バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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最終話【願いの果てに】

 

────バジュラ達が烈我達の世界を去って数年。

 

バジュラ達の故郷である異世界、スピリッツエデン。オメガデッドという世界を滅ぼしかねない強大な事件を無事に終え、現在のスピリッツエデンの様子はと言うと。

 

「ちっるーん! 可愛い後輩が遊びに来ましたよ~~ッ!!」

 

スピリッツエデンのどこかの荒野にポツンと建てられた寂しげな建築物。そのドアを、場の雰囲気にそぐわない声量で開く桃色髪の女性。開いたドアの先には、自席の前の椅子に腰かけ、来客の姿を前にしても落ち着いた様子で片手に持ったカップのコーヒーを啜る人物。

 

「いらっしゃい……数年ぶりだけど、アンタは全く変わってないねチル」

 

 

彼女をチルと呼びながら出迎えたのは長く卸した紫髪に大人びた雰囲気の女性。来客に応対しながらコーヒーブレイクを決め込む様はさながら探偵事務所のオーナーを思わせるが、生憎彼女の職業は探偵ではなく情報屋、そして彼女の名はマチア。

 

「マチアさんお久しぶりです! ご指摘の通り変わる事のないただ一人の美少女後輩です! ちるーん!」

「はいはい、アンタも元気そうで何より。それで今日は何しに?」

「まぁ色々あるんですけど本題に入る前に、聞きましたよ? マチアさん遂に籍を入れたみたいで。おめでとうございます!!!」

「っ」

 

どこからソレを聞いたのかと一瞬驚いた反応を見せつつも、然程大きく反応はせずに落ち着きを払ったまま。そして否定しようとする様子もなくチルの言葉通りマチアの手には指輪がしており、さらに彼女の言葉を決定づけるように、奥から顔を出す人物が。

 

 

「マチア、客でも来てるのか?」

「知り合いがね。今丁度話題にしてた所だよ……自慢の旦那の、ね」

「ッ!!」

 

奥から顔を出したのは罪狩猟団の幹部であったヴァンの姿。顔を出すなり人前で揶揄われ、落ち着いたマチアとは対照的に顔を赤くするヴァン。事情を少し深堀るがこの数年間の間に彼が元所属していた罪狩猟団は一部の有志を除いて解散となり、帝騎の一人であった彼もまた組織を抜け、想い人であったマチアと添い遂げ情報屋として、今は二人で生活しているという訳だ。

 

「ひ、人前で揶揄うのはやめろっての! マチア!!」

「アハハ、ごめんごめん。アンタの反応が飽きなくてさ。面白くてつい、ね」

 

「ヴァンさんも変わらずなようで。にしても魅せつけてくれますね! お熱いようでヒューヒューですちる」

「チルか。お前も久々に会った割に揶揄ってくんじゃねぇ! 俺はまだ慣れてねぇんだから!」

 

「やれやれ。ウブなヴァンを揶揄うのはこのぐらいにして、で? チル、本題は?」

「はい! そうですね。シャドウさーーん!」

 

またバタンとドアが開いて誰かがやって来る。シャドウと呼ばれた人物、シルクハットに黒のマントを身に着けた見た目は映画に出てくる怪盗のイメージそのもの。

 

「オ・ルボワール! お久しぶりですね、ヴァン!」

「シャドウか。組織を抜けたお前が今更何しに来たんだ?」

「組織を抜けたのはお互い様でしょ。そう邪険にせず、怪盗である私がここに来た要件、大体察せるのでは?」

 

「ふ~ん、もしかしてコレの情報が欲しかったりする?」

 

シャドウの問いを応える前にパラパラと取り出した資料のページを開いて目の前に出すと、資料にはとある宮殿のような建物の写真が貼り出され。

 

「オフコース! 流石罪狩猟団お抱えの情報屋。話が早くて助かります」

 

「おい、俺もマチアももう罪狩猟団じゃねぇぞ」

「そっ、今は旦那と二人で気ままにやってるだけからね」

「だからその呼び方は止めろっての///」

 

また揶揄うかのようなマチアに顔を赤くするヴァンだが、切り替えるように「それで」会話を切り出し。

 

「そっちの奴は見ねぇ顔だが?」

 

ヴァンが尋ねる視線の先にはシャドウとチルの他にもう一人、金髪に派手目な黒コート、胸元に掛る雷の形を模したペンダントが特徴的な人物。

 

「ちるーん! 彼女の事ならチルが紹介しますね。彼女の名前はイカヅチさん! チルの事を想って異世界からはるばる来てくれた──ってあ痛ぁッ!!」

「な訳ねぇだろバカ!」

 

ペラペラと紹介するチルだが、言い切らせる前に手刀で黙らせるイカヅチ。

 

「今回の仕事を手伝ってって向こうの世界から無理やりアタイを連れてきたんだろうが。変な紹介してんじゃねぇ!」

「ちょっとしたお茶目なジョークなのに。ちるーん」

 

まるで漫才のようなやり取りにマチアはクスリと笑って。

 

「フフ、風の噂でチルも罪狩猟団を抜けたとは聞いたけど、まさかシャドウとコンビ、嫌、イカヅチさんだっけ? トリオで和気藹々と楽しそうで何より」

 

「オイオイ、アタイを一緒くたにするな。こっちは事ある毎にこの女に絡まれて迷惑してんだ。今回だって暇してたから渋々付き合ってやってるだけ……アンタこいつの先輩なら何とかしてくれってんだ」

「まーたイカヅチさんったらそんなこと言って。ホントはこんな美少女に懐かれて嬉しいんでしょ?」

「ハッハハハッハ、寝言は寝ていいな。なんなら寝かせてやろうか? ギドラが」

「ち、ちるーん……。」

 

 

「ゴホン、そろそろ話を戻していいでしょうか」

「はいはい。この宮殿についての情報でしょ、どうにもここキナ臭いね。既に幾つか調べは付いてるけど、色んな人間からバトルで無理やり宝を奪い取って積み上げて戦利品のように展示して、ここに住む主の欲望の象徴みたいな砦だね」

「結構。悪党が築いた宝の山なら此方も遠慮なく搔っ攫えます」

「そう。でも警備はかなり厳重だよ。おまけに腕自慢のカードバトラーもわんさか。流石に天下の大怪盗様も手を焼くんじゃない?」

「仰る通りセキュリティの突破は訳ないですが万一を考えると人手が足りないのは事実。だから今回イカヅチさんにも手伝ってもらってる訳ですが」

 

そこでと一つ提案するようにシャドウは言葉を続けて。

 

「マチア、ヴァン。よければ貴方方も今回我々の仕事を手伝っていただけませんか?」

 

唐突な提案に驚いた反応を見せるヴァンだが、マチアは口元を緩ませて。

 

「いいよ。その代わり報酬は弾んでもらうけど」

「おいマチア! お前そんな軽はずみに!」

「だって情報だけ渡して後輩に何かあっても嫌だしね。それにヴァンのカッコいい所、間近に見られるなら悪くないかなって」

「お前なぁ!」

 

頭をガシガシと搔きながら大きく溜息を吐いて見せたかと思うと。

 

「しょうがねぇ乗せられてやるよその口車に。お前がお望みならカッコでも何でもつけてやるさ」

「それでこそだよ。ヴァン」

 

 

「もうマチア先輩ってばまたお熱い仲を見せつけてくれちゃって」

「フフ、これが大人の余裕ってとこかな。羨ましいならチルも早く相手見つけたら?」

「簡単に言ってくれますね、相手と言われても……。」

 

チラリとイカヅチとシャドウを一瞥しながら。

 

「イカヅチさんかシャドウさん! 是非この超絶美少女のチルちゃんをもらってくれてもいいんですよ?」

「「パス」」

「うぇえええええ!? 何てもったいない! このチルの事を何だと──」

 

「めんどくさい女」

「仕事上の部下」

 

「酷い上にドライッ!!!」

 

イカヅチ、続けてシャドウからの回答に思わず涙のチル。

 

「ううっ、お二人にとって所詮チルはそういう認識なんですね。フーンだ。どうせチルなんか」

 

「あ~~悪かったから拗ねんなっての! 少なくともお前の事は多少面白れぇ女って評価にはしてるよ」

「右に同じく。まっ、加えて部下と言いましたがもう一つ、「頼りになる」もつけておきましょうか」

 

二人の言葉に拗ねた表情から一変、ニヤけるように頬を緩ませ嬉しそうな表情を浮かべ、チルの様に「チョロイン」と心の中で囁いたのは内緒である。

 

「さて気分も良くなった所で皆で参りましょうか! ちるーん!」

「賑やかなのは結構だけど、はしゃぎ過ぎないでよ。今更後輩の御守りはヤだからね」

 

「やれやれ、漸く仕事か。まぁアタイはギドラと暴れられれば満足だけど」

「俺も同じだ。おいシャドウ、バトルの腕は衰えてねぇだろうな?」

 

「貴方方お二人強行突破前提に考えてません? あくまで怪盗として忍び込むんですからね? まぁ怪盗業にしろバトルにしろ、どちらも後れを取るなどあり得ませんが」

 

「一流ですからね」と付け加え現場へと向かう5人。彼等もまたこの世界で、彼らなりに楽しく日々を過ごしている様であった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

舞台は変わり、とある廃墟のような場所。そこはかつて罪狩猟団と呼ばれた組織のアジトであり、元は王宮を思わせるような造りではあったがオメガデッドの事件以降は見る影もなく崩れ、現在は最低限の修復が施され、かろうじてアジトと呼べる風貌を保っている。

 

「ルディア様!!!」

 

そんな場所で、通路を駆けながら呼び掛ける一人の女性。彼女が走り寄る先には白髪で穏やかな表情の男性、彼こそ罪狩猟団のトップにして組織の創設者、ルディア。

 

「やぁディスト、その様子だと調査してる件、進展があったのかな」

「はい、プロトとシークから連絡がありました。例の人攫い集団の根城を突き止めたようです! 早速向かいますか?」

「あぁ、二人にはその場で待機するよう伝えておいて。全部僕が片付けるから」

 

罪狩猟団、かつてルディア自身が組織した集団。ヴァン、そしてディストを含めた帝騎と呼ばれる幹部を始め、情報収集から実戦までの目的に合う専門の部隊を揃えた数百名規模の大組織、しかしそれはもう昔の話。数百名いた人間の多くは組織を脱退し、現在は数名の有志のみで数は十名にも満たない少数。元帝騎であったディストは数少ない有志の一人として今もルディアと行動を共にしている。

 

話を少し戻すが、罪狩猟団の目的はバジュラ達を始めとする七罪竜と呼ばれる龍達を捕らえる事であった。だが今は違う、彼等のターゲットは変わった。

 

理由はオメガデッドによる脅威が無くなり平和となった一方で、この世界の闇と言える部分はまだ根深い事。オメガデッドの件以降、表立った事件は起こっていないがそれはあくまで表面化していないだけ。むしろ数は以前よりも目に見えて増加し、その為、罪狩猟団は狩るべく対象を七罪竜から罪人へ、標的を変えて事件の対処にあたっている。今の彼らはこの世界にとって、自警団的な役割を担っているという訳だ。

 

 

「ルディア様、私もご一緒に」

「……危険だよ。それでも来るのかい?」

「当然です! 例えどこだろうと私は生涯ルディア様にお供しますから」

「ディスト、何度も言うけど僕はもう組織のリーダーでは無いし君も僕の部下な訳じゃない。命令する権利も無ければ僕への忠誠も必要ないし、君に"様"付けで呼ばれる程もう偉くもないよ。僕はただの──」

「いいえ!」

 

ただの愚か者、己の罪を振り返って口にしようとするルディア。だが喉元まで出掛かった言葉をディストは真っ向から否定した。

 

「ルディア様、誰からも必要とされなかった私を必要としてくれたのは、他でもない貴方です。貴方に出会えて私は救われたんです」

「分かってる筈だよ。僕が君を必要としたのは、君の力を利用しようとしていたからだ。もっと言うと、僕は君や他の人達を使える駒程度にしか考えていなかった。

目的の為に利用出来る者は何でも利用する、あの頃の僕にはそんな考えしかなかった。だから怨みこそあれ感謝される事なんて僕には」

「それでもですよ」

「!」

「貴方が私を利用しようとしているのは百も承知でした。全て承知の上で私がそれを望んだんです。だから昔からずっと私は貴方を怨んだ事など一度だってありません。目的がどうあれ、貴方が必要としてくれたから私は救われた。それが事実です。それに」

「それに?」

「今はもう、ルディア様に私達を利用しようなんて気持ちはないでしょう? 私達の事を心から信頼してくれている。ならば私達も同じくルディア様を信じ最後までついていくだけです。誰かに命令された訳じゃない、これは全て自分達の意志で決めた事です」

 

ディストからの言葉に、ルディアは無言のまま数秒。

 

「……ハァ、ホントに君には敵わないよ。分かったよ、その代わり無理はしないでね」

「はい!」

 

観念したように折れるルディアだがその表情はどこか嬉し気に笑っており、ルディアの表情にディストもまた嬉しそうに微笑む。

 

「ねぇ、ディスト……君には感謝してる。こんな僕について来てくれる事を」

「私には勿体なきお言葉です。ルディア様」

 

信頼を寄せるように互いに言葉を交わしつつ、「行こうか」と切り替えて彼等は件の罪人達の元へと向かう。この世界の平和の為に、そして己の罪を償う為に。

 

「さぁ狩りの時間だ! 咎人を裁きに行こうか。同じ穴の狢としてね!」

 

 

 

 

 

 

意気揚々と誘拐犯達のアジトへと赴いたルディア達であったが、辿り着いた先で彼等は目を疑った。

 

「これは、一体?」

 

呟いた視線の先には犯人と思われるグループが軒並み捕縛されており、逆に攫われていたであろう被害者と思われる人達は既に解放され彼等もまたルディア達同様、今の状況に困惑している様子だった。

 

「すみません、攫われていた被害者達というのは貴女方でしょうか」

「は、はい。そういう貴方達は?」

「貴女方を助けに来ました。もう一つ、犯人達の確保を……と思っていたんですがこれは、貴女方が?」

「いえ違います。外が騒がしいと思って様子を窺ったら既に」

「そうですか。とりあえず無事でよかった。攫われた人達はこれで全員ですか?」

「はい。あの我々はこれからどうすれば」

「安心してください。全員我々が安全に元の場所まで送り届けますので」

「ありがとうございます、何とお礼をすればよいのか」

「いえ、僕達はただ、やるべき責務を全うしてるだけなので礼は不要です。ディスト、彼等を案内して」

 

被害者達の安全の確保をディスト達に一任し、現場に残るルディア。彼等が無事でひとまず安心だが肝心の謎は残る。一体誰が犯人達を打倒したのか。

 

「う、うぅっ……」

「!」

 

呻き声に反応し視線を向け、グループの主犯格と思われる大柄な男が目を開けて周囲の状況を確認するようにあたりを見回し、すぐ傍のルディアと視線が合う。

 

「な、何だテメェ……テメェも彼奴らの仲間か?」

「仲間? 僕等以外に誰かこの場所に来たのかい?」

「ッ……あぁ、目つきの悪いツンツン髪の男と背の小さい女の二人組だよ。俺等全員バトルでボコボコにされちまったよ」

「ツンツン髪の男? 背の小さい女の子? それって……!」

 

男の発言に対し少し考えるように頬を突くが、直ぐに分かった様子で一人納得したように口元を緩ませるルディア。

 

「そっか、彼等の仕業か。ハハッ、どうやら彼も人知れず僕等と同じ道を辿ってるのか」

「おい、何ブツブツ言ってやがる。結局テメェもあの二人の仲間なのかどっちなんだ」

「仲間……か。直接彼に言ったら怒られそうだけど少なくとも僕はそう思ってるかな。この世界の平和を願う同じ志を持つものとして」

「はぁ? テメェ何訳分かんない話を?」

「君が知る必要はない。それより本題、早速君等全員を僕達の組織まで連行させてもらうよ」

「なっ!? 俺等をどうする気だ?」

「安心したまえ。二度と悪さする気が起きないように更生するまで全員面倒を見てあげる。何ならバトルだって僕が受けて立ってあげるよ」

「!!?」

 

にこやかに笑うルディアだが、その表情から漂うのは並々ならぬ強者としてのプレッシャー。滲みよる彼の凄みに圧倒され次第に男はルディアの笑顔の圧に押され、恐怖に表情を引き攣らせて。

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!!」

 

 

 

***

 

 

 

 

「ふふふ、どうやら彼奴等全員懲らしめられたようじゃの。被害者達も保護されたみたいだし、これで一件落着じゃな」

「ミコ、もういいだろ。俺等は先を急ごうぜ」

「うむ。行こう、ドレイク」

 

少し離れた場所で遠くからルディア達の様子を眺める二人組、噂の当人である背の低い少女と目つきの悪いツンツン髪の男性、元罪狩猟団帝騎であるミコとドレイク、ルディア達より先に犯人を打倒したのは他でもない彼等二人であった。

 

「でもドレイク、久々にボス……じゃなくてルディア達に挨拶しなくて良いのか?」

「挨拶って俺と奴等はそんな仲じゃねぇだろ」

「けど」

「心配しなくても、いずれまた会う機会ぐらいあるだろうさ。顔を合わせるのは別に今じゃなくていい、今はただ、俺等のやりたい事をやろうぜ」

「……うん! そうじゃな!」

 

彼等のやりたい事、それはこの世界の全てを旅して回る事。物心着いた頃から奴隷として飼われ、次はルディアの部下として過ごしてきた彼等、その日常に自由という物はなかった二人。けれど組織を脱退し今はもう二人は枷はない、今後どうするべきか、どうしたのかと考えた際に頭に浮かんだのが、世界中の旅であった。

 

組織にいた頃はそんな事を考えた事もないであろう。任務で色んな場所を訪れる機会はあったがあくまで作戦優先でそこに何があるかなど知ろうとする事もなければ観光などという発想に至る訳もない。まだまだこのスピリッツエデンという世界で自分達の知らない場所の方が多い。

 

そして知らないからこそ知りたい、そう思い立ったらもう欲は止まらない。自分の知らない世界を見てみたい。知らない町、知らない風景、知らない景色、その全てを自分の足で訪れたい、自分の目に収めたい。それがミコの願いとなり、ミコの願いにドレイクも付き合うことを決めたのだった。

 

「ドレイク、妾はこうして世界を、何よりドレイクと一緒に旅できる事が本当に嬉しい。でも妾に付き合ってもらってばかりで、ドレイクの願いはないのか?」

「別に。俺に願い何て大層なもんはねぇよ。強いて言うなら」

「強いて言うなら?」

「……やっぱ止めだ。口にする程の事じゃねぇ」

「え~~っ!! そこまで口にしたなら教えてくれてもいいのじゃ、ドレイクのケチ!」

「うるせぇなぁ。恥ずかしいだろ一々口にするのも」

「もう相変わらず照れ屋じゃのドレイクは。でも妾はドレイクのそう言う所が好きじゃけど」

「お前はもう少し自分の台詞に照れを覚えろ!」

 

悪態をつくような態度を見せながら溜息を吐くが、ミコはお構いなしといった具合で楽しそうに笑っている。

 

「ほら、そろそろ次の町だぜ」

「おっ! 次はどんな所か楽しみじゃ。早く行くのじゃ、ドレイク!」

 

話を切り替えるように地図を見ながら前方の方角を指差し、見えてくる街の景色に心を弾ませ駆けていくミコ、そんな彼女の後姿を見ながら。

 

「(……俺の願い、実はもう叶ってるなんて言ったらどんな顔するんだろうな)」

 

ドレイクの願い、それは。

 

 

 

 

「(ずっとお前の傍にいたい。……ハッ、ンなこと口が裂けても言える訳ねぇか。俺の柄じゃねぇし何より)」

 

少なくとも言うべき時は今じゃない、と小声で呟くドレイク。ならば伝えるべき時はどんな時か、決まっている。その時の事が頭に浮かんでドレイクの頬が少しだけ緩む。

 

「ドレイク、早く早く! 置いて行ってしまってもいいのじゃ?」

「ったく燥ぎ過ぎなっての! ほら待て、ミコ」

 

追いかけっこの様に前を走るミコの後を追うドレイク。スピリッツエデンにて笑顔で過ごす彼等の姿は平和になった世界の証そのものである。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

舞台は再び変わってスピリッツエデンから元の地球へ。バジュラ達が去ってから数年、パートナーであった烈我達の現在はと言うと。

 

「うわぁーーッ!!! 寝坊したあああああああ!!!」

 

朝早い時間、とある家から聞こえる絶叫の声。階段をドタドタと降り早朝から騒がしい人物、天上烈我である。

 

「つーか何で姉ちゃん起こしてくれねぇかったんだ!!!」

 

慌てて身支度する烈我の傍らには「待ってられないので先に行ってきます。('ω')ノ」と顔文字付きの書置きが残されており、既に書置きは目を通した後のようで「よりにもよって主役を置いていくか普通ッ!」と怒鳴り声を上げている。

 

「ヤバいヤバい! とりあえず必要なものはこれ良し!! 早く行かねぇとッ!!」

 

必要最低限の身支度を済ませて家を飛び出す烈我、普段から慌しい烈我だが今日は何時の倍増しであり、こんなにも彼が焦っているのには勿論理由があり、その理由とは。

 

 

 

 

『ヘイ、そこの色男! 乗ってくか?』

「ミナトッ!?」

 

家を飛び出してすぐ目の前に停泊しているオープンカー、掛けたサングラスを持ち上げながらナンパ紛いに声を掛けるのは彼の友人である牙威ミナトの姿。

 

「よぉ、烈我。久しぶりだな」

「烈我さん、おはようございます!」

 

「ガイトと星七まで。何で三人ともここに?」

「そりゃ俺達全員お前の門出を祝いに来たに決まってるだろ。ともかく急いでるんだろ、早く乗れよ」

「お、おぉ。そうだった!」

 

4人乗りの後部座席に乗り込み「じゃ飛ばすぜ!」とエンジンを掛けてある目的地へ向かう彼等。

 

 

 

「いやぁ。それにしても助かったぜミナト」

「全く。よりにもよって一番大事な日に寝坊するなんて……まっ、お前らしいっちゃあお前らしいけど」

「だ、だってさ」

「大方楽しみすぎて眠れなかったって所か。今日のお前と光黄ちゃんの結婚式が」

「ギクッ!」

 

そう、今日は烈我と光黄の結婚式であり、ミナトの言葉が図星だったのか口篭る烈我の様子に三人とも笑っている。

 

「な、何だよ皆して。笑う事ないだろ!!」

「はは、まあ気持ちは分からんでもないがそれでもこんな大事な日に遅刻は御法度だぜ、何せ一生もんのイベントだからな」

 

「これ先輩からのアドバイスな」と後部座席の烈我に向けて腕を翳し、彼の手には指輪が嵌められていた。

 

「先輩って、一昨日に式上げたってだけだろ」

「アハハハ! 細かい事気にしてたら光黄ちゃんに嫌われるぜ」

「余計なお世話だっての!!」

 

車を走らせながら他愛もない会話の烈我達、これもまたいつもの光景である。

 

「しかしまあミナトの次は烈我か。お前ら見てると俺も少しばかり羨ましいなんて思ったりしないでも」

「僕は憧れますね。心から信頼できる人と僕も結ばれたいって思いますもん」

 

「おっ、ガイトも星七もその気なら今度紹介しようか?」

「ハハハ、お前の紹介は癪だから結構だ」

 

ミナトからの提案に対してガイトは一蹴。二人の様子に苦笑いしている星七は烈我の方を見ながら。

 

「僕達の話はとりあえず置いておいて、烈我本当におめでとうございます。少し気が早いかもですが先にそれだけ言わせてください!」

「おぉ、ありがとな星七。でも今日みたいな日が来るなんて正直今でも、夢みたいな気分だぜ」

「夢というなら、それを叶えたのは間違いなく烈我自身ですよ。だから誇ってください! 僕達はそれを心から尊敬してますから」 

「!」

 

星七の言葉に同意するようにうなずくミナトにガイト、彼らの言葉を感慨深く思いながらもう一度「ありがとな」と、明るく笑う烈我。

 

「見えてきた。そろそろ着くぜ」

 

気付けばもう目的地である教会が視界に映り、あっという間だった感覚を覚えながら無事式場前に辿り着く一同。何とか式の開始前に間に合い、時間的には少し余裕があるぐらいだ。

 

「いやぁ〜、ほんとに助かったぜ! 送ってくれてサンキュー、ミナト」

 

「礼は良いから早く行ってこい! 今日の主役はお前なんだからな!」

「楽しんで来いよ。主役!」

「僕達はこれで。また後で会いましょう」

 

ミナト達と一旦別れ、烈我は彼等とは違う方向、光黄の待つ元へと向かい、道中絵瑠とバッタリ会う。

 

「あっ、絵瑠!」

「!……烈我! どうやら間に合ったみたいだな」

「まあ何とか」

「さっきまで光黄と話してて、烈我の事だからもしかしたら遅刻するかもって言ってたんだ。私は流石に今日は大丈夫だろうって返したが思った通り杞憂だったな」

「あ、あはは……そ、そりゃ大事な日だしな!!」

 

遅刻しかけていた事など言える訳がなく思わず額に汗が流れ、居畳まれず話題を変えようと「光黄の方は?」と話を振る。

 

「光黄なら向こうの部屋で待ってるぞ。ミナト達ももう着いてるんだろう? なら私は一旦そっちに行こうかな」

「おぉ、また後でな」

 

絵瑠と別れて、烈我は光黄の部屋の前へ。軽くノックして「どうぞ」と彼女からの返事を聞いてから烈我は部屋の扉を開けて。

 

「光黄……待たs──!」

 

部屋へ入って彼女の姿を見た途端思わず硬直する烈我。大きく驚く訳でもなく目の前の白いウェディングドレス姿の彼女に頬を染めて。

 

「……天使」

「いきなり何を言ってるんだお前は」

「ハッ! ご、ごめん。あまりにも綺麗でつい」

 

素直すぎる烈我の言葉。胸が熱くなるような感覚だが今はもうソレを無理に隠す必要は無く、彼女も素直に受け入れるように笑って。

 

「褒め言葉として受け取るよ。ありがとう、烈我」

「!……そういう所も可愛い! ドレスも似合ってて天使みたいだし、もう今すぐ結婚したい!」

「今から披露宴するだろ、このバカ!!」

「あ痛ッ!!」

 

前言撤回、上限なく褒め続ける烈我に対して全部受け入れる程余裕は無い。照れるように顔を赤くしながら手刀で烈我を黙らせ、昔と変わらない二人の姿がそこにあった。

 

「それにしても、何とか遅刻せずに無事来れたみたいだな」

「あはは、それさっき絵瑠にも言われたよ。こんな大事な日に遅刻なんて──」

「お前の事だから今日が楽しみすぎて眠れなかった、なんて言いそうだと思ってな」

「うぐッ!!」

 

図星である。ミナト同様に光黄にとっても烈我の事など百も御見通しであり、「大方ミナト達に乗せて来てもらったんだろ」と詳細まで言い当てる彼女に、烈我も観念するように「ハイソウデス」と答えた。

 

「光黄、怒ってる?」

「……別に。ホント、お前らしいと思っただけだよ」

 

呆れる素振りを見せながらも、すぐに口元を緩ませ優しげな表情で。

 

「それに、俺も同じだったから」

「同じって?」

「今日が待ち遠しかったって事だよ。昨日からずっと、嫌……昔からずっとこの日が来るのを待ってたからな」

「光黄……ホントに、今まで待たせてごめんな」

「いいよ。だってその分、幸せにしてくれるんだろ?」

「あぁ……あぁ!! 勿論!!! 生涯ずっと俺が光黄を幸せにして見せるから!!」

「うん。なら俺は信じるだけだ。他でもない俺の好きな、烈我の言葉だから」

 

改めてお互いの気持ちを確かめ合いながら満面の笑顔で笑う二人だが、そこへコンコンと再びドアをノックする音が響く。

 

『お二方お揃いでしょうか? そろそろ開演致しますので準備の程、よろしくお願いします』

「「!」」

 

スタッフからの声。気づけばもう披露宴までの時間が迫っていたようで気持ちを切り替える二人。

 

「行こうぜ、光黄!」

 

烈我から差し出される手、頷きながら彼女はその手を握り締めて。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『それでは、新郎新婦の入場です!』

 

司会らしき人物からの言葉、式場のドアが開き、腕を組みながら入場する烈我と光黄の二人。二人の姿を参列している全員が祝福するように拍手で出迎え、ミナトや絵瑠、ガイトに星七も心から拍手を送り姉であるるみかは感極まった様子で泣きながら二人を祝福。皆からの祝福に対して烈我と光黄はただ、眩しく思う程の精一杯の笑顔で拍手に応える。

 

 

 

『新郎、天上烈我、貴方はここにいる天上光黄を妻とし、何時如何なる時も彼女を愛し敬い慈しむ事を誓いますか?』

「はい、誓います!」

 

嘘偽りのない言葉。光黄にも牧師から同様に問われ、彼女も真っ直ぐに「誓います」と堂々と宣言し、二人の返事に、牧師は満足げに頷きながら。

 

『それでは、誓いのキスを』

「「!」」

 

牧師からお互いへ視線を移す二人。光黄に顔に掛ったベールを静かに捲り上げて見つめ合いながら。

 

「じゃ、光黄」

「ん」

 

小声で囁き互いに胸の鼓動が早くなるのを感じつつも距離を縮めて、そのまま唇を重ね合わせる。

 

 

「おめでとおおおお! 烈我! 光黄ちゃん!!」

「ヒュー! ヒュー! 二人ともお熱いぜーーっ!!」

 

キスを終えてすぐるみか、続けてミナトからお祝いの声、他の参列者達に絵瑠や星七、ガイトも加わってもう一度惜しみなく拍手喝采を送って二人の門出を祝い、照れ臭くなりながらも皆に手を振りながら答える烈我達だが。

 

「!」

 

瞬間、手を振りながら辺りを見回した際に視界に飛び込む光景に烈我は目を見開いた。視線の先には式場の窓、窓の外で式場の様子を見ている6匹の龍達の姿が。

 

「(アレって……!!)」

 

目の前に映った姿を疑うように、目を擦りながらもう一度窓の外に視線を向けるが、再度窓の外を見た時には映っていた筈の龍の姿はそこにはなかった。

 

「……」

「烈我、どうかしたか?」

「い、嫌。何でも」

 

そう彼女に応えながらもやはり先程見えた光景が気になる様子。窓の外に映っていたのは幻か、もしくは見間違いだったのだろうかと考えるが。

 

 

 

『(今度こそ見届けたぜ、お前の願い)』

「!?」

 

瞬間、脳内に響く声。その声は烈我にとって最も聞き慣れた声であり。

 

『(おめでとう、相棒)』

 

端的な一言、それだけ伝るとその懐かしい声が聞こえる事はもう無かった。けれど彼にとっては充分過ぎる程のお祝いだった。

 

「どうしたんだ? 嬉しそうな顔して」

「……いや、こうして皆から祝福されるのが心底嬉しくてさ。それに、一番の相棒からも祝ってもらったし!」

「それって──」

 

烈我の言葉の意味を察してる反応を見せる彼女だが、皆までは言わずただ彼女も笑って「そうか」と返事を返す。

 

「なぁ光黄、俺多分世界一幸せだと思う。こうして願いを、俺の夢を叶えられたんだから」

「俺もだよ。烈我、お前と出会えた事が俺にとって、一番の幸せだ」

「ありがとな光黄、これからも、ずっと俺の傍にいてほしい」

「喜んで」

 

幼い頃から描いた願いを、夢を叶えた二人。波乱万丈だった彼等だが今日でその物語はお終い。数多くの人間と、そして6匹の龍達が祝うハッピーエンドの物語。

 

幸せとなった二人の物語の続きはまた、別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






7Guilt本日ついに完結いたしました!!!!!!!
色々語りたい事はありますが、まずはこれを読んでくださってる皆様、本当に! 本当に!!ありがとうございます!!!


7Guilt、始まりは2020年1月から始まり完結まで5年以上、途中から更新が途絶え読んでいただいてた読者様を長くお待たせし大変申し訳ありませんでした。でもどうにか完結まで辿りつけた事、今は自分で自分を褒めてさせてください。ただの自画自賛でしかないのですがホントに途中から書き切る自信を無くしていたもので。( ;∀;)

途中から更新が途絶えた事には言い訳がましいですが、私自身がバトスピを触っていない期間が増え、最新のカードプールについていけなくなったり、モチベの低下など……。
色々と構想を考えたりはしてたんですが、それを文字に出力せず他の趣味に没頭したり、仕事を言い訳に小説自体に着手する機会が激減したことが主な理由です。

こんな失踪間近な状態だったんですが、自分の小説を時折読み返すことがあり、この7guiltの作品に対して貰った感想や積み上げたの話を見返した時にやっぱり最後まで完結させたいという思いが自分の中で強くなりました。

いただいた感想や読んでくれている読者の存在は誇張表現無しで私の原動力となり、外伝、キャラ紹介も含めた70話以上を書ききれたのは皆様のおかげです。激震の勇者ですら全部合わせて45話ぐらいだったのにここまで書けたの事に私自身が驚いてます。




さて最終回を終えて、これまでを振り返り漸く烈我と光黄が結ばれ、そしてゴールインで締めくくる形となりました。第1話から想い続けて結ばれるまで本当に長かった。結ばれてホント良かったと親のような気持になります(´;ω;`)←

7guiltについてなんですが、私の好きなジャンプ漫画で「ニセコイ」という作品がありまして、ずっと一途に思い続けている相手と最後に結ばれる。そういう王道の恋愛展開がとても好きで、それとバトスピ要素を絡めた作品を作りたいなと思ったのがそもそもの始まりです。イメージしたヒロインは勿論読者には筒抜けだと思うので言う必要はないでしょうか(笑)
主人公だけでなくミナト、ドレイク、ヴァンなどそれぞれの想い人と行方を書くのもとても楽しかったです。今回最終回で上手く締め括れたと思ってもらえればそれが何よりの喜びです。

バトル要素はメインのオリカである七罪竜達。激震の勇者でもそうでしたが、元々こんな効果があったらいいと構想するのは楽しく、とはいえゲームバランスを壊し過ぎないように配慮し匙加減の調整は苦労しましたが、そんな苦労も楽しい思い出の一つでした。
激震の勇者からのハイドカードも今作に絡める事が出来、書き上げた作品がどこからしらで次の作品に繋がるのはとても感慨深く感じてしまいます。
7guitもまた何かしらのバトンを次につなげたいと思ってます。

で肝心の次の作品なのですが、正直まだ未定です。一応プロットは練りつつあるのですがまぁ期待半分でお待ちいただければ。


長くなってしまいましたが改めてもう一度7guiltを読んでくださった皆様、誠にありがとうございました。7guiltについてまだまだ語りたい事がありますが長くなるのでそれはまたtwitter(Xなんて認めない←)とかでしたく思います。次の作品についても含めて。

それでは皆様、機会があればぜひ次回作でお会いしましょう!
ぜひ今後ともよろしくお願い致します。


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