赤月の雷霆   作:狼ルプス

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第十八話

あれから一年

 

蝶屋敷も新たな住人が増え賑やかになってきた。

アオイ,きよ,なほ,すみ……この四人はカナエやしのぶが拾ってきた。鬼に親を殺され、身寄りがなかったり、鬼殺ができない隊士だったりする。

 

アオイは家事が上手く、しのぶと同様器用で、しのぶから教わった事は直ぐに出来る様になった。

 

きよ,なほ,すみは、患者の看病の他にも、機能回復訓練での訓練も担当している。

 

 

俺も四人が住むまで、カナエとしのぶの作業を手伝う事もあったが、その必要はなくなるかもしれない。

 

カナヲは変わらず無表情無感情だ。

 

命令や決め事では硬貨がないと決めることが出きない。

 

 

けど…カナヲは感情がないわけではない。顔には出てはいないけど、時折り楽しそうな気配を感じることがある。

表に出す事はまだできないが、少しずつ、カナヲは心を開いている。

 

偶に二人になる事もあり、何を話せば良いかわからなかった時、歌ったら、カナヲも俺の歌を気に入ってくれたみたいで、途中で歌うのをやめると袖を引っ張る事があった。

言葉こそ出さなかったが、もっと聞きたいというのはわかった。

 

その姿に燐はカナヲを優しく抱きしめた。無表情だったが、カナヲは嫌がる素振りは見せなかった。カナヲが戸惑っていた気配を燐は感じとれた。

 

 

 

 

  

 

 

兄妹ってこんな感じなのかな。

 

 

 

 

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「………」

 

無言で燐は目を瞑っており、周囲に意識を集中させている。

 

燐は目を開けると、両眼は赤く、瞳孔の周りにできた輪の上に三つの黒の勾玉模様が浮かんだ。

 

その赤き瞳の名は写輪眼…燐が持つ特殊な瞳である。暗闇の為、赤い瞳は発光している。

 

腰に置いた刀に手をかける。

 

「雷の呼吸・捌ノ型」

 

 

 

「――千鳥」

 

背後に蒼い雷の一閃を鬼に叩き込み、電光石火な一閃を振るう。

 

無駄が一切ない洗練された斬撃だ。何もない所に叩き込んだかのように見えたが突如鬼は姿を見せる。

 

「がっ……!?」

 

 手足を断たれた鬼が地面に転がっていく。

 

「な、何故だ……!?何故正確に俺に攻撃を⁉︎ 俺の血鬼術でお前から姿は見えなかったはずだ……!?」

 

 右目に“下陸”と刻まれた鬼の顔は驚愕に染まっていた。鬼の血鬼術は自分の姿,気配を完全に消すもので、その隠形により鬼は多くの人間や鬼殺隊の隊士を喰らってきた。

なのに、目の前の男には通じなかった。

 

「姿を消していても、俺にはお前を視認することも感知することも容易い。斬り捨てることができない理由があると思うか?」

 

リンは写輪眼の状態で鬼を上から目線で睨み付ける。

 

「貴様…赤月の雷霆か⁉︎」

 

当然ながら目の前の鬼もまた燐のことは知っている。知らぬはずがない。

 

十二鬼月の下弦を容易く屠り、まして十二鬼月最強である上弦の頸を一度斬り落とした男だ。

その強さから十二鬼月を始めとした鬼は鬼無辻 無惨から直々に燐の抹殺が言い渡された。

 

 

「頸を斬る前に、お前に聞きたい事がある…上弦の壱、黒死牟は何処にいる?」

 

「知るものか……!知っていたとしても…貴様に話す訳なかろう!」

燐の質問は当然の如く拒否する。

 

「(この鬼は奴の居場所は知らない様だな)」

写輪眼で幻術を掛けようにも、情報がない為、嘘は言っていないと気配で直ぐにわかった。

 

鬼舞辻 無惨の事さえ聞こうとすれば、鬼は震えるほど無惨の事は死んでも話さない。仮に無惨のことを口にすれば無惨の呪いが発動し、喋った鬼はすぐに呪いにより殺される。

 

以前燐は幻術をかけた時、無惨の事を聞こうとしたら、名を口にした途端、鬼は無惨の呪いにより死んだ。

 

 

「そうか、だったらお前に用はないな」

燐は日輪刀を鞘にしまう。鬼はそれを驚愕の目で見つめていた。敵を前にして刀を納刀するのはあり得ない光景だった。

 

しかし燐は瞳の模様を変化させ、鬼を見つめる。

 

「天照」

 

「っ……⁉︎ぎゃあァァぁぁぁぁぁぁっ⁉︎あっ、アツイ!な、何だこれは⁉︎」

 

対象を燃やし尽くすまで決して消えない黒い炎を発生させる。 例えそれが鬼であっても。

 

天照は視界内に対象を捉えるだけで発動させることが可能で、その熱量は通常の炎さえ焼き尽くすほどに膨大だ。

 

強力だが、発動する度に血涙が流れる。現に燐の左眼は血涙を流している。

 

 

鬼は漆黒の炎により何も残らず燃え尽きた。燐はその場から離れるように歩みを始める。

 

「大分目に負担は無くなってきたが、これはどうにかならないのか」

 

燐は血涙を手拭いで拭き取る。使い始めた当初は目に痛みがあった。

しのぶと合同任務を一緒にした際、驚かれ、カナエからはかなり心配をさせてしまった。

 

『天照ばかりはどうにもならん。我慢しろとしか言いようが無いからのぉ……私だって使っていた度に流していたんだぞ』

 

「……わかってます」

 

『しかしお前の万華鏡写輪眼は少し特殊じゃ。恐らく私がお前の中に存在していることに関係があるかも知れぬな』

ここまで燐は機会があれば、万華鏡写輪眼の力を鬼に試していた。普通の人間である燐は力の代償で視力が落ちてもおかしくはなかったのだが、その気配は一向なかったのだ。

 

『(やはり鬼の因子を濃く継いでいることもあるかも知れぬな)」

 

燐は人間である反面、鬼の力を濃く継いでいる。その為、燐は写輪眼の状態であれば血鬼術も使える。

 

 

「んっ、あれは…ハクか? 何だか慌ただしいな」

 

燐の白い鴉が空中を旋回する。

 

「カァー! カァー! 桐生 燐!」

 

この様子だとよからぬ事があったのはすぐにわかった

 

――しかし、鴉の内容で燐に驚愕が走る。

 

「救援要請!コノ先ノ町デ花柱・胡蝶 カナエガ上弦ノ弐ト交戦中!、燐、即刻救援二向カエ!」

 

「なっ⁉︎カナエが!?」

 

「ソウダ!話デハ、カナリ押サレテイルミタイダ!」

 

「……ッ!」

燐は霹靂一閃の移動技を使い、その場から全力で駆け出す。

 

 

「(クソ!最悪だ!よりにもよってカナエが上弦の鬼と……!頼むカナエ、俺が来るまで……無事でいてくれ!)」

 

燐はそのまま電光石火の如く、カナエがいる場所へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日は月が辺りを照らし周囲がよく見える夜だった。

 

街の外れにある広場で、月の明かりに照らされ、二人の姿が見えてきた。

 

一人は白橡色の髪を持つ特異な容姿の男で、もう一人は、長い髪に、頭の左右に蝶の髪飾りを付けた燐の恋人の一人、胡蝶カナエだった。

 

カナエは体中に傷を負い、倒れ込み、満身創痍の状態だった。

 

鬼はゆっくりとカナエに近寄って行く。

 

 

雷の呼吸・壱ノ型

 

 

 

 

 

 

 

 

──霹靂一閃・瞬神

 

 

神速をも上回り、瞬間移動をしたかの様に駆け、鬼の腕を斬り落とし、燐はカナエを抱え鬼から距離を取る。

 

 

 

「りん、くん、燐くん…っ、燐」

カナエは涙を流し、俺の名前を何度も呼ぶ。

 

「無事で良かった……カナエ」

 

燐はカナエの額に自身の額を合わせ、カナエを安心させる

 

 

「速いねぇ、君、腕斬られちゃったよ」

 

 

「………」

 

「無視は酷いなぁ……それより邪魔をしないでくれない。せっかくその子を救済してあげるところだったの「黙れ」…ッ⁉︎」

 

燐は上弦の鬼に振り向き、殺せそうなほどの赤い目で睨む。

 

その瞬間、辺りの気温が一気に下がったかのような感覚に鬼は陥る。

原因は燐から発せられた殺気、まるで全てを凍てつかせる氷結のように、辺りを充満させる。

 

そして上弦の鬼は燐の瞳を見て思い出したかの様に口を開く

 

「その赤く光る瞳、“赤月の雷霆”!あのお方と黒死牟殿から話は聞かされたけど、まさか君だったんだね!」

 

「だったら何だ……屑野郎」

 

「屑はひどいなー、まず君を救済してからその子を救ってあげないとね」

 

上弦の弐はへらへらと薄ら笑いしながら呟く。対して燐は平静な面持ちだが、内心は腸が煮えくり返っている。

 

「げほっ!……燐くん、気を…つけて、あの鬼の氷の…血鬼術……呼吸をしちゃ……だめ」

 

「そうか……ありがとなカナエ。今はゆっくり休め、後は俺に任せろ」

 

「……うん」

 

「姉さんっ!」

しのぶが他の隊士と共に駆けつけ俺たちに近づく、カナエの状態を見てしのぶは今にも泣きそうだった。

 

「泣くのは後だ、しのぶ……カナエを今すぐ蝶屋敷へ、急げばまだ間に合う」

 

「…ッ、わかりました!姉さんは私達が運びます!」

しのぶは流れそうになった涙を拭いカナエをもう一人の隊士と一緒に抱える。

 

「逃すと思うかい?折角可愛い子が増えたのにさぁ」

 

上弦の弐は鉄扇を開く。

 

──血鬼術・散り蓮華

 

 

扇子を振るうとともに砕けた花のような氷を発生させる

 

『気を付けろ燐、カナエの言った通り、上弦の弍…童磨の血鬼術は呼吸で肺を酷使するお主ら鬼殺隊にとっては相性は悪い、慎重に行け』

 

氷の攻撃が迫って来る。カグラの忠告を聞いた後、燐は写輪眼を万華鏡写輪眼に変え、鬼に顔だけ振り向く。

 

 

「……天照!」

 

燐は天照を使い鬼の血鬼術の氷を溶かす。

 

「わぁっ!俺の氷が溶かされちゃった!それが黒死牟殿が言っていた消えない黒炎かぁ」

 

上弦の弐はにこにこと笑みを浮かべていた。瞳には感情が無く、まるで虚無。明らかに歪だった。

 

「お前には何を言っても無駄みたいだな……悪鬼」

 

燐は刀の柄を強く握り童磨を睨みつける。

 

しのぶはもうカナエを連れて離れていた。

 

『燐…日輪刀に向けて天照を使ってみろ』

 

 

『日輪刀に天照を?何故?』

 

『いいからやってみろ!説明は後でする!』

 

 

 

 

 

「天照!」

 

燐はカグラに言われた通り日輪刀に黒炎を纏わせる。

 

すると日輪刀の色が赫く変わり始めた。

 

「何だ、色が……赫く」

 

『上手くいったか。名付けるとするなら… 加具土命ノ剣と言っておこうか、あの馬鹿を思いっきりぶった斬れ!燐!』

 

 

 俺は奴を睨むが、童磨はニヤニヤ笑うだけだ。

 

「さっきから思っていたけど、さっきの子は君の恋人かな?──安心しなよ、君を救った後、あの子もちゃんと救済してあげるから」

 

 

「救済だと?… お前の救済は、殺戮の間違いじゃないのか…クソ野郎」

 

燐は黒炎を纏った赫い日輪刀を童磨に向けるよう構える。

 

 

「お前がどれだけ懺悔しようが……俺は一切情けはかけんぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





最初辺出た鬼の血鬼術はNARUTOの迷彩隠れの術が元になっています。




現在燐が使える瞳術

幻術

コピー(血鬼術不可)

天照

加具土命


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