S級3位“奇跡の殺戮者”キャロル・マールス・ディーンハイム   作:空飛ぶ柴犬

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キリが良いところがなくてかなり長くなりました。
すいません。


キャロルとタツマキ その2

「あんまり面白いもんじゃないわね。喜々として乗ってる奴らの気がしれないわ」

 

「5回も乗れば誰でも飽きる。はしゃぐな、みっともない」

 

 タツマキとオレは観覧車に5回ほど乗って、今に至る。オレはこいつの自由さ加減に早くも辟易していた。

 

「それにしても、この中の客は子供ばかりなのね」

 

「近くの幼稚園や小学校が遠足で来てたりするからじゃないか? この場所が怪人の本拠地だとしたら、ここを作った目的は子供を集めることだろうからな」

 

「だったら、この場所ごと吹き飛ばして更地にすればいいじゃない。わざわざ囮なんて手を使わなくても」

 

 タツマキはテーマパークを一気に破壊すれば良いとか口にする。

 この女、本当にヒーローなのか? 自分の言ってることを理解してるとは思えない。

 

「お前はどうしてそんなに短絡的な思考しか出来んのだ。災害レベルすら分かってない正体不明の敵だぞ。確たる理由もなく攻撃して、間違っていたらヒーローの存在意義すら問われるではないか」

 

「甘いわね。日和ってる間に被害が増えたら、それこそ何の為のヒーローってなるじゃない」

 

「誰が日和ってるだと? オレは極めて常識的な意見を述べただけだ。この場所が怪人の本拠地で確定であることぐらいわかっている」

 

 タツマキは決断を迷う前に行動しなくては意味がないと言うが、オレはそうは思わん。

 力押しで行って良い場面とそうでない場面があるからだ。

 しかし、この場所こそが誘拐犯の本拠地であることはわかっていた。

 

「あら、遊んでいただけじゃないのね。不愉快な視線を送ってくる奴らには気付いていたんだ」

 

「当たり前だ。お前が何度も観覧車の上から奴らの気配を探ろうと必死だったってこともな」

 

 タツマキが何度も観覧車に乗っていたのには理由がある。この女も禍々しい視線には気付いていた。だからこそ、その気配の在り処を探っていたのだ。

 

「失礼ね。場所くらい1回目で特定出来てるわ」

 

「はぁ? では、5回も観覧車に何故乗った?」

 

 こいつ、無駄に4回も観覧車に乗ったというのか? やはり、訳のわからんヤツだ……。

 まぁ、どちらにしろ敵の居所は知れた。早く倒せばもう帰れる……。

 

「そ、そんなのあなたに言う必要ないでしょ。とにかくお遊びはここまで。私にこんな下らない仕事をさせた怪人をさっさと倒――」

 

「ジェットコースター楽しかったなー」

「もう一回乗ろうよ」

 

「…………」

 

「言っとくが、ジェットコースターには乗らんぞ」

 

 オレは顔を少しばかり紅潮させて、考え込むような仕草をしているタツマキに忠告した。

 オレたちは遊びに来ているのではないんだ。ジェットコースターになど乗る時間はない。

 

「誰が乗りたいって言ったのよ! さっきから文句ばっかり言って!」

 

「お前が物欲しそうな顔をするからだ」

 

「し、してないわよ! 眼科に行ったらどうかしら?」

 

「もういい! お前と会話していたら日が暮れる! とにかく、敵の本拠地はあの城で間違いない」

 

「そんなこと得意気に言わなくても知ってるわよ」

 

 今日何度目かの言い争いに疲れたオレは一刻も早く怪人を倒そうと誓う。

 話が通じなさすぎる。サイタマもそうだが、なんでこう戦闘能力が高いやつは人の話を聞かないんだ……。

 

 オレたちは気配を感じ取った場所である城をモチーフにしたアトラクションの場所へと向かった。

 そこは、立入禁止となっていたがそんなこと関係ない。オレたちは構わず城の中に入った。

 

 すると、人相の悪いシルクハットを被りタキシードを着た男がオレたちの前に立ちふさがる。

 

 

「お嬢ちゃんたち、すまないね。このアトラクションはまだ一般開放してないんだ。ここから先は立入禁止だから、他のところで遊びなさい」

 

「趣味が悪いわね」

 

「これは、手厳しいお嬢ちゃんだ。デザインが気に食わなかったかな?」

 

 タキシードの男は苦笑いしながら、こちらへと歩いてくる。タツマキはそれを腕を組みながら、ギロリと睨んでいた。

 この男の正体にヤツも気づいているのだろう。

 

「そうじゃないわよ。あんたみたいな三流怪人の変装が趣味が悪いって言ってんの。それで、正体を誤魔化しているつもり?」

 

「怪人? はっはっは。おじさんはこの夢の国のヘンダーランドの番人さ。ちょっと変わった格好をしてるけどね」

 

「気色の悪い話し方を止めたらどうだ。お前からは怪人特有の臭いがする。臭くて敵わん……」

 

 ヘンダーランドの番人とか言っているこの男は怪人だ。さすがにオレも怪人を数多く屠っているから臭いくらいは嫌でも覚える。

 夢の国とは笑わせてくれるじゃないか。

 

「だから何を言って――。ぐわぁああああっ! く、首が捩じ切れるっ! お、お前、何者だ! 小学生じゃ……、ぐぐ……」

 

「私の知名度もまだまだね。まぁ、だからこそ、この場所が分かったんだけど」

 

「がぁああああっ! くそっ、くそっ、つい変身を解いちまった! このことがバレたら、マカオ様とジョマ様に何と言われるか……!」

 

 タツマキの超能力による攻撃で男は狼男のような見た目の怪人へと姿を変える。見た目も3流っぽいな……。

 

「マカオとジョマ? そいつらがお前らの親玉の名前か?」

 

「誰が教えるか! ここから先は通さ――っ!? ぐびゃあああっ!」

 

 オレは怪人に質問したが、タツマキがそのまま首を捩じ切ってしまったので、何も聞けずしまいだった。指一本動かさずして、敵を倒すのは確かに大した力だが……。

 

「タツマキ! 早く倒しすぎだ。敵の情報を少しでも手に入れてから――」

 

「私に指図すんじゃないわよ。どうせ、こんな小物怪人じゃ何も分からないわ」

 

「ちっ、勝手な奴め。少しは集団行動をだな」

 

「私に説教しないでくれる? このやり方でずっと勝ってきたんだから。間違いないのよ」

 

 オレが怪人から情報を手に入れたかったと苦言を呈すが、ヤツはまったく悪びれない。

 この女は圧倒的な個の力で今まで勝ち続けて負けたことがないから、それが正しいと信じている。

 

「オレも一人で戦っていた。しかし、そのやり方には限界がある。いつか見下していた者に足元をすくわれるぞ」

 

「――それは、あなたが弱いからよ。キャロル。誰かに助けてもらおうなんていう考えで、ヒーローなんて出来ないわ」

 

「そうか……。――言い争っても平行線を辿るだけのようだ。先に進むぞ。タツマキ」

 

「だから、私に指図するなって言ってるでしょ。生意気なやつね」

 

 一人で戦うことにオレはいつしか慣れていた。そして、世界をそのまま相手取り敗北した。

 敗けた理由は確かにタツマキの言うようにオレが弱いからだ。だが、お前もいつかわかる。気に入らなくても手を取り合わなくてはならん時が来るということを――。

 

 

「――ったく、いつもなら吹き飛ばして終わりなのに。面倒な仕事……」

 

「今回の怪人の賢しいところは、まさにそれだろう。人が集まる場所をわざわざ自らのテリトリーとして作るという行為は今まで見たことがない手口だ」

 

「ヒーローを警戒してるってこと? いざとなったら人質をとって」

 

 ヘンダーランドの建設が怪人によるものだとすると、そのやり方は悪辣だと言える。

 ヒーローは一般人に被害が出ないように細心の注意を払っている。

 わざわざ人が集まる場所を作り、そこを本拠地にするという発想はヒーローの弱点をついていると言えるだろう。既に子供を攫っていることも含めて……。

 

「それくらいは考えるだろうな。オレたちの姿をこうして今も監視して、なお逃げ出さないところを見ると、捕えた子供を人質にする可能性は高い」

 

「陰湿で卑怯ってことは分かったわ。そういう奴が1番嫌いなのよね」

 

 タツマキがオレの言葉を聞いて、連中についての評価を口にしたとき――。

 低い声がオレたちに向かって話しかけてきた。

 

「あら、ジョマ。私たちったら、酷い言われようよ。人質を取るなんて姑息な作戦をするようなやつって思われてるわ」

「この子たち、私たちがウルトラスーパー強いって可能性を考えてないのかしら。ねぇ、マカオ」

 

「――っ!? お前ら、どこから現れた!?」

 

 オレたちの背後をとったのは、丸刈り頭の金髪でダイヤのマークが入ったバレエ衣装を着ている男と、団子に結った紺色の髪とハートのマークが入ったバレエ衣装を着ている男の二人組。

 金髪がマカオと呼ばれて、紺色の髪の方がジョマと呼ばれていた。こいつら、オレたちに気付かれることなく、背後を取っただと?

 

「気持ちの悪い奴らね。不愉快! 死んで!」

 

「「ピルエット……!」」

 

 タツマキは床のタイルを超能力で浮かして、そのままマカオとジョマにぶつけようと飛ばす。奴らはクルクルと回転しながら、タツマキの攻撃を躱す。

 

「上手く躱してくれるじゃない。それなら、直接! ど、どこに消えたの!?」

 

「「アラベスク……!」」

 

 さらにタツマキが先程、狼男を倒したときのように直接、超能力で攻撃をしようとすると、マカオとジョマは片足を上げるポーズをとって忽然と姿を消してしまった。

 

「あらあら、元気なお嬢ちゃん」

「私、暑っ苦しいのダメなのよね。やっぱり、男の子も女の子もクールじゃなきゃ」

 

「テレポートか!? そういえば、警察官も誰にも気付かれず殺されたと聞いたが」

 

 マカオとジョマは天井に逆さまになって立ちながら、オレたちを見下ろしていた。

 奴らはどうやらテレポートを使えるらしい。なるほど、白昼堂々と誰にも気付かれずに誘拐や殺人が出来るはずだ……。

 

「やっぱり、陰湿で卑怯じゃない! だけど、テレポートくらいで調子に乗らないことね」

 

「うふふっ……、ねぇマカオ聞いた? 今度は陰湿だって」

 

「嫌だわ。こんな美しい魔女をつかまえて、陰湿って。可愛いお嬢ちゃんたち、ようこそヘンダー城へ。ほら、そんな怖い顔しないで、仲良くしましょう」

 

 タツマキに凄まれても連中は余裕の表情を崩さない。というか、ベタベタくっついて気持ち悪い奴らだな……。見ていて不快でしかない。

 

「お前らが神隠し事件の犯人だな? 残念だったが、オレたちは捕まったりはせんぞ。ノコノコと現れてくれてよかった。探す手間が省けたからな」

 

「さっさと捕まえた子を解放しなさい。そうしたら、苦しまずに殺してあげるわ」

 

「可愛い女の子たちの想い出のエネルギーを集めようと思ってあんたたちにも目を付けていたけど、ヒーローだったのね。あんたたち」

 

「もっとも、私たちは無敵だから、ヒーローだろうと何だろうと関係ないけど。あんたたちの想い出も頂くわよ」

 

 マカオとジョマの目的は女児の想い出の力だという。奴らは錬金術師なのか? とても、そうは見えんが……。

 それにしても、ヒーローでも関係ないとは大きく出たじゃないか。必ずや、後悔させてやる。

 

「ほう。想い出の力を手に入れるときたか。お前たちは錬金術師なのか」

 

「魔女って言ってるでしょ。魔法使いよ、キュートな魔法使い」

 

「つまり、こういう力があるってこと……。――“スゲーナ・スゴイデス”!」

 

 オレの質問に奴らは自分たちを魔女だと自称する。魔法だと? そんなものは聞いたことがない。

 しかし、マカオが股間のダイヤからトランプを取り出して呪文のようなものを唱えると、トランプから光が照射されて、光の中から2体の怪人が現れた。

 

 なんだ、今の現象は……。錬金術と似ているが、物理の法則を完全に無視している。

 

「あら、この深海王を呼び出したのは、どこの誰かしら?」

 

「我は地底王! 我を呼び出したのは、貴様らか?」

 

「怪人が召喚されただと?」

 

「ふん。弱そうな怪人がいくら出たところで、関係ないわ」

 

 2体の怪人が現れて、オレたちは身構える。深海王の名前は聞いたことがあるな。少し前に騒動を起こして倒された災害レベル“鬼”の怪人。

 マカオとジョマは魔法とやらで怪人を蘇らせたとでも言うのか? だとしたら、恐ろしい力だぞ……。

 

「深海王ちゃん、地底王ちゃん、やっちゃいなさい!」

 

「敵の力も能力も未知数……。まだ完全に修復は出来てないが……」

 

「雑魚は引っ込んでなさい!」

 

「「――っ!?」」

 

 オレはファウストローブを身に纏い、鋼鉄よりも遥かに硬い糸で深海王を締め付けて、そのまま身体を千切り倒す。

 タツマキは超能力で地底王の四肢を捻り切って、床のタイルを超高速で頭にぶつけて、首を吹き飛ばした。

 

「あらあら、瞬殺されちゃったわ」

「驚いた。結構強いじゃない。あんたたち」

 

「キャロル、何その格好? あなた変身なんて出来たんだ」

 

「ファウストローブだ。また、怪人を召喚されては面倒だ。さっさとやるぞ」

 

 タツマキがファウストローブを身に着けたオレを訝しげに見る。

 前に無理をしたせいで、ファウストローブの出力が安定しないので、オレは自分の大きさを変えずにファウストローブを身に纏った。

 全力は出せんが、こいつらを倒すくらいこれで十分だろう。

 

 さっき、魔法とやらで出てきた怪人を倒した感じだと、とても災害レベル“鬼”だと思えないほど弱かった。どうやら、蘇らせたのではなく、偽物を創り出したという方が正解みたいだ。

 しかし、アミューズメント施設内に何匹も怪人を生み出されたら面倒なことになりそうだ。

 

「無駄よ。私たちには決して攻撃は当たらないわ」

 

「なぜなら、このヘンダーランド内は私たちの完全な庭。攻撃の意志を感じたら、自動的にテレポート出来るの」

 

「まさに絶対防御の無敵の能力」

 

 マカオとジョマは絶対の余裕からなのか、ペラペラと自分たちの能力を説明する。

 なるほど、ヘンダーランドの中では自動的にテレポートが発動して攻撃を躱せる仕様なのか。

 

「やっぱり、ここを更地にするしかないじゃない! それなら攻撃が避けられようが関係ないわ!」

「馬鹿なことを言うな。子供たちが捕まっているんだぞ!」

 

 タツマキが苛つきを隠せずに過激なことを口にするので、オレは声を荒げる。

 こいつ、なんでヒーローをやれているんだ?

 

「喧嘩している暇があるのかしら?」

「今度はもっと強い奴、呼んじゃうわよ。――って、あれ? トランプがない!?」

 

「攻撃の意志がなければ、簡単に隙がつけるのね」

 

 オレはタツマキに呆れていたが、この女は思っているよりもしたたかだった。

 言い争いをしていると見せかけて、超能力でマカオからトランプを盗み出していたのだ。

 まんまとオレも騙されてしまっていた。油断も隙もあったものではない。

 

「絶対防御の自動テレポート能力か。しかし、それはこの空間限定。ならば――あの連中の真似をするのは遺憾だが……」

 

 オレはかつてチフォージュ・シャトーで戦った3人の錬金術師どもの創り出した迷宮を思い出し、それを再現しようとした。

 

「えっ? なによ、何これ!?」

「あっ!?」

 

 オレたちとマカオとジョマはオレの作った巨大な迷宮の中に入りこむ。これも攻撃ではないから、テレポートは発動してないみたいだな。

 自力でもテレポートを使えるのだから、早く使えば良かったものを……。もう手遅れだ。

 

「ダイダロスの迷宮を擬似的に再現してやった。本家ほどの大きさはないが……」

 

「ちょっと、キャロル。ここはどこなの? あなた、何をしたのよ?」

 

「説明が面倒くさい。ここはオレが作り出した脱出不能の迷宮だ。奴らの自動で回避するテレポートはここでは使えんはず。しかし、長くは保たん。あとは任せる」

 

 この迷宮は空間を形成する概念が異なるので、テレポートなどで脱出は不可能というか、使用は出来ない。

 とはいえ、オレはこの迷宮を作るので手一杯。マカオとジョマを倒すのはタツマキに任せるとしよう。

 

「任せる? あなたがそんなことを……」

 

「タツマキ、お前の性格は気に入らんが、オレは誰よりもお前の力は信頼してる」

 

「ふ、ふん。仕方ないわね。私がトドメを刺すところをそこで見てたらいいわ」

 

 タツマキは強い。オレは一度もこいつのことを好いたことはないが、それだけは認めている。

 攻撃が当たるなら、魔法とかいう未知の力が相手でも負ける道理はない。

 

「トランプは奪われたけど、私たちはそんなものが無くっても魔法くらい使えるのよ」

「手加減はもうしてやらない。くらいなさい!」

 

 マカオとジョマは四大元素(アリストテレス)のように強力な炎と氷を繰り出して、タツマキに向かって放つ。

 

「なんだ。魔法って言うから期待してたけど、私の超能力のほうが強いじゃない」

 

「うそっ!?」

 

 しかし、炎も氷もタツマキの手前で停止してしまう。ヤツの超能力に支配されたからだ。

 忌々しい力だ。聖遺物も使わずに20代の人間がこれだけのパワーを持っているのだから……。

 

「返してあげるわ」

 

「こんなのテレポートで簡単に躱せるわ」

 

「「ぎゃああああっ!」」

 

 マカオとジョマはテレポートを使って躱そうとしたが、それが出来ないのがこのダイダロスの迷宮だ。

 概念天井によって形成されたこの空間を瞬間移動など出来ない。

 

「当たったわ。ふうん。本当にテレポートは使えないのね」

 

「だから何よ! テレポートが使えなくても、あんたたちくらい。踏み潰してやるんだから」

 

「マカオ、踏み潰すなんてはしたないわ。でも、私たちの力をナメないほうがいいわよ」

 

 マカオとジョマは手と手を取り合い、バレエのような動きをしながら、まだ戦意を喪失していなかった。

 しかし、もう終わりだな。今ので格付けは終了した……。

 

「ナメないほうがいいのは、あなたたちよ。ここなら、私が本気で暴れても誰にも被害が及ばないんだから」

 

「「ひぃっ!!」」

 

 タツマキはこの空間を存分に活かして戦うことが出来る。本当に遠慮なく暴れおって……、もう少しで巻き添えをくらうところだったではないか……。

 

 

「一瞬で決めたな」

 

「当然よ。あんな雑魚に手間取るはずないじゃない」

 

 タツマキはマカオとジョマを原型が残らないほど粉々にしてしまった。その徹底ぶりは、まさに“戦慄”の二つ名に相応しい。

 あとは、連れ去られた子供を助けるだけか……。

 

『こーんな強い奴らと戦うなんて、や~ってらんないわ! もっと弱そうな奴らしか居ない世界をもらうとしましょう!』

 

「トランプのジョーカーが……」

 

「消えたわね。まさか、あれが本体だったっていうの?」

 

 タツマキの持っでいたトランプのジョーカーが突然飛び出して何かを喚いたと思うと、トランプは煙のように消えてしまった。 

 どうやら、ジョーカーが奴らの本体だったらしい。

 あいつらの口ぶりから推測すると、連中もオレと同じく異世界の住人だったみたいだ。

 

「逃げられたか。ん? 扉が勝手に開いて――」

 

「あそこに居るのは……、誘拐された子供たち……。ここにいたのね」

 

 トランプが消えたのと同時に目の前にあった大きな扉が開いた。そして、中にはセキンガルから見せてもらった攫われた少女たちが倒れていた。

 

 オレたちはヒーロー協会に連絡して彼女らの保護を頼む。

 幸いなことに、少女たちは一部記憶障害があった子は居たものの命には別状がなく、1人残らず親元に帰ることが出来た。

 

 しばらくの間は親とともにA市から離れて、協会の作った療養施設で精神の回復をはかることにするらしい。

 これはヒーロー協会が富豪に媚を売るためなのと、世界中から協会への共感を集めることが目的だろう。

 

 ちなみにヘンダーランドはあれから、ちょうど1日経った頃に忽然と消えてなくなったらしい。魔法とやらの力が切れたからなのか……。

 

「こんなに早く事件を解決してくれると思わなかった。さすがはヒーロー協会の誇るS級ヒーローだ」

 

「調子がいい世辞を言うな。オレは何もしとらん。怪人を倒したのはタツマキだ」

 

「キャロル……」

 

 セキンガルは機嫌が良かった。おそらく、出世の確約でも貰えたのだろう。

 こんな組織でそこまで出世がしたい理由がわからんが……。

 

「君たちへの報酬は約束どおり――」

 

「私は報酬はいいわ。別に……」

 

「タツマキ? お前は、オレと組まないとかそんな要求じゃなかったか?」

 

「わざわざ、そんなことしなくてもいい。考えてみたら、私があなたから逃げてるみたいで気分悪いもの」

 

 タツマキはプイとそっぽを向いてよくわからんことを口にする。

 オレから逃げたくないとか、なんとか。

 

「わかった。キャロル、君の報酬は」

 

「貰うに決まってるだろ。遠慮などするつもりはない」

 

 オレは当然、金を受け取る。これで、レイアとミカを直せる日が近付いたぞ。

 

「あら、何もしてないのに金は貰おうとするのね」

 

「うるさいな。見せ場を譲ってやったんだ。まさか、そんなことにも気付いていないとは思わなかったぞ」

 

「何ですって!? やっぱり生意気なやつね! セキンガル! 二度とこいつと2人で仕事を入れないで! 顔も見たくないわ!」

 

 そして、オレとタツマキは再び言い争いになった。

 やはり、こいつと組むのは御免だ。疲れるし、面倒くさい。

 

 だがしかし、このあとすぐにA市にさらなる驚異がやってくる。

 S級ヒーローたちの殆どがこの場所に招集された日に――。

 




マカオとジョマはテレポートなしで災害レベル“鬼”の上位くらいの強さかな。
次回からボロス編です。
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