少し記憶を振り返る。それは自分の世界を飛び出して、初めてこの地球と呼ばれる星に訪れた頃の記憶。
『活気溢れる街、中々いい場所ですね〜。それに、この世界にも随分綺麗でお美しい人がたくさん!目移りしてしまいます!!』
上空を羽ばたきながら眼下の景色に楽しげな感想を述べる黄色い小さな翼竜。名はライト、これはまだライトが光黄と出会う少し前の記憶。
『さてさて、この世界でどんな出会いであるか。是非とも素敵なお嬢様と出会い、私のパートナーとなって欲しいものです!』
上空を飛び回り、色欲らしい己の願望を揚々と語りながら、自分が相応しいと思う人物、主に女性ばかりを見定めようとするライト。
『!』
そんな彼に遠くから聞こえる歓声のような音が耳に入る。何か催しでもあるのかと興味本位に声の方角に進み、歓声が聞こえた場所はどこかドームのような会場。高度を下げて人目を避けるべく物陰から会場の様子を伺い、そこでは二人の男女がバトルを繰り広げている光景だった。
『(成程、バトスピの大会中でしたか。フム、野郎には毛程も興味ありませんが相手の女性はこれまたお美しいお人! 素敵な金髪な髪にクールな雰囲気、これは少々私も観戦させていただきましょうかね)』
ギャラリーとしてバトルを楽しむ事としたライト。司会がそれぞれのバトラーの名を呼び女性の方の名前は黄空光黄というらしい。実力もかなりのようで一回戦から軽く相手を圧倒し、二回戦、三回戦と気付けばあっと言う間に涼し気な表情で決勝まで勝ち進めてしまった。
『(とてもお強い方。パートナーとしてあのお嬢様にお仕えするのも悪くないかもしれませんね〜。でも素敵な方ですが私はまだこの世界に来たばかり……他にももっと素敵な方がいるかもしれませんし、ここで決めてしまうのは早計過ぎる気も)』
この時まだ黄空光黄という人物はライトにとってあくまでもパートナー候補の一人という認識だった。実力に不満がある訳じゃないが、色欲の彼にとってはまだまだ他の出会いを楽しみたいといった所だろう。優柔不断とでも言うべきか、まだ最終判断には至っていなかったが。
『!』
一人考え事をしていると、会場の様子がより白熱し始めどうやらまもなく決勝が始まるらしい。彼女の対戦相手は彼女と同年代ぐらいだろうか、茶髪で元気にステージに駆け寄りながらデッキを構え。
「よっしゃぁ! 待ちに待った決勝戦、全力で行くぜ! 光黄!!」
対戦相手の男性は彼女の知り合いらしく、彼の意気込みに対して頷いて返事を返す光黄。
「今日と言う今日こそ、俺はお前に勝つ! そしたら、俺と……この勝負に勝ったら俺と付き合ってくれ!!」
『(なっ!!?)』
会場のど真ん中で男性からまさかの大胆すぎる発言に思わず耳を疑うようにぎょっとした様子のライト。『何を言いだすんだ此奴は!』と言いたげにしかめっ面を浮かべるライト。
『(公衆の面前で告白など! この私を差し置いて何とうらやま……ッ! い、いえ、何て無粋な。知り合いのようですが、あのお嬢様もきっと呆れて)』
嫉妬に近い感情を持ちながら光黄の方を見るが、彼女の方では慣れているように一息吐きながら一瞬顔を背けて。
『!』
「お前のそれは聞き飽きた。いいからとっとと掛かって来い、どうせ勝つのは俺だ」
毅然とした態度で突き返す光黄。対戦相手の対して光黄の態度に彼もまた「上等!」と自信ありげな様子でバトルへ臨み、司会進行の元、お決まりのコールを叫び決勝戦の幕が上がる。
『…………』
先程まで心の中でとは言え叫び散らしていたライトだが、決勝戦は至って無言の落ち着いた様子で二人の試合を見守っていた。
『(あの男も、あのお嬢様も、とても楽しそうにバトルしてらっしゃる。本当にいい表情ですね)』
男の方もそうだが、先の1回戦から涼し気に勝ち進めた彼女がこれまでの試合とは別人と思う程楽しそうな笑顔でバトルを進めていた。彼女の様子から対戦相手である彼に対して何らかの感情があるのは見て察せれるのだが、もう一つ確信を持たせるように先程ライトは目撃していた。
あの顔を背けた一瞬、顔を赤くして頬を緩ませていた彼女の表情を。ライトだけが見えていた。その時の彼女の表情はまさしく。
『(……私のパートナーはあのお方だ。あのお嬢様以外に、もう考えられませんね)』
バトルの行方を見守りながら、彼女こそ自分のパートナーになってほしいと強く願うライトであった。
***
『(光黄様、あの時の貴方の表情がとても、他のどんなお嬢様よりも美しいと、あの瞬間、私は"黄空光黄"というただ一人の女性に心の底から惚れたんです。だからこそ私は、この方に仕えたい。嫌、本当のパートナーになりたいと強く願いました。ですが)』
現在へと戻りバトルフィールドに立つライト、過去の記憶を振り返り、背後の光黄に一瞥を向ける。
『("恋する乙女は美しい"……いやはや全くもってその通り。光黄様に惚れたと同時に気づいてしまいました。光黄様があの男にどのような感情を抱いてるか、分かってしまった。他ならぬ色欲の罪を持つ私が、それを分からない訳がないのに、今日という今日まで気付かないフリをし続けた。
だって認めたくなかったから。認めてしまえば叶わぬ恋と諦める他ないから。
それに元は強欲の一部、だからかもしれませんね、道化のフリをし続けてお仕えしていれば、いつか、光黄様の感情を向ける先があの男でなく、自分へ向かせられるかもしれないと、そんな欲望をずっと抱いておりました。そして……その想いは今も変わっていない! 愚かでもいい、私はまだ自分の気持ちを諦めたくないッ!!!』
再び視線を前方に向けて、視線の先の相手、バジュラとその相棒である烈我を強く睨む。
『(バジュラ……そして天上烈我! 貴方には、貴方だけには譲れないッ!! 勝利は勿論、何より光黄様をッ!!!)』
全力の敵意を向けるライトに対し、バジュラは何かを察してるように軽く口角を上げて。
『烈我ァ、気ぃ張れよ! ここからだぜ本番は』
「あぁ。いつでも来いってんだ!」
「そうか。なら遠慮無く! ライトニングエンペラーの召喚時効果発揮ッ!! デッキの上から6枚見てその内のカード3枚を手札に加え、その後手札から3枚、裏向きでライトの下に置く」
「カードを下に?」
「ライトニングエンペラーにコアを追加しLv.3へ。これでターンエンドだ」
「アタックして来ないのか?」
疑問の言葉に対し、彼女は繰り返し「ターンエンド」とコールするだけで動く気配はなく、カウンター狙いなのかと警戒せざるを得ない烈我達。
「(Lv.3のライトのBPは18000。BPはバジュラの方が上だけど、進化したライトの能力……それが未知数だ。動くべきか否か)」
『んだよ、烈我! まさかビビってる事ァねぇだろうな?』
「!……いいや、武者振るいだっての! ライトニングエンペラー、相手にとって不足はねぇ!!」
バジュラなり激励に笑って答える烈我。そこに弱気な様子は何一つとしてない。気を引き締めながら自分のターンを迎えていく。
────第10ターン、烈我side。
[Reserve]12個。
[Hand]2枚。
[Field]獄神火龍バジュラレッドイグニール×輝きの聖剣シャイニングソードX Lv.3(4)BP26000、創界神アポローンLv.1。
「俺のターン、マジック! ソウルドロー、ソウルコアをコストにして3枚ドロー! さらにコアを追加してバジュラをLv.4に、アタックステップだ!! 合体スピリットでアタックッ!!」
『シャアアアアッ!! ブッかましてやるぜ!!!』
両拳を打ち鳴らしながらフィールドを駆け出すバジュラ、当然狙う標的はただ一つ。
「バジュラレッドイグニールのアタック時効果、【
現在ライトニングエンペラーLv.3のBPは18000。対してバジュラレッドイグニールLv.4のBPは35000。ブレイヴと合わせて計40000。幾ら進化したライトと言えどBPの差は歴然。
先手必勝とばかりに火炎放射を吐きつけるバジュラに対し、素早く上空へ飛び上がって回避。反撃とばかりに今度はバジュラに向けて急降下し猛スピードで突っ込むライト。真っ向から受けて立ち、高速の突進に拳を構えて打ち出し火花を散らしながら激突する両者だが、力で分配が上がるのは当然バジュラであり、ジリジリとライトを押し返して行く。
『覚悟しなッ! ライトォッ!!』
『いいえ。覚悟するのはバジュラ、貴方の方です』
『あァ?』
『光黄様!』
合図のように視線を送るライトに頷きながら、手を突き出して構える光黄。
「進化したお前の力、今こそ見せろ!! ライトニングエンペラーの効果! 【天雷祝福】発動!!」
「!?」
当然変わったのは外見だけではない。唯一無二だったライトの【天雷】の能力もまた彼自身同様に進化を遂げ、効果発動の宣言と共にライトは雄叫びを上げて雷雲を呼び起こす。
「ライトニングエンペラーはアタック、ブロック、破壊時の何れかのタイミングで裏向きのカードをオープン。オープンしたカードがマジックならこのゲーム中、オープンしたマジックのフラッシュ又はメインの効果をライトニングエンペラーの効果として扱う!」
「!」
「オープンするカードは、マジック「フルーツチェンジ」。以降このカードをライトニングエンペラーのブロック時効果として発動だ!」
空からライトに向けて降り注ぐ落雷、だがその雷はライトの能力の名の通り祝福となる雷。受けた雷を身に纏い、眼を輝かせ自身の効果を解き放つ。
「フルーツチェンジの効果をブロック時に発揮するって事は、まさか!?」
「想像通りだ。今バトルしているバジュラレッドイグニールのBP40000、ライトニングエンペラーのBP18000、それをそっくりそのまま入れ替える!」
「!」
先程まで力で押していた筈のバジュラだが、BP差をひっくり返された事で形勢逆転。再びバジュラを押し返しバジュラの拳を弾き飛ばし、衝撃で後方に吹っ飛ばされるバジュラ。
『ぐぅッ!!』
吹っ飛ばされながらも直ぐに体制を立て直し、起き上がり様に火炎放射を放つが閃光の如きスピードで容易に炎を避わしていき、空を舞いながら再び咆哮を上げると雷雲から無数の雷が、今度はバジュラを標的として降り注ぐ。
『チィッ!!』
舌打ちながら拳に炎を込めて防御姿勢をとって雷を耐えていくバジュラだが攻撃の手は緩めない。次にライトは雷雲の中へと飛び込むと、轟音を響かせて雷雲を飛び出し、己自身を雷と化して特攻。迸る閃光がバジュラへ真っ逆様に激突する。
『ッッッ!!!!!!』
『今度も討ち取らせてもらいますよ、バジュラッ!!』
『テ、メェェェェッ……!!』
雷の閃光が防御を跳ね除け、直線状にバジュラを貫き、仇の姿を強く睨みながらも倒れ伏し爆発四散するバジュラ。
「バジュラァッ!!!」
「見たか、これが進化したライトの力!」
「……ッ!! 想像以上の力だったぜ。けど、まだ俺も負けちゃいねぇ! バジュラが破壊された事でシャイニングソードXの合体時効果! このブレイヴを転醒させる事ができる!」
「!」
「聖剣の光は奇跡となり、灼熱烈火の龍へと進化を果たすッ! 輝きの聖剣シャイニングソードX 転醒化身! 現れ出でよッ!!」
名の如くシャイニングソードの輝きが周囲全てを照らし、眩い光の中で漸く視界が晴れ、目の前に移るは聖剣を握り締めた白き龍、転醒化身となったシャイニングソードの真の姿、だが。
「……転醒化身はLv.3。俺はこれでターンエンドだ」
「だろうな」
「烈我、攻めませんね。やっぱりバジュラを破壊された事が相当響いてるんでしょうか」
バトルフィールドの外でモニターから状況を見守る星七達。ブロッカーがいないにも関わらず攻めずにターンを終えた烈我に疑問を持つように星七が呟く。
「それもあるだろうが、光黄ちゃんのライフは4で烈我の方は3。ライフ差的に烈我が不利だしこのターンは攻めきれない。何より進化したあのライトニングエンペラー、奴の効果の全容がまだ分かってないからな」
「そうだな。ライトニングエンペラーは自身の下にあるマジックカードを表向きにしてアタック時、ブロック時、破壊時のいずれかの能力として発揮させる。そしてまだ裏向きのカードが2枚、何が来るか分からない以上今は容易に攻めれる状況じゃない」
星七の疑問に対してミナト、続けて絵瑠が答えて二人の回答に理解を示すように「成程」と相槌を返し、星七だけでなく隣でキラー達もまたバトルの行方、何よりライトの進化が衝撃だったようで目を離さずにバトルに注目している。
『まさか色欲の奴が進化するとは。俺様程じゃねぇが、コイツァ中々曲者じゃねぇか』
『最後のバトル、一番オチャらけてた奴がようやく本気を見せたか』
『これがライトの覚悟か、正直恐れ入ったわ』
キラー、シュオン、エヴォル三者三様にライトをそれぞれ評価し、彼等が普段知っているお調子者という印象のライトはもはやそこにはない。
「バジュラは倒されて状況は劣勢。烈我、勝てるでしょうか?」
「どうだろうな。烈我も喰らいついてるとは思うが……まっ、俺らがあれこれ勝敗を予測しても野暮でしかない。それにほら」
「!」
ミナトが指差す先、モニターに映る烈我の表情。星七が指摘した通り劣勢の状況下であっても寧ろ彼の表情はより闘志に満ち溢れていた。
「あのバトル馬鹿がこのまま引き下がる気がないのだけは確かだ」
ミナトからの言葉に「確かに」と頷く星七達。だが、その烈我の事を誰よりも理解しているのは他ならぬ対面している光黄に他ならないであろう。
────第11ターン、光黄side。
[Reserve]11個。
[Hand]4枚。
[Field]覇雷帝龍ライトニングエンペラーLv.3(4)BP18000、黄金の鐘楼Lv.1(0)、創界神ラーLv.1
「烈我、彼奴がこの程度で終わらない事は俺が誰より分かってる。だからライト、まだ気を抜くなよ!」
『勿論です光黄様! このライト、バトルに賭ける想いは貴方様と同じですとも!!』
どんな状況でも彼女は手を抜かない、否、むしろ烈我以上に気を引き締めながら冷静に彼女はターンシークエンスを行っていく。
「メインステップ! バーストセットし、行くぞ! 遥かな天を駆け巡る二つ首、双璧が繰り出す雷撃の嵐! Lv.2で召喚、「双龍頭領」アオバ、出ろッ!!!」
ライトの呼び出した雷雲から招かれし龍の姿、二頭の首が雷雲より飛び出し雷鳴の如き咆哮を上げてフィールドへと舞い降りる。
「アオバッ!! それも確か光黄のキースピリットだったよな」
「あぁ。お前が相手なんだ、出し惜しみはしない!! アオバの召喚時効果、デッキの上から4枚オープンし、その中の黄色一色のスピリットを俺の手札に!」
オープンされ手札に加わったのは、クダギツネともう一枚、彼女のキースピリットであるヴィーナルシファー。
「!」
「アタックステップ、まずはライト! お前からだ!!【天雷祝福】の効果! ライトニングエンペラーの裏向きのカードをオープンし、それをアタック時効果として発揮させる!!」
再び発動されるライトの能力、眼光を輝かせながら表向きにされるカードは。
「マジック「サンダーブランチ」。以降このカードのフラッシュ効果をライトのアタック時効果として発揮! 効果で合体、または転召していない全てのスピリットをBP2000に下げる!!」
大きく口を開き繰り出す雷のブレス、直撃を受け転醒化身は力を削がれながらその場に片膝を付く。
「ッ!!」
「ライトニングエンペラー、メインのアタック!!」
「ライフで受ける!」
電撃を纏わせた両爪を同時に振るってバリアを引き裂き、砕かれるライフ。
「ぐッ!!」
「お前の残りライフは2つ。耐えきれるものなら耐えてみろ! 「双龍頭領」アオバでアタックッ! フラッシュタイミングでさらにアオバの効果発揮ッ!! 俺の手札にある黄色一色のスピリットを召喚する事で回復させる! 呼び出すのは勿論此奴だ!! 煌めき羽ばたく堕天の龍よ! 地に堕ちしその身を再び天へと羽ばたき降臨せよッ! 堕天神龍ヴィーナルシファーLv.2で召喚!」
彼女の最初のキースピリットにしてエーススピリット。黒雲を裂き、フィールドに差し込む光と共に舞い降りる堕天神龍。地上へと降り立ちフィールドに揃う3体の龍。ライトニングエンペラー、アオバ、ヴィーナルシファーの雄叫びが大気をも振るわせる。
「さぁ、アオバのメインアタック! どう受ける気だ?」
BPを下げられた事で今の天醒化身にアオバを迎撃できるだけの力はない。ブロックすれどこのまま押し切られれば烈我の敗北が確定するが。
「ならこうするまでだ! フラッシュタイミングでマジック、ミストシールド!」
「!」
「効果でアオバとヴィーナルシファーの二体を指定。このターン、指定されたスピリットは俺のライフを削れない!!」
アオバの二頭の首が牙に雷を帯びながら喰らいつくが、マジックにより強固となったバリアは先程とは打って変わり、傷一つ付かずアオバの攻撃を弾き返して見せる。
「ふぅ……スゲェぜ光黄! 気を抜いたらすぐ追い込まれる怒涛の攻め。お前もライトも最高だぜ!!」
「お前もな烈我。ここまで攻めてもなお、お前はまだ耐えて見せてるんだから」
「おぉ! こんな楽しい勝負まだ終わる訳にはいかない! 耐えて耐えて最後に逆転してやるぜ!」
「フッ、ならまだまだ俺も楽しめそうだな。ターンエンド」
────第12ターン、烈我side。
[Reserve]14個。
[Hand]4枚。
[Field]輝きの聖剣シャイニングソードX 転醒化身Lv.3(4)BP12000、創界神アポローンLv.1。
「メインステップ、バーストセット。さらにマジック、烈光閃刃。効果でトラッシュのバジュラを俺の手札に戻す!!」
トラッシュから再び舞い戻るバジュラのカード、それが烈我の手に加わると『待ってたぜぇ!』と意気揚々とSDサイズでカードから飛び出すバジュラ。
『よくやった! 早速あの野郎に反撃と行くか?』
「勿論。けどまずはライトブレイドラをLv.3で召喚し、続けて行くぜ!! 此奴を前に絶対はねぇッ! 鉄壁の壁だろうが無敵の相手だろうが一撃必中必殺の矢を叩き込めッ!! 龍星の射手リュキオース、Lv.3で召喚だッ!!」
直線上のコースを描くように左右均一に地面から吹き上げる火柱。遥か後方から雄叫びを上げながら築かれた炎のロードを駆け抜ける龍、光黄にとってのヴィーナルシファーと同様、烈我の最初のエーススピリット、リュキオースの姿である。
「ここでリュキオースか!」
「アポローンに神託。ならびにリュキオースの召喚時効果、【超祈願】! アポローンにコア3個をさらに追加し、Lv.2へ!」
リュキオースが齎すコアの恩恵。だがリュキオースの真価はこれだけではない。
「リュキオースの【龍射撃】発揮! 効果でアオバを破壊ッ!! 撃ち抜け、リュキオースッ!!」
白獣に跨りながら矢を構えアオバへと駆け出すリュキオース。寄せ付けまいとアオバの双頭の目がただ一騎のリュキオースに狙いを定め雷撃を吐きつけて行くが、速度を緩めずに中央無尽に駆け回りながら雷撃を回避。
さらに距離を詰めるリュキオースに対し、アオバは牙を構え直接喰らい付かんと二頭の首で襲い掛かるがアオバの牙がリュキオースを捕らえる瞬間、大きく飛び跳ねてアオバの視界から姿を消すリュキオース。上空に飛び上がり、真下のアオバに向けて構えた矢に炎を込めると咆哮を上げて、炎の矢を一投。
殺気に気づいたように起き上がり、矢を迎撃すべく雷撃を放つが、リュキオースの矢は一撃必殺。繰り出された雷撃を打ち消しながらアオバの身体を貫き、貫かれた体は全焼し断末魔を上げて爆発四散を起こす。
「アオバ……ッ! やってくれる」
キースピリットの破壊に表情を険しくさせる光黄だが。
「けど生憎想定通りだ。相手による自分のスピリット破壊後によりバースト発動ッ!」
「!」
「雷命刀ミカヅキ、効果でこのターン! お前のスピリットとネクサス、全ての効果無効にするッ!!」
「げッ!!?」
カウンターとばかりにバーストから放たれる電撃がリュキオースと転醒化身の二体を捕らえ、両者ともに片膝を突きながら己の効果を失ってしまう。
「ミカヅキはブレイヴ、そのままヴィーナルシファーに直接合体だ!!」
腕を掲げ円を描きながら降り落ちるミカヅキを手に取り、増大した力を示す様に吼えるヴィーナルシファー。
「合体したヴィーナルシファーのBPはこれで11000、さぁどうする?」
「(ッ! ミカヅキの効果はターン中継続する効果。バジュラを出しても効果は使えない)」
ミカヅキの効果は場にいるスピリットだけでなく新たに呼び出したスピリットにも適用される為、例えバジュラを呼び出した所でこのターンの決め手には欠ける。
「ぐッ……アタックステップは何もしない。俺はこれでターンエンド」
『チィッ、俺の出番はどうやらまだ後になりそうか』
「悪いバジュラ」
『構わねぇ。その代わり次の奴の攻撃、何としても耐えろよ?』
相槌を返してバジュラの言葉に首を縦に振る烈我、だが次のターンを凌ぐ、対戦する相手を前にそれが容易ではない事は十分理解している。勿論彼女自身もまた、凌ぎ切らせるつもり等毛頭ない。
────第13ターン、光黄side。
[Reserve]10個。
[Hand]4枚。
[Field]覇雷帝龍ライトニングエンペラーLv.3(4)BP18000、堕天神龍ヴィーナルシファー×雷命刀ミカヅキ Lv.2(2)BP11000、黄金の鐘楼Lv.1(0)、創界神ラーLv.1
「ライト、分かってるな。このターンで決めるぞ!」
『はい、光黄様ッ!!』
「ネクサス、黄色の聖遺物をLv.2で配置!」
「ッ!!」
『厄介なネクサスが来やがったか』
「分かってると思うが、黄金の鐘楼がある限り聖遺物は破壊されない。さらに手札から神罰銃ヘヴンズベンジェスをライトニングエンペラーに直接合体ッ!!」
神々しい光のオーラを放ちながら舞い降りるように降り注ぐ神罰銃──ヘヴンズベンジェス。進化し強靭となった腕で重装備である神罰銃を片手で軽々と受け取りながら銃を構え、烈我を睨むライト。
「これで準備は整った。行くぞ、烈我!!」
「来いよ、正々堂々受けて立ってやるぜッ!!!」
「よく言った。アタックステップ! 合体したライトニングエンペラーでアタックッ! ライトニングエンペラーの効果でアタック時効果となったサンダーブランチの効果を使用! 再び合体していないお前のスピリット全てのBPを2000にする!!」
再びライトの放つ雷撃、元よりBPの低いライトブレイドラを除いて場の転醒化身とリュキオースは直撃を受けて大きく力を削がれ、ガクンと項垂れる。
「もう一つ、ヘヴンズベンジェスの合体アタック時効果、手札にある黄色のマジックカードをノーコストで使用できる! 俺が使うのはイエローリカバー!!」
「!」
「合体したライトニングエンペラーを回復。黄色の聖遺物の効果でマジックを使用した時1枚ドロー、さらにメインアタックッ!」
「ライトブレイドラでブロックだ!」
烈我の残りライフは2つ。ダブルシンボルの攻撃を受ける訳にはいかず、防御指示にライトブレイドラは前へと駆け出し、勢いづくように手札を構える烈我。
「ブロック後のフラッシュタイミング! マジック、バーストバリアを使用!」
「何ッ!?」
「効果で相手ネクサス、黄色の聖遺物を手札に戻す!!」
烈我から繰り出される予想外の一手、雪の如き結晶が聖遺物の周りに散らばり発光し始めたかと思うと、次の瞬間、一瞬で聖遺物を消し去り、カードが持ち主の手に収まる。
「ヘッ、どうだ。黄金の鐘楼で守れるのはあくまで破壊効果だけ。手札に戻す効果なら黄金の鐘楼でも防げない!!」
「俺への対策、確実に守りを手薄にさせる気か……だがッ! 俺の守りを削った所でこのターンお前が凌ぎ切れなければ何の意味もないッ!!」
感心しつつもすぐに視線を鋭く切り替える光黄、彼女の言う通り耐える事が出来なければ無駄な足掻きにすぎず、メインのバトルでは駆け出すライトブレイドラに対し、ヘヴンズベンジェスを構えて即発砲、続けざまに口から放たれる雷撃のブレス。
最初に放たれた銃弾はライトブレイドラを直撃し、衝撃に体が宙に跳ね飛び、追い打ちの如く繰り出された雷に飲まれライトブレイドラは跡形もなく消失。
「相手によるスピリット破壊後でバースト発動ッ! 双光気弾!!」
「!」
「デッキから2枚ドローし、さらにコストを支払ってメインの効果。相手のネクサスかブレイヴ一つを破壊! 狙いはヴィーナルシファーと合体しているミカヅキッ!!」
カードを2枚加えた後、バーストより放たれる二つの火球。ターゲットにされたヴィーナルシファーはミカヅキを盾代わりに防御するが、直撃と共に巻き起こる爆発。ヴィーナルシファー自身は無傷ではあるものの、盾として使用されたミカヅキは刀身がバラバラの金属片となって砕け落ち消滅。
「これでヴィーナルシファーの合体時効果は封じたぜ!」
ニィッと口角を上げて得意げな表情の烈我だが、対して光黄は。
「甘いな」
「?」
「俺の攻撃はまだ終わってない。ヴィーナルシファー! 行けッ!!」
「ヴィーナルシファーを!?」
合体していなければヴィーナルシファーは自身の真価を発揮できない筈。しかしまだ彼女には烈我の想定を超える一手が。
「フラシュタイミング! マジック、シーズグローリーッ!!」
「なッ!!?」
「効果で転醒化身のBPを-7000し、破壊するッ!」
マジックにより今度は空からの放たれる落雷、サンダーブランチで力を削がれた転醒化身には避ける力も抗う力もなく雷に貫かれ、トドメを刺され転醒化身は崩れ落ちて爆発四散。そして、シーズグローリーの効果はまだ終わらない。
「シーズグローリーは効果で相手を破壊した時、このカードを転醒させるッ! 天を貫き大地を穿つ蒼穹の槍!! 今主の元に伝説の姿を現せッ! 転醒ッ! 天醒槍ロンゴミニアス、そのままヴィーナルシファーに
化身を貫いた雷が意思を持つかのようにヴィーナルシファーの目の前に現れると、雷は槍へと姿を変貌させ、ヴィーナルシファーの両手に収まる。
「ロンゴミニアス……ッ! しかもヴィーナルシファーにブレイヴが」
「あぁ。これでヴィーナルシファーの効果が使える! このスピリットの合体アタック時効果、フラッシュタイミング時、俺は手札のスピリットを破棄する事で、デッキからマジックカードが出るまで破棄する事ができる!」
彼女の手にはアオバの効果で加わったクダギツネがあり条件は満たされている。手札から公開したクダギツネを破棄するとヴィーナルシファーは猛々しく吠えながら効果を発揮させ、彼女のデッキからカードが破棄されていき、数枚目で該当のカードがヒットしたように、彼女は目当てのカードを手に取り、表向きにして掲げる。
「マジック、神閃月下!」
「!!?」
「ヴィーナルシファーの効果でこのカードのフラッシュ効果を発揮! お前はこのターン、黄以外のスピリット、アルティメットでアタックとブロックは出来ないッ!!」
ヴィーナルシファーは天に向かってロンゴミニアスを突き上げると、黒雲を晴らし地上に注ぐ月光。空の光景にリュキオースは上空を見上げるが、光を見た瞬間、まるで時を止められたかのようにピタリとリュキオースの動きが静止させられ一切の行動を封じてしまう。
「残りライフは2、ブロックも不可能。これで、決まりだッ!!」
「……」
長きに渡った勝負も決着か、勝ちを確信する光黄にモニターを見ている全員も息を吞む。
『これで、終わる訳ねぇよなァ! 烈我ァッ!!』
「当たり前に! 決まってんだろッ!!!」
唯一無二の相棒の言葉、高らかに笑って答えながら烈我は手札を構え。
「フラッシュタイミング! マジック、白晶防壁(Rv)! 自分のカウントが1以上ならこのターン自分のライフは1しか減らされないッ!!」
「ッ! 双光気弾で引いたカードか!!」
「運がいいだけ、とは言わせないぜ!」
「……分かってる。そのカードは、お前が諦めない故に引く事の出来たカードだ」
言葉を交わす互いの表情は楽し気に笑い合い、「続けるぜ!」と継続するバトルに意識を戻す。
「合体スピリットのアタックはライフで受ける!!」
ロンゴミニアスを構え渾身の突きがバリアへと突き出されライフを破壊するが、マジックの効果で首の皮一枚、ライフの光がまだ一つ残っている。
「「はぁ……はぁ……ッ!!」」
長期戦にも及ぶバトル、互いに疲れが見え息を切らしているが、それでもまだお互いの目の闘志は微塵も衰えてなどいない。
「烈我、本当に……強くなったな」
「サンキュー。お前にそう言ってもらえる事が何より嬉しい。けど、生憎俺の目標はまだその先だ、強くなってお前に勝つ!! それが俺の目標で、そして夢だ! だから光黄、今ここで宣言するぜ。俺は今日! バジュラと一緒に夢を叶えるッ!!」
拳を突き出しながら勝利宣言とも思える台詞、本当にどこまでも真っ直ぐな奴だと改めて心の中で呟き、口元を緩ませながら。
「フフっ、聞いたか。ライト」
『えぇ。全く舐められたものですねぇ~。私と光黄様のタッグは最強だというのに!!』
「分かってる。お前ら二人は誰よりも強い……けど、強いからこそ、最強と思えるお前らだからこそ俺は勝ちたいんだッ!!」
「……なら烈我、あえて言ってやる。お前のその夢、俺とライトが全力で阻む! 俺もお前と同じだ、お前とバジュラに、俺は勝ちたい! 俺が最も強いと思ってる相手だからこそ、俺は、俺達は勝つ! それが俺の、俺とライトの欲望だ!!」
「へへっ、ならどっちの欲望が強いか、勝負と行こうぜ! 光黄ッ!!」
「来い!!!」
────第14ターン、烈我side。
[Reserve]16個。
[Hand]3枚。
[Field]龍星の射手リュキオースLv.3(4)BP10000、創界神アポローンLv.2
「俺のターン、バーストセット! さらにマジック、双翼乱舞! 効果でデッキから2枚ドロー!」
新たなに加わる2枚のカード、それを見ながら覚悟を決めるように。
「バジュラ、準備はいいか?」
『俺はとっくに出来てる。テメェの方はいいんだろうな烈我!!』
「聞くまでもねぇだろ。このターン、俺たちの全部を出し尽くす! さぁやろうぜ、バジュラッ!!」
『任せな。このラストバトル、ド派手に飾ってやらぁッ!!!』
「行くぜ行くぜッ!! 獄神火龍バジュラレッドイグニール、再び燃え上がれッ!! Lv.3で召喚ッ!!!」
大地を燃え上がらせながら再びフィールドへ舞い戻るバジュラ、紅蓮の炎と滾る闘志を糧に雄叫びを上げる。
『グルアアアアアアァァァァァッ!!!』
荒々しく叫び、バジュラの視線が捕らえる標的はただ一騎──ライトニングエンペラー。
『戻ってきましたか、バジュラ! また私にやられにでも来ましたか?』
『ほざけ。俺は、今度こそテメェをぶちのめしに来たんだよッ!!』
バチバチと火花を散らす二匹の龍、互いに憎まれ口を叩き合うがライトとバジュラもまたその目は持ち主たちと同様、お互いを好敵手と認め、そして"お前に勝つ"と意思表示に他ならない。
『にしてもライト。話は変わるがテメェも随分と変わったな』
『急に何の話です?』
『嫌、オメガデッドノヴァ、彼奴の事を思い出してな』
『!』
『彼奴と俺達は元は一つの存在、つまりは似た者同士って訳だ……当然俺やお前等もな。最初の内は顔を合わせば喧嘩ばかりだし性格も趣味合わねぇし何処が似た者同士なんだと思ったが、何てこたぁねぇ。俺達全員ただ一つ共通点があった』
『……それは?』
『"相棒と共に勝ちたい"、その気持ちただ一つだ! 己の為じゃねぇ、俺達が自分のパートナーだと信じた、そして俺達を信じてくれる相棒の為に勝ちたい。それが俺達の欲望、だろ? 普段のお調子者のテメェじゃねぇ、相棒の為に全力で戦おうとする今のお前を見て、心底そう思った』
『フフフ、だから似た者同士って訳ですか。まぁ確かに否定はしませんよ』
バジュラの話に、光黄の方を一瞥しながら肯定するように表情を緩ませ笑うライト。
『で? そんな話をして手加減でもしてほしいんですか?』
『ハッ、似た者同士だつったろ。手加減が必要なんて誰が思うか! 互いに全力を出し尽くした上で勝ちたい!! そうだろ?』
『えぇ! 勿論!!』
『なら全力で、この最後のバトル! 思う存分戦って! 楽しもうぜッ!!』
『相変わらず野蛮ですね。でも……癪ですが、今だけは貴方に同意ですよッ!!』
もはや余計の言葉はいらない、バジュラは拳を、ライトはヘヴンズベンジェスを構え相対するライバルを睨む。
「行くぜ光黄! アタックステップ!!」
泣いても笑っても烈我にとってはこれがラストターン、決めるか否かの正念場。コールに力を込めながら叫ぶ。
「まずはお前の出番だ! リュキオースでアタックッ! アタック時効果【龍射撃】、ヴィーナルシファーを破壊だ!!」
先陣を切るはリュキオース、駆け出しながら矢を構えヴィーナルシファー目掛けて炎の矢を弾丸の如く射貫き、ヴィーナルシファーの身体を貫き大爆発を起こす。
「アポローンの【神域】の効果! アタックステップ中に相手を破壊した事で相手ライフ一つを破壊!!」
追撃とばかりにアポローンが放つ火矢、駆け出すリュキオースの真横を突っ切りながら光喜へと迫り、展開されたバリアへと突き刺さり、ライフが砕かれる。
「ッ! ロンゴミニアスは場に残さずそのまま破壊させる。リュキオースのメインアタックもライフだ!」
場に残した所でアポローンの神技で破壊されるが故の判断。ヴィーナルシファーもろともロンゴミニアスも炎の中で焼失し爆風の中を突っ切って今度はリュキオースが迫るとバリアへと組み突き、零距離で矢を撃ち放ち光黄のライフをさらに砕く。
「ぐぅッッッ!!」
「これで残るライフは2! さぁ、最後の大勝負だ!!」
睨み合いながら今か今かと時を待ち続けたバジュラとライト、待ちに待った火蓋がついに切って落とされる。
「バジュラレッドイグニールでアタックッ! アタック時【
光黄の場に残るスピリットはライトニングエンペラーを除いて他にない。BPをさらに引き上げながらライトニングエンペラーへと一直線に向かっていく。
「さらにフラッシュタイミング! 白晶防壁(Rv)! バジュラレッドイグニールを回復だッ!!」
「そこまでだ。ライトニングエンペラーでブロックッ!!」
白いオーラを纏いながら回復するバジュラ、ライトは迎撃すべくヘヴンズベンジェスを撃ち放っていくがバジュラには通じない。拳で弾丸を弾き落としながら足を止めず距離を詰め、無駄だと悟ったのか邪魔とばかりにヘヴンズベンジェスを放り捨ててバジュラへと突っ込み、真っ向から組み合う両者。
「ライトニングエンペラーの【天雷祝福】、忘れてはいないな? ブロック時効果の宣言! フルーツチェンジの効果を使用だ!!」
再び入れ替わるライトとバジュラのBP。本来自分より力で上回る筈のバジュラを真っ向から押し返し、足を引き摺らせながら後退していくバジュラ。
「これで今のバジュラのBPは23000、ライトニングエンペラーのBPは35000。決めろ、ライトッ!!」
組み合う手にさらに力を籠め吼え叫ぶと、バジュラを持ち上げそのまま宙にぶん投げて雷撃のブレスを放つライト。放り投げられながらも空中で防御姿勢を取りブレスを受け切って地面に直地すると、反撃のように吐き出す火炎放射。
だが翼を広げて一瞬で上空に飛び上がり炎を回避し、もう一度咆哮を上げると、雷雲を呼び起こし、落雷が雨の如くバジュラへと降りかかる。
「回復させた所でバジュラを破壊すれば意味はない。これで終わりか、烈我ッ!!」
終わりならばここで勝負は幕引きも同然だろう、彼女の問いに対して、烈我の答えは。
「終わらせないッ!! 勝つのは」「『俺達だあああああッ!!!!』」
手札に残った最後の一枚を切り。
「フラッシュタイミング! マジック、フルーツチェンジッ!!」
「ッ!! 俺と同じ、マジックを!?」
「これが俺の、切り札だッ!!」
フルーツチェンジはBPを入れ替える効果、それが二回使用されたということは即ち、二体のBPが元に戻った事を指し。
「行け、相棒ぉぉおおおッ!!」
『ウオオオオオオオオォォォォォ────ッ!!!』
再び元の力を取り戻し己の炎を燃え滾らせ、炎を全身へと纏うバジュラ。咆哮と共に極大の炎を天に向かって吐きつけると降り注ぐ雷を飲み込み、炎はそのまま空の雷雲を突き破り掻き消す。
『最後はテメェだッ! ライトォッ!!』
『ッ!! バジュラァアアアアアッ!!」
真下のバジュラを睨みながらライトもまた己に宿る雷を最大にして身に纏い、一戦目と同様最高速度でバジュラへ特攻。バジュラは端から受け止めるつもりで構えを取りそのまま激突するライトとバジュラ。
『『グオオオオオオォォォォォ────ッ!!!』』
飛び散る火花と弾ける電撃、衝撃と轟音を響かせながら力の限り真っ向からぶつかり合い、ライトの特攻を受け止めるバジュラだが雷の弾丸と化したライトは止まらず、バジュラの足場が砕けながら押されていき、烈我のすぐ後ろの壁にまで押されそのまま壁に衝突しより大きな轟音と、巻き起こる土煙。
「「ッ!」」
光黄と烈我の視線がバジュラ達の方へ向く。次第に煙が晴れ、二人の視界に映るのは壁に減り込みながらもライトの角を掴み、攻撃を受けきるバジュラの姿。
「「!!!」」
『ケホッ、受けきったぜ。ライト!』
『ッ! まだ、まだぁぁぁぁッ!!』
目を輝かせ身に纏った雷撃の出力を上げて、感電させるように自分の身体を掴むバジュラを雷撃が襲うが、攻撃を受けながらもバジュラはライトを掴む腕を一切緩める事なく口角を上げる。
『往生際が悪ぃんだよテメェはッ! 俺達の夢の道だ。とっとと退きやがれッ!!』
『ッ!!!』
拳を握り締め、渾身の己の全てを込めて繰り出す全身全霊のフィニッシュブロー。文字通り必殺の一撃をライトへと叩き込み、拳がライトの身体へ打ち込まれ、衝撃が体を突き抜ける。
『うぐッ……あああああああああッ!!』
絶叫を上げ崩れ落ちるライト、二匹の龍の勝負は完全に決した。
「決まりだ! BPを比べ相手スピリットを破壊した時、破壊したスピリットの上回ったBP10000につき一つ、相手ライフを破壊するッ!!」
「ぐぁぁぁッ!!!」
勝敗が決すると同時に弾け飛ぶ光黄のライフ、彼女の残るライフもこれであと一つ。そして烈我にはまだ回復状態のバジュラが────。
「まだだ!! 俺も、最後の最後まで諦めるものかッ!」
「!」
「ライト、最後の力を振り絞れッ!!! ライトニングエンペラーの【天雷祝福】、破壊時の効果! 最後のカードをオープンする!!」
崩れ落ちるはずのライトの目に再び光が灯り、最後の能力を発動させオープンされるカードは。
「マジック! リセットスフィアッ!! 起幻を持たない黄色以外のスピリット、ネクサス全てを破壊する!! 俺のカウントが2以上なら、破壊したスピリットとネクサスの効果も発揮させない。全てを消し去れッ! ライトッ!!!」
『テメェ……ッ!!』
『バジュラ、悪いですがこの勝負、引き分けにさせて、もらいますよ。最後のバトル、よりにもよって光黄様の前で負けて終わり何てカッコ悪い真似、死んでも御免ですから』
『相棒の為にそこまで……ホントお前、変わったな』
『誉め言葉として……受け取りますよ』
最後に視線を交わし互い笑みを零しつつ、リセットスフィアを己の能力として発動させ最後の一撃を放つ。
放たれた一撃は光となってフィールドの全てを包み込み、眩く照らす光と轟音を巻き起こしながら、アポローン、リュキオース、そしてバジュラ全てを飲み込んで跡形もなく消し去る。
「……最後の手も出し尽くした。だがこれでこのバトルは俺の───」
「嫌、悪いけどもう一度言うぜ光黄。勝つのは、俺だ!」
「!」
互いの手札は零、スピリットもない。だが烈我の場にはまだカードが一枚伏せられている。
「相手によるスピリット破壊後でバースト発動! ライジングフレイム!!」
「な、に!?」
「バースト発動時に破壊されたスピリットを呼び戻す! 帰って来い、リュキオースッ!!」
フィールドに出現する炎のゲート、燃え広がる炎の輪を飛び出しリュキオースが帰還する。
「俺の手を、読んで……いたのか?」
「何となく、だけど。最後はこうなるって予感してた」
「どうして……ッ!」
そこまで言いかけた時、理由はすぐに彼女も理解した。理解したと同時に思わず彼女は笑い、つられるように烈我も笑いながら。
「そりゃ今まで何回お前と戦ってきたと思ってたんだよ。一番のライバルで、一番好きな相手だからこそ、だろ」
「ホントにお前は、恥ずかしい奴」
「ハハ、自覚してる」
お互いに笑いながら談笑、既に光黄の手札もバーストも無く、フィールドにはリュキオースただ一体。その時点でバトルの勝敗は決した。
「烈我、楽しいバトルだったよ」
「俺もだ。光黄!」
最後に一言を交わし、リュキオースのカードに手を掛けて。
「リュキオースで、ラストアタックッ!!」
弓矢を捨て、駆け出し跨る白獣から飛び降りると、バジュラを模すかのようにリュキオースは拳を振りかぶり、リュキオースを前に彼女は清々しい表情で。
「ライフで受ける」
宣言と共に、リュキオースによる最後の一撃がライフを砕き、決着。
***
「勝った。俺、光黄に、勝った……んだよな」
バトルフィールドから元の場所へ戻って来る二人、バトルを終え振り返り自分の勝利に実感が湧かないのか、頬をつねりながら呟く烈我だが。
「あぁ。正真正銘お前の勝ちだ。胸を張れ」
「ッッッ!!!」
肯定する彼女からの言葉にわなわなと震えながら。
「うおおおおおおおおっしゃああああああああッ!!!」
夢にまで見た念願の勝利に腹の底から声を上げて勝利に喜ぶ烈我、彼の様子に「やったな」と肩を組みながら彼の勝利を労うミナト達。
「光黄ちゃんに念願の勝利、素直にお祝いさせてくれ」
「僕も同じです! 本当に凄いバトルでした!! 光黄さんも烈我さんもどっちが勝つか最後まで分かりませんでした!」
「私は正直最後のターン、光黄が勝つんじゃないかと思ったけど……でもホントにおめでとう!」
「サンキュー皆! やっぱり夢じゃねぇよな!!」
「ま~~だ疑ってんのかよ。何ならキラーに頬でも摘まんでもらうか」
『任せろ。噛み裂いてやるッ!!』
「絶対、嫌ッ!!!」
和気藹々と勝利を喜ぶ烈我達、そんな彼らの様子を一歩離れて見つめる光黄だが。
『光黄様』
「……ライト?」
彼女を呼び掛けるライトの声、振り返りライトの様子にどうしたと尋ねる光黄。
『このライト……力及ばずに光黄様に勝利を届ける事が出来ず、誠に申し訳ありません』
「別に謝ることじゃない。俺もお前も全力を出し切った上で負けたんだ。なら、悔いはない」
『……』
清々しい彼女の表情、彼女は何を思うのか、彼女の視線の先にいる烈我を見ながらライトは。
『光黄様、私……今日でお暇を頂いてもよろしいですか?』
「それって」
『はい。私もバジュラ達と一緒に元の世界に、帰ろうと思います』
「……そうか」
ライトがどう決断するのか、その答えは何となく彼女も察していた様子で、ただ静かに返事を返す。
『今日まで貴方にお仕え出来た事このライト何よりも幸せでした。貴方と過ごせた日々、このライト絶対に忘れません』
「うん。俺もだ、ライト」
優しく頷く光黄の言葉を嬉しく思いながら。
『光黄様もう一つ……私はずっと、初めて貴方を見た時からずっと……貴方に恋心を抱いておりました』
「!」
『他の誰よりもどんなお嬢様方よりも貴方はとても美しかった。だから私は──!』
ライトの告白に少しだけ驚いたような表情を浮かべる光黄だったが、すぐに穏やかな表情でライトを抱きしめる。
『光黄、様?』
「……ライト、お前の気持ちは嬉しい。俺もお前の事は好きだ。けど……あくまで仲間として……だからそれ以上は、俺はお前の気持ちに応えられない」
『……えぇ。光黄様ならそう言うと、分かっておりました』
「ごめん、ライト」
『いいんです。いいんです……それでもこのライトは、幸せでしたから』
そう分かっていた、彼女の想い人は自分ではない。だから足搔き続けた、彼がこの勝負に勝ちたかったのは、烈我にだけは負けられないと言った一番の理由は他でもない彼女を想うからこそ。しかし負けてしまった。だからもう認めるしかない、諦めるしかない。最後に直接彼女の口から告げてもらう事で、自分の気持ちに区切りをつける事にした。
でも、覚悟はしていたけれど少しだけ痛みに耐えきれなかったように彼女に抱きしめられながらライトの目には小さく、涙が零れていた。
『光黄様、よければ教えてください。もし私が……光黄様と同じ人間だったなら、私にもチャンスはあったでしょうか?」
『……』
ライトからの問いに彼女は静かに首を横に振る。
「お前が人間かどうかは関係ない。俺が、俺が好きなのは後にも先にも一人だけだ」
『……はは。なら初めから私に席はなかった訳だ。でも、それでも貴方を選んだ事、後悔はしていませんよ』
顔を上げたその表情にもう涙はない、そんなライトを見ながら光黄は。
「ライト、最後に俺からもいいか?」
『はい』
「今だから言う。お前は俺にとって、紛れもない世界一の執事だったよ。こんな俺にはもったいないぐらい最高のな」
『!』
「俺を選んでくれて、ありがとう」
明るい彼女の笑顔で贈られる言葉、ライトにとってはこれ以上にない労いの言葉だ。
『光黄様、礼を言うのは私の方でございます。どうかお幸せに』
「あぁ、ライトもな。それじゃあ、行ってくる」
『はい、行ってらっしゃいませ! 光黄様!』
駆け出す光黄を見送りながらまた少し涙が零れる。だが、それでも彼は眼を背けない。彼女がもう振り返らないと知っていても、なお彼女の祝福を願うと決めたのだから。
「おい、烈我!」
「!」
駆け寄る光黄の姿に最初に気付いたのはミナト。ミナトからの声に烈我も遅れて光黄の姿に気付き、どう声を掛けようか一瞬悩む烈我だが、ミナトと絵瑠の二人は示し合わせたようにドン!と烈我の背中を押し、彼女の前に突き出す。
「ちょッ!!」
まだ心の準備が、と振り返り文句を言いたげに二人を見るが、ミナトと絵瑠の二人は親指をグッとサインを見せるだけでそそくさと星七を連れて一旦退場し始め、二人きりの状況されまだミナト達に物言いたいようにモヤモヤした感情が残るが、気持ちを切り替えもう否が応でも腹を括るしかない。
「……光黄!!」
「!」
彼女の名を呼び、正面から向き合う両者。念願の告白を前に、まだ緊張しているのか深呼吸しながら小さく「ヨシ!」と頬をバシバシと叩き。
「光黄、俺……ずっと……ずっと!!」
ずっと言いたかった言葉を前にすると普段と比べ物にならない顔が熱くなり、鼓動が高鳴る。それでも再度息を整えて想い人の表情を見ながら。
「俺はずっと、お前の事が好きだった。今までも、これからもずっと俺は光黄の事が好きだ!! ずっと、一生お前の傍にいたい。だから、俺と! 結婚を前提に、付き合ってください!!!」
この言葉を伝えるのにどれ程掛っただろうか、何度この光景を夢に見ていた事だろう。他人から見れば笑われるだけの夢かもしれない、現に出会って間もない頃のバジュラには大爆笑されたぐらいだ。それでもいつかこの日を夢に見続け願い続けた結果、今この瞬間の光景に至れたのだ。けれどまだ、夢が叶った訳ではない。全てはこの後の彼女の返答次第だ。
「……烈我、それを答える前に俺から言わせてほしい事がある」
「?」
「まず白状すると、もし今日のバトル、俺が勝ったとしたら……その時は、俺はお前との約束を破ろうとしてた」
「約束って?」
「『俺に勝ったら結婚してやる』、その約束だ。理由は俺がお前に自分の気持ちを伝えたかったから」
「え? それって、どういう?」
「相変わらず鈍感だなお前は」
「!?」
まだ理解が追い付いていない烈我に少し呆れ顔を浮かべながらも、一息ついた後にじっと烈我を見て。
「俺もお前と同じだ。俺も、お前の事がずっと好きだった」
「え」
突然光黄からの告げられる逆告白、一瞬フリーズした後に。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!?」
「なんだその反応、冗談だと思っているのか?」
「い、嫌、そうじゃないけど、でも、光黄が俺の事好きってのは、その友達としてとかじゃ」
「違う。わざわざ言わせる気か、このバカ烈ッ///」
「そ、それじゃぁ///」
頷きそれを見てお互い顔が熱くなるのを感じながらも、話を戻すぞと切り替える光黄。
「お人良しで向こう見ず、けどどこまでも真っ直ぐなお前が、こんな俺とずっと向き合い続けてくれるお前がいつしか俺も好きになった。自分の気持ちを伝えようと何度も思った。けど「バトルで勝ったら結婚してやる」なんて約束をしたのは他でもない俺自身なのに、自分からこの約束を破るのが、今までずっと挑み続けてくれるお前の行為を無駄にするみたいで怖かった」
「光黄」
「でもこれ以上自分の気持ちを誤魔化すのにも耐えられなくて、だから俺が勝ったらこの約束なんて全部無かった事にしようと思ってた。けど今日お前は俺に勝った。勿論手加減をした訳じゃないし負けた事は悔しい。けどそれ以上にお前が、俺との約束を果たしてくれたのが何より嬉しかった」
思い出を振り返りながら、鼓動がまた高鳴るのを感じながら、彼女は言葉を続けて。
「烈我、改めて言わせてほしい。今日まで俺は、お前の気持ちに応えられずごめんなさい。そして、こんな俺を想い続けてくれて本当にありがとう」
今までずっと抱えていた彼女自身の想いを語り胸が晴れるような感覚。自分の言葉に烈我は何も言わずただ静かに受け止めてくれている。
「素直じゃないのは分かってる。面倒臭いのも自覚してる、それでも……こんな俺でもいいのなら、告白の返事をさせて欲しい」
普段の強気な彼女とは違い発する言葉に少しだけ震えが見えた。自分の胸の内を伝えた事でもしかしたら嫌われるかもしれない、そんな恐怖。けれどそれも覚悟の上で、彼女はもう包み隠さず彼に自分の想いを全て伝えようと決めたのだ。
烈我からどう返されるのか、最悪の結果が頭を過り思わず目を瞑る彼女だが、烈我は数歩歩み寄って、次の瞬間、彼女を抱き締める。
「れ、烈我!?」
突然の行動に今度は彼女が赤面させられ、動揺を隠せないように戸惑うがふと視界に入った烈我の表情には涙が零れ。
「烈我?」
「ごめん。俺嬉しくて……俺ずっと光黄の事が好きで、光黄も俺の事を好きって言ってくれたのが本当に、本当に心の底から嬉しくて、嬉しい筈なのに、何でか涙が止まんねえんだ」
「……フフ、全くホントにお前は」
呆れるような口振りをしつつも彼女もまた嬉しそうに、涙目な表情で烈我を抱き締め返し、暫くして落ち着いたように涙を拭って。
「でも、一つだけ訂正してくれ。さっき"こんな俺でも"って言ってたけどそれは違う。俺は……光黄のそういう所も全部含めて好きだ。お前の事で嫌いな事なんて何一つない、ありのままの黄空光黄が、俺は大好きだ!!」
「ば、バカ烈! またお前は歯の浮くような台詞を///」
「はは、バカっぽいよな。でも、どうしてもこれだけは言っておきたくて」
「……ハァ、ホントに……何処までも、お前らしいな」
照れ臭さを感じながら悪い気はせずあまりにも真っ直ぐすぎる烈我に自分も観念して。
「やっぱりお前には敵わないな。烈我、俺もお前のそう言う所が……天上烈我が、俺は大好きだ」
「!……ありがとう。光黄」
お互いに好きとハッキリ告白の返事を口にし、そしてじっと見つめ合ったまま、お互いに顔を近づけてそっと、唇を重ねてのキスをする二人。
「「「『『『『!!!』』』』」」」
遠くから傍観者と見ていた星七達でさえも思わず照れ臭くなるような光景。ミナトは軽くヒューと口笛を吹いたり絵瑠は両手で顔を覆いながらも指の隙間は空けてガッツリ目視していたり様々な反応を見せている。そして同じくその光景を見ていたライトもまた衝撃を受けている様子で、一瞬罅割れた石像状態になりかけるが。
『ハハハ、何て顔してやがる。諦めはついたんじゃなかったのか?』
『バ、バジュラ!?』
何時からいたのか、ライトの隣でバジュラはケラケラと笑っている。
『それはそれこれはこれ。辛いものは辛いんですよ!』
『"シツレン"って奴か。最後にいい思い出が出来たじゃねぇか』
バジュラの一言にキッ、と刺すように睨みつけるライト。だがすぐに力を抜いて溜息一つ零しながら。
『そうですね。辛いことは辛いですが、不思議と悪い気分じゃないです。思い出というなら、確かにこれも代えがたい思い出ですね」
『フッ、ホントに変わったなお前。さて』
バジュラもまた烈我達の方へ視線を向け、二人の様子を見て小さく一言。
『(お前の願い確かに見届けたぜ。相棒として見届られけた事、それは何より、俺の誇りだ)』
「……ン」
どのぐらい時間がたったのだろう。まるで自分以外の時間が止まっているかと思わせるほど周囲の音は何も聞こえず、代わりに聞こえて来るのはドクンドクンと高鳴る自分の心臓の鼓動だけ。時間にして1分足らず、それでも二人にしてみれば永遠と錯覚するような時を経て、漸く顔を離す二人だがまだ動悸が収まらず、顔を熱くなるのを感じる。
「「……」」
初めてのキスを終え、赤くなった顔を見せるのが恥ずかしいのかお互いに目を背け、何となくぎごちなくなる二人。けれど、いつまでもそのままでいる訳にはいかない。
「そ、それじゃあ、そろそろ! も、戻ろっか」
最初に会話を切り出す烈我だが、言葉にすらまだぎごちなさが拭えない。光黄もまた「あ、あぁ」と烈我同様に硬くなっているが、返事を返す際にようやくそこで二人は顔を見合わせ、赤くなっている互いの表情を見てどこか可笑しくなり、余計な力が抜けたように何時もの二人へ戻ってゆく。
「じゃあ、烈我」
「!」
静かに手を烈我に差し出す光黄、驚いた反応を見せる烈我だがすぐに彼は笑顔を向け、嬉しそうに彼女の手を取り、指を絡めて互いに繋いだ手を握り締めながら二人はミナトやバジュラ達の元へ戻る。
***
『それじゃあ、ゲートを開くぜ』
宙に向かって腕を翳し、まるで鍵を外すしたかのように開く空間の扉。ゲートの向こう側に映るのはスピリッツエデンの光景であり、いよいよバジュラ達との別れの時が迫る。
『じゃあな星七。儂がいなくても体調には気を付けて精進するんじゃぞ』
「あはは、なんだかお師匠さんみたいな事言いますね。でもありがとうございます。僕エヴォルのお陰で強くなれました。これからもエヴォルのパートナーとして恥じる事がないよう、努めますから」
『ふふ、儂の事をあまり重荷にせんでくれよ。まぁお主なら上手くやると思うが、ともかく達者での!』
「はい、エヴォルもどうかお元気で!!」
『ミナト、分かってると思うが頂点である俺様の事、絶対ェ忘れんじゃねえぞ?』
「お前は最後までそういうとこ変わらないね」
『ハッ、当然だろ。俺様こそ唯一無二だからな!!』
「へえへえ、唯一無二の傲慢様と組めて幸せものでしたよ俺は」
『苦しゅうねえぞ。ハッハハハハハ…………それじゃあ元気でな、ミナト。俺様にとって一番のパートナーは、お前だった』
「俺もだ。いつかまた会おうぜキラー」
『絵瑠、お前にも色々世話になったな。改めて礼を言う』
「私の方こそ。シュオンにどれだけ助けられたことか」
『気にするな、と言ってもお人好しのお前の事だから無理な話か』
「お人好しなのは案外シュオンの方だろ?」
『だとしたらお前の性格が移ったのかもな……まっ、とにかくこれからも元気で過ごせ。あの男とも仲良く、後、食べ過ぎにも気を付けろ』
「食べ過ぎ注意なのはお互い様だろ全く……それじゃあな、シュオン』
エヴォル、キラー、シュオンもそれぞれ自分のパートナー達と最後の挨拶を交わしそのやり取りはどこか切なさを感じさせる。彼等全員口にはしていないがずっと過ごしてきた相棒との別れはやはり辛く寂しさを感じずにはいられない。けれど涙は見せない。いつかまた会える事を信じているからこそ彼等は精一杯の笑顔でさよならを告げていく。
そしてライト、バジュラ達も並んで烈我と光黄の前に立ち。
『フフフ、天上烈我……! 光黄様を泣かせるような事があってみなさい。その時は必ず私が貴様の首をッ!!』
「いや怖ぇよ! 何で別れ際の挨拶で殺害予告されなきゃならねぇんだ!!」
「ライト、俺は大丈夫だから──」
『いいいい、気にしなくて。あんな態度とっちゃいるが、本音は彼奴も烈我の事を認めてんだからな』
仲裁に入ろうとする光黄に対して横からバジュラの一言。ソレが図星であるかのように「余計な事を……!」とライトの顔が赤くなる。
『ッ!! そりゃまぁ光黄様が選んだ人ですから、その判断に間違いはないと分かってはおりますが』
指摘された事に対し観念して白状するライトだが、それでもまだ物申したいことがあるのか、「けれど」と烈我を睨んで。
『一つだけ約束しなさい。必ず光黄様を幸せにするとッ!』
「お、おぉ。お前に言われるまでもねえ! 俺は必ず、光黄の事を幸せにしてみせる!!!」
『言質取りましたからね? 絶対忘れないでくださいよ、その言葉!』
「だから当たり前だっての! 命だって賭けてやらぁ!!」
「あの馬鹿二人……大声で何を叫んで」
『ハッハハ、まぁしょうがねぇんじゃねえか。何せ馬鹿同士だし』
言い争う烈我とライトの様子に恥ずかしくなるように顔を赤くして頭を抱える光黄と、その隣で楽しげに笑うバジュラ。
『ついでに俺からも一言。烈我の事任せたぜ。馬鹿なのは違ぇねぇがそれでも俺が選んだ、後にも先にも俺にとって生涯最高の相棒、だからな』
「!……分かった。大変だと思うが烈我の手綱を握れるのは俺ぐらいだろうしな」
『ハッハハ違ぇねぇ。でもホント、お似合いだと思うぜお前ら二人』
「褒め言葉と思っていいのか?」
『褒め言葉だよ、この上なくな』
笑いながら『さてと』と話を切り戻すように烈我の方へと向かい。
『他の連中も最後の挨拶は済んだみたいだし、そろそろ行くぞ』
『分かってますってば』
開いたゲートにキラー、エヴォル、シュオンと順に向こうへと渡り。
『光黄様、また会える日を夢見ておりますから!! その時はまた執事としてお仕えさせてくださいね』
「はは、考えておくよ」
『では、いつかまた!』
「あぁ。またな、ライト」
次にライトがゲートを潜り、最後に残るバジュラ。
『烈我、最後に俺もお前に言いたかった事がある』
「何だよ、ライトみたいな一言なら勘弁してくれよ?」
『ハッ、まぁ聞けよ。俺から言いてえのは二つ……一つ目は初めてお前の願いを聞いて笑ちまった事を謝らせて欲しい』
「んだよ、そんな事ぐらい今更だろ?」
『俺なりのケジメだよ。初めは笑ったが今日まで自分の願いを曲げる事は一度も無かった。願いを叶える為に努力し続けた事も知ってる。誰に笑われようが今日までずっと走り続けて。それがどれだけ凄い事か、俺はもう知っちまった。だからお前のそんな凄い願いを笑って悪かった』
頭を下げて静かに謝るバジュラ、彼の初めて見る姿に動揺を隠せなかったがすぐに烈我も答えるように。
「謝んなよバジュラ。俺が今日まで自分の願いのために走り続けられたのはお前のお陰でもあるんだから。お前がいたから、俺は今日願いを叶えられた! だから寧ろ、俺はお前にありがとうって言いたいんだ!」
『そうかい。お前の願いに貢献出来たのなら、それは俺にとって何よりの名誉だな』
烈我からの気持ちを受け取り笑いながら、バジュラは二つ目の言葉を続ける。
『お前の願い叶えられて良かったと思う。だからおめでとう、烈我! 心から祝わせてくれよ。相棒としてな』
「……バジュラ」
『今日までずっと楽しかったぜ。この俺が自分の怒りを忘れる程に。俺だけじゃねぇ、キラーもエヴォルもシュオンもライトも俺も、お前等のような人間と一緒に戦えた事が、一生の思い出だ』
バジュラもまたゲートへと歩み去ろうとするが、何かを思い出したようにゲートを潜る直前に足を止め。
『あ〜〜でもアレか。考えてみればお前の願い、まだ完全には叶ってなかったか。確か告白してその後結婚するまでがお前の願いだったな』
「「!!」」
思い出したかのように振り返り、結婚というワードに照れ臭そうに顔を赤くする烈我と光黄。二人の様子にやれやれと顔を竦める。
『その調子じゃまだまだ願いを叶え切るのは先の話になりそうだな。これじゃあさっきの祝い損じゃねえか』
「う、うるせぇ! 結婚自体直ぐに出来るもんじゃねえんだよ!」
『ハッ、まぁいいさ。テメェなら必ず最後まで叶え切ると信じてる。だからよ……叶え切る瞬間、改めて、祝いに行くかもな』
「!」
『無駄話がすぎた。そろそろ行く、じゃあな烈我』
最後に振り返ってお互い拳を突き出してグータッチ。それ以上の言葉はなく、バジュラはゲートの向こうへと渡り切りゲートが閉じる。
「……さよならバジュラ」
完全に見えなくなった後で小さく呟き、これまでずっと長い間過ごしてきた相棒との別れに目頭が熱くなるが。
「"祝いに行くかもな"って、お前の事だから、どうせ来るって分かってるよ。だからバジュラ……待ってるからな」
必ずいつかまた会えると、心の中で確信を持ちながら彼は囁いた。バジュラと会って続いた非日常的な日々、烈我達にとっても一生の思い出と胸に刻みながら彼等は、自分達の日常へと戻るのであった。
第48話、お読みいただきありがとうございました。
今回登場した覇雷帝龍ライトニングエンペラーの効果、チェック&チェック!!
覇雷帝龍ライトニングエンペラー/9(4)黄色/導魔、罪龍/Lv.1(1)9000、Lv.2(3)BP15000、Lv.3(4)BP18000
Lv.1、Lv.2、Lv.3「このスピリットの召喚時」
デッキの上から6枚見てカードを3枚まで手札に加えても良い。その後、手札からカードを3枚までこのスピリットの下に加える。
Lv.1、Lv.2、Lv.3【天雷祝福】「このスピリットのアタック時」
このスピリットの下にある裏向きのカードをオープンしても良い。その後、オープンしたカードがマジックカードの時、メイン又はフラッシュの効果を指定し、指定した効果はこのゲーム中、このスピリットのアタック時効果として発揮しても良い。
Lv.1、Lv.2、Lv.3【天雷祝福】「このスピリットのブロック時」
このスピリットの下にある裏向きのカードをオープンしても良い。その後、オープンしたカードがマジックカードの時、メイン又はフラッシュの効果を指定し、指定した効果はこのゲーム中、このスピリットのブロック時効果として発揮しても良い。
Lv.1、Lv.2、Lv.3【天雷祝福】「このスピリットの破壊時」
このスピリットの下にある裏向きのカードをオープンしても良い。その後、オープンしたカードがマジックカードの時、メイン又はフラッシュの効果を指定し、指定した効果はこのゲーム中、このスピリットの破壊時効果として発揮しても良い。
次回最終回、もう少しだけ彼らの物語は続きます。どうか最後までお付き合いいただければ幸いです。それではまた次回!