赤月の雷霆   作:狼ルプス

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第二十二話 

現在、燐は土産を手に持ち一人である場所に向かっている。

 

「(師範と会うのも久しぶりだな……それに、弟弟子達に会うのが楽しみだ)」

 

燐の師である慈悟郎との手紙のやり取りは時間がある時に行なっている。

 

最近では新たな弟子を二人鍛えており、燐は是非とも一目会いたくなって、慈悟郎のもとへ向かっている。

 

名は獪岳と我妻善逸というらしい。一人は真面目だが、少し人との交流に難があり、もう一人は性格が超後ろ向きだったりよく大声をだして騒いでいるとのことだ。

 

「(そう言えば俺、師範に恋人が出来た事こと手紙に書いてなかったな。来たついでに報告するか。二人もいるなんて聞いたらどんな反応するかな?)」

燐は鼻歌を交えながら、慈悟郎の住んでいる場所へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「変わってないなぁ、ここも」

 

 

そして小さな家に着き、扉の前に立ち、扉を軽く叩く。

 

 

 

「あれ?返事がない。師範、いますか?燐です。桐生 燐です!」

呼びかけても返事がないため、燐は慈悟郎の気配を探る。

 

「(いた!師範はあそこにいる。それに近くにもう一つ知らない気配が…)」

燐は気配がした方へと足を運ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「懐かしいなここも…よく師範に拳骨されながら指導されてたっけ」

 

燐は歩きながら辺りの風景をみて修行時代を思い出す。

 

 

最初は素人丸出しで、指摘されるたびに怒声を浴びたり拳骨をくらったり、死ぬ気で山を走らされたり、師範にはコテンパンにやられ続けた。

 

 

「(今となっては俺も鬼殺隊を支える柱の一人か。)雄一…お前がいたら、どんな言葉をかけてくれたかな」

 

雲がかかってきた空を眺めながら今亡き友の名を呟く。雄一は仲間の大切さを教えてくれた強い剣士だった。他の隊士からの信頼が厚く、頼りにされていた。

 

もし生きていれば今頃柱にもなっていたであろう実力の持ち主だった。

 

 

 

「おっ、師範だ。師範!ご無沙汰してます!」

燐は師である慈悟郎の後ろ姿を確認し、一気に駆け出す。

 

「ん?お主、もしや…燐か!」

 

「はい!桐生 燐です!お久しぶりです師範!お元気でしたか」

 

「ほほぉ!随分大きくなったではないか!見違えたぞ!!」

 

「ありがとうございます!これも師範のおかげです」

久しぶりの再会に慈悟郎は驚くも嬉しそうに歓迎してくれた。

 

「うむ、その様子じゃと鍛錬は疎かにしてはいないみたいじゃな」

 

「はい、日々精進しています。それよりも師範、どうしてこちらに?」

 

 

「ああ、そうじゃった、これっ!いい加減降りてこんか、善逸!泣くな!逃げるな!そんな行動に意味はない!」

慈悟郎の視線の先に向けると、木の上には、師範と同じ黄色い三角模様の羽織を着た少年が木にしがみつき泣いていた。

 

「善逸、降りて来い、修行を続けるぞ!」

 

「いやもう死ぬと思うので!これ以上修行したら死ぬと思うので‼︎そこのお兄さんも言ってやってよ‼︎」

 

 

「死にはせん!この程度で」

 

騒ぎ出す善逸はすごく喧しい。近くに行ったら、耳鳴りがしそうなくらいの汚い声量で喋る。

 

「師範、あいつが善逸…ですか?」

 

「ああそうじゃ、才能はあるんじゃがこの通りじゃ」

 

 

確かに、師範も苦労しそうだな。探ってみると変わった気配をしていた。

 

確かに弱気でうるさいが、純粋で綺麗な気配だ。

 

師範の目に狂いはない。本人次第で鍛え上げれば才能が開花するのは確かだ。

 

「善逸!こいつはお前と獪岳の兄弟子にあたる!つまり、儂の弟子じゃ」

 

「嘘でしょ⁉︎爺ちゃんの弟子⁉︎」

 

師範の事を爺ちゃん呼ばわり…違う意味でただ者じゃないな、この少年。

 

「いい加減降りて来い、馬鹿者!」

 

「爺ちゃん‼︎」

 

「師範と呼べい!」

 

何だろう二人の会話を見てるだけでもかなり面白い。見ていて飽きないな

 

「俺…爺ちゃんが好きだよぅ!」

 

はっきり言った。燐は慈悟郎をみると、まんざらでもない様子だった。

 

「(俺もうっかり師範の事を『お祖父ちゃん』って呼んでしまったことがあったけど、師範…こんな顔してたんだ)」

 

燐にとって慈悟郎は師であり祖父がいなかったリンにとってはおじいちゃん的な存在だ。

 

「師範、少し待ってもらってもよろしいですか?」

 

「ん、どうするつもりじゃ?」

 

「善逸と話してきます。何せ初めての弟弟子で楽しみにしていたので」

燐はその場から飛び上がり、一気に善逸のいる高さまで飛び乗った。

 

「ヒィッ!?あんたどうやってここまで⁉︎一瞬で!?飛んだの!ねぇ、飛んだの!?」

 

「それに関しては鬼殺隊だからとしか言えないな、取り敢えず自己紹介だ。俺は桐生 燐。師範の弟子でお前の兄弟子にあたる、よろしくな」

 

俺は泣いている善逸の頭を優しく撫でる。善逸は手を払う様子はなく大人しく撫でられていた。

 

「我妻 善逸っす。訳あって爺ちゃんに弟子入りしてるんだ。兄ちゃん、変わった音してるな。こんな音、今まで初めてだ」

 

「ん、音?」

 

「俺…生まれつきなのか聴覚が普通の人より優れてるんだ。あんたから別の音が聞こえ…今は寝てるみたいだけど」

 

「(こいつ、カグラ様の存在を……やっぱり師範の目には狂いはないな)ヘェー…凄いな、聴覚に優れている人なんてそうそういないぞ。それより師範の修行はどうだ?」

 

「『どうだ?』じゃないよ!?毎日地獄だよ、本当!いつか絶対に死ぬから!最近全く寝れてないし!爺ちゃんからは毎日の様に殴られるし!それに俺はな、もの凄く弱いんだぜ、舐めるなよ!」

 

「面白いところで威張るな……」

流石の燐も呆れていた。

 

「善逸、確かに師範の修行はきついかもしれない。けど、殺す気では指導しないさ…………多分」

 

「何その長い間⁉︎しかも多分って!やっぱりそのうち死ぬじゃん俺!イヤダァァァァァッ!!」

 

煩いな、頭にガンガン声が響く。逆に疲れないのが不思議だ。

 

よし、だったらこれだ

 

「なぁ善逸、一つだけいいことを教える」

 

「え??いいこと?」

 

「ああ、いつか師範からも同じこと言われると思うけどな。善逸、お前はさ……刀の打ち方って知ってるか?」

突然の質問に善逸はわからないと言う様に首を傾げる。

 

「まぁ……普通はわからないよな、今の時代、刀なんて持っていたら法律違反だし、時代遅れだからな。けど、刀はな、刀鍛冶師が魂込めて叩いて、叩けば叩くほど不純な物や余分なものを飛ばして、鋼の純度を高めて強靭な刃を作るんだ」

 

善逸は先程の喧しさはなく燐の言葉をしっかりきいていた。

 

 

慈悟郎は今の燐を若い時の自分を見ている様な感覚になっている。懐かしむ様にその様子を見守っていた。

 

 

 

 

「耐え抜いた日々は裏切らない。必ず報われる。強くなれる。逃げてもいい…泣いてもいいさ。けど…諦めないでくれ。才能で一番大切なのは持ってる型の数じゃない…大切なのは……決してあきらめないど根性だ。そして、善逸は善逸になりの、強い強靭な刃になれ」

 

 

「強靭な刃……俺、なれるかな?」

 

「鬼殺隊の柱の俺が言うんだ。人はきっかけさえあれば変われる。けど、今すぐ変われるわけじゃない、時間をかけてやっていけばいいさ。覚悟を超えた先に、希望はある」

 

善逸はいつの間にか泣き止んでおり俺の話を最後まで聞いてくれた。この様子だと、しっかり頭に刻んでくれたみたいだ。

 

 

「これ!いつまで待たせるつもりじゃ!?いい加減降りてこんか!」

 

「す、すみません、師範!今すぐ降ります!」

燐は慈悟郎の怒鳴り声で木から飛び降り地面に着地する。

 

 

「善逸!お前も降りてこんか!」

 

「わかったよ……爺ちゃん」

善逸は驚くほど素直に従いしがみついた木から降りようと離れようとした時、

 

 

ドォ!

 

 

落雷が突如、善逸が登った木に落ちた。

 

「なにぃぃーーーーっ⁉︎/善逸ーーーーーっ!!!」

 

流石の二人もびっくり仰天。善逸は身体から煙を上げながらそのまま地面へと落下していく。

 

「ッ!善逸!」

燐は落下してくる善逸を受け止め、なんとか地面に叩きつけられるのは回避できた。

 

その後、善逸の髪の色は黄色に変わり奇跡的に生きていたものの、意識は無く目覚めなかった。

 

 

その後は師範の家に急いで運び寝かせた。幸い軽度の火傷で済んだ為、しのぶが作った傷薬を塗り、軽い手当てはした。

恐らく一日は目は覚まさないだろう。

 

 

 

そして今は、

 

 

 

「クソッ!」

 

「息が上がってるぞ、呼吸を整えろ。取り乱せば動きは鈍くなるぞ」

 

「わかってんだよそんなこと!」

 

燐と獪岳は木刀を持ち、現在二人で鈴取りの鍛錬をしている。

 

「隙あり」

 

「あだっ!」

 

燐は獪岳の脳天に木刀を振り下ろし、まともに食らった獪岳は手で頭を押さえ痛みにもがく。

 

「筋はいいが、まだまだ動きは遅い。今の状態じゃ最終選別で不測の事態に対応出来ないぞ」

 

 

「ウルセェな!あんたに言われなくてもわかってんだよ!!」

 

 

「獪岳、お前はもう少し目上に対する言葉遣を学んだ方がいいな」

 

善逸を手当てした後、帰ってきたもう一人の弟弟子の獪岳と会った。弐から陸は使えるらしいが、流石に基本の型となる霹靂一閃を使えないのは痛手だ。

 

その為、交流を深める目的で、稽古をつけたが、話していると少し言葉使いに難があり、善逸の事をカス呼ばわり、人を見た目で判断する傾向や傲慢で独善的な所も見えて来た。

 

気配からしてあまり二人の仲はいいとは思えなかった。

 

 

「なぁ、獪岳、お前はなんで善逸の事をそんなに嫌うんだ?」

 

「あんな奴いるだけで邪魔だ。あんなクズは先生の時間の無駄なんだ「獪岳」ッ⁉︎」

燐は獪岳に向け威圧を放つ。それも本気の殺意を放つ。

 

「お前の言いたいことはわかった。けどな、そんな事を決める権利はお前にはない。決めるのは師範だ。そしてどうするかは善逸次第だ。時間の無駄?今やっている事は無駄だったて言いたいのか?」

 

獪岳はあまりの威圧に何も言えず冷や汗をかき、ただ目の前にいる燐に戦慄していた。

 

「獪岳、お前は確かに才能はあるし筋はいい。けど、今のお前に鳴柱になれるとは思っていない」

 

「なんだと!」

 

「雷の呼吸…始まりの型である壱ノ型を会得できない今のお前には無理だ」

 

霹靂一閃を会得できない者に柱の座を託すつもりは燐にはなかった。

 

「正直俺は、お前に期待してるんだ。獪岳、お前が満足するまで付き合ってやる。今から俺を殺す気でかかってこい」

 

「上等だ!絶対にその顔に吠え面かかせてやる!」

 

「その意気だ。きな」

 

俺は獪岳に出来るだけのことを教え鍛錬に付き合った。

 

結果は言わずとも俺の圧勝に終わった。獪岳が力尽きてしまい倒れた事で稽古は終わった。

 

後はどうするかは本人次第だが、出来る事なら善逸とは仲良くして欲しい。

 

 

 

 

 

「それでどうじゃった、獪岳の腕は?」

 

「筋はかなりいい方ですが…雷の基本となる霹靂一閃を使えないのは少々不安ですね。獪岳には出来るだけの事は指導しましたが、後は本人次第かと」

 

「そうか」

燐は疲労で倒れた獪岳を運んだ後、慈悟郎と桃を食べながら、獪岳との稽古の内容を話していた。

 

「そうだ師範、報告したいことがあるんです」

 

「ん、なんじゃ?」

 

「俺、 恋人が二人……出来ました。」

 

「ブフゥーッ!」

師範は飲んでいたお茶を勢いよく吹き出した。

 

「ゴホッ!ゴホッ!、り、燐よ…それはまことか?」

 

「は、はい…本当です。因みに二人は姉妹で、お恥ずかしながら、相手から想いを告げられました」

 

「な、なんと、にして燐、迷惑はかけてはおらんのだろうな?」

 

「それに関しては大丈夫です。今、すっごい幸せですから」

 

燐は幸せそうに笑みを浮かべる。それを見た慈悟郎はそれ以上追求はしなかった。

 

「そうか」

 

慈悟郎は燐を乱暴に頭を撫で回す。

 

燐は恥ずかしそうにも黙って慈悟郎に撫で回される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし燐はこの時知る由もなかった。

 

一人の弟弟子が歪んだ道へと歩んでしまうことを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ……知らなかった。

 

 

 




善逸の性格ってこんな感じで大丈夫でしょうか?

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