S級3位“奇跡の殺戮者”キャロル・マールス・ディーンハイム   作:空飛ぶ柴犬

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ゲーム大会なので、あの人が登場します。


ゲーム大会

『キャロル選手の勝利です!』

 

「ふっ、ほら見ろ造作もない。オレにかかればゲームなど、児技に等しい」

 

 ポチモンとかいうゲームの大会でオレは順調に勝ち抜いて準々決勝まで足を進めた。ストラップとやらは準決勝まで残った4人に与えられるらしいから、あと一回勝てば手に入る。まぁ、この分だと楽勝だろう。

 

 しかし、なぜゲームの大会を山の中のキャンプ場でしているのだ? ゲームなんてインドアの代表みたいなものを……。

 あの二人は知らない間に通販でテントを買って持ってきてるし……。泊まらないぞ、こんなところに。

 

「渾身のドヤ顔をしてるところ申し訳ないのですが、児技に等しいじゃなくて、本当に児技なんですよ〜。マスター」

「相手の子は小学3年生ですわ。マスターがそのお姿で良かったと初めて思いました」

 

 ガリィとファラはオレが子供を相手に本気でゲームで戦っていることに対して苦言を呈している。最近、こいつらオレのことを敬ってないような気がするのだが……。

 

「う、うるさいな。お前ら……。年齢など関係あるか。知り合いには確かに出くわしたくないが……」

 

 しかし、こんなところでゲームなどしているところを誰かに見られるのは抵抗があるな。タツマキとか、如何にも喧嘩を売ってきそうだ。

 そんなことを考えていると、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「あーっ! キャロルさんだ! お久しぶりです!」

 

「――っ!? お前は童帝!?」

 

 オレに声をかけてきたのはS級6位のヒーロー、“童帝”。10歳にしてS級ヒーローとなった、いわゆる天才というやつだ。

 発明家らしく、自らが発明した機械を使って戦っている。変わり者が多いS級ヒーローの中ではバングと同じくマトモな感覚を持ち合わせているから、ヒーロー協会としては貴重な存在だろう。

 

「嫌ですよ、マスター。いたいけな少年に対してそんなことを仰っては」

「マスターがこのくらいの年齢の方を性の対象として見ていらしたとは……。まさか、ショタk――」

 

 ガリィとファラはドン引きしたような表情でオレのことを見てくる。

 なんだ? お前ら、何を勘違いしている?

 

「違うわ! ヒーローネームだ! そういう名前のヒーローだ! ファラ、お前はどこでそんな言葉を覚えた!?」

 

 オレはあらぬ誤解をしている二人にこういうヒーローネームだということを伝える。なぜ、オレは必死にこんなことを言わねばならん? ファラはネットサーフィンばかりしてると思ったが、不要無用のことばかり覚えているな。

 

「こちらが、キャロルさんの開発したという自動人形(オートスコアラー)。良くできてるなー。僕の知らない技術がいっぱい」

 

 童帝は発明家らしくオートスコアラーに興味があるようだ。異端技術と錬金術を駆使しているからな。見たところでわからないだろう。

 

「童帝……、お前はここに何しに来たんだ? まさか、ゲームの大会か?」

 

「うん。自動でゲームのモンスターを育成するプログラムを開発して、その試運転で来たんだ。ゆくゆくは、ヒーローたちのパワーアップトレーニングに応用しようと思って作ったんだけど」

 

 童帝はプログラムだか、何だかを試すためにゲーム大会に出たらしい。ゲームと現実の人間の育成はまったく違うと思うが……。若い奴の考えはよくわからん。

 だが、天才と呼ばれるこいつがゲームが下手くそだとは思えない。組み合わせ次第では油断が出来ないな。

 

「なるほど。面倒なヤツが参加してきたものだ。当然、勝ち進んでいるんだろ?」

 

「いやそれが、負けちゃって。あーあ、せっかく上手く作ったと思ったのに」

 

「なんだ。負けたのか」

 

 意外なことに童帝は既に負けているらしい。拍子抜けだな。身構えて損をした。

 

「相手が悪かったんだけどね。まさか、()()()がゲームも強いなんて知らなかったよ」

 

()()()? まぁいい。オレは決して負けん」

 

 相手が悪いと言い訳をしているが、誰が相手でも負ける気がしない。圧倒的な戦力でオレは挑んでいるからだ。

 

 

『準々決勝を行いますので、勝ち残った選手はステージにいらして下さい!』

 

「キャロルさん、頑張ってください!」

 

「ふん。言われるまでもない」

 

 雑談をしていると、準々決勝が始まる時間になった。童帝は呑気にアメを舐めながら、オレを応援すると言っていた。

 子供に応援されるとは、オレも丸くなったものだ。こんな人間が世界を一人で相手取ろうとしていたなんて、笑わせる。

 

「子供からは慕われているんですね〜。マスター」

「しかし、S級ヒーロー童帝……。あらゆる兵器を開発する技術者としての側面もあるとあります。そんな方が子供ばかりいるゲームの大会で不覚を取るでしょうか?」

 

「天才と言っても所詮はお子様だ。ミスくらいするだろう。それに――子供ばかりと言っても大人も参加していているみたいだ」

 

 ファラは童帝のことをさっそくネットで調べて、ヤツを打ち破った者について懸念するが、オレは脅威と思っていなかった。

 発明家で天才と言っても、所詮は子供だ。大方、ケアレスミスでもしたのだろう。

 オレは子供たちに混じっている、帽子を深く被った大柄な男を見つけながら、問題ないと口にする。

 

「あーら、マスターの他にも大人気ない人って居たんですね〜」

 

「いちいち、オレを引き合いに出すな。しかし、あいつどこかで……」

 

 ガリィの嫌味にイラッとしながら、大柄な男に見覚えがあると記憶を探っていた。

 

『準々決勝、第一試合! キャロル選手VS匿名希望選手です!』

 

 その大柄な男とは準々決勝で早々と対戦することになった。そして、オレは男の正体をすぐに知ることとなる。「ドッドッドッ」という独特の音がオレの鼓膜を刺激したからだ。

 

「――こ、この音はまさか……!」

 

「よ、よろしく」

 

「よろしくではない! なんでお前がここに居るんだ! キングっ!」

 

 そう、オレの相手は地上最強の男……、S級ヒーローの“キング”だった。なぜ、童帝といい、こいつといい、子供だらけのゲーム大会に参加してるんだ? いや、童帝は子供だからまだいい。こいつはどう見たって20代後半から30代前半くらいだろう。

 “キングエンジン”が煩い! たかがゲームに殺気をむき出しにするな!

 

「きゃ、キャロル氏。静かに……。俺はただ、その……」

 

「訳が分からんが、地上最強の男とゲームで手合わせするとはな。だが、オレは負けんぞ」

 

 オレは相手がキングだろうとゲームで不覚を取るとは思ってなかった。もちろん戦闘でも負ける気はないが……。

 オレのパーティーは最強クラスのモンスターで固めてあり、技も強い技ばかり覚えさせている。負けるなどあり得ない――。

 

 

『勝者! 匿名希望選手!』

 

「びっくりするくらいの瞬殺でしたね〜。マスター。キャハハハハ」

「ガリィちゃん。傷を抉るようなことを言ってはなりません。意外とショックを受けていますから」

 

 試合が終わってオレはガリィに嘲り笑われ、ファラには何とも言えない悲しそうな表情をされていた。

 馬鹿な……、いとも簡単に負けてしまったぞ。キングのヤツ、どんなインチキをしたんだ……。

 

「な、なぜだ! オレは最強のステータスで最強の技を使うモンスターを用意したんだぞ! 負ける道理などあるものか!」

 

 オレはゲーム機を叩きつけたい衝動に駆られている。こんな不条理が許されてなるものか。

 なんで、負けたのか到底理解できない。この命題はどうやって解決すればいいんだ?

 

「いや、キャロル氏のパーティーは確かに強いけど、典型的な厨パーティーなんだよね。だから、ちょっと上級者ならみんな対策してるし、逆にカモにしてるくらいだよ。でも、ゲーム自体のセンスは悪くなかったから、練習すればきっと強くなる」

 

 するとキングはオレの敗因をペラペラと口にする。何だその、“ちゅうぱーてぃ”って。訳のわからん用語を使うな。

 ヤツの言ってることを推測するに、どうやら、オレの出す手駒を読んでいてその対策を事前にしていたとのことらしい。この男はゲームでも容赦なくクレバーさを発揮して敵を蹂躙するタイプみたいだ。

 

 サイタマとはまた違う強者のオーラを感じる。常にノーガードでスキだらけなのも、相手を油断させるための作戦なのか? とにかく食えんヤツだ。こういうのは敵に回したくない。

 

「勝った途端に饒舌になるな! くそっ、ストラップが……」

 

「ああ、ストラップが欲しくて大会に来てたんだ。可愛いよね。ミルちゃんストラップ。じゃあ、これあげるよ。俺は何個も持ってるから」

 

 オレがキングに敗けたせいでストラップを手に入れられないことを嘆いていると、なんとキングはポケットからおもむろに“ミルちゃんストラップ”を取り出してオレに手渡してきた。

 なんだ、こいつは? 何故これをオレに渡す?

 

「お、オレに施しを与えるつもりか!?」

 

「う、うん。いや、要らないならいいんだけど」

 

「要らんとは言ってない」

 

 キングは特に見返りを要求したりしなかったので、オレは素直にヤツからストラップを受け取る。

 わからん。こんなことをして、こいつに何の得があるというのだ? キングとは情の欠片もない戦闘狂ではなかったのか?

 

「マスター、きちんとお礼を仰ってはいかがですか?」

「そーですよ。マスター。敗者なのにお情けで商品が貰えたのですから」

 

 ファラとガリィはオレにキングへ礼を言えと促してくる。言われなくても礼儀くらい弁えてる。お前らはオレのママか! まったく、口煩くなったものだ。

 

「わかっておるわ! キング、すまなかったな。恩に着る」

 

 オレはキングに礼を言った。これで、あの子供にストラップを弁償することが出来る。

 

「いや、いいよ別に……。俺には他に目的があって来ただけだから」

 

「目的?」

 

 オレの礼を聞いたキングは自分には別の目的があると口にした。遠い目をしながら。

 なんだ。こいつから感じる覇気は……。何が目的なのだ? 

 

 オレの疑問はすぐに晴れる。何故なら、キングが覇気をむき出しにした刹那――悲鳴が聞こえたからだ。

 

「きゃああああっ!」

 

 悲鳴が起きた理由は明白だった。

 山の木々の中から怪人が次から次へと現れ、キャンプ場にいる人間に襲いかかろうとしてたからだ。

 

 そうか。キングがこの大会に出ていたのは、いち早く怪人たちがここを襲おうとしていることを察知していたからか。

 この男の力は世界中に知れ渡っている。ゆえに、キングが近くにいるということが知れれば怪人は警戒してしまうだろう。

 

 ヤツは正体を隠してゲーム大会の参加者の中に紛れ、虎視眈々と怪人が出現する気配を探っていた。悔しいがオレは気付くことが出来なかった。

 

 なるほど、確かにキングとは腕っぷしが強いだけのヒーローとは違うな。あのタツマキですら一目置くだけはある。

 

「ガリィ、ファラ、久しぶりに暴れてこい。あの程度の怪人。お前らで十分だ」

 

「仰せのままにマスター」

「はーい。ガリィ頑張りまぁす♡」

 

 このままヤツにだけいい格好をさせるのは癪だと思ったオレはガリィとファラに木の中から出てくる、昆虫みたいな怪人を倒すように命じた。

 

 ファラは攻防一体の風の鎧を身に纏いながら、ソードブレイカーで怪人たち切り刻み、ガリィは地面を凍らせて滑りながら氷の槍で次々と怪人を貫く。

 

「ええっ!? キャロルさんのオートスコアラーってあんなに強いの? 普通にS級並の戦闘力があるように見えるんだけど」

 

 童帝はオレのオートスコアラーの力に驚いている。まぁ、無理もないか。あいつらの戦闘能力はこの世界ではほとんど披露していないからな。

 あまり見せつけると面倒なことになりそうだからオレが出張って戦ってる訳だし……。

 

「当たり前だ。あいつらはオレの最高傑作だぞ。その辺のヒーローに後れを取るように作っとらん」

 

 今回はキングの手前、特別にガリィとファラにも戦闘に参加させた。ヤツが神経を研ぎ澄まして、怪人の出現を察知したのだから、倒すことまでヤツ任せにしていては、ストラップを貰ったオレの立場がない。

 オレが全て片付けるくらいのつもりで戦わなくては……。

 

「――あら? おやりになりますわね」

「へぇ、ガリィの攻撃に耐えちゃうんだぁ」

 

 そろそろオレも手を出そうとしたとき、怪人たちのボスみたいなのが、出てきた。

 

 カブトムシやクワガタみたいな黒いメタリックボディをしており、腕が六本で、頭は刃物みたいに鋭い角が二本生えている5メートル程の大きさの怪人だ。

 

 ガリィやファラの攻撃を防ぐとはなかなかやるじゃないか。

 

「だーはっはっは! 俺様は山岳王! 山の帝王だ! 風の噂で深海王が世界を獲るために動くと聞いた。だが、そんなことはさせん。この山岳王様が世界の覇者に――。――ぎゃあああああっ!」

 

四大元素(アリストテレス)……」

 

 ベラベラと喋る山岳王とかいう怪人に、オレは炎を浴びせる。山岳王は大声を上げて苦しんだが、硬い鎧のような羽根で自分の身を守る。

 

「ひ、人が喋ってるときに攻撃など仕掛けて来るとは卑怯なり! クソガキがぁあああっ!」

 

 山岳王はオレを睨みつけて、こちらに向かって羽根を羽ばたかせながら飛びかかってくる。

 “クソガキ”……、だと? こいつ、調子に乗りやがって……。

 

「虫の分際で王を自称すること自体が図々しい。その上、オレをクソガキだと? 頭が高い……、潰れろ――虫けら……!」

 

 オレは超重力子の塊をカウンターの要領で山岳王の口の中に放り込む。

 

「ぴぎゃああああっ!」

 

 情けない声を上げながら、山岳王は球体になり、そして握り潰したトマトのように血を吹き出して、ぐちゃりと地面に落ちた。

 意外とグロテスクだな。生物系の敵にこの技は控えよう……。

 

「うへぇ、キャロルさんは重力まで操るんだ。タツマキさんと似た系統の能力まで使えるなんて……」

 

「タツマキに似たような、だと? やはり、こんなイメージが悪くなる技は使わんことにしよう」

 

 さらに童帝のタツマキに似ているという言葉を受けてオレはますますこの技が嫌いになった。そういえば、超能力でそんなことをしていたな、あいつ。

 

「あれぇ、マスターってイメージとか気にされてたんですかぁ?」

 

「黙れ! 品行方正で通っとるわ!」

 

「しかし、騒ぎが大きくなりましたね。大会は続けるのでしょうか?」

 

 ガリィのムカつく言動の相手をしていたら、最後の怪人にトドメを刺したファラがこのパニック状態では大会どころではないだろうと口にする。そりゃ、そうだろう。大会の主催者もどこかに避難しているしな。

 

「えっ? じゃあ優勝商品のどきどきシスターズとのコラボ版ポチモンは……」

 

「さすがはキング。戦いが終わってもなお、自分の設定を忘れずに演技を続けるとは……」

 

 結局、大会は中止となり誰もストラップをもらうことは出来なかったらしい。オレはキングに負けてストラップを手に入れたことは結果的には良かったこととなる。

 キングは迫真の演技でがっかりとした顔を披露している。まったく、この男の徹底ぶりには驚かされる。

 

 こうして、オレが参加したゲーム大会は幕を閉じた。

 それにしても、こんな小さなゲーム大会にS級が3人も集まったか。まぁ、嫌いな連中ではないから、ストレスは無かったが……。

 

 

 しかし数日後、オレは嫌いなヤツと組まされて仕事をする羽目になる。ヒーローとは割に合わん仕事だな……。

 

「なんで、この私がこいつと一緒に仕事をしなきゃいけないの!」

「それはオレのセリフだ! ちっ、来るんじゃなかった――」

 

 よりによって、タツマキとペアを組まされるなんて……。厄年なのか? 今年は――。

 

 




小学生にゲームで勝って嬉しそうにするキャロルが書きたかっただけの回。
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