赤月の雷霆   作:狼ルプス

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第十五話

俺は胡蝶姉妹に想いを告げられ、付き合う事になった。俺が目覚めてニ週間、傷は眠っている間に治ってはいたが、筋肉が衰え中々思うように体を動かせない日々を過ごした。しばらくは筋肉の回復を目的に歩く事から始めたが一人では立つのが難しくしのぶに支えてもらいながら歩くのがやっとだった。

 

これが一週間ほど続きやっと一人で歩けるようにはなった。しかしまだ激しく動くのは禁止されている。しのぶによると、数カ月かけて元の状態に戻すらしい。

 

軽い走り込みなども出来るようになり、もう少ししたら機能回復訓練に入れるみたいだ。

カナエも仕事が終わり帰ってきたらよく会話をしている。俺は無理はしないように言ったが、好きでやってる事だからと笑顔で言い返され、何も言えなかった。気配からして疲れも窺えなかった。カナエも相当強くなっている証拠だ。心に余裕がある感じだった。

 

そして、カナエにも手伝ってもらいながら、身体の調子を確かめ、ようやく次の日から機能回復訓練に入れるようになった。

 

「あーっ、気持ちいい」

 

その夜、俺は蝶屋敷の患者用の風呂に入っていた。四カ月も意識はなく目覚めても身体をまともに動かせなかったので、ようやく入浴の許可をもらい久々に湯舟に浸かる。少しお湯をかけただけでもすごく極楽だ。

 

「(やっと次から機能回復訓練に入れる。早く元の状態に戻して、写輪眼の能力も試してみたい)」

次の日から燐はやっと機能回復訓練に入れる。しかし今の燐がどこまで衰えてしまっているかは訓練をしないと分からないため、少々不安もある。

 

「(そう言えば、俺、あの時……)」

黒死牟との戦いで雷の呼吸の新たな型…捌ノ型・千鳥を生み出した。それだけではない、写輪眼も既に開眼している事をやっと自覚できた時でもある。意識が戻った後、姉妹から告白され恋仲になったし、音柱様が聞いたら「派手にやるじゃねぇか」とか言いそうだ。

 

「(それに…あの力も使いこなさないとない)」

あの後、カグラ様と会話も出来る様になった。カグラ様によると、写輪眼以外で俺はある力を解放出来るそうだ。それを知ったのは一年前のこと……

 

『あの力は危険も孕んでおる。油断すると暴走するぞ?』

 

ある時、突然中から声をかけられ驚いた。どうやらカグラ様と俺は今までの憑依者とは違い、念で会話ができる様だ、基本カグラ様は眠っていることが多いが。

 

『わかっております。無理はしない。少しずつ慣らせていきますよ。勿論、写輪眼も使いこなせる様にしないと』

 

『わかれば良い……私はそろそろ眠る。気が向いたらこちらから話しかける』

カグラ様は、そう言った後、眠りについたようだ。俺は試しに何度か呼びかけたが返事は無かった。

 

「しかし……俺に恋人…か。守ってみせる、例えこの身が滅びようとも!」

燐は二人が守られる程弱くないのはわかっているが、やはり大切な存在が出来ると人は変わるみたいだ。

 

「(天元の言った通りだな。『大切な人が出来ると人は何かが変わる』って……今度天元にこの事報告し)「お邪魔しまーす」ブフゥーッ!!??」

 

突然服を着た状態でカナエが風呂場に入ってきた。俺は突然のことに吹き出す。

 

カナエは服を着ていたからまだ良いが、いや…問題はそこじゃない!俺、裸なんだぞ⁉︎

 

 

「何しに来た⁉︎」

燐は即座に腰にタオルを巻く。

 

「うふふっ、お背中流そうと思って♪ほら、背中向けて」

 

「いや…背中向けて、じゃない⁉︎俺は今裸だぞ!素肌丸出しなんだぞ⁉︎」

 

「いつかはお互いに見せることになるから…大丈夫よ、私達…恋人同士なんだから」

 

燐は、カナエの言葉に余計意識してしまうが、なんとか理性を抑えることに成功した。

 

湯気で見え辛いが、カナエも少し恥ずかしがっているようだった。

 

カナエの気遣いを無化にするわけにもいかないと思い、燐は息を深く吐く。

 

「わかった。背中…流してもらっていいか?」

 

「……!うん…!」

カナエは嬉しそうに顔をパァッとさせる。

 

そして、本当に背中をごしごしと洗い始めた。

 

「……大丈夫、燐くん、痛くない?」

 

「ああ…大丈夫だ。それにしても、よく入って来れたな、恥ずかしくないのか?」

 

「うん。服着てるけど、想像以上に恥ずかしいわね」

 

「……はは、だろうな」

そりゃそうだ。カナエは服を着てるのに対し俺はタオル一枚だ。するとカナエの手が止まり、俺の背中に触れてくる。

 

「カ、カナエ?」

 

「やっぱり燐くんの背中は大きいなぁ。見てると……とても安心する」

 

「安心って、たかが背中だろ?」

 

「ううん、そんな事ない。あの時、燐くんが、助けてくれた時もそうだった。あなたの背を見ていただけでも、何故か安心していた自分がいたの」

 

実を言うとカナエは、最終選別の時から燐を気にかけていたのだ。最終選別後、燐の姿を忘れないでいた。かけてくれた言葉もそうだが、どこか安心する様な背中だったのだ。

 

「……そうか」

 

「あらあら、燐くん、もしかして、照れてる?」

 カナエは悪戯じみた笑顔を浮かべる。俺はその言い方に少しドキッとした。

 

「……うるさい」

 

「うふふっ、そんな所も好きよ…燐くん…」

カナエは人差し指を背中を擽る様にうごかす。

 

「くふっ……!」

 

「……え?」

突然燐が笑い出した。カナエは突然のことに手を止める。燐は顔を真っ赤にしながら口を手で押さえるが既に手遅れである。

 

「………」

 

「もしかして燐くん……擽られるのが苦手なの?」

 

「………否定はしない。昔から苦手なんだ」

 

燐は否定せず、肯定する。

 

「(だ…ダメよ…ダメダメ、今、この場で擽っていけない)」

カナエは片方の手を燐に触れようとしたが、場所が場所のため燐を擽りたい衝動をもう片方の腕で、抑え込む。

 

背中を流したらカナエはそそくさと風呂場から出て行った。

 

 

「(危なかった。危うく理性が切れる所だった)」

 

なんとか難は乗り越え、とりあえず一安心した燐はその後湯舟に浸かる。

 

 

 

 

 

「フゥー、さっぱりしたぁ」

 

風呂をあがった後、水を飲みに行く為、台所にむかう。

 

「姉さんは馬鹿なの⁉︎」

 

 

「ん…?この声、しのぶか?」

 

燐は怒鳴り声がする方へ近づくと、カナエが居間でしのぶに正座させられていた。

気配を消し、話を聞いたが、俺が入浴していた際、カナエが入り込んだのがばれて説教を食らってるようだった。

まぁ、恐らく、石鹸の匂いとかでバレたのだろう。

しのぶは薬草を使った調合をしてるからある程度鋭い方なのだろう。

 

 

「(なんかごめんな……カナエ)」

 

内心カナエに謝罪し、そのまま離れ、燐は水を飲むことを忘れて、部屋に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

◇目が覚めて二ヶ月後

 

現在俺は蝶屋敷の道場にいる。

 

「では…今日から燐さんの機能回復訓練を始めます。」

 

「ああ…よろしく頼む」

 

 

今日から機能回復訓練を行う。その為、訓練内容の説明を、しのぶから受ける。

 

機能回復訓練…長い間動かさなかった体を動かし、鬼殺隊の仕事に復帰させるための訓練らしい。

 

しのぶから聞かされた内容は、まず最初に寝たきりで固くなった体をほぐし、その後に反射神経の訓練で、薬湯の入った湯飲みを互いに掛け合うもので、湯飲みを持ち上げる前に相手に湯飲みを抑えられたら湯飲みは動かせないらしい。

 

最後は全身訓練で、鬼ごっこをする。

 聞けば聞くほど、病み上がりにはちょうどいい訓練だ。良く考えられた内容だと感心した。

 

 

「では、早速ですが、始めたいと思います。」

 

「ああ、よろしくお願いします」

 

まずは柔軟から始める。相当固くなっているのか普段なら痛みはない部分が相当痛い。それをしのぶは笑顔で、容赦なく俺の身体を曲げる。

 

「相当固くなってましたね…燐さん」

 

「いてて、俺も…ここまでとは予想外だった」

 

 個人の鍛練をしようにも、まずは鈍った体を叩き直さなければいけない。今の俺の身体はガチガチだ。

 

「しのぶ、カナエは仕事か?」

 

「はい、姉さんは鴉から連絡が来て任務に出ました。最近姉さんも任務が増えてきて……無理しないといいんだけど」

 

「そうか…任務を任せられるってことは、カナエも強くなってる証拠でもあるが、確かに心配だな」

任務を任せられる事は上からも期待されているという証だ。しかし任務が立て続けにあると帰ってくる事も少なくなる為、しのぶはこの広い屋敷の中一人っきりの状態だ。正直あの事があったから不安だ。でも、もししのぶが不安な様子を見せたら、側にいてあげる事も俺の役目だろう。

 

 しのぶの容赦のない柔軟の次は薬湯の掛け合いだ。

 

「ブッ!」

 

「これで私が勝ち越しですね」

 

「ゲホ、ゲホ、ははは…まぁ、病み上がりの状態じゃこんなものだろ」

燐はビショビショで少し落ち込み気味だ。十本勝負をして結果は二勝八敗だ。しかし薬湯を恋人であるしのぶに掛けるのは凄く罪悪感があるから湯呑みを頭の上に乗せるという結果になった。

しのぶはそれに怒っていたが、理由を言うと顔を赤くしてそれ以上は何も言わなかった。

 

 

 

 

鬼ごっこで全身訓練。

逃げ手はしのぶで、しのぶを捕まえるのが俺だ。全集中・常中も会得しているので年下だからと言って簡単な相手ではない。しかも今回は俺はかなり鈍ってしまっているのでどうなるかわからない。

 

「始めの合図はどうする?俺達二人だけしかいないだろ」

 

「いつでも大丈夫ですよ。今の燐さんに簡単に捕まる私じゃないので、それに、燐さんが意識のない間、何もしていなかったわけないじゃないですから」

 

「言ったな……こちらとて、鬼殺隊じゃ“雷の剣聖”なんて称号つけられてるんだ。絶対捕まえてやる」

 

対抗心が生まれ、もはや普通の鬼ごっこをするつもりはない。真剣勝負をするつもりで燐はいどむ。

 

「「っ!」」

二人同時に動き出し、燐はすぐさましのぶに接近し手を伸ばすが、しのぶはこれを飛び上がる事で回避する。少しの動きでもわかる、動きが以前よりかなり向上している。

 

「ふふ、これはほんの序の口ですよ。あら…ごめんなさい、確か病み上がりでしたっけ?これでも加減をしている方なのですが……“雷の剣聖”様?」

 

「……(しのぶ…こんな喋り方だっけ?)」

なんだが煽る様な感じに言ってくる。まぁ、鬼に言えば、乗るには乗るかもしれないが、燐には少し違和感があった。

 

「確かに病み上がりだが、負けるつもりはない。それにしても、お前も成長したな……動きが格段に良くなってる」

燐はしのぶの動きに驚き、指導している際の言い方になってしまう。

 

「…あ、ありがとうございます。って!なんで燐さんが指導してる側になっているんですか⁉︎」

 

「あはは、そうだな…さて、お喋りはここまでにして、続きを始めよう」

鬼ごっこを再開し、数刻してやっとしのぶを捕まえる事ができた。

 

 

 

「ハァー、疲れた」

燐は今日一日の機能回復訓練を終え、蝶屋敷の縁側に座っている。

 

「(今回の訓練で、俺も相当落ちぶれたな。早く元の状態…否、それ以上の力を付けないと、アイツには勝てない)」

燐は黒死牟との戦いで、色々とわかった事がある。いつかはアイツと決着をつけなければならない…そんな気がしてならない。今頃奴も力を着実に上げているはずだ、鬼は人を喰う数、そして鬼舞辻の血によって力をつける。

 

「(しのぶからは…日課にしていた鍛練も許可も出た。明日から早速…)「よぉ、久しぶりだな」うおっ⁉︎」

突如として、隣から話しかけられ驚いた。そこには、派手な格好をした隊士がいた。

 

「お前…天元じゃないか!久しぶりだな、どうしてここに?」

 

「お前が目を覚ましたって連絡が来たはいいが、中々来れなかったんだよ。んで、来たはいいが病室にいなかったわけだ。それで探したら縁側で寛いでるお前を見つけた……それよりも燐よぉ、お前ド派手な事をしたじゃねえか。上弦の鬼、しかも壱の奴と一人で戦って生きて帰って来たってな」

 

「いえ、毎度のことだが、俺よりお前の方がド派手だろう?」

 

「当然だ、俺は祭りの神だからな!」

 

祭りの神やら派手の発言の目立つ天元だが、普通にいい奴だし比較的に気安く話しかけることが出来た。

 

「そう言えばお……俺が寝込んでる間、柱に就任したんだってな。おめでとう、お前のことだから……祭柱か派手柱か?」 

 

「音柱だ‼︎お前ワザと言ってんのか‼︎」

 

「すまんすまん、わざとじゃないんだ。音柱様」

正直本当にそう思ったから言ってみたけど、どうやら呼吸の通り音柱の様だ。

 

「わかればいいんだよ。ったく、お前にとって俺はどんな人物像だよ」

 

「一言で言えば、『派手』」

 

「地味にそんまんまじゃねぇか!?」

見た目が派手だからそうとしか言いようがないからな、確か元は忍って言っていたが忍からかけ離れているくらい派手にやる奴だ。

 

「そうだ!天元に報告したい事があるんだ。俺、恋人が出来たんだ。二人…いるんだけどな」

 

「おお!お前中々ド派手にやるじゃねぇか!!で、相手は……?」

案の定やはりド派手と言って来た。まぁこの言い方は予想はできていた。

「この蝶屋敷の姉妹だよ。」

 

「………お前、あの女二人を手籠めにしたのか?」

 

「言い方ッ!まぁ告白して来たのはあの二人からなんだ」

 

「マジか、あの二人も派手にやるもんだなぁ」

天元も驚いている。一番驚いたのは俺自身だよ。二人揃って俺の事が好きだったなんて想像できるわけがない。

 

「天元はどうなんだ?嫁さんとは最近」

 

「おう、いつも変わらず派手に充実してるぜ!最高の嫁達だ」

 

「はは、相変わらず幸せそうで何より……ん?」

 

なんか、さっきの天元におかしな発言が、嫁達?

 

「天元…お前…さっきなんて言った?」

 

「ああ?派手に充じ「その後だ!」…最高の嫁達だ」

 

「確認するが天元………お前、嫁さんは一人だよな?」

 

まさかと思うが、嫁さんが数人いるなんて事はないよな。俺も二人の恋人がいるから人のことは言えんが。

 

しかし燐は天元の発言により今までで一番驚く。

 

 

「いや、俺は嫁が三人いる」

 

……………………………

 

「はぁっ⁉︎どういうことだ、初耳だぞ⁈」

以前燐は天元に奥方がいるとは話に聞いていた。しかしまさか三人いるとは思わなかった為、派手に驚いてしまう。

 

「おお、言ってなかったからな。しかし派手に驚いてんな、そうさ、命より大事な嫁達だ」

何だろう、今の天元、凄く男前だ。天元にとって、その人達が自分の命より大事な人か。

 

「……こ、これは流石の俺もド派手に驚いた。まさかここまで派手なことをするとは、凄いな天元」

 

「そうだろ、もっと俺を敬え!崇めよ!」

天元は凄くドヤッとした顔をした。さて雑談はここまでにして本題に入るか。

 

「天元、本当の要件はなんだ?ただ見舞いに来たってだけじゃないだろ」

気配でただ見舞いに来た感じではないのはわかっていた。

 

「そうだな…そろそろ本題に入るか、俺はお館様の指示でお前から上弦の壱の鬼について聞きに来たんだ。」

 

「お館様が?」

 

「ああ、そいつは鬼のくせに、俺らと同じ呼吸剣技を使うみたいじゃねぇか。っで、現場にいた隊士から話を聞いたはいいがすぐにやられて、情報が少なかった。んで…実際交戦したお前に聞きに来たってわけだ」

 

「分かった。知ってるだけの事は話す。正直信じられない内容になるぞ?」

 

燐は上弦の壱、黒死牟の詳細を天元に話す。鬼にして呼吸を使う鬼、俺達の知らない“月の呼吸”とやらを使っていて血鬼術混じりの型を放つ。そして極めつけは、頸を切斬っても死滅せず立ち上がったことだ。

知っている事を全て天元に話すと信じられないと言わんばかりの顔をしていた。

 

「おいおいマジか…頸を切ったのにか?本当かそれ、お前、よく生きて帰ってこれたもんだな」

 

「いや、村田さんがいなけりゃとっくに喰われてたよ。しかし、頭無しに立ち上がったのを見た時は戦慄したよ。あんな感情、初めて鬼を見た時以来のだ。あくまで推測だが、無惨はおそらく、頸を斬ったとしても死なない。上弦の鬼は俺達が考えてるよりも想像を遥かに超えている。常識の範疇に留まると、到底奴等を上回る事はできない」

 

「……実際上弦の壱と一人で戦って帰ってきたお前に言われると、派手に説得力があるな」

正直言って日が昇るまで戦うと言われると無理がある。上弦の力を上回る実力の持ち主か、柱が数人がかりで挑まないと不可能だろう。

 

 

 

特に黒死牟……あいつは柱が束に掛かっても勝てない。そんな気がしてしまった。

 

「……俺が知っている情報は以上だ。」

 

「そうか、こいつは今後派手に対策しねぇといけないな」

 

「……天元、お館様に伝えてほしい事がある。頼んでもいいか?手短に済ませる」

 

燐はあの戦いから決めていた事があった。

 

「あ?構わねぇが…内容は?」

 

「ありがとう……お館様に伝えてほしい内容は————」

 

燐は鬼殺隊当主である産屋敷耀哉に伝えてほしい事を天元に頼むと、彼は納得した様に目の前から消え、蝶屋敷から去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

燐は天元が去った後、縁側で空を見上げる。風が心地よく空も快晴だ。

燐は現在瞑想をしながら全集中・常中を維持している。先ずは常中を維持し身体を叩き直す。衰えた身体を元に戻し、型の調整の必要もある。

 

「(そう言えば俺の日輪刀…刃こぼれが酷くて意識がない間、鉄穴森さんが新しいのを届けてくれたってしのぶが言ってたな…すみません、鉄穴森さん、折角打ってくれた刀を駄目にしてしまって)」

燐は心の中で鉄穴森に謝罪する。

 

「燐さん」

 

「……ん?」

燐は目を開け、首を右に向けるとしのぶがお盆をもって縁側に姿を現した。

 

「しのぶか…どうした?」

 

「これ、よければ一緒にどうですか?」

しのぶはお盆を置く。器にはおにぎりが置かれていた。日の位置からしてもう昼あたりだ

 

「ああ…勿論構わないよ」

そう言いしのぶは俺の隣に座りおにぎりの乗った器を渡しお茶をいれる。

 

「ありがとう、しのぶ」

 

「お腹空かせていると思って作っておきました。残さず食べてくださいね」

 

「お前の作った飯を残してたまるかよ…」

 

「…だったらしっかり食べて身体も元に戻さないとですね」

 

「はは、だな…それじゃあ、いただきます」

燐はおにぎりを一口食べる。塩加減もいい感じで塩分を取るのにはちょうどいい味だ。一つあっという間にたいらげた。

 

「どうですか?味の方は」

 

「うん…塩加減がいい感じに効いて美味しかったよ」

 

「ふふっ、良かったです」

ふと、しのぶが笑った。そんなしのぶを見て俺は手をしのぶの頭に乗せ撫で始める。

 

「な…なんですか急に」

 

「しのぶは笑った顔が可愛いと思って」

 

「か、可愛いって、子どもの私なんかより、姉さんの方が」

 

「そんな事はない。カナエは花の様な笑顔が魅力だが、しのぶの笑顔は、陽の様な笑顔だ。俺はそんなしのぶの笑顔が好きだ」

 

しのぶは耳と顔を真っ赤にさせ、顔を背ける。

しのぶから恥ずかしさと嬉しさが混ざった気配を燐は感じた。

 

「よ、よくそんな言葉を平然と言えますね。だったら…証明してくださいよ」

 

「証明?何をだ?」

しのぶの言ったことがわからず、燐は首を傾げた。

 

「その……恋人としての証明ですよ。言わせないでください」

 

凄く指をモジモジした仕草で伝えてくる。……やばい、めちゃくちゃ抱きしめたい。

 

「えっと…すまない、具体的に何をしたらいいんだ?こう言うのはよくわからなくて」

 

「……」

しのぶは俺の手を額に触れさせた。言葉でこそ伝えないが、燐はその行為を理解した。

 

「ああ、そう言うことか」

 

「だ、だったらなんです……姉さんにはして私だけにしないなんて不公平じゃないですか」

しのぶは、恥ずかしがりながらも自分の気持ちを伝える。多分カナエの事だからしのぶに話したのだろう。

 

その姿に俺は見惚れてしまった。

 

「…しのぶ」

燐は右手をしのぶの頬に添える。しのぶは目を瞑り緊張した様子だっだが、嫌がる気配はない。

 

燐は顔をしのぶに近づけ…しのぶの額に口付けをする。

 

「……ッ!」

しのぶは一瞬身体をビクッとさせた。しのぶから顔を離れると、しのぶは顔を先程よりも真っ赤にして恥ずかしそうに照れている。

 

「ふっ、しのぶ」

 

「え?ちょっ…」

 

ぐいっと、しのぶを引っ張る。

足を少し開いてその間にしのぶを収める。いい感じにスポッとはまった。

 

「なっ、ななななにするんですか!」

 

「いや…なんかこうしたくなってな」

 

しのぶは騒ぐが、抵抗をする様子はない、俺はしのぶのお腹あたりに両手を回し、より密着する。恥ずかしいのかしのぶは黙り込んでしまった。

 

「しのぶはあったかいなぁ。昔、俺の両親がやっていたのを見ていたけど、実際やるとこんなに心地いいんだな」

 

「なんですか…それ」

しのぶは俺の手に触れ身体を俺に預けてくる。

そんなしのぶの姿を見た俺は、しのぶをより強く抱きしめた。

 

「燐さん…大好きです」

 

「ありがとう…俺も好きだよ」

 

俺は笑顔でそう答える。しばらく二人で笑いあい、会話を交えながら密着するのであった。




大正こそこそ噂話

燐の体は特異体質であり、鬼による毒の抗体を持っていて殆ど鬼の毒は効きません。
しかし鬼以外での毒は効きます。
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