新「艦娘」グラフティ4(第15部)   作:しろっこ

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半ば勢いで提督の執務室へ飛込んだ磯風だったが出鼻をくじかれる。そんな彼女は過去の経験を思い出すのだった。



第2話(改1.4)<喜怒哀楽>

 

(これは、何処かで見た覚えがあるな)

 

--みほちん------------

 

新「艦娘」グラフティ4

第2話(改1.4)<喜怒哀楽>

 

---------(第15部)---

 

「駆逐艦『磯風』入ります」

 

 提督の執務室に副司令の祥高はいなかった。そして白い制服を着た提督は何かの書類に眼を通していた。

 

磯風を見上げた彼は「どうした?」と声をかけてきた。独特な低い声は執務室に程よく響いた。

 

彼女は机に近づいて言った。

「今日は私の日と聞いているのだが」

 

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「え?」

提督は不意を突かれたような表情をした。

 

(先の浜風といい、司令といい、これは何だ?)

さすがの磯風も一連の反応には少々、違和感を覚えていた。

 

しかし彼女は直ぐに軽く頭を振る。

(……いや、これは、きっと新しい鎮守府に不慣れな自分が感じる現象に違いない)

 

疑いを打ち消した彼女。それは不安に溺れそうな自分を強引に丸め込む意味もあった。

 

(慌てるな、飲まれてはいけない)

心中で、そう言い聞かせた彼女は改めて何事もなかったように軽く呼吸を整える。

 

「確かワンドロとか言ったか……」

「ワンドロ?」

磯風の問いかけに改めて不思議そうな表情を見せる提督。一瞬、執務室の会話が止まる。

 

(やはり噛み合わないな……)

さすがの磯風も次第にウンザリして来た。前線に例えるなら『苦戦中』という状況だろう。

 

 窓の外からは、他の艦娘たちの演習の音が聞こえてくる。

 

場を繕うように磯風は何気なく壁を見た。そこには額装された艦娘の絵画(イラストともいう)が何枚も掲げられていた。

 

中には見覚えのある顔……それはこの鎮守府の食堂で見掛けた『鳳翔』さんの絵だった。

 

その穏やかな表情をした彼女の左側には手書きで『鳳翔』の文字。更には、その絵が描かれたであろう日付も入っていた。

 

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(なるほど)

彼女は軽く頷いた。これが浜風の言っていた美保鎮守府の『司令(提督)が描いた絵』なのだ。

 

(これは、何処かで見た覚えがあるな)

ふと磯風は過去の記憶を振り返った。

 

 以前、所属していた鎮守府でも『お偉いさん方』の文化発表会みたいな展示会に付き合わされたことがあったのだ。

 

そこは、ここより広い施設で同じように額装された作品を幾つも見せられた。

 

当日、磯風は秘書艦ではなかったが、たまたま玄関ロビーに出ていて副司令に呼び止められた。

「おぉ磯風、今、空いてるか?」

「はい」

「ちょうど良い、命令だ。横に立っているだけで良いから帯同せよ」

「はぁ?」

 

……良く分からないうちに捕まってしまった(巡り合わせが悪いともいう)。

 

直ぐに反論出来ない自分の寡黙で生真面目な性格が災いしたと……今でも思っている。

 

 副司令と共に軍用車が会場に到着する。普段から紳士的な責任者たちが何人も集っていた。

 

入り口で受付をして中に入る。すると、制服を着た指揮官たちが、お互いの『作品』を自慢し合っていた。

 

そこには部外者も多く招かれていたようで明らかに海軍ではない人たちで溢れていた。

「どうだ? この作品は」

「はぁ……素晴らしいと思います」

「ウム、そうだろう」

 

自分よりも上官に当たる指揮官に、次々と感想を求められた。だが艦娘である彼女は適当に話を合わせるしかなかった。

 

彼女は心中で苦笑していた。

(そもそも艦娘に審美眼など無いのだ)

 

……とはいえ艦娘は単なる機械と違って喜怒哀楽がある。だから海軍内でも人と同じような感性を艦娘に感じる者も居るようだった。

 

「変人」

磯風は思わず小声で呟(つぶや)いた。

 

 人間の軍人にも千差万別、イロイロなタイプが居る。とはいえ翻(ひるがえ)れば艦娘も様々だ。

 

面白いことに艦娘の中には『ゲージュツ』的な才能を発揮する者も居るらしい……あの「青葉」だって、その一人だろう。

 

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人間だけではない。艦娘とて『芸術家』タイプには『変人』が多いことは彼女も、よく理解しているつもりだった。

 

 だが防人(さきもり)としての艦娘には「趣味」など、ご法度である。そんな意識が不文律として艦娘たちの間に厳然と存在するのも事実だった。

 

そんな彼女の心象の変化を感じたのだろうか? 美保提督は合点したような反応をした。

「あぁ」

 

彼の表情も和(やわ)らいだ。同時に執務室の緊張感も収まっていった。

 

 彼女は、ここぞとばかりに提督に向き直った。そしてポケットから先ほどの一覧表を取り出すと改めて確認をしながら言った。

「順繰りとは言え百隻を越す美保鎮守府、機は逃せまい」

 

「はあ?」

また煮え切らない返事だ。

 

(美保司令って……昼行灯(あんどん)なのか?)

そんな言葉が磯風の脳裏をよぎる。

 

「ずっ」

机上の珈琲をすすった提督が意外な発言をする。

 

「お前も描いて欲しいのか?」

「えっ!」

今度は磯風が慌てる番だった。

 

 

以下魔除け

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PS:「みほちん」とは
「美保鎮守府」の略称です。

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