「いや、無理は申さぬ。司令も多忙ゆえ」
--みほちん------------
新「艦娘」グラフティ4
第3話(改1.2)<傲慢と反省>
---------(第15部)---
先ほどから執務室では美保提督と駆逐艦娘の奇妙なやり取りが続いていた。ドギマギする磯風に畳み掛けるように繰り返す提督。
「磯風も描いて欲しいのか?」
「い……」
思わず言葉に詰まった。言った本人が実は、いちばん驚いていた。
(自分はなぜ、こんなに慌てているのだ?)
……その狼狽振りを隠すように頭の後ろに軽く手をやりながら窓の外へ視線を送る。前線に例えるなら小破、いや中破だろうか?
そもそも、この部屋に入ったときは自ら、今日のワンドロは『私の日』だと主張したはずだ。
ところが司令から前向きな返事を受けた途端、急に及び腰になった。
もちろん司令に何をして貰うかは分かっている。つい今しがた壁に貼ってある『作品』を見たから。
(似顔絵を描いてもらうだけだ)
たとえそれが自分の苦手な『ゲージュツ』分野であれ最前線で深海棲艦と戦うよりも簡単なことだ。
そう自分に言い聞かせてハッと気付く。
(……まさか! 磯風は経験の無いことに恐怖を感じ始めたのか?)
いや、それは認めたくない。
窓の外からは艦娘たちが演習する模擬弾の音が聞こえてくる。
この間は数秒も経っていない。しかし磯風にとっては妙に長い時間に感じられた。
意を決したように提督を振り返った彼女が発した言葉。
「いや、無理は申さぬ。司令も多忙ゆえ」
提督は少々、驚いたような表情だった。無理も無い……自分の行動は矛盾し支離滅裂だから。
(矛盾だ)
穴があったら入りたいとは、こういう状況を言うのだろう。顔から火が出るくらいに恥ずかしかった。
(なぜ、こうなった?)
曲がったことが大嫌い。前線でも率先して先陣を切ることを誇りにすら抱く磯風。
……だが今日、これまでの自分らしからぬ行動に打ちのめされていた。
ある面、彼女は美保の司令を甘く見ていたのかもしれない。
先の浜風との会話で、提督を変人呼ばわりしていた自分を悔いた。
(きっと傲慢だったな)
相手は小さい鎮守府とはいえ曲がりなりにも提督である。一方の自分は駆逐艦に過ぎない。磯風は強がっていた自分のメッキが剥がされる想いだった。
自らの態度を反省した彼女。入室当初の勢いは何処へやら、すっかり項(うな)垂れて意気消沈していた。
だが提督は何事も無かったかのように机の上で手を組んだまま言った。
「今なら構わんよ」
彼は、さほど大柄ではない。しかし、その声は低音が混じった深いもので執務室に程よく響いた。
「着任して日も浅い君のことだ……」
その言葉に磯風は、ゆっくりと顔を上げた。その視線の先には穏やかな表情の提督が居た。
「その方が気分転換にもなろう?」
「はい」
……そう応えたはずだった。
だが頭に血が上ったように舞い上がっていた彼女は思わず握り拳を突き上げて『よっし!』と言ってしまった。
そんな彼女を見ながら提督は心中で呟く。
(お前の順番はホントは昨日だったが……まぁ、これは内緒だナ)
そういう彼は優しい目をしていた。
以下魔除け
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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「美保鎮守府」の略称です。