓦礫の撤去を始め、この場の後片付けを一任する事となった。

 

世界を守り間違いなく英雄となった彼等だがそれでも素直に勝利した喜びに浸れる余裕はなく、ただ起きた事全てを記憶に焼き付けようと、遠ざかりながらも崩れた城の光景から最後まで目を離さずに彼等は見つめ続けた。

 

 

 

 

 

「……色々あったと思うけど、これだけは言わせてほしい。決して、ヘルの事は君達の責任じゃない」

「!」

 

移動道中、俯く烈我達にルディアから投げかけられる言葉。

 

「でも……!」

「簡単には割り切れないと思う。でも、ヘルは……ヘルさんは君とのバトルに感謝してた。そして、最後に君を助けた。その意味を、ゆっくりでいいから考えて欲しい」

「…………」

「でもまずは、この世界の者として戦い、そして世界を守ってくれた事にお礼を言わせてくれ。本当に、ありがとう」

「……あぁ」

 

まだ完全に気持ちの整理はつかない。けれど、少しだけ俯いた顔を上げ差し伸べられたルディアの手を取る烈我。そして移動する彼等の元へ、ミコやヴァン、ディストにガイト達帝騎の面々やマチアとも合流する。

 

 

 

 

 

「ルディア様、各地域共に混乱も収束し、皆平穏を取り戻しつつあります」

「そっか。ありがとう」

 

ディストからの報告に頷き、並ぶ帝騎面々の顔ぶれを見ながら。

 

「ディスト、ヴァン、ミコ、ドレイク、ガイト。今日まで君達を利用したことを改めて謝罪する。そして、今回そんな僕に協力してくれてありがとう……そして、今日を以て罪狩猟団は解散する。皆、好きにして欲しい」

「「「!」」」

 

5人に告げられる組織解体の知らせ。5人ともそれぞれ顔を見合わせながら急な発表に困惑した様子だったが。

 

「ハッ、そうかい。まぁ俺としては抜けられて清々するがな」

「ヴァンッ!!」

 

真っ先に口を開いたのはヴァン。不躾な態度にディストはキッと睨むような視線を向けるが。

 

「元々俺はお前等と事情が違う。悪く思うな」

「うん。君を利用して本当に」

「いいって、そういうのはもう」

「!」

「利用しようとしてたのはお互い様だ。別に恨んじゃいない。俺はただ、彼奴と一緒にいれればそれでいい」

 

チラリと視線をマチアに向け、その様子にルディアも「そっか」と安心するように返事を返す。

 

 

「ルディア、俺とミコも同じだ。解散と言うなら俺達もこれから好きにさせてもらう」

「うん。これからの行く宛はあるのかい?」

「さぁな、気ままな旅だ」

 

「妾はドレイクと一緒ならどこでも平気じゃぞ」

 

満面の笑みのミコに対し「物好きな奴」と悪態を付いてそっぽを向きながらも、ドレイクの表情は心無しか顔が少し赤くなっているように見えた。

 

「ルディア様、俺は……」

「ガイト。君は元々向こう側の人間だ。僕に気遣う事は無い、元の世界に帰ってこれからは、君の仲間達と一緒に過ごせばいい」

「……今までありがとうございました」

 

それ以上は何も言わずただ頭を下げ、ルディアもただ黙ってその礼を受け取る。

 

「ルディア様、私は……!」

「ディスト、君にも色々尽くしてもらった。けどもういいんだ、これからは自由に──」

「私は!!!」

 

ルディアの言葉を遮るように、声を荒らげ。

 

「私はずっと自分の本心で貴方の傍に仕えてきました。貴方に求められた事が何より嬉しかった! その気持ちは今でも変わっていません! だからどうか……どうかこれからも、私を、貴方の傍に!!」

 

涙ながらに訴える彼女、今まで生きてきた中でただ一人自分を必要としてくれたルディアに対して想う彼女の気待ちに嘘偽りはなく、しばらく考え込む様に無言のまま彼女を見つめるルディアだが。

 

「……ディスト、僕はこの先、この世界を守る為に生きていきたい。弱きを助け、そして罪を挫く、本当の罪狩猟団として生きて行こうと思う。それが罪滅ぼしになるかはわからないけど僕はそう信じたい。だからディスト、君が望むなら僕にまた……付いてきてくれるかい?」

「!……はい、喜んで!!」

 

涙を拭いながら心の底からの笑顔を見せるディスト、その表情にルディアもまた穏やかに「ありがとう」と囁いた。

 

 

 

 

「さて、待たしてすまなかったね。それじゃ元の世界まで送ろうか」

 

『ハッ、生憎俺達は容易に世界の移動が出来んだ。他人の世話にはならねえよ』

『えぇ。光黄様をエスコートするのは他でもない執事のこの私ですからね!』

 

前へと出て得意げに語るバジュラとライト、「折角のルディア様の好意を!」と小声で呟きながら視線を鋭くさせるディストに烈我達はあえて見て見ぬふりをするようにさっと視線を明後日の方向へ向ける。

 

「それじゃあ本当にありがとう。君達と次に会えるかは分からないけど元気でね」

「あぁ。ルディア達もこれから色々頑張ってくれよ!」

「うん。期待に応えられるよう頑張るよ」

 

ルディアと握手を交わす烈我達。別れを済ませ、『それじゃあ行くか』とバジュラ達は準備しようとするが。

 

『バジュラ、少しだけよろしいですか?』

『!』

 

フリーに呼び止められるバジュラ。意外だったように一瞬目を見開くが、直ぐに何用かと反応を返す。

 

『貴方に伝えたい事があります。ですが出来れば』

 

気にしてるように目線を烈我達へチラりと配らせるフリーにバジュラも何となく察すると。

 

『分かった。烈我、お前らは先に行ってろ。移動はそこの色欲魔に任せた』

 

『誰が色欲魔ですか! というか何故彼女と二人きりになるのがお前なのです!! 話ならこの私も同席を──』

『申し訳ありませんが私が指名したいのはバジュラです。他は御遠慮ください』

『フリー様!??』

 

『ハハッ、そういう訳だ。烈我達の事はテメェに任せたぜ』

『ぐぐぐっ……フリー様に手出したら承知しませんからねッ!!』

『どの口が言ってんだ、どの口が!』

 

バジュラのツッコミに同意する様に後ろでうんうん、と頷いている光黄。

 

「……バジュラ」

『ただ話を聞くだけだから心配すんな。お前は仲間と先に帰ってろ』

「あぁ。待ってるからな」

『おぉ、また後でな』

 

一時別れを告げ、『それじゃあ行きますよ』とライトの掛け声とともに元の世界へ帰還する烈我達。そしてその場に残ったバジュラはフリーと向き合い。

 

『それじゃ、聞かせてもらおうか? お前の話って奴を』

『はい。承知しております』

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

『さぁ、無事到着しましたよ!』

 

 

ライトの案内の下、元の世界へと無事帰還する烈我達。辺りの風景を見渡しながら一同は自分達の世界に帰って来た事を実感する。

 

「はぁ~~っ!! 元の世界に帰って来るの何だか久々な感じがするな」

 

大きく息を吐きながらしみじみと呟く。振り返れば色んな事があったが終わってみればあっという間と不思議な感覚だった。初めてバジュラと出会った日の事、そしてそれからは七罪竜を巡ってルディア達と戦ったりとこれまでの記憶を感慨深く辿る烈我達。各自思い出に耽る中暫くしてバジュラもその場へと帰還するのだった。

 

 

『よォ、烈我。戻ったぜ』

「バジュラ!」

『言っただろ、すぐに戻って来るってよ』

 

何義ともなく無事に戻り軽快な様子で笑うバジュラに烈我達も安心するが。

 

「ところで結局フリーとは何を話してたんだ?」

『……あー、それは』

「?」

『とりあえず後で話す。それより先に』

 

烈我に対してはバツが悪そうに歯切れの悪そうな口調で、次にライトやキラー、エヴォルとシュオンに対してそれぞれ視線を配り、他の者には聞かれたくない様に人払いを促し、少し離れた場所でライト達に用件を伝える。

 

『『『!!』』』

 

バジュラからの言葉にライト達全員一瞬驚いたような顔色を浮かべていた。

 

 

「バジュラ、お前……本気なのか?」

 

最初にバジュラに問いかけたのはシュオン、バジュラは何も言わずただ首を縦に振って見せる。

 

「俺の判断はもう決まってる。後はお前等だ、無理強いはしない……テメェ等の相棒と一晩考えろ」

「「「…………」」」

 

各々に告げるとバジュラは烈我の元へ戻り、ライトやシュオン達面々も一瞬顔を見合わせたがそれ以上は言葉を発する事無く静かに自らのパートナーの元へ戻っていく。

 

 

「じゃあ皆、また!」

 

「おぉ」

「うん。また明日だな!」

「はい、烈我も休んでくださいね」

 

烈我達もまた明日、と挨拶を済ませミナト、絵瑠、星七の三人。立ち去る彼等の後ろ姿を見送って。

 

「……烈我」

「!」

 

自分を呼びかける声、声の主が誰かはもう分かり切っている。

 

「光黄」

 

振り返る前に烈我もまた名前を呼びながら、彼女の方へと視線を向ける。お互いに何を言いたいか、当然分かり切った様子で真っ先に会話を切り出す烈我。

 

 

「光黄、俺……勝ったぜ。約束通り勝って、また無事俺達の世界に戻って来れた」

「分かってる」

「だから、今度は!」

「あぁ。俺の番だな、お前とのバトル、何時でも受けて立つ!」

「!……よっしゃぁッ!! なら今すぐ──」

 

『あー、烈我今日は遅いし俺も疲れた。今日の所は休まねぇか?』

『はい、光黄様。申し訳ありませんが今日は私も……!』

 

「「!」」

 

早速バトルを始めようとした手前、突然ライトとバジュラも延期の提案。「えぇーー!?」と疑問と不満残るような烈我に対して光黄は。

 

「……ライトがそう言うならまた日を改めよう」

「こ、光黄!!」

「分かってる。バトルの約束は反故には絶対しない。また明日な」

「うぅ……分かった。なら明日絶対、バトルしようぜ!」

「あぁ。負ける気はないがな」

「俺だって! 明日お前に勝って……それで俺は、必ずお前に! 告白する!!」

 

「……また、明日な」

 

烈我の言葉に一瞬間を空けながら、彼女はその場を後に帰宅していく。

 

 

 

 

『そんじゃあ、俺達も今日は帰るか』

「その前にバジュラ……お前何でさっきバトル止めたんだよ?」

『あぁ?』

 

質問の意図に意外そうな顔色を浮かべるバジュラ。

 

『何でそう思う?』

「何でも何も、血の気の多いお前が止めるなんてどう考えても変だろ」

 

ライトと顔を合わせればいつも喧嘩っ早い性格のバジュラ。一度敗戦したこともあり普段であれば多少の疲労など意にも介せずリベンジとばかりにバトルに乗っていた筈。だからこそ今日ばかりは消極的な態度のバジュラに違和感を感じずにはいられなかった。

 

「もしかして、フリーやライト達にしてた話と関係ある事なのか?」

『……あぁ。とりあえず今は帰るぞ、訳は全部そこで話す』

 

真剣なバジュラの目。隠す気はないだろうと彼を信じ頷くと烈我達もまたその場を離れ帰宅する。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ただいま」

「お帰り! 二人共!! 帰りが遅いから心配してたんだけど無事なようで何より!!」

 

 

帰宅する烈我とバジュラを出迎えるるみか、色々あったものの明るく出迎えてくれる姉の姿に少なからず安心感を覚える二人。

 

「心配かけてごめん、姉ちゃん」

『おぉ、迷惑かけたな』

 

「あれ、バジュラ君、今日は何だか素直だけど何かあった?」

 

『別に。悪いが今日は早めに寝かせてもらう』

 

バジュラの態度にはるみかも多少なりとも違和感を感じ取ったらしい。追及こそなかったが不思議そうに首を傾げ、一方でバジュラの後に続く形で烈我達は自室へ移動し、互いに向き合うと。

 

 

 

 

『先に聞いておくが、ヘルの事は』

「……ヘルさんの事は、気にしてない訳じゃない。でも、俺はもう立ち止まらないって決めたんだ。ヘルさんの事は受け止めた上で、俺は先へ進むって決めた」

『そうか。なら、安心だな』

「?」

 

少なからずその発言に疑問を覚えながらもツッコまず、口を開き話を続けるバジュラの言葉に聞き入る。

 

『初めて会った時の事、覚えてるか?』

「あ、あぁ」

『俺が最初に目を覚ましたのは罪狩猟団の施設の一つだった。眠ってる間に捕まり訳も分からん場所で目覚めて最悪の気分だった。そこにヘルが現れて俺は解放された。まっ、今思えば全て彼奴のマッチポンプだった訳だが』

 

思い出して腹立だしさを感じつつも話を戻して。

 

 

『俺は目覚めた時から自分がどういう存在なのか理解してた。だからこそ俺はただ利用されるなんてまっぴら御免だった。俺を道具としてしか見ない連中になんか利用されてたまるか、と。逃げる様に俺はこの世界に来た。そこで最初に会った人間がお前だ』

「!」

『初めてお前を見た時、俺は真っ先に何か直感的な物を感じた。此奴は面白そうな奴だってな。どんな願いだと聞いた時には心底面白いと思い、現にこうして今までお前と過ごしてきてあの時の直感は正しかったって思ってる』

「んだよ急に改まって、まるでお別れするみたいに」

『…………』

「お、おい。バジュラ? 何とか言えよ」

 

烈我の言葉に間を置くバジュラ、その静寂の意味を察した瞬間、バジュラは口を開いて。

 

 

 

 

『……その通りだ。俺は、元の世界に帰るつもりだ』

「は?」

 

あまりにも突然な宣言。理解が追い付かぬ様子で絶句したまま次の言葉が出ないまま数分。

 

「どうして、急に」

『……フリーから言われたんだ。オメガデッドの意思を受け継ぐ気はあるかと?』

「フリーに!?」

 

元の世界に帰還する前にフリーから告げられた内容。当時の記憶を鮮明に振り返る。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『オメガデッドの意思? そりゃどういう意味だ』

『オメガデッドに取り込まれた私達が解放されたあの時、彼の魂……記憶の一部が私に引き継がれました』

『!?』

『何故私だけに彼の記憶が引き継がれたのかは分かりません……けれど受け継いだからにはその事を他の誰よりも貴方に伝えなくてと思ったのです。他ならぬ彼を倒した貴方に』

『……前置きはいい。それで、俺に伝えたい事ってのは?』

『はい。オメガデッドは貴方が守ったこの世界の未来を見届けたい。それが彼の最後の願い、そして未来の為に、この世界を守り紡ぎたい、と……そして、バジュラ。その役目を貴方達に担ってもらいたい』

『ようするにオメガデッドの後継ぎを俺等にって訳か?』

 

バジュラの問いにフリーはこくりと頷く。

 

『随分虫のいい話だな。一度は野郎自身が世界を潰そうとしたってのに』

『……分かってます。虫がいい話だという事は重々。それでも、オメガデッドにとってヘルは唯一自分を求めてきてくれた相棒。だからこそその願いを叶えたかった。何を犠牲にしても』

『……』

『それでもオメガデッドは破れ、ヘルは後を託した。オメガデッドはヘルが託したこの世界の行方を見届けたい、そう思うようになった。けれどもう叶わぬ身。せめて私達がそれを引き継げればと』

『お前もオメガデッドに利用された癖にどうしてそんな事を』

『理解できるからです。彼の気持ちが』

『!』

『欲望……全てを満たし叶えその先にあったのは唯一無二。そして、孤独でした』

『……孤独』

『誰も求めず求められず世界に生まれた意味を探す毎日。その中でオメガデッドはなぜ人間に関わろうとしたのか。バジュラ多分貴方と同じです』

『どういう意味だ?』

『面白そうだから。拙い表現ですが、永い時を生きてきた中で人間は最も興味を惹かれ、そして関わりたいと思ったから。それ以上の理由はなんてありません』

『……』

 

バジュラにとっての烈我と同様、オメガデッドにとってもヘルは唯一特別な存在だと感じたのだろう。詳しい理由がなくともバジュラにはオメガデッドの心情を理解できるような気がした。

 

『元々私達は同じ存在、けれど今は違う。それぞれ己の意思でパートナーを選び歩んでいく道を決めた。そして私達が生まれたこの世界は私達にとって始まりでありかけがえのない場所、だからこそこの世界を私は守り未来に紡いでいきたい。これは他の誰でもない……私自身の意思です!』

『!』

 

今までとは違う、フリーの感情的な様子に思わずバジュラは目を見開く。

 

『私の話を聞いて、貴方がどうするかは貴方自身に委ねます』

『……』

 

 

『確かに伝えましたよ』と何事もなくフリーは引き返して行き、彼女の言葉にバジュラの答えは。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『そういう訳だ。だから、お前とはお別れって事になる』

「!」

 

別れを告げるかのようなバジュラの言葉に、烈我は絶句するように何も言えないまま硬直。バジュラは烈我と向き合ったまま、落ち着くのを待って言葉を続ける。

 

『俺はこの世界に来て、お前と会って退屈しねぇ毎日を過ごせた。でも、それはあくまで俺が生まれた場所があったからだって思うんだ』

「……バジュラ」

『ガラじゃねぇがよ、守りたいって思ったんだ。俺自身の意思で俺の世界を……自分の生まれた意味ってのを失わねぇように』

「……」

 

バジュラに対する返事の言葉が喉から出ない。代わりに頭の中にこれまでバジュラと過ごした記憶がフラッシュバックの様に浮かぶ。長いようであっという間のように過ぎて行く日々、喧嘩したり笑ったり様々な記憶を振り返る内に瞳から涙が零れる。

 

『烈我?』

「……!!」

 

バジュラの呼び掛けから自分の状態に気付くと、涙を拭うように腕で目を覆い、彼は。

 

「…………お前が」

『?』

「お前が決めた道なら……俺は止めない」

『!』

 

これまでずっと一緒だったバジュラとの別れ、悲しくない訳がない。けれでも、これまで一緒に過ごしていた相棒だからこそ、引き留めるのではなく送り出すべきだという事を心の底で理解していた。

 

『……ありがとな。烈我』

 

小さくぼそりと呟くバジュラ。言葉の裏に隠された心情は他の者には決して分かる筈等ない。けれど烈我にはしっかりバジュラの気持ちが相棒だからこそ、この上なく伝わっている。

 

 

 

 

『けどよ』

「!」

『まだ戻る前にやる事がある。帰るのは……その後だな』

「やる事?」

『烈我、お前と最初に会った時、俺は聞いたよな? あの時の言葉をもう一度言うぜ』

 

先程までと打って変わったように口角を上げて笑いながらバジュラは。

 

『テメェに、叶えたい願いは……あるか?』

「!」

 

七罪竜として他者のどんな欲望をも実現可能としてきたオメガデッドだが、バジュラにはその力はない。無い筈だが、バジュラの目は冗談や嘘の類ではない様に本気のように烈我を直視していた。

 

『お前の願い、今ここでもう一度俺に聞かせて見ろ』

「……」

 

バジュラの問い、対して烈我の願いは初志貫徹。ずっと思い続けてきた願いは一つ。

 

「俺は、俺の願いは光黄に勝ちたい。勝って告白して光黄と……結婚したい!!」

『……』

 

初めて烈我の願いを聞いた時は、とても自分がイメージしてるような人間らしい欲望からかけ離れ随分と笑ったものだった。どんな願いでも思いのままだというにも拘らず。けど、だからこそこんな面白い欲望(願い)を持つ者だからこそ力を貸してやりたいと思った。傍で見守ってやろうと思った。

 

改めて烈我の願いを聞いてもう笑う気は起きない。バカで無鉄砲で真っすぐすぎる相棒(烈我)の本気の願い、ならば俺はどうするべきか。

 

『どこまでも変わらねぇな、お前は。まぁ……聞く前から分かってたけどな』

「んだよ、なら態々聞く事ねぇだろ」

『ハハ。お前の口からハッキリ聞きたかったんだよ、それじゃあ俺の最後にやる事は一つだな』

「!」

『行くぜ相棒。最後にお前の願いを叶えるか! 俺、嫌、俺達で!』

「……あぁ。そうと決まれば、早速デッキ調整しなきゃな」

『しょうがねぇから付き合ってやるよ。半端なデッキじゃ許さねぇからな』

 

デッキのカードを机に広げて調整を始める二人。あれでもないこれでもないと二人でまるで普段の様に笑ったり喧嘩したりしながらもそれでも本当に楽しそうに、そしてこのやり取りも最後になるという事を心の奥で胸に刻みながら、相棒との最後のバトルに向けた準備を整える彼等であった。

 

 

 

 

 

 

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