バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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第47話【ライバル】

 

日付が変わったばかりでまだ陽も出ていない深夜未明の時間帯。むくりと起き上がるバジュラ。烈我はと言うと光黄とのバトルに向けたデッキ作りに励み構築を終えたのが少し前。漸く眠りに付いた所で、相棒の寝顔を尻目に空いた窓から外へと飛び出すバジュラ。

 

何処へ向かっているのか当事者でなければ不可解と言わざるを得ない行動だが、彼が向かった先は人目のないとある空き地、そして何時から来ていたのか、フリーを除いてエヴォル、キラー、シュオン、ライトと他の七罪竜の面々が揃っていた。

 

『遅いですよ、バジュラ』

『悪かったな。相棒のデッキ調整に付き合ってたんだよ』

 

最期に来たバジュラを叱咤するライトに大目に見ろよと言いたげな返事を返しつつ、この場に集まった面々の顔を見て早速本題へと入り。

 

『それで、お前等全員これからどうするか。決めたと思っていいんだよな?』

『『『……』』』

 

 

 

 

質問の意図、それはバジュラが元の世界へ戻る事を決めた上で、彼等も同様にパートナーと別れて元の世界へ戻るか否かの選択だ。答えを迫る問いかけに対して数秒の沈黙。

 

 

『ミナトとは話を付けた。俺様も元の世界に帰るつもりだ、向こうでナンバーワンの俺様が居なきゃ話にならねぇだろ?』

 

まず最初に切り出したのはキラーだった。相変わらずと言えば相変わらずだが、何時も傲慢な筈の口調に何となく覇気が無い様に感じられる。

 

『キラー、別に俺は無理強いするつもりはねぇぞ』

『ケッ、変な勘繰りするな、俺様を誰だと思ってやがる。いいんだよ、これで。それに、ミナトには……もう俺様の力を借りる必要もねぇからな』

 

キラーとミナトの間にどういう会話があったかそれは分からない。けれど話し合った末にキラーが出した結論なら今更横やりを入れるべきではない。ただ「分かった」とだけ頷くのみだ。

 

 

『それで、エヴォルは?』

『最初はな、残る気でいたんじゃが……星七に言われた。もし残る理由が星七自身に起因してるのであれば儂は元の世界へ帰るべきじゃと。

彼奴は『僕も叶うならエヴォルともっと一緒に居たい。けれどそれは唯の我儘……君を元の世界から引き離していい理由にはならない。自分の生まれた場所は言葉で言い表せる程簡単に切り捨てられる場所じゃない。だから、もしエヴォルがただ僕を心配してくれてるって理由だけなら、元の世界へ戻るべきだと思う』と。涙を堪えながら言いおった』

 

会話の時の記憶を鮮明に振り返りながら。

 

『この世界は案外居心地がよかった。星七にも出会えた、星七の仲間達も良い人間達だ。だから、ここに残るか、元の世界に帰るか。どうしても天秤に掛けられなかったが星七の言葉で吹っ切れた。やはり儂は自分の生まれた世界というのが大切だと思う。そして星七にはもう儂は必要ない。これ以上は唯の過保護、星七には星七の、儂には儂のやるべき事がある……だからこそ、儂は元の世界に帰ろうと思う』

『そうか。シュオン。お前は?』

 

 

 

『大方、俺はエヴォルと同じだ。お前等も知っての通り、最初俺はかつての力を取り戻したいと思ってた。その為に絵瑠を利用しようとした。だが俺の欲望の元はオメガデッドの記憶。俺自身の力ではない。力を求める事にもう意味も必要も無い。だから精々俺に出来るのは彼奴への償いかと思ったが……必要ないと突っ撥ねられた。

『私自身は自分の欲望に向き合い、そして彼奴とも分かり合えた。だからもうとっくに救われている。だから償いなんて必要ないよ』とな。何処までもお人好しな……相棒だよ』

 

エヴォル同様にシュオンもまた自分の相棒である絵瑠の事を振り返りながらも。

 

『……俺も元の世界に戻る。帰った先でどうすればいいのかなどまだ分からんが、自分の生まれた世界でもう一度自分の生まれた意味、これから成す事を探していくつもりだ』

 

各面々の話を聞き、最期にライトの方へ視線を向けて。

 

『後はお前だ、どうすんだ? 色欲魔』

『こんな時ぐらい名前で呼んでもらえますかこの野郎ッ!!』

 

何時もの様に声を張り上げて怒るライトだが、少し間を置くと普段の勢いはないように声は低く。

 

 

『正直私は……まだこの世界に居たいです』

『……ライト』

『そうです!! 光黄様の執事なのに、光黄様と離れなきゃならないとか考えられませんよ! 元の世界に居たいと思うにきまってるじゃないですか!! 特にシュオン! 貴方絵瑠様という素敵な女性と一緒に居ながらどうして帰るなんて言う発想が出て来るんですか!!!』

『『『『お前なァ……』』』』

 

駄々っ子の様に叫ぶライトをバジュラだけでなく、キラーやエヴォル、シュオンも呆れた様子だったが、すぐに平静に戻り。

 

『……分かってはいるんですよ。自分の生まれた世界が大切だって事。でもそれと同じぐらい、私は光黄様の事が大切です。ずっと一緒に居たいと思った私のご主人です。貴方達の様に……まだ答えを出す事なんてできない。どうするべきか決め兼ねているんです』

『そう思うならお前は残ってもいい。ただこの世界に残る以上、俺達の世界が安定するまで異世界との交流は断つ。ヘルも元はこの世界からの来訪者、同じ過ちが起きねぇように。烈我達や罪狩猟団の奴等も異世界への移動手段は全て破棄、そして分かってると思うがお前も』

『……はい、元より今の私には異世界を移動できる力なんてないですよ』

 

オメガデッドに取り込まれた影響かキラー、エヴォル、シュオン、フリー、そしてライトもまた異世界へ移動できる手段を失われていた。異世界へ移動する力を持っているのは唯一バジュラのみ。簡潔に言えば、バジュラと共に元の世界へ戻る事を選ばなければこの世界に一生取り残されたままとなる。

 

『残りたいなら残ればいい、お前の意思は尊重する。ここにいる全員、自分(テメェ)の相棒が一番だと思ってるからな』

『……』

 

まだ悩み答えが出せない様に俯くライト。けれど少しして俯いた表情を上げる。

 

『バジュラ、少しばかり考える暇をください。それに、元の世界へ帰る前につけるんでしょう? 決着を』

『おぉ。今日の正午、お前とお前の相棒に正式に挑むつもりだ! 当然受けて立つよなァ?』

『挑発しなくとも受けて立ってあげますよ! 勿論勝つのは私ですけど』

『勝ち逃げするつもりがないのは褒めてやるよ。けど、今度は俺が勝つ!! あの時の借りと怒り! 全部億倍返しでなァッ!!!』

『上等ッ!』

 

 

『やれやれ、此奴等は血の気が盛んじゃのう』

『全く最後までやかましい奴等だ』

『ハハハ、いいじゃねぇか。此奴らの最後のバトル! 頂点に立つ者として見届けてやるぜ!』

 

睨み合い一歩も引かぬライトとバジュラ、普段と変わらぬ二匹に各々感想を述べるエヴォル達だが。暫くしてバジュラは口角を上げると。

 

『それじゃあお前等、また後でな』

 

全員コクリと頷きながら一旦解散となりそれぞれ主の元へと戻る七罪竜達。別れの時が近づくの告げるように夜は少しずつ明けて行き。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

夜明けとなり日が少しずつ昇り始めた頃、ベッドから起き上がる烈我。起き上がって目を開いた視線のすぐ先にはバジュラの姿が。

 

『よォ、お前にしちゃ珍しく早起きじゃねぇか』

「あぁ、お陰様で」

『フン、そいつぁ何より』

 

何時になく短い会話間でのやり取り。今日が二人の最後の日というのに。否、だからこそだろう。最期を迎える前にまだ彼らには為すべき事がある。

 

 

「なぁバジュラ。今日のバトル」

『分かってる。俺らのやる事はただ一つだ』

「あぁ!」

 

バジュラに返事を返しながら二人共に声を揃えて。

 

「『絶対、勝つぞ!』」

 

力強く宣言し終えるとバジュラはカードとなって烈我の手に収まり、バジュラのカードを見つめながら己の中で覚悟を決めると、静かにバジュラのカードをデッキに加えて家を飛び出し、光黄の待つ場所へと向かう烈我。

 

 

 

 

「よっ、烈我!」

「!」

 

道中、彼を待っていたように合流するミナトと星七の二人。

 

「いよいよ今日だな。お前と光黄ちゃんのバトル!」

「二人のバトル、どうなるか僕楽しみにしてました! 全力で応援してますから!」

 

「あぁ、二人ともありがとう」

「必ず勝てよ。何てたって今日は」

 

言葉を言いかけたミナトの表情が少しだけ険しくなる。彼が何を言おうとしているのか、その意味を烈我も星七も同様に無言になるが。

 

「大丈夫。必ず勝つさ、そうバジュラと決めたんだから」

「……そっか。その様子ならお前は大丈夫そうだな」

「二人はどうなんだ? エヴォルやキラーもその」

 

少しだけ言葉にしづらい様に尋ねる烈我に対して。

 

「俺は大丈夫さ。キラーと充分話してお互い納得してる。だから……俺から言う事は何も無い」

「僕も。何でもないと言ったら嘘になりますけど、それでも、エヴォルを送り出すって決めたんです」

 

二人も自分達の相棒と会話し別れを決め、それぞれ思い思いの葛藤があった筈であろう。しかし二人とも詳しくは語らず彼等の様子に烈我もそれ以上は追求しなかった。

 

「まっ、俺らの事はともかく今日のメインはお前のバトルだ。必ず光黄ちゃんに想いを伝えろよ。生憎俺はお前より先に進んじまったけど」

「は? それどういう意味?」

「(ミナトさん、それって……!)」

 

ミナトの言葉に烈我はピンときておらず、星七だけが気付いてるように驚いた反応を見せ、対称的な様子に可笑しそうに笑いつつはぐらかす様に。

 

「はいはい、早く行かなきゃ遅れるぜ」

「おいって! どういう事か教えろっての!」

「後で教えてやるさ。お前が勝ったらだけどな!」

 

ミナトなりの激励を送りながら烈我の背中を押し、目的の場所へと向かう三人。

 

 

 

 

***

 

 

 

「光黄!」

「……絵瑠!」

 

丁度同時刻、烈我達と同じく目的地へ向かう光黄だが道中彼女もまた烈我と同じような状況で絵瑠に呼び止められる。

 

「いよいよだな。二人のバトル、私はどっちも応援してるからな!」

「……ありがとう。やるからには、手を抜くつもりはないがな」

「はは、お前らしいな」

 

他愛もない会話を交わしながら歩く彼女たちだが、数歩進んだ所で絵瑠は足を止めて。

 

「ところで昨日さ、シュオンとその……話をしたんだ。お前の方はライトとどうなんだ?」

「…………」

 

歯切れ悪く尋ねる絵瑠に対して、光黄もまた足を止めながらも表情を変えず。

 

「……ライトはまだ悩んでる様子だった。けど多分」

 

シュオンは当然元の世界に帰ることを決めている。絵瑠もまたハッキリと言葉にはしないが旅立ちを送り出すつもりなのだろう。一方でライトはどうするのか答えを聞けていない光黄だが、それでももうライトがどういう答えを出すのか分かるような気がしていた。

 

 

「ライト次第だが、もしライトの決断が想像通りなら俺がどうするかは多分お前と同じだ。そして、俺の伝えたいことはその時に全部伝える」

「そっか。少し気になるけどお前とライトの問題だから聞かない。けど、今日のバトル、もし何時もみたいにお前が勝ってしまったらどうするんだ?」

「……その時は」

 

少しだけ表情を赤くし胸に手を当てながら。

 

「もし仮に俺が勝ったとしても、もう待つのは止めることにした。俺自身の想いを全部伝えるつもりだ。ライトだけじゃなく、彼奴にも」

「……そっか。お前が決めたのなら、私はそれを尊重するぞ」

「ありがとう、絵瑠」

「うん、それじゃあ遅れないうちに早く行こう」

 

想いを決め、彼女達もまた目的の場所に向けて止めた足を再び動かしていく。

 

 

そうして彼等彼女達が辿り着いた場所は、人気のない公園。何の変哲もないただの公演だがその場所は依然、ライトとバジュラ達と出会って以降、初めてバトルした当時の公園であった。

 

リベンジマッチにはふさわしい舞台、そこへ光黄と烈我達が到着したのはほぼ同時だった。

 

 

 

 

「来たか、烈我」

「おぉ! 光黄、俺は今日こそお前に勝つぜ! 絶対に勝って、そして俺は! お前に告白する!!」

「お前はほんとに相変わらずだな」

「悪いかよ。これが俺だ!」

 

何時ものように変わらず真っすぐ直球な宣言。可笑しそうに少しクスリと笑う彼女。けど普段は聞き飽きたと軽く流していた彼女だったが、この日は流す事なく真っ直ぐ烈我を見据え。

 

「あぁ、そうだな。だからこそ俺は」

 

烈我の態度に可笑しいと思う反面、内心では嬉しいと思う気持ちでいっぱいだった。幼い時から出会って以降変わらずここまで真っ直ぐに自分に想いを伝えてくれる人間は後にも先にも烈我だけだろう。その真っ直ぐな思いにどれだけ救われ、嬉しく思ったことか。だからこそ彼女も今日彼の気持ちに応えねばと強く思う。

 

もう強がったり誤魔化したりはしない。誠心誠意自分の想いを全て。

 

だがまだその時ではない。想い人であると同時に、これまで競ってきたライバルとしてまずは挑まれた勝負に応えるのが先だ。無論、このバトルに対して彼女は負ける気など毛頭ない。

 

「手加減は一切しない。これまで通り、今日も勝つのは俺だ!」

 

烈我に想いを伝える事に変わりない。けれど想いを伝えるのはこの勝負に勝ってからだと既に彼女は決めていた。それがこれまで自分に挑み続けてきてくれたライバルへの礼儀だからこそ。何より、相棒との最後のバトル、手を抜ける訳もなく、やるからには全力を出し、その上で勝ちたいと思うのがバトラーとしての性。

 

だが勝ちたいと思うのは烈我もまた同じ。

 

「いいや。勝つのは俺だ! バジュラと一緒に、絶対勝つって決めたんだ!」

「俺とライトも同じだ。

 

想いの強さはほぼ同じ。互いにデッキを構えて、そして叫ぶ。

 

 

「「ゲートオープン! 界放!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────第1ターン、光黄side。

 

[Reserve]4個。

[Hand]5枚。

 

「俺のターン、ガトーブレパスを召喚。これでターンエンドだ」

 

 

 

 

───第2ターン、烈我side。

 

[Reserve]5個

[Hand]5枚。

 

「俺のターン、ネクサス、オリン円錐山配置。そしてバーストセット! ターンエンド」

 

 

序盤はお互い静かな立ち上がり。これまで何度も戦ってきた二人、故にお互いの手の内は理解し合っている。後はどちらが先に仕掛けるかだが。

 

 

 

 

───第3ターン、光黄side。

 

[Reserve]4個。

[Hand]5枚。

[Field]ガトーブレパスLv.1(1)BP1000。

 

 

「ネクサス、黄金の鐘楼をLv.2で配置。さらにバーストセット! アタックだ、ガトーブレパス!」

「ライフで受ける!」

 

鳴き声を上げながら駆け出し、翼を強く羽ばたかせながら飛び上がり突っ込むガトーブレパス。烈我は一切怯む事無く攻撃を受け、バリアに角を突き立てライフが弾け飛ぶ。

 

「ッ!! ライフ減少時でバースト発動! 絶甲氷盾!」

 

散った破片が再び収束し何事もなかったかのようにライフが再び元の5つへ戻るが。

 

「こっちもガトーブレパスの効果、【聖命】発揮! 俺のライフ一つを回復だ!」

「やっぱそう来るよな」

 

彼女御得意の戦法。烈我同様にライフを回復させその数は6つ。ライフに一歩差を開かせる。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

────第4ターン、烈我side。

 

[Reserve]7個。

[Hand]4枚。

[Field]オリン円錐山Lv.1(0)。

 

「メインステップ! 創界神アポローン配置、配置時神託!」

 

デッキトップのカードは上から順に「煌星第五使徒テティス」、「煌星竜コメットヴルム」、「吟遊詩竜オルフェスタードラゴン」の3枚。全てアポローンの神託対象となり、コア3個が追加される。

 

「まだまだ! ゴッドシーカーアルファレジオンをLv.2で召喚! アポローンに神託。さらに召喚時効果でデッキの上から3枚オープン! その中の系統「界渡」か「化神」を持つカード一枚、対象、太陽神星龍アポロヴルムを手札に加える!」

「!」

「メインステップで煌臨! アルファレジオンをアポロヴルムへ!!」

 

紅蓮の渦がアルファレジオンを包み、業火の中で進化を遂げる様に変貌し翠の碧眼を輝かせながらアポロヴルムが咆哮を轟かせる。

 

「煌臨でアポローンにコアをもう一つ追加! アタックステップ!! アポロヴルムッ!!!」

 

攻撃の意図を理解する様に、名を呼ばれると共に前進し唸りを上げて両腕を構える。

 

「アポロヴルムのアタック時効果! 相手の最もBPの高いスピリットを破壊! ガトーブレパスだ!」

 

腕の防具に取り付けた刃の一つを銃弾の如く炎を纏わせて撃ち出し、避ける術なく刃に撃ち貫かれガトーブレパスは爆散。

 

「アポローンLv.2の【神域(グランフィールド)】発揮! アポロヴルムが相手スピリットを破壊した事で、相手のライフ1つをリザーブに!!」

 

アポローンは静かに矢を構え追撃。炎の矢が彼女のライフの一つを砕く。

 

 

「くッ!!」

「これだけじゃない! アポロヴルムLv.2、Lv.3の効果! アポローンのコア2個を自身に置くことで回復!!」

 

勢いを増すかの如く駆け抜ける速度を上げて吠えるアポロヴルム。

 

「こっちの効果も忘れるな、黄金の鐘楼Lv.2の効果、【聖命】を持つオレのスピリットが破壊されたことによりボイドからコア1個をライフへ追加! さらに相手による自分のスピリット破壊後でバースト発動! 夢幻祈祷!」

 

アポローンの効果により失ったライフを即座に補填した上でのバーストだが、烈我は彼女の宣言を待っていたように口角を上げ。

 

「織り込み済みだぜッ! 相手のバースト発動時、超星使徒スピッツァードラゴンの効果!!」

「!」

「手札のこのカードを1コスト支払って召喚する事で相手のバーストを破棄だッ!!」

 

魔法でも使ったかのように何もない場所から突然出現するスピッツァードラゴン。腕を掲げて炎を放つと、発動寸前のバーストカードを焼却し、効果の発動を阻止。さらに星竜を持つスピリットが召喚された事でアポローンに再びコアが追加される。

 

「召喚後スピッツァードラゴンにコア2個追加してLv.2へ、アポロヴルムのメインアタックッ!」

 

片腕を翳してからの大振りで展開されたライフのバリアを引き裂こうと構える。

 

「(何もなければこのまま俺の勝ちだ!)」

 

アポロヴルムはトラッシュとアポローンのコアを戻せばあと三度攻撃することが可能。つまり現在の攻撃とスピッツァーを併せれば残るライフ全てを破壊できる。

 

 

 

 

 

 

だが無論、彼女に打つ手が無ければの話だが……。

 

「フラッシュタイミング! ディフェンスネビュラ! 効果でアポロヴルムをLv.1へ!」

「!」

 

マジックにより放たれる雷撃、直撃を受けた二体の龍は力をこそぎ落とされ片膝を付く。

 

「アポロヴルムの連続攻撃を封じて来たか!」

「甘いな、俺の狙いはさらに一歩先だ!」

「!?」

「攻撃はライフで受ける!」

 

力を削ぎ落とされながらもまだ攻撃は継続している。アポロヴルムは力を振り絞って立ち上がると再度構え直して展開されたライフのバリアを引き裂くが。

 

「ッ! 相手によるライフ減少時、俺は手札にあるこのカードをノ―コストで使える! マジック、トランプスパーク!!」

「!?」

「相手スピリット1体をBP−10000、さらに俺のライフが5以上ならさらにもう一体BP−10000! アポロヴルムとスピッツァードラゴン、二体まとめてBPマイナスし破壊だッ!!」

 

再びマジックより放たれる雷撃、だが今度は力を減少させる程度では終わらない。より一層激しい稲光を放ちながら放たれる雷は二体の身体を貫き爆散。このターンで一気に決めきる筈が気付けば自軍のスピリットは全滅。冷や汗をかきながら息を呑むが、それでも。

 

「流石光黄だぜ!! 簡単には決められないと思ったけどまさかこんなカウンターされるなんて!」

「……煩い。これぐらいで俺が終わる筈ないだろう、一々騒いでないで次はどうするか考えろ」

「分かってるって。けど次はお前がどんな手で来るのか見せてもらうぜ! 攻撃を凌いで次は攻め切ってやる!! ターンエンド!!!」

 

 

 

 

────第5ターン、光黄side。

 

[Reserve]8個。

[Hand]2枚。

[Field]黄金の鐘楼Lv.1

 

「メインステップ! ネクサス、創界神ラーを配置。効果で神託!」

 

光黄の場にも創界神であるラーの幻影が出現するとアポローン同様に神託を行い、対象の三枚は「ガトーブレパス」、「光の覇王ルナアークカグヤ」、「ゴッドシーカー猫女神バステト」。全て系統想獣の為、ラーにコア3個が置かれる。

 

「追加されたコア3個を全てボイドに送り、ラーの【神技】発揮! 効果でデッキから3枚オープンしその中のコスト合計8になるよう想獣を持つスピリットを手札に、対象はキリンクスと西風獣フウジャイウイ!」

「!」

「手札に加えたこの二体をそれぞれLv.2で召喚しラーへ神託。さらにマジック、ホーリーサイン。効果でデッキの下からドローし、次の俺のターンの初めまでお前のネクサスのシンボルを0にし、効果を無効にする!」

「しまったッ!!」

 

ホーリーサインの効果によってオリン円錐山の真っ赤な景色はグレーアウトしていき、アポローンもまた静止したように硬直。

 

「これで厄介な効果は消えた。アタックステップ、キリンクスでアタック! アタック時効果で手札が5枚になるようドロー!」

「ッ! ライフで受ける!!」

 

キリンクスの突進。二本の角でライフを突き砕く。

 

「ぐッ!!」

「続けるぞ! フウジャイウイでアタック! アタック時効果で手札にあるコスト4以下の想獣を召喚し1枚ドロー! 再び来い! ガトーブレパス!!」

 

フウジャイウイが鳴き声を上げながら突撃し、声に導かれるかのように舞い降りるガトーブレパス。

 

「ライフで受ける!」

「続けガトーブレパス! さらにフラッシュタイミングでマジック、イエローリカバー! キリンクスをレベルダウンし、効果でフウジャイウイを回復!」

「これもライフだ!!」

 

フウジャイウイ、ガトーブレパスと立て続けにライフへと体当たりし、連続してライフを砕かれていき残るライフは2。

 

「ガトーブレパスの【聖命】発揮、俺のライフ1つ回復。さらにもう一度フウジャイウイでアタック! アタック時発揮! 手札からタマモノインを召喚!」

「!!?」

 

再び鳴き声を上げるフウジャイウイ、今度は狐型のスピリットであるタマモノイン。これでフウジャイウイとタマモノインの攻撃を許せば烈我のライフは全て削り切られるが。

 

『烈我ッ! 最後のバトル、呆気なく終わる気か!!』

 

最期を決めかねない攻撃を前に頭に響くバジュラの声。

 

「冗談! まだまだ終わる気なんかないっての! フラッシュタイミング! マジック、ミストシールド! 効果でフウジャイウイとタマモノインの二体を指定、指定された二体はこのターン、俺のライフを削れない!!」

 

フウジャイウイの突進、だがミストシールドによる防御で傷一つ付ける事は叶わず攻撃は弾かれてしまう。

 

「何とか耐えたか。なら俺はこれでターンエンド」

「ッ! やっぱ強ぇな、おまけにライフは6で手札も十分。相当壁は高いな」

「フッ、でもこれぐらいじゃ諦める奴じゃないだろ?」

「当たり前だ! 絶対俺は勝つ!!!」

「あぁ、俺も同じ気持ちだ。ターンエンド」

 

 

 

 

「ったく、序盤から飛ばしすぎだろあの二人。お互いにトドメまで行きかねない攻撃でしかも互いにそれを耐え切って見せやがる」

「はい、烈我も光黄も二人とも凄過ぎます!」

 

 

始まって間もないうちから息を突かせぬ程の攻防、観客として観戦してるミナトや星七達もバトルの熱気を感じる様に語る。

 

「ホントに凄いよ。でも、何より二人とも楽しそう!」

「楽しそうじゃなくて、実際楽しいんだろうあの二人は。これまでずっと全力でバトルしてきたんだ、バジュラやキラー達といれるのは今日で最後だけど、それでもあの二人はバトルの枷になるような余計な事は何一つ考えてない。ただお互いに勝つことを考えて全力をぶつけられる事が何より楽しいのさ」

 

ミナトの言葉に絵瑠と星七も納得するに頷きながら、微笑ましく二人のバトルを見守る。

 

 

 

 

────第6ターン、烈我side。

 

[Reserve]15個。

[Hand]1枚。

[Field]オリン円錐山Lv.1(0)、創界神アポローンLv.1。

 

「俺のターン、マジック! フォースブライトドロー! 効果で4枚になるようドローだ!」

 

前のターンで使用されたホーリーサインの効果は現在も有効。以前オリン円錐山とアポローンのシンボルはロストし、軽減シンボルとして数える事は出来ないが、それでも手札を増やし出来る限りの選択肢を増やしていく。

 

「バーストセット。オリン円錐山にコア3個を追加しライトブレイドラを召喚し、自身の効果でコスト4に、ヘリオスフィアドラゴンを召喚! まだまだ、アドベントドロー! 効果でデッキから2枚ドローして上から3枚オープン! 煌臨を持つジークフリードネクロを手札に!」

「連続ドローでの手札補充、攻める準備は万全の様だな」

「おぉ! 行くぜアタックステップ! ステップ開始時トラッシュのコア全てをヘリオスフィアドラゴンに追加し、Lv.3にアップしそのままアタック! アタック時効果のフウジャイウイを破壊!」

 

吐き出す炎のブレスにフウジャイウイは焼き焦がされ爆散し、勢いづくままに烈我は手札の一枚を構え。

 

「行くぜ、紫電と紅蓮を纏いし魔界の龍! 闘志に震える魂をもう一度呼び起こせッ! 魔界幻龍ジークフリードネクロ! ヘリオスフィアドラゴンに煌臨ッ!」

 

炎を纏いながら突っ込んでいくヘリオスフィアドラゴンの赤い体に迸る電撃、炎と電撃が混ざりその身を鮮やかな紫へと変化させるとヘリオスフィアドラゴンはジークフリードネクロへと煌臨。

 

「ジークフリードネクロの【煌霊術】! トラッシュからレイニードル、テティス、スピッツァードラゴンをそれぞれ召喚だッ!!!」

 

杖を振りかざし大地へ降り注ぐ紫電の雷、亡霊を呼び起こすかの如く再び三体の龍達はフィールドへと蘇る。

 

「ネクロのアタックはライフで受ける!」

 

タクトの如く杖を振るい、ライフのバリアに向けて雷の雨を降らせ無数の雷撃を浴びながらライフが砕かれる。

 

「ッ!!」

「まだ行くぜ、スピッツァードラゴンでアタック! アタック時効果でタマモノインを破壊してスピッツァードラゴンは回復!」

 

赤いオーラに包まれながらタマモノインは爆散。スピッツァードラゴンは眼光を輝かせながら吠え叫ぶ。

 

「甘い! フラッシュタイミング! マジック、ディフェンスネビュラ!! 効果でお前のスピリット全てをLv.1にダウンさせる!」

「二枚目!?」

「これで終わりじゃない、さらにフラッシュでイエローリカバー! 効果でガトーブレパスを回復させる!」

 

黄色の光を浴びながらガトーブレパスは起き上がると突っ込むスピッツァーを迎撃せんとばかりに睨み、鳴き声を上げる。

 

 

「お前のネクロの効果を利用させてもらうぞ! ガトーブレパスでブロックする時、俺はキリンクスを指定し破壊する!」

「なッ!!?」

 

ジークフリードネクロの効果は自分の星竜を持つスピリットのアタック時、相手は自分のスピリットを破壊しなければブロック出来ない能力だが、彼女の狙いはブロックではなくキリンクスを破壊する事であり。

 

 

「キリンクスの効果! 相手の効果によってこのスピリットが破壊された時ボイドからコア1個をこのスピリットに置く事で疲労状態で場に残し、さらに手札から想獣を持つスピリットを召喚できる! 俺が呼び出すのは此奴だ。新しき時代の王者! 可能性秘めしその無限の翼で飛び上がれ! 想竜王ジュランッ!! 不足コストはガトーブレパスとキリンクスから使用だ」

 

黒雲立ち込める黒き空、だが黒雲を裂くように雄々しき翼を広げて眼光を輝かせ舞い降りる幻竜の王、ジュラン。

 

「ここでジュラン!?」

「召喚時効果、Lv.1の相手スピリットを二体をデッキの下へ。戻れ! スピッツァー、テティス!」

 

本来ならオリン円錐山でデッキへバウンスする効果を防げるが、ホーリーサインにより無効化されている今防ぐ術はない。ジュランの巻き起こす突風に吹き飛ばされフィールドより粒子となって消え去る。

 

「やられたぜ。ターンエンド」

 

 

 

 

────第7ターン、光黄side。

 

[Reserve]10個。

[Hand]4枚。

[Filed]想竜王ジュランLv.1(1)、黄金の鐘楼Lv.1(0)、創界神ラーLv.1

 

「俺のターン、バーストセット、太陽の守護蟲ケプリをLv.3で召喚! 想竜王ジュランはLv.2に、アタックステップ! 行くぞ、烈我!」

「来いッ!!」

「想竜王ジュランでアタック! アタック時効果でボイドからコアを俺のライフに!!」

 

一向に攻めても度々元通りに回復していくライフ。誰もが見て分かる通り徹底したバトルに微塵の隙も無い。

 

「ジュランがアタックした事で【転醒】発揮! 今こそ紅蓮の炎を纏い新たな力を宿せ! 想竜王ジュランを火山竜王ジュランへと転醒させるッ!!」 

 

黄金の光から紅蓮の赤へとシンボルの色が切り替わると、ビックバンの如き爆発と共に己が身を爆炎に包み込ませると、火炎の力を纏う火山竜王ジュランへと生まれ変わる。

 

 

"ガアアアアアアァァァァァーーーーッ!!!"

 

ビリビリと空気の振動を感じる程の咆哮、凄まじい迄の音圧に烈我も場のスピリット達も一瞬圧倒される。

 

「ジュランの転醒時効果、相手のシンボル一つのスピリットを破壊する! ジークフリードネクロだ!!」

「!!」

 

両手を構えて巨大な炎の塊を作り上げると、ネクロに向けて押し付けるかのように炎の巨魁を撃ち放ち、直撃を受けて爆発四散を起こす。

 

「ネクロ!!」

「ジュランの効果はまだ終わってないぞ! フラッシュで相手ネクサスを破壊する事で回復!」

 

ネクロを退け今度はオリン円錐山に狙いを定めると、急降下でオリン円錐山に突っ込むと、巨大な山であるソレをまるでガラス細工の如く翼を打ち付けて粉々に砕き割ってしまう。

 

「転醒したジュランはダブルシンボル!! お前の残りライフを2つ破壊だ!!」

「なら、まともに受ける訳には行かねぇよな! フラッシュタイミング、マジック、シャドウエリクサー!」

「!?」

「リザーブのコアを俺のライフへ追加! そしてジュランのアタックはライフで受ける!!」

 

ジュランから目を逸らさず受けて立つ様に真っ向から見据え、ジュランは両爪に炎を纏って左右同時に爪を振り下ろすと、ライフを一気に引き裂く。

 

 

「ぐぅッッッ!! ライフ減少時でバースト発動ッ! マジック、エクスティクションウォール! バースト発動時に減ったライフを全て回復! さらにコストを支払い、相手のアタックステップを強制終了ッ!」

「!……やるな。ターンエンド」

「ふぅー、何とか凌ぎ切ったぜ!!」

 

一安心する様に息を吐くが、直ぐに表情を切り替える烈我、状況は劣勢だがそれでもすぐに逆転して見せるぞと言う心意気を現す様に。

 

 

 

 

────第8ターン、烈我side。

 

[Reserve]15個。

[Field]レイニードルLv.1(1)BP1000、ライトブレイドラLv.1(1)BP1000、創界神アポローンLv.1。

 

「俺のターン、ドロー……!」

 

引いたカードに口角を上げる烈我。 彼の表情が何の意味を表すかは勿論言うまでもない。

 

『ハッ、随分待たせやがって、引くのが遅せぇんだよ!』

「はいはい悪かったな」

 

最後のバトルでもいつも通りなバジュラの声に笑って答えつつ、目の前の相手である光黄に視線を戻して。

 

「それじゃあ行くぜ、相棒……!」

『おぉッ! 今度こそアイツらにリベンジするぞッ!!!』

 

リベンジというバジュラの言葉に強く頷きながら、カードを構え、そして叫ぶ。

 

「極限憤怒の大烈火!!! 怒りが吹っ切れる程に豪快過激に燃え上がれッ!!!! 獄神火龍バジュラレッドイグニール!!! 召喚ッ!!!!」

 

火山の噴火の如くフィールドに巻き起こる大爆発、轟音とともに爆炎を巻き上げ、高温の炎は烈我の周囲に広がったフィールドの海面を蒸発させ、大地を溶かす程。そして爆炎の中から極度の炎を身に纏いながら姿を現す龍の影、炎を拳で掻き消し、猛々しい咆哮を上げながらバジュラレッドイグニールがフィールドへ。

 

「これだけじゃない! 手札からもう一枚、輝きの聖剣シャイニングソードXをバジュラへ直接合体!」

 

炎の輪を描きながら空より来たるシャイニングソード、手を突き出し宙で舞う剣を掴み取り合体スピリットとなるバジュラ。

 

「シャイニングソードXの召喚時効果! 相手のBP7000以下のスピリットを破壊!! ケプリを焼き尽くせッ!!!」

「!」

 

剣を振り下ろし巻き起こす烈火の炎がケプリを飲み込み破壊。

 

「ッ! シャイニングソードXで破壊されたスピリットは……!」

「あぁ。破壊したケプリの効果は無効! これで露払いは済んだ! 行くぜバジュラッ!!!」

 

『さっさと命令しな!! 俺はもう滾りに滾ってんだよォ!!』

 

バジュラの返事に烈我もまた口角を上げながらアタックステップを声高らかに宣言。

 

「バジュラレッドイグニールでアタック! アタック時効果、【超爆龍王(オーバーロード)】発揮ッ!! ジュランに指定アタックし、それが相手の最後のスピリットならバジュラを最高レベルにッ!!」

『シャアアアッ!! 見せてやるぜ、俺の極限の怒りをよォッ!!!』

 

両腕に炎を纏わせて猛り唸るバジュラ、ジュランもまた受けて立つと言わんばかりに吼えると、バジュラ向かって真っ向から突撃。

ジュランは爪を、バジュラは拳に炎を込めて互いの相手へと撃ち込み、爆音のような衝撃と火花を散らしての激突する両者。真っ向からの力比べにはバジュラに分配が上がり、拳をそのまま押し込んでジュランを弾き飛ばし上空へと跳ね飛ばされるが、直ぐに翼を広げ体制を立て直すジュラン。

 

今度は両手を広げ、片手にそれぞれ巨大な炎を生み出すと、バジュラに狙いを定め炎の塊を同時に投擲。対してバジュラは地面を砕く程に踏み込むと、大きく口を開いての火炎放射。互いの炎がぶつかり合い、炎による熱風が後方の烈我達にまで吹き抜ける。

 

『ッッッ!!!』

 

より一層バジュラが吐き出す炎の威力を増し、少しずつジュランの放った炎塊を押し返していくがジュランもダメ押しと言わんばかりにさらにもう一発巨大な炎塊を打ち出し、炎は互いに相殺され大爆発を巻き起こす。

爆発による黒煙が周囲を包み込み、ジュランはすぐさま翼を広げ黒煙を吹き飛ばすが、視界が晴れた瞬間、自身のすぐ目の前にまで飛び込んで来るバジュラの姿が映る。

 

『!!!』

 

視界が塞がれた一秒にも満たない僅かな時間で距離を詰められた事に動揺したのか、一瞬ジュランの動きが鈍る。既にバジュラは攻撃態勢となって拳を構え、ジュランもすぐに思考を切り替えると即座に腕を構えバジュラの拳を受け止めるが、防御されてもなお止まることなく拳を振り切り、地面に向けて真っ逆さまにジュランを吹っ飛ばす。

 

だが吹っ飛ばされてもなお翼を展開し、地面に激突擦れ擦れで急停止。反撃へと転じるようにその場で上空のバジュラに炎を撃ち放つ。

 

『舐めんなよッ!! その程度で、俺が! 殺れると思ってんじゃねぇぞオラァッ!!!』

 

怒号が張り上げながら今度は両腕を構えると、左右同時に拳を突き出してジュランの炎を真っ向から突き破っていくバジュラ。

 

『オオオオオオォォォォォォォッッッッッ!!!』

 

まるでドリルの如く炎の中を突き進み、炎を搔き消すとその勢いのままジュランに拳をぶち込み、すぐ背後の地面へ深く抉る程に押し付けられ、断末魔を上げてジュランは爆発四散。

 

 

「ジュラン……ッ!」

「バジュラの効果はまだ続くぜ! 破壊したスピリットより上回ったBP10000につき相手ライフ一つを破壊! ジュランとバジュラのBP差は26000、よってライフを二つ破壊する!!」

 

両腕に込めた炎を弾丸の如く撃ち出すと、二つの炎弾が展開されたバリアへと直撃し爆炎を巻き上げながら彼女のライフを二つ砕く。

 

「ぐッ、うぅッ!!」

 

バジュラによる攻撃は並大抵の威力ではない。衝撃を受け止めきれずに一瞬よろけるがそれでも彼女は踏み留まりながら目を見開く。

 

「お返しだッ! ライフ減少時でバースト発動! 妖雷スパークッ! 効果でライトブレイドラとレイニードルのBPをマイナスして破壊だ!」

「!」

 

爆炎を吹き消すように放たれる雷撃、バジュラの真横を掠めながら後方に控えるレイニードル達の二体に直撃し爆散。

 

「……キースピリットを倒しても、素直に追撃はさせてくれねぇか」

「このぐらい当然だ。さらにフラッシュ効果! バジュラのBPをプラスしてデッキから1枚ドロー!」

 

既にアタックを終えたバジュラのBP増減に意味はなく目的はあくまでも手札補充。キースピリットを破壊されてもなお体勢を立て直す彼女に烈我もまた、そう来ないと!と言わんばかりに笑いながらターンエンドを宣言。

 

 

 

 

────第9ターン、光黄side。

 

「(俺のスピリットは0、ライフはリードしてるがこのままじゃ押し切られる。どうするべきか)」

 

ドロー前、現在の状況に流石にターンを進める手が思考により止まる彼女だが。

 

『(光黄様……!)』

「ライト!?」

『(安心してください。この状況、私の力でひっくり返して逆転して見せますよ!)』

「(どうした、お前らしくもない)」

 

 

脳内に響くライトの声、どこか普段と違うライトの様子に疑問が浮かぶ彼女だが、対してライトは少しだけ一瞬口を止めたかと思うとすぐにまた。

 

『(光黄様……私、勝ちたいんです。バジュラに……あの男に。以前とは違う、今日のバトルは絶対に、私が!)』

 

ライトの声はそこで途切れてバトルに戻り、まだ疑問が残りながらも彼女はターンを進めるべくカードを引き。

 

「(……これは!)」

 

 

[Reserve]14個。

[Hand]4枚。

[Filed]黄金の鐘楼Lv.1(0)、創界神ラーLv.1

 

「……そういう事か」

「光黄?」

 

何を引いたのか、手に取ったカードを数秒間見つめ、何かを理解したように呟く彼女。

 

「何でもない。それより、行くぞ! 烈我!」

「(!……この空気、間違いなく来る!)」

 

『(あの野郎か……!)』

 

 

引いたカードが何であるか、変わった空気と彼女の雰囲気から察する烈我とバジュラ、彼女の相棒であるライトボルディクスが来るであろうと、だが二人の想像を彼女達は凌駕する。

 

 

 

 

「天鳴轟かせよ王の咆哮! 全てを地へと叩き落せ威光の雷!! 天上玉座に君臨せし覇王!!! 覇雷帝龍ライトニングエンペラー、召喚ッ!!」

「『!!?』」

 

初めて聞くスピリットの名、高らかな召喚口上と共にフィールドへと呼び出すと、空より降り注ぐ雷。だがただの雷ではない、まるで巨大な天の柱かと思う程に眩い雷が大地へと注ぎ、フィールドを光に染めていく。

 

「ッ!! 一体、これって!!」

『……まさか、あの野郎ッ!!』

 

直視できない程の眩い光。だが次の瞬間、光の中で雷鳴の音を搔き消し轟く龍の咆哮。空を突き破り、咆哮と共にフィールドへと急降下し、激しい土煙を巻き上げながら降り立ち、漸く視界が光に慣れた頃、烈我達の視界に映るのは青白い雷を身に纏う龍の姿。

 

「ライトニングエンペラー……まさかライトが進化したのか!?」

「お前のバジュラと同様にな。このバトル、俺以上にライトの方が本気なのかもな」

「!」

 

『よォ、ライト。見違えたぜ、まさかテメェも進化しやがるとは』

『お陰様で。このバトル、貴方以上に私も滾っているんですよ!』

『へェ、そりゃいい。お前が強くなってくれりゃその分借りの返し甲斐も増すってもんだ!』

『残念ながらソレは叶いませんよ、勝つのは私ですからね!』

『あァ?』

『……今日だけは!』

『!』

 

何時ものように喧嘩腰にライトに突っかかろうとするバジュラだが、どこか普段と雰囲気の違うライト。歯を食い縛りながら目に強い意志を宿し。

 

『この最後のバトル、負ける訳にはいかないんですよ。バジュラ……こればかりは譲れない!! 私の存在意義の為にも、絶対ッ!!』

 

ライトなりの覚悟と意思、バジュラにとって見たことの無い表情のライトに少しだけ驚いたような顔を浮かべるが直ぐに切り替え、ライトの言葉に『そうかよ』と口角を上げながら答える。

 

『上等だ。このバトルはもう色欲vs憤怒の罪を比べる勝負じゃねえ。、相棒の為に、何より【自分(テメェ)】自身の為に勝ちたい。これはそういう意地と意地の張り合いだ! どっちの意地を貫けるか、根比べといこうか!』

『根比べってそういうむさ苦しいのは柄じゃないんですが……』

 

今までにないライトの覚悟の理由は何なのか、それを今尋ねるのは野暮だし元より聞くつもりもない。けれど覚悟に対してバジュラもまた一層声を張上げてライトに応える。

 

対してライトは暑苦しいと言わんばかりにやれやれとした態度だが、『でも』、と言葉を続けて。

 

『光黄様の手前ですが、今だけは執事だなんだの肩書きも格好付けるのもやめにしましょう。貪欲に、強欲に勝利を求めましょう!』

『俺も同じだ。勝ちに飢えてんのがどっちか教えてやるよ!!』

 

睨み合うライトとバジュラ、相棒達の姿を見ながら烈我と光黄もまた相手である互い同士を正面から向き合う。

 

「ライトニングエンペラー、相手にとって不足なしだ!! こんな相手と戦えるなんて俺、益々楽しくなってきた!!」

「ふふっ、どこまで行ってもやっぱりお前はお前だな」

「何だよー! 光黄だって同じじゃないのかよー?」

 

クスリと笑う光黄に照れくさいのか少し拗ねるような訴え。同じという烈我の問いに回答に悩む素振りを見せるが観念するように一息ついて。

 

「確かに。俺も同じだよ、こんなバトルが出来て最高に楽しい。だから烈我、ありがとう」

 

嘘偽りのない純粋な笑顔、そんな彼女の表情に自然と頬が熱くなりドクンと胸が脈打つ感覚が過ぎる。高鳴る胸の鼓動を感じながら改めて自分の気持ちを振り返り。

 

「……俺の方こそ。今更だけど、俺……ミナトに星七、絵瑠、ヘルやドレイク、それからバジュラ……何より光黄、お前に会えて本当に良かった」

「な、何を改まってッ///」

「ごめん。でも何となく伝えなきゃなって思って。向こうの世界にバジュラ達と会えた事、色んな事があったけど元々の始まりは……今日までバトルスピリッツを続けてこれたのは全部お前のお陰なんだよ、光黄!」

「!」

「お前がいたから、今日まで進んでこれた。強くてカッコよくてそれに憧れて、そんなお前と戦えるのが毎日ずっと嬉しくて楽しくて、どんなに負けても前に進むことができた。お前は俺にとって最高で、大好きな一番のライバルだ!!」

 

烈我の言葉に彼女もまた胸が熱くなる。照れ臭くなるような台詞を恥ずかしげもなく語るのはいつもの事。そんな彼に対しいつも通り彼女は照れ隠しのように烈我の言葉を流していたことだろう。だが。

 

「……お前のお陰と言うなら、それは俺の台詞でもあるよ。烈我」

「!?」

「お前と戦って楽しいと思えたのは俺も同じだ。負けても次こそは、次こそはと挑み続けてきてくれることが何より嬉しかった。そうでなきゃ、お前の挑戦をずっと受け続けてる訳ないだろう?」

 

普段の見せる事の無い優しげな表情を向ける光黄。もう恥ずかしいからと自分の気持ちを誤魔化す事はしない。真っ直ぐ正面から烈我の想いを受け止めようと決めていた。

 

「烈我、他の誰でもないお前と戦うこの時が俺にとっては一番楽しい時間だ。何時までも続けばいいと思う程に。俺にとってもお前は生涯で一番のライバルだよ。でも、だからこそお前にだけは負けたくない!」

 

どんな相手だろうと、否、一番と思うライバルだからこそ勝ちたいと願うのはカードバトラーとしての性。自分の気持ちを誤魔化す事はしないと決めた彼女だが、想いを伝えるのはまだ先だ。今はただカードバトラーとして対戦相手と向き合い、烈我もまたカードバトラーとして応える。

 

「そうだよな、そうこなくっちゃな!」

「バトルを続けるぞ。ライト行くぞ!」

「来るぜッ! バジュラ!」

 

『受けてたってやらァ!! 来いよライト!!!』

『言われなくとも! 目にもの見せてやりますよ!』

 

「この勝負、勝つのは……!!」

「「『『俺(私)達だ!!!』』」」

 

二人と二匹の龍がただ一つの勝利を求め、強く叫ぶ。

 

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