S級3位“奇跡の殺戮者”キャロル・マールス・ディーンハイム   作:空飛ぶ柴犬

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ボロス編って、敵が強い割にサイタマが強すぎて速攻でおわりましたよね。
ということで、多分、拙作もサクッと終わります。しかし、かなり重要な話も入れますのでその辺りに注目してください。


天空(ソラ)が堕ちる日

『今回ご紹介の商品はこちら! このマッスルバインダーは誰もが眠っている筋肉を楽に呼び起こすことができる魔法のアイテムなんです! これさえあれば、腹筋も背筋も上腕二頭筋も思いのままにマッスル、マッスル! お値段はたったの――』

 

「くだらん」

 

 どうでもいい通販番組を昼間から見ている二人のオートスコアラーを尻目にオレはリモコンで電源をオフにした。

 こんな、物欲を刺激する番組など見せてたまるか。

 

「ええーっ! ガリィは筋肉を付けてマスターをお守りしたいでーす」

 

「アホか! 人形のお前に筋肉などつくはずなかろう!」

 

 ガリィが今の商品を欲しがったので、オレはテレビを消して良かったと心底思う。

 どのように人工知能を動かせば、そんなバカな発言が出るのかさっぱり理解できん。

 

「しかし、通販番組とは不思議なものですわ。要らないものでも、ついつい欲しくなってしまいます」

 

「おい、ファラ。よもや、どうでもいい物を買ったりはしとらんだろうな?」

 

 ファラが不吉なことを口にしたので、オレは変なモノを買っていないか確認した。

 

「も、もちろんですわ。敢えて申しますと、一撃でネギを微塵切りにすることができる、包丁くらいです。これが、ソードブレイカーもびっくりなくらいの切れ味で……」

 

「最近、妙にネギが大量に入ったメニューばかりだと思ったら……。何度も言うが要らん物を買うのは止めろ」

 

 やはり、ファラは役に立たん物を買っていた。ネギ料理に凝っていると思っていたが、そういうことか……。

 

「しかし、マスターは不要無用と切り捨てた物に救われてたりしてますから。きっと、微塵切り包丁も……」

 

「絶対にそれはない! 馬鹿者!」

 

 最近、こいつの人工知能もガリィのバカに毒されているのではないかと思う。というより、こいつは真面目な顔をしている分、質が悪い。

 

「おや、お客さんですよ〜。マスター」

 

「どうせ、またくだらん物を通販で買ったのだろう? クーリングオフしてやる」

 

 インターフォンがなったので、オレは宅配便だろうと思い玄関へ向かった。

 玄関の前には汗だくで息を切らせている、黒いスーツの男が立っていた。ヒーロー協会の人間か?

 

「マスター・キャロル様! ヒーロー協会の者です! 今回、S級ヒーロー全員に非常招集がかけられました! 協会本部まで御足労願います!」

 

「S級全員に、非常招集だと? 災害レベル“竜”でも出たか? 留守にする。くれぐれも変なことはしないように。ファラ! お前にも言っているんだぞ!」

 

 ヒーロー協会はS級全員に非常招集をかけているらしい。どれほどの事態か分からんが、この前のように下らん事で全員は集めないだろう。

 オレはガリィとファラに留守を任せて、ヒーロー協会の本部へと向かうことに決めた。

 

「いってらっしゃーい♡」

「は、はい。マスター。承知しました」

 

「まったく……、こいつらときたら……」

 

 まったく信用出来ん、とは思いつつ。オレは家を出る。

 S級ヒーローが全員か……。1位のブラストだけは未だに会ったことがないが……。

 

 

「おう! シルバーファングのとこの娘っ子じゃねぇか。まさかオメーが俺たちの順位を抜いちまうとはな。さすが、あいつが認めたヒーローだ」

 

 バングの友人であるS級5位のヒーロー、アトミック侍がオレに話しかける。こいつの剣技は中々に強力だ。目にも止まらぬ斬撃は近距離戦闘において絶大な威力を誇る。

 まぁ、S級ヒーローなのだから誰もがそれなりの戦力を有しているのは当然だが……。

 

「アトミック侍か。別にオレは順位など気にしとらん。近距離戦が得意なお前たちより、オレの力のほうがポイントが稼ぎやすいだけだろう」

 

 オレは自分の順位を気にしてはいない。順位が高いのは単純に協会から来た仕事を金の為に全てこなしている結果だろう。

 ヒーロー協会は主に協会への貢献度を順位の指標にしているからな。ブラストだけは別格かもしれんが……。

 

「あら、順位を気にしないというのは負け惜しみかしら? あなたは私よりも序列が下だもの」

 

 アトミック侍との会話を横で聞いていたタツマキが要らんことを言いながらオレに絡む。

 まったく、こいつはオレに喧嘩を売らんと気が済まないのか?

 

「それはお前がオレより早くヒーロー活動を始めた結果にすぎん。言っておくが、お前の力は認めても、オレがお前よりも劣っていると思ったことはない」

 

「何それ? 面白い冗談ね。“マスター・キャロル”はコメディアンにでも転職するつもりなのかしら?」

 

「別に……。事実を言ったまでだ」

 

 オレがタツマキに負ける気がしないと言うと、この女は明らかに不快感を顕にした。

 プライドの高さは一人前か……。

 

「やっぱり気に食わないわ。良いのよ、ここで決着をつけても。恥をかきたくなかったら、謝ることね」

 

「望むところだ。言っとくがオレは優しくないんでな。やるからには容赦はせんぞ」

 

 オレはタツマキと睨み合う。やはり、こいつとは馬が合わん。少々脅しておいてもいいかもしれん。

 

「ちょっと、タツマキちゃん、キャロルちゃん。君たちが喧嘩をするとシャレにならん」

 

 S級12位のヒーロー、超合金クロビカリがオレたちに割って入って止めようとする。

 こいつは体を鍛えて強靭な筋力を身に付けたヒーローだったか? よくわからん。

 

「黙ってなさい! クロビカリ!」

「気安く話しかけるな! そんな暇があったら筋肉でも鍛えてろ!」

 

「うっ……」

 

 オレたちが睨みつけると、クロビカリはたじろいで後ろに下がる。肝の小さい男だ。

 そのとき、部屋の扉が開いて新たなヒーローが中に入ってきた。

 

「おいおい、相変わらず仲が悪いのぉ。お主ら。ヒーローなら、ヒーローらしくせんか。クロビカリが困っとるだろうが」

 

「シルバーファング」

「バング……」

 

 バングがさらにオレたちを仲裁する。タツマキもヤツの言葉は素直に聞いて引き下がる。

 バングの前で意地を張っても仕方ないか……。

 

「おおっ! お前は来ると思ってたぞ。シルバーファング。こいつらの喧嘩を一喝して止めるとはさすがだな」

 

 アトミック侍は友人のバングに話しかけていたが、オレはその後ろのハゲ男に目が行ってしまう。

 

「ん? キャロル、お前も来てたんだ。お前んとこの人形がネギばっかり買ってたけどネギ好きなのか?」

 

「それを今言う必要あるか? なぜ、B級の貴様がここにいる?」

 

 先日、B級に昇格したらしいサイタマがオレに話しかける。生活圏が同じだから、ファラやガリィと時々ばったり会ったりしてるらしい。

 

「ちょっと、こいつB級の雑魚なの? どういう神経でここにいるのよ? 私たちに対して失礼とか思わないのかしら? 不愉快よ、消えて」

 

 そんなサイタマに、タツマキが不機嫌そうに声をかける。こいつは誰にでも噛み付く犬みたいなヤツだな。

 

「なんだ? この生意気な子供。キャロルの友達か?」

 

「誰がこいつと友達だと?」

「気色の悪いこと言わないで!」

 

 オレとタツマキは同時にサイタマに反論した。この女と同類扱いするな……。

 

「それはS級2位のタツマキですよ、先生。超自然的な力で怪人を倒す、俗に言うエスパーです」

 

「無駄話する暇があったら、とっとと席につけ。サイタマ、貴様の力も必要な事態かもしれんからな。聞くだけ聞いとけ」

 

「ちょっと! 無視する気!? キャロル、待ちなさい!」

 

 これ以上、話してもイライラが募るだけなので、オレはサイタマに席につくように促す。こいつの力だけは規格外だからな。どんな事態か知らんが、利用すれば早く済ませて帰ることくらい出来そうだ。

 

 会議室にはS級ヒーローが揃っていた。もっとも、メタルナイトとブラストは欠席しているみたいだったが……。

 

「キャロルちゃん、何の集まりか聞いとる?」

 

「いや、非常招集としか。勿体ぶっているのか、それとも……」

 

 隣に座っているバングがオレに招集について何か知らされているか質問するが、オレも何も聞いていない。

 しかし、これだけの面子を集めたのだ。未曾有の事態であることは容易に推測できる。

 

 すると、間もなくしてヒーロー協会のシッチという男が入ってきて話を始めた。

 

「今回の説明役をさせてもらう、協会のシッチだ。メタルナイトとブラストは居場所が掴めないので、緊急集会を始める」

 

「早速、本題に入らせてもらおう。ヒーロー界の頂点に立つ君たちに集まってもらったのは他でもない。今回は地球を守って頂きたい」

 

「今回ばかりは超人揃いのS級といえども命を落とすかもしれん。逃げるのも勇気だ。今なら辞退してもS級に籍だけは残してやる。だが、今から言うことを聞いたら逃がすわけにいかん。――その場合は事が終わるまで、こちらで軟禁させてもらう。混乱は避けたいからな」

 

「――皆、話を聞く覚悟はいいか?」

 

 シッチは随分と大げさな前置きをする。籍だけは残してやるとは、随分と上からじゃないか。

 覚悟も何も、これくらいの言葉で動じるようなヤツは一人もこの中には居ないだろう。

 

「その話、マジで俺たち全員を集めるだけの内容なんだろうな? こっちは妹のピアノ演奏会を抜け出してきたんだ。大した話じゃなかったら、ここをぶっ飛ばすぞ。コラ……」

 

 彼の言葉を聞いて、S級16位のヒーロー、“金属バット”が悪態をつく。

 まぁ、確かに話を聞いて拍子抜けという展開は許されんだろうな。

 

「大予言者、シババワ様が死んだ……」

 

 予言者シババワが死んだという、シッチの言葉に皆はそれなりに驚く。

 シババワは的中率100パーセントを誇る大予言者でヒーロー協会が護衛をつけている要人だ。

 洪水、大地震、災害レベル“竜”の出現などをことごとく事前に察知して当てており、その対策を取ることで被害を最小に抑えることが可能となっていた。

 

 そして、今回の話の核はそのシババワが最期に予言して、書き遺したメモにあるらしい。

 

「シババワ様が最期に遺したメモがこれだ!」

 

“地球がヤバい!!”

 

「読めるか?」

 

 会議室の立体ビジョンにデカデカと「地球がヤバい」と書かれたメモが映し出される。

 ふむ。一見バカバカしく思えるが……。

 

「くだらないなぁ。僕帰っていいかな? 塾があるんだけど」

 

「童帝くん、天才少年だと聞いていたが、この意味がわからないとなると、所詮はお子様だと言わざるを得ない」

 

「なんだと!?」

 

 童帝が「下らない」と切って捨てようとしたことに対して、シッチは挑発的な言動をする。

 

 シッチが言いたいのはこうだ。シババワはかつて様々な災害を予言したが、一度も「ヤバい」というようなワードは使わなかった。

 だから、最低でも半年以内に災害レベル“竜”を超えるような事態が起こるということなのだろう。

 

「いつになるか正確にはわからんが、半年以内に戦う覚悟をしといてくれ! 非力な凡人を代表して言うが、君たちだけが頼りだ!」

 

 シッチはオレたちに戦う覚悟をしろという。かなりざっくりとした話だが、良くないことが起こるってことはわかった。

 しかし、半年以内にか。それならば――。

 

「半年以内にということは、明日かもしれないし、今日かもしれないな」

 

「ふむ、そのとおりだが。お前は誰だ?」

 

「――来てよかった」

 

 サイタマが今日がその日かもしれんと、口にした瞬間、この建物に大きな衝撃が走った。

 そして、そのあとすぐにさらに大きな衝撃が……。これは、普通じゃないぞ……。

 

「この建物が攻撃されている。いや……、この衝撃は!?」

 

「わあああああっ! 何ということだ! 今日がいきなり予言の日など誰が予想できる。今の一瞬でA市が壊滅した!」

 

「……ちっ!」

 

 シッチは取り乱し頭を抱えて、他のヒーロー共も呆気に取られている。オレはテレポートジェムを使い外に出て、空中へと舞い上がった。

 

 町が壊滅している。それをやったのは――。

 

「あの、巨大な飛行体か……。あれは、まさか……」

 

「宇宙人かもしれないな。キャロル」

 

 A市上空に鎮座している巨大な飛行体。確かに宇宙船に見えなくもない。

 サイタマの言うとおり、地球に異星人が攻めて来たという可能性も十分あるだろう……。

 

「やはり、貴様も出ていたか。むっ……、砲撃……!?」

 

 飛行体はオレたちを敵と認識して、巨大な砲弾を放ってきた。

 オレはバリアを展開してこれを防ぐ……。この衝撃……。確かに町を壊滅させるには十分な威力だ――。

 

「今のバカでかい砲弾でA市を粉々にしたのか。レーザービームとかよりマシだな。服が燃えないし。――星に……、帰れ!」

 

 追撃で放ってきた砲弾を今度はサイタマが蹴りつけて飛行体に向かって跳ね返す。

 その威力は凄まじく、それだけで飛行体自体にダメージを与えていた。

 

「――っ!? 何というデタラメな!? やはりこいつだけは底知れん……!」

 

「じゃ、先に行ってるぞ!」

 

「おいっ! 待て!」

 

 サイタマはさっさと自分が空けた穴から飛行体へと潜入した。オレも急いでそれを追いかける。

 ヤツだけに任せるのは怖い。パワーはあるが、頭は足りてなさそうだからな。

 

 

 潜入したオレを待ち受けていたのは見たこともない生物たちだった。

 やつらはオレを確認すると、一斉に襲いかかってくる。仕方ない、ファウストローブを使うとしよう……。

 

 オレは不完全な状態のファウストローブを身に纏う。サイズは変えられんが、錬金術の出力は増す。未知の相手だが、負けはしない。

 

「――なるほど。やはり異星人か。災害レベル“鬼”相当の手練もいる! サイタマはどうやら、向こうに行ったみたいだな……。死体の数がヤツの強さを物語っている」

 

 オレは錬金術を駆使して応戦していたが、少しづつ押され始めてきた。異星人たちの戦闘力は思った以上に強く、オマケに量も多い。中には災害レベルが“竜”に近いヤツも居た。

 

 うじゃうじゃ出てくる敵を屠っていると、サイタマが始末したであろう異星人の亡骸が大量に目に入る。あいつ、この短期間にどれだけの……。

 

「居たぞ! 侵入者だ! 殺せ、殺せ!」

 

「数が多くて、キリがない。想い出のストックも心許なくなってきたな。一度撤退して、外から狙ったほうが良いのでは……?」

 

 外から宇宙船を落とす方法を取ったほうが効率が良かったか?

 宇宙船の中でチマチマ連中を倒すことに若干嫌気がさして来たとき、オレの背中に強烈な衝撃が走る。

 

「――スキを見せたな!」

 

「――っ!? しまった!」

 

 宇宙船の一部と一体化するタイプの異星人に一撃をもらったオレは床に叩きつけられた。しまった……、油断した……。こうなったら、オレ自身の想い出を燃焼させ、さらに出力を上げてすべてを分解してやるか――。

 

「トドメだ! 一斉にかかれ!」

 

 大量の異星人たちがオレに向かって飛びかかる。この程度の連中に遅れを取るなんてあり得ん。

 オレは覚悟を決めて歌を歌おうと口を開いた――。 

 

 しかし、その刹那――。歌が聞こえた――。

 

「Balwisyall nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)……」

 

「歌がっ!? ――この歌声は……」

 

 目の前の異星人たちはことごとく吹き飛ばされる。このパワーは……、覚えがある――。

 忘れようはずがない……。

 

「だ、大丈夫! エルフナインちゃん!」

「立花響!? なぜ、お前が……」

 

 ガングニールのシンフォギア装者――立花響がオレの前に立って手を差し伸べている。

 これは夢なのか……? それとも――。

 

 




シンフォギアサイドの主人公の響が登場しました。
他の装者たちやS.O.N.G.のメンバーも最終章には登場予定です。
ヒーロー協会とS.O.N.G.の共闘も書いてみたいですので。
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