S級3位“奇跡の殺戮者”キャロル・マールス・ディーンハイム   作:空飛ぶ柴犬

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タイトル通りのタツマキと一緒に戦うことになったキャロルの話。


キャロルとタツマキ その1

『A市で頻発している神隠し事件……、また被害者が出た模様です。今月に入って15人目、警察は捜査本部を作り捜査にあたっておりますが、解決の見通しはついておりません』

 

「最近、多いですわね。誘拐……」

「ガリィはマスターが買い物に行く度に心配してますよ〜。キャハッ」

 

 テレビで連日起きているらしい誘拐事件の報道を見て、ファラとガリィがそれに反応する。ガリィは人をおちょくるのだけは上手くなっているな。イライラする……。

 

「お前らが言われた物以外も買ってくるから、オレが買い物に行っているのだろうが。――ん? 誰か来たようだ。オレは今、手が離せない。ガリィ見てこい」

 

 オレはレイアとミカの修復作業を行いながら、テレビの音だけを聞いている。そんな中でインターフォンの音が鳴ったので、オレはガリィに玄関に行くように命令する。

 

「はーい」

 

 ガリィは返事をして玄関へと向かっていった。ここには、宅配便くらいしか来ないが何か買った覚えもない。バングが来るってこともないだろうし……。

 

「レイアとミカは、まだかかりそうですか? マスター」

 

「そうだな。八割といったところだが、金も足りなければ、設備もパーツも足りない。どうしても、まだ時間はかかる」

 

 ファラの質問にオレは答える。ファラたちはチフォージュ・シャトーで壊れた状態のままこちらの世界に転移していた。

 ファラとガリィは比較的に損傷が軽く、容易に修復出来たが、レイアとミカはそうはいかなかった。重要な器官を修理するためには色々と足らない物が多いからだ。

 だから、少しでも節約をして金を――。

 

「マスター! 通販で買っておいた、55型の4Kテレビが到着しましたよ〜。リビングに置いておきますね〜」

 

 ガリィは喜々として新しい大型のテレビを買ったと言って、バカでかいテレビをリビングに置いた。こいつ、本当に消し飛ばしてやろうか?

 

「おい! 誰がそんな値段の張るテレビを買えと言った!? 金が無いといつも言ってるだろうが! くそっ、なぜオレはガリィの復活を後回しにしなかったんだ!?」

 

 よくよく考えればファラだけ直して、性根の腐ったこいつは最後にしてやれば良かった。ガリィは悪運が強いのか、最も損傷が軽かったから、つい最初に修理してしまったのだ。

 

「割と本音で仰っていますわね……」

 

「嫌ですよ〜、マスター。ホントはガリィのこと好き過ぎて照れ隠ししてるだけなのに」

 

「人工知能に蜘蛛の巣でも張ってるのかお前は! 誰がお前のことなど――」

 

 オレの発言に若干引いているファラと的外れなことを嘯くガリィ。

 まったく悪びれないガリィにイライラが募って来たとき、ヒーロー協会から支給された通信機器が鳴り出す。

 

「鳴っていますわ。ヒーロー協会からの呼び出しでしょうか?」

 

「ちっ! しかし、緊急招集は応じるとボーナスが入る……。是非もないか……。家を空ける。くれぐれも無駄遣いするなよ。振りじゃないからな」

 

 ファラの言うとおり、ヒーロー協会はオレに緊急出動要請を出していた。

 オレは2人に留守番を頼み、家を出ようとする。この2人、特にガリィの浪費癖が不安で仕方ないが……。

 

「はーい。ガリィお留守番頑張っちゃいまーす♡」

 

「ファラ! わかってるだろうな!? 連帯責任だぞ!」

 

「しょ、承知しました。マスター……」

 

 だから、オレはファラに念を押した。自信なさげに返事をしてくれるな。頼むから……。

 それにしても、A市にあるヒーロー協会の本部に招集とは珍しい。余程の事態と見える。

 オレはヒーロー協会本部へと向かった――。

 

 

「招集に応じていただき感謝する。君でないとこの案件は処理できないと協会上層部は判断した」

 

「セキンガルか。幹部の貴様が出てくるとは、余程の案件らしいな。災害レベル“竜”でも現れたか?」

 

 オレを出迎えたのはセキンガル。若いがヒーロー協会の幹部だ。噂によると出世欲の塊で上層部などに媚を売りまくって今の地位に着いたと聞く。

 こいつがわざわざ出てくるということは、自分の出世にも影響があるってことだな。

 

「いや、災害レベルはまだ計測しかねている。しかし事態は切迫しており、迅速な行動が必要だ」

 

「なんだそれは? 災害レベルもわからんのにオレを呼ぶとは……。招集したのはオレ一人か?」

 

 S級ヒーローをわざわざ指名して招集するということは、通常だと災害レベル“鬼”以上の案件だ。

 災害レベルもわからないということは、敵の正体も掴めておらず、漠然としている状態ということ。

 それにも関わらず、オレに力を借りたいと言ってくるのには何か裏がありそうだ。

 

「君ともう一人、S級ヒーローに来てもらっている。“マスター・キャロル”。君はそのヒーローとタッグを組んで事態の解決に向かって動いてほしい」

 

「S級がもう一人? まぁよかろう。オレの足を引っ張らないことだけは祈っておくがな」

 

 しかも、セキンガルによればS級ヒーローがもう一人居るという。ますます妙だ。どんな案件にS級を2人も使おうと言うのだ?

 

「安心しろ。腕は確かだ。この部屋に待たせている。入ってくれ」

 

「わかった」

 

 腕が確かだというS級ヒーローが待つ部屋にオレは入る。視界には最も見たくない緑色のカールした天然パーマと黒のスリットスカートが入ってきた。

 はぁ、よりによってこいつか……。

 

「キャロル・マールス・ディーンハイム……!? あなた何しに来たの?」

 

 部屋に居たのは“戦慄のタツマキ”。人を指差すな。甲高い声で喚くな。うるさいやつだ……。

 

「セキンガル! 貴様……! どういうことだ!? これは!?」

 

 オレはタツマキがいることに関して、セキンガルに言及する。

 気に食わないヤツだが、こいつの戦闘能力はオレに近いと言ってもいい。つまり、ヒーロー協会は敵の戦力もわからんのにも関わらず最高戦力を用意しているのだ。まったくもって不可解だ。

 

「ん? どういうことと言われても。今回の一件は“マスター・キャロル”と“戦慄のタツマキ”、両ヒーローにペア組んで解決してもらうつもりだ」

 

「なんで、この私がこいつと一緒に仕事をしなきゃいけないの!」

「それはオレのセリフだ! ちっ、来るんじゃなかった――」

 

 セキンガルが当然というようにオレとタツマキがペアで動けと言ってきたので、当然オレは反発する。こんな短気で自意識が強い女と仕事などやってられるか。

 

「おいおい、喧嘩をするな。君たちに暴れられるとメタルナイトの設計とはいえ、ここも只じゃ済まない」

 

 セキンガルがようやくオレとタツマキの相性が悪いということに気が付いたらしい。鈍い男だ。こんなのが出世してるようじゃ、ヒーロー協会も長くは保たんな。

 

「ふん。時間が惜しい。さっさと案件の内容を話せ。一刻も早く解決したい」

 

「そうね。こんな仕事、一瞬で終わらせて帰らせてもらうわ」

 

 オレとタツマキは一応、話を聞くことにする。とはいえ、ヒーロー協会がわざわざオレたち2人を呼び出すほどの案件だ。

 どんな事態なのかは興味がある。災害レベルがわからないというのも怪しい話だ。

 

「言われんでもそうするさ。こっちも上から急かされているんでな。案件というのは、ここのところA市で頻発している神隠し事件のことだ。知っているか?」

 

「テレビや新聞での情報くらいなら。最近やたらと報道されてるからな」

 

「小学生くらいの女の子が何人も攫われていてる誘拐事件でしょ。そんなの警察の仕事じゃない。わざわざS級のヒーローが2人も必要だとは思えないけど」

 

 A市で先月の終わり頃から頻発している女児誘拐事件。通称、“神隠し事件”と呼ばれるこの事件は連日のようにテレビで放送されていた。

 この事件の不可解な点は、白昼堂々と人が消えることみたいだ。それはもう煙のように一瞬で……。

 身代金目的でないことから、性犯罪者の犯行とも言われているが、犯人は未だに特定出来ておらず目的も定かではない。

 

 しかし、不思議な事件ではあるが、たかだか誘拐。タツマキの言うとおりS級ヒーローのオレたちが出るような案件ではない。

 

「それがそうもいかないんだ。理由は2つある。1つは攫われた中にヒーロー協会へ多額の寄付をしてくれた富豪の娘が2人もいること。そして、もう1つは警察官の死者が数十人単位で出てしまったことだ」

 

「死者、数十人……。それは、この神隠し事件と関係があることは確かなのか?」

 

「もちろんだ。なんせ死んだのは全てこの事件の捜査本部の関係者だからな。しかも警察署内で、会議室に集まった警察官を外の誰にも気付かれずに、だ」

 

 セキンガル曰く、この事件を捜査している警察官が数十人単位で殺されたとのことらしい。こちらも白昼堂々の犯行らしいが、誰にも気付かれずにやってのけたのだそうだ。

 

「怪人の仕業だということか?」

 

「警察はそう断定している。そもそも、我々と警察の関係はそれほど良くない。しかし、今回ばかりは珍しく向こうが泣きを入れてきたよ。上はこれを材料に取引しようと思ったらしいが、先の富豪の娘の件もある。こちらに全ての情報を提供するという条件でこの案件をヒーロー協会が預かることになったんだ」

 

 なるほど、その寄付をくれる富豪と警察の両方に恩を売りたくて、この案件に熱を上げているということか。

 オレも守銭奴だが、協会はもっと金を欲しがっているみたいだし……。

 

「何よそれ。結局、小物の相手じゃない。キャロルはともかく私のする仕事じゃないわ」

 

「セキンガル、認めたくないがこればかりはタツマキの言うとおりだ。――そこで、貴様に聞きたい。オレたち2人を招集した理由はまさか、おとり捜査をさせるためか?」

 

 タツマキの言うとおり、それでも本来はオレたちに回す仕事じゃあない。

 だがらこそ、オレはピンときたのだ。オレたちを誘った理由は強さではない、と。いや、強さだけではないと言った方が正確か。

 

「おとり捜査? キャロル、あなた何を言ってるの?」

 

「あまりこういうことは言いたくないが、お前とオレの共通点……。それは、なりが実年齢よりもかなり若く見られることだ」

 

「――っ!? セキンガル! まさか、私に小学生のフリをしろとでも言うの!?」

 

 タツマキにオレとの共通点を述べると、ヤツはようやくヒーロー協会の思惑に気が付いたようだ。タツマキは大声を上げて、セキンガルを睨みつける。

 そう、連中はオレとタツマキに小学生のフリをさせておとり捜査をさせようと考えて招集した。金持ちに尻尾を振るために……。

 

「お、落ち着いてくれ。私とて、こんな指令を出したくて出してるわけじゃないんだ」

 

「そうか、認めるんだな。オレたちをおとりに使おうとしていることは」

 

「み、認める。認めるから、頼むから2人とも落ち着いてくれ!」

 

 セキンガルはオレとタツマキに睨まれて、汗を滝のように流して腰を抜かしそうになっていた。オレたちがこういう反応をすることを読めてなかったのか? 見通しの甘いヤツだ……。

 

「私は寛大だけど、妹を虐めるヤツと私を子供扱いするヤツが大嫌いなの。知ってるわよね?」

 

 タツマキは全身からエネルギーを放出させながら、怒りを顕にする。本気でセキンガルを攻撃するつもりか? 別にオレは構わんが……。

 

「わ、わかっている! タツマキやキャロルが不快な気持ちになることくらい! しかし、人命をこれ以上失わないために、迅速にこの事件を解決するためには! 高い能力を持ち合わせて、なおかつ敵を誘き寄せることができる君たちが最も適任なんだ! 頼む、私に出来ることなら何でもする! だから、今回だけは、飲み込んでくれ! ヒーローを動かすのが私の仕事だ。引くわけにはいかない!」

 

 セキンガルは震えながらもオレたちに向かって啖呵を切る。ふむ、保身しか考えてないだけの愚図ではないか……。

 

「ちっ、こっちにもプライドがある。それを切り売りするんだ。ボーナスを3倍にしろ。それで手を打ってやってもいい」

 

「二度とこの女と2人で仕事を組ませるようなことをしないと誓いなさい。それで、今回だけは大目に見てあげるわ」

 

 オレとタツマキは互いに条件を出して、この案件を受けることを了承する。人の命が奪われているなら、ヒーローとしての活動をしないわけにはいかんだろう。

 ボーナス3倍は当然の要求だがな。あと、タツマキの要求は願ってもないことだ。

 

「ああ、2つとも約束しよう。それでは、さっそく任務にあたってくれ」

 

 セキンガルはオレたちの条件を飲むと口にして、仕事をしろと声をかける。こういう仕事はこれっきりにさせてもらいたい。

 

「おとり役は分かったが、何をさせる気だ?」

 

「童帝みたいなランドセルを背負えとか言うんじゃないでしょうね?」

 

「私も命は惜しい。上はそれを望んだが、私は反対した。そんなことをしても無意味だからな。実は警察の捜査によると、神隠しに遭った子供たちにはある共通点があったのだ」

 

 ランドセルなど背負えなどと言ったら、ヒーロー協会と縁を切ろうと思っていたが、どうも違うらしい。警察は何か手がかりを掴んでいたということか。

 

「「共通点?」」

 

「そうだ。攫われた子供たちはみんなその前にある場所に行っていた。君たちには、まずその場所に向かって行ってほしい」

 

 セキンガルの指示により、オレとタツマキは攫われた子供が共通して行っていたという場所に向かわされた。それはA市の外れにあるという、総合アミューズメント施設――。

 

 

『♪近頃〜、何だか〜、変だ〜 ♪変だ変だよ、ヘンダーランド〜 ♪嘘だと思うならちょいとおいで〜』

 

「よりによって、遊園地か……」

 

 愉快な格好をした着ぐるみが踊る様子を見ながらオレは既に疲れを感じていた。

 

「こんな子供っぽいところ来たのは初めてだけど……。全然興味が持てないわ」

 

 タツマキはというと、オレと同じく不満を漏らしているが、どうも様子がおかしい。そわそわしながら、辺りを見渡している。

 オレも遊園地など初めて来たが、そんなに珍しいと感じるものか?

 

「その割にはキョロキョロしてるではないか。まさかとは思うが、遊びたいのか?」

 

「ふざけないで! 誰が観覧車に乗りたいって!?」

 

 ――どうやら、こいつは観覧車に乗りたいみたいだ。まったくもって、何を考えているのかよくわからん。

 

「いや、オレはそこまで言ってないが……。まぁ、確かに高い所から全体を見渡して見るのもいい。空中浮遊なんて目立つことはなるべくしたくないからな」

 

「し、仕方ないわね。一緒に行ってあげるわ」

 

「…………」

 

 悪態をつきながら観覧車へと歩いていくタツマキ。オレは先が思いやられると感じながら、それに続く。

 

「――っ!?」

 

 ――嫌な気配を感じるな。覗き込むようなねっとりとした視線を……。どこから見ているかはまだわからんが……。

 

 面白い。オレに干渉してくるとはいい度胸だ。その代償は高くつくということを教えてやろう――。

 

 




キャロルとタツマキの遊園地デートが書きたくなっただけのお話。如何でしたでしょうか?
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