赤月の雷霆   作:狼ルプス

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第二十四話

『のぉ、お主は後悔しておらぬか、私と夫婦になったことを?』

日の当たらないところで、白髪の女性が赤子を抱いており、もう一人は赤子を撫でながら白髪の女性を見つめていた

 

『いきなりどうしたんだ、カグラ?前にも言ったはずだよ、後悔はない、君とこうやって家庭を築き上げて、とても幸せだって』

 

『しかし、私は鬼じゃ、日の照らす中では動けない。しかも人を喰らう汚物なのは知っておろう、私は家族を食らった……縁壱さんと会うまでは、自暴自棄になりながら鬼どもを殺していた』

 

『確かに、君の罪は…この先一生消えないかもしれない。けど、産まれてきたこの子に罪はない。僕はこの命がある限り、君とこの子と一緒に、同じ歩幅を歩きたい』

 

『輪堂……』

その光景は陽だまりのように温かった。輪堂と呼ばれた男性はカグラと赤子を一緒に抱きしめる。

 

 

 

嗚呼、なんて温かい。

 

 

「──、────ん、起きて、“燐”」

 

 

———————–––––

 

————————

 

—————

 

 

 

 

 

 

 

気づけば、燐が住んでいる鳴屋敷であった。この屋敷の周りは木の葉がよく落ちていた

 

「起きて貴方。柱合会議に遅れるわよ」

 

 

そして現在、燐の肩に手を置き、揺らしながら起こす女性──

 

彼女は桐生 カナエ、燐の奥さんである。

 

彼女は屋敷の近くにある木の根本で、愛おしい夫が体を預け眠っていたのを発見した。

 

「ん……んん、カナエ…か?」

  

瞼がゆっくりと開き目が覚める。上体をゆっくりと起こし眼元をさすった。

 

「…………ふぁ」

 

「ふふ、随分と熟睡していたみたいね。ほら……。」

 

「すまない、ありがとう」

 

カナエは燐の頭についた木の葉を落とす。燐は近くに置いていた羽織を着て、日輪刀を腰に身につける。

 

「燐、どうして……泣いてるの?」

 

 

「え………?」

風が吹き、この葉が舞う中、燐はカナエに言われ顔に手を触れると知らぬ間に涙を流していた。

 

 

自身も何故涙を流しているのか全く分からない。カナエからは、会議が終わった後、しのぶに診てもらった方がいいと言われた。

 

訳もわからず涙を流したくらいで診察はするつもりはない。

 

 

「この後、カナエは蝶屋敷に行くんだよな?」

 

「うん、まだ仕事が残ってるから」

 

「わかった。後で俺も行くよ、話によると善逸もいるみたいだからな、久しぶりに顔を見たいし」

 

「燐の言っていた弟弟子くん、他の患者さんの対応で見ることはなかったから、私も一目見ておこうかな」

 

「あまりお勧めはしないけどな……善逸の奴、かなりの女好きだって師範が言ってたから、俺に奥さんがいるのはあえて言わなかったんだ」

 

「うふふ、心配しすぎよ。私は桐生 燐の妻…桐生 カナエですから!流石に人妻に善逸くんは手は出さないわ」

 

「だと、いいけどな…」

善逸の事だから汚い高音を上げながら怒鳴ってくるのが目に見える。

 

 

「それじゃあ、行ってくる」

 

「うん、いってらっしゃい」

 

 

屋敷から出て、産屋敷邸へ向かう。

 

 

 

 

目的地の屋敷に到着し、門をくぐり庭に小走りで向かうと既に柱が殆ど集まっていた。

 

 水柱・冨岡 義勇

 

 音柱・宇髄 天元

 

 岩柱・悲鳴嶼 行冥

 

 炎柱・煉獄 杏寿郎

 

 蛇柱・伊黒 小芭内

 

 風柱・不死川 実弥

 

 霞柱・時透 無一郎

 

 恋柱・甘露寺 蜜璃

 

 蟲柱・胡蝶 しのぶ

 

 

そして、彼等の前には額に痣がある青年・竃門 炭次郎が腕を拘束されて座っており話をしている最中だった。燐に気付いた柱の1人、炎柱となった杏寿郎が声をかけてくる。

 

「燐!久しいな!」

 

「ああ、久しぶりだな杏寿郎」

 

「元気そうだな、胡蝶姉妹と派手に順調か?」

 

「ああ、ド派手に順調だ。天元は?」

 

「おうよ!こっちもド派手に順調!困ったことがあったらなんでも相談しろよ、女経験は派手に豊富だからな!!」

久しぶりに会った杏寿郎と天元に挨拶を交わし、そのまま霞柱である無一郎に視線を向ける。

 

「(今回は雲を見上げているのか……時透。俺のことは忘れてはいるが、腕は確かなんだよな。けど……毎度思うが気配の流れがどことなくあいつに似ている)」

 

 

「やっときましたか。それに珍しいですね、あなたが最後に来るなんて」

 

「ちょとばかし寝過ごしただけだ、疲れがたまってるのかもな」

 

「全く、体調管理はしっかりなさってください。あの時みたいになりたくなければですけど?」

 

 

「……了解だ」

しのぶのこの威圧感のある笑顔が怖い。蟲柱としてのしのぶはカナエの様な口調で話している。その代わり、蝶屋敷では燐とカナエ、蝶屋敷の住人には素で喋っている。

 

ただ、本当にこの笑っている様で笑っていない黒い笑みが怖い。燐はある時、鬼の力を制御する鍛錬をした際、怪我を負い痩せ我慢をしたが、しのぶにバレてしまった。

 

 

『燐さん……顔色が悪くありませんか?』

 

『どこが?至って普通だ』

しのぶと会話をしている時、燐の違和感に気づいたしのぶは、燐に触れた。

 

『……ッ』

 

『……燐さん、腕を見せてください!』

しのぶは強引に燐の服の袖をまくると、その腕は酷い火傷の跡があった。

 

『火傷、なんで放って置いたんですか⁉︎』

 

『別にこれくらいどうって事ない、軽い火傷だ』

 

『軽い火傷で済ませる怪我じゃないでしょう!?こっちに来てください!手当てしますから!』

 

しのぶは燐を強引に診察室に連れて行き、怪我の手当を始める。

 

『全く……言ってくれれば手当てしましたのに、なんで言ってくれなかったんですか?あなたは冨岡さんと違ってしっかり診察は受けてくれるんですから』

 

『わざわざあいつを引き合いに出さなくても良いだろう?最近、お前も柱になって立場的に忙しいからな。余り迷惑はかけたくはなかった』

 

『これくらいどうって事ないですよ、それからもう一つ……』

 

『なんだ、まだ何かあるのか?』

するとしのぶは一瞬にして座っている椅子に燐を拘束した。

 

『お、おい……これはどう言うつもりだ?』

 

『以前カナヲから聞いたんです。“目から血を流しながら屋敷に入った”と。……どう言う事でしょうか?』

 

『……』

燐はしのぶの笑みに冷や汗を隠しきれなかった。無闇に発言すれば何をされるかわかったものではない。

 

 

『沈黙は肯定とみなします。万華鏡写輪眼は特訓で余り多用しない様にと、前みたいに倒れて寝込んでしまっていたのに何も学んでいませんね。姉さんと一緒にあれほど言いましたよね?』

 

『そ、その、試したい事が色々あってだな『言い訳は聞いてません』……はい』

 

 

『その為、約束を破った燐さんは罰を受けてもらいます』

 

 

『おい、何をするつもりだ?』

しのぶは燐に近づき指を動かし、脇に手を近づける。

 

『え?マジで?お、おい…やめアハハハハハ!や、ヤメテ!ダハハハハハ!』

 

俺はしのぶにくすぐられる。しのぶは意外とこう言った時には加虐嗜好がある。

 

蝶屋敷は燐の笑い声が響き渡った後日、笑いすぎて声を枯らし、喉の薬を処方された。

 

 

 

以降、燐は万華鏡写輪眼を使った修行は一時間と定められた。

 

 

 

 

 

 

 

「安心しろ、約束はちゃんと守っている」

 

「嘘はついてはいないみたいですね」

 

しのぶは燐を見つめ、言っていることに嘘がないと分かると離れる。

 

 

 

そして燐は悲鳴嶼に話しかける。

 

「お久しぶりです、悲鳴嶼さん、お元気でしたか」

 

 

「うむ、そちらも変わり無いようだな、燐」

 

 

鬼殺隊岩柱・悲鳴嶼行冥──カナエとしのぶの恩人である。

 

二人の話によると、鬼に襲われた際、救ってくれた上に鬼殺の道へと導いた人だという。

数珠をもって僧侶のようによく“南無阿弥陀仏”と唱える。

 

唐突に涙を流すし、体格は今まで見た事がないくらい大きく、一目見ただけでもすぐに分かる人だ。

 

カナエとしのぶの話を聞いた時、ぜひとも会いたいと思い、柱に就任した時、カナエから特徴を聞きすぐに分かった。

 

第一印象は、話しかけづらかった。気配でかなりの実力者だとすぐにわかったからだ。

 

勇気を出して話しかけたら思いの外話しやすく、いい人だった。もう少しきつい感じな人かと思ったがそうではなかったのだ。

 

俺が柱になった時には、すでに柱として鬼殺を行っており、その実力は柱の中で最高なのではないかと思われる。

 

任務は柱になっても一緒に行った事がない為、実際に戦闘しているところは見たことがない。

それでも悲鳴嶼さんは圧倒的な覇気を纏っている。

 

 

胡蝶姉妹と夫婦になった時は涙を流し祝ってくれた。

 

 

「燐、鬼の妹は人を食ってないとこいつは抜かしているが実際はどうなんだ。お前なら気配でわかるんじゃねぇのか」

 

 

「そうだな、ある程度、話は義勇から聞いてはいる。今から確認しよう」

 

周りは「あの冨岡が?」と言いたげな視線を義勇に向けているが仕方ない事だ。義勇は余り話さないし、無表情で何を考えているかは全くわからないのが主だ。

 

 

燐は炭治郎の前に行き、彼が見やすいように膝をつき屈む。

 

 

「竈門 炭治郎でいいよな?」

 

「は、はい」

 

「改めて自己紹介するが…俺は桐生 燐、鬼殺隊鳴柱を勤めている。義勇からお前達の事はあらかた聞いた。単刀直入で聞くが、お前の妹…竈門 禰豆子は、人を喰っていないのか?」

 

 

「禰豆子は… 人を食べてはいません! 禰豆子は人を守るために今まで戦ってきたんです!! 信じられないかもしれませんが…本当なんです!」

 

 

「……そうか」

近くにあった鬼の禰豆子が入っている箱に視線を移し気配を感じ取ったが、今まで感じた鬼の気配とは全く違った。

 

 

「(今まで感じたことのない気配、鬼と言う割には邪気を感じられない。義勇の言っていた“新しい風”とはこう言うことなのか)」

 

あながち間違いではないだろう。

 

「しのぶはどう思う?」

 

 

「私は、正直信じられないです。仮にもし本当だとしても、私達では判断しかねません」

 

「俺は信じるよ」

 

「なっ⁉︎本気なのか燐!」

 

「勘違いするな、『竈門の話を信じる』と言っただけだ。最終的にはお館様の判断に従う」

 

 

「……(この人……俺の話を聞いただけで禰豆子が人を食べて無い事を信じるんだ?それに…この人の匂い、初めて会ったはずなのに何か懐かしい、そんな感覚がする)」

 

他の柱もその事を聞いて燐に聞き始める。

 

「うむ、燐は冗談を言い奴ではないからな、しかしそれだけでは俺達は信じられないぞ?」

 

「それが事実かは今から始まる柱合会議で決まるだろう。それに、俺もお前らには隠してることもある……」

 

鬼の娘が入っている木の箱に視線をむけると、左手に箱を持っている不死川の姿があった。

 

「鬼を連れた馬鹿隊員ってのはそいつかいィ?一体全体どういう事だァ?」

 

「不死川…何やってるんだ?」

 

「見ればわかるだろォ鬼を連れた馬鹿隊員とこの鬼の処罰は俺達で十分だろうゥ」

 

「不死川…今すぐ刀と箱を下ろせ…勝手な事はするな」

 

燐の言葉を不死川は無視し、不死川は腰の刀に手を掛ける。

 

「鬼が鬼殺隊として人を守るために戦うだぁ? そんな事はなぁありえねぇんだよ!!」

 

勢い良く刀を抜き、箱へ突き刺すとボタボタと箱の底から血が垂れていく。それを見て、炭治郎は怒りに任せて立ち上がり、後ろに縛られているのにも関わらず突っ込んでいく。

 

「俺の妹を傷つける奴は! 柱だろうが何だろうが許さない!! 」

 

「ハッ! そうかい良かったなぁ!」

 

不死川が真っ向から突っ込んでくる炭治郎を容赦無く斬り捨てようと刀を構えるが、

 

 

 

 

 

 

 

 

燐が一瞬にして二人の間合いに入り込み炭治郎を頭を掴み押さえ込み、不死川の刀を素手で受け止める。

 

「なぁ不死川、俺は刀と箱を下ろせと言ったはずだ、それと竈門、気持ちはわかるが勝手な行動はやめろ……いいな?」

 

 

「「ッ⁉︎」」

 

炭治郎は今まで感じたことのない威圧に心臓を鷲掴みにされた感覚に襲われ、不死川は冷や汗をかくことしかできなかった。

 

 

「テメェ、その眼は…」

 

 

「お館様の御成です!!」

 

 

お館様の子どもの声が突如として響いた。

 

 

 

 

産屋敷 耀哉の到着を告げられ、柱たちはその場で片膝を突け、頭を下げる。

 

炭治郎は疑問符を浮かべる中、鬼の禰豆子の箱を奪還した燐が、炭治郎の隣で頭を下げるよう諭すと、炭治郎も急いで片膝を突き頭を下げる。

 

 

「よく来たね、私の可愛い剣士たち。今日はとてもいい天気だね。空は青いのかな?」

 

 襖を開け到着した耀哉がそう呟き、双子の手を取り歩む。

 

「顔ぶれが変わらずに半年に一度の柱合会議を迎えられたこと嬉しく思うよ」

 

お館様がそう呟き、双子に手を貸してもらって座布団に上に座る。

 

そうして始まった柱合裁判だが竈門兄妹を容認するお館様に、行冥,小芭内,杏寿郎,天元,不死川が反対意見を述べる。

 

 

お館様がやってくるなり、不死川を皮切りに炭治郎の件を説明して欲しいと言うとお館様は説明をし始めた。まず、お館様は炭治郎と禰豆子の事を知っていた。そしてそれを容認していて、皆にも認めて貰いたいと思っている。それには多数が反対した。

 

 

 

勿論、お館様はそれを承知していたからこそ禰豆子の為に命を懸けている存在がいる事を踏まえて、ある手紙を読み上げた。手紙の主は元水柱であり、義勇、そして炭治郎の育手である鱗滝 左近次という者からで、「禰豆子が人を喰わない強靭な精神力を持ち、鬼でありながら人としての理性を保っている。そしてもしも人を襲った時は竈門 炭治郎及び鱗滝、冨岡の三人が腹を切って詫びるtとの事だった。

 

そしてもう一つ。お館様が二人を容認して欲しいと願う理由がある。それは炭治郎が鬼達の元凶である鬼舞辻 無惨と遭遇している事だ。お館様曰く、鬼舞辻にとって禰豆子,炭治郎の両名は予想外の何かが起きているのだと考え、その尻尾を掴んで離したくないらしい。

 

 

「(まさか無惨と遭遇しているとはな……)」

 

『無惨が目をつけたのは恐らく小僧の耳飾りが原因じゃろう。縁壱さんは唯一無惨が恐れていた男じゃ。脅威にならないうちに始末しておきたいのだろう』

 

「(どれだけ強かったんだ…継国縁壱って剣士は)」

 

 

『同じ事を言うが、一人で十二鬼月を全滅させるほどの実力者じゃ。お主では到底及ばぬ』

 

燐は鬼殺隊の核となった始まりの呼吸である「日の呼吸」の使い手である事をカグラから聞いていた。

 

カグラから聞いた時、使っていた日輪刀は黒だったと聞く。

 

 

 

「(待てよ、もしかして…俺には二つの呼吸の適性があるのか…じゃあ、灰の呼吸はいったいなんなんだ…』

 

 

「人間ならば生かしておいてもいいが鬼はダメです!承知できない!」

 

そんな事を考えていると、不死川が自身の腕を刀で斬り、大量の血を流す。それを箱の上に翳すとボタボタと血が箱へと落ちていく。

 

「不死川、日なたではダメだ。日陰に行かねば出てこない」

 

伊黒の言葉に不死川は箱を持って、屋敷の中の日陰へと入り込んで箱を無理やり開ける。

 

「やめろ!! 禰豆・・」

 

 

「大人しくしてろ、竈門、信じてやれ…お前の妹を」

 

 

駆け寄ろうとする炭治郎だが、燐は炭治郎を止める。

 

過去に燐は鬼化してしまった友、雄一を殺めており炭治郎の気持ちは痛いほどわかっていた。

 

 

その間にも不死川の手によって箱から出てきた禰豆子は先程貫かれたせいで肩から血を流しながら不死川の血塗れの手を見て、呼吸を荒げた。

 

「禰豆子ぉぉ!」

 

炭治郎の叫びが禰豆子に届く。それを聞き、禰豆子は目を背けた。まるでそんなモノに興味など無いと言わんばかりにそっぽを向く

 

『ほぉ、たいしたもんじゃ』

 

「(カグラ様…恐らくこの後、貴女のことも明かすかもしれません。ご準備のほどを)」

 

『確かに、そろそろ潮時かもしれんな』

 

禰豆子が人を襲わないという証明が出来てしまい、今ここでの処罰は行われない事になった。

 

「十二鬼月を倒しておいで。そうすれば炭治郎の言葉の意味もきっと変わる」

 

「はい!禰豆子と共に鬼舞辻 無惨を倒し、悲しみの連鎖を断ち切る!」

 

 

「今は無理だから、まずは十二鬼月を倒してからだね」

 

 

「は……はい」

炭治郎はお館様に言われて余りの恥ずかしさで顔を赤く染めてしまっていた。

 

 

「でしたら、竈門君たちは私の屋敷でお預かりしましょう」

 

 しのぶは頷き、両手で手を叩き、隠を呼ぶと、隠たちは炭治郎と禰豆子を連れてこの場を去る。

 

 

 

炭治郎は逆らうように戻って来て実弥に頭突きをしたいと言っていた。

しかし、それは、無一郎に石を投げられ、手痛い一撃を受けて叶わなかった。

 

再び隠に連れて行かれ、炭治郎の姿が見えなくなった。本筋である柱合会議が行われる。

 

「お館様、発言の許可を」

 

「ああ、構わないよ…実弥」

不死川はお館様の発言の許可をもらい燐を睨む。

 

「桐生、テメェのさっきの目はなんだァ?あれは普通の目じゃねぇだろォ」

 

「……お館様」

 

「うん、そろそろ潮時かもしれないね。構わないよ燐、彼女を紹介してくれないかい」

 

「御意」

 

燐は目を瞑り、暫くすると眼を開き瞳の色は赤く、模様は六芒星の形に変化していた。

 

 

「おい燐、お前…その瞳は、しかも…この気配は」

 

「この場にいる耀哉殿としのぶ以外は初めましてじゃな…柱の諸君、我が名はカグラ…燐の中に宿る鬼じゃ」

余りの変化にしのぶ以外は一瞬にして警戒態勢に入り耀哉の前に守るように立つ。

 

 

「まっ、その反応は予想通りじゃ。安心しろ…私はお前達と敵対するつもりはない。むしろ「風の呼吸 伍ノ型・木枯らし颪」最後まで言わせんか…風の小僧」

 

不死川は日輪刀を抜き、燐(カグラ)に向け斬りかかるが、燐(カグラ)は不死川を睨みつけると、不死川は突如動きを止めた。

 

 

「(な、なんだ…体が全く動かせねェ、血鬼術か!?)」

 

「安心しろ、お主を傷つけるつもりはない…話をしたいだけじゃ、他の柱の方々も刀をお納めくださらんか」

燐(カグラ)は言うが、しのぶ以外の柱は刀を納める気配はない。

 

「みんな、刀を納めてくれ。カグラ、実弥にかけた術を解いてくれないかい。みんな、燐……彼女は鬼であるけど私達の敵ではない。何せ彼女は…桐生家のご先祖だからね」

 

「わかった」

燐(カグラ)は不死川にかけた幻術を解くと、不死川は飛ぶように後ろに退がる。

 

周りは「燐の先祖⁉︎」やら「鬼がか⁉︎」と言う驚きの言葉はあったが、お館様の一言で刀を納めた。

 

「しのぶちゃんはどうして冷静でいられるの⁉︎」

 

「私は燐さんと交際する前から知っていました。因みに蝶屋敷の皆はカグラ様の存在を知っています。燐さん自身存在に気づいたのは上弦の壱との戦いの後です。その時にお館様からはまだ言うべきではないと言われ今まで黙っていました」

 

 

「説明ありがとう、しのぶ、みんな…しのぶが言っているのは本当だ。燐は直ぐに私の元に訪れカグラの存在を明かした。そして彼女は…… 鬼舞辻を追い詰めた鬼でもある」

 

 

「ッ⁉︎」

しのぶ以外の柱は全員驚愕の表情になる。あの時透ですら表情を変えている。

 

「鬼舞辻を追い詰めただと⁉︎」

 

「じゃあお前は、鬼舞辻の能力を知っているのか⁉︎」

 

「話やがれ、テメェの知っている鬼舞辻の事をよぉ!」

 

不死川は燐(カグラ)に迫り胸ぐらを掴み、睨む。

 

「落ち着かんか…不死川 実弥。勿論そのつもりで私は出てきた。皆も聞いてくれ、私が知っている無惨の事を全て話す」

 

そして全員、屋敷内に集まり、燐(カグラ)は始まりの鬼、鬼舞辻 無惨について知り得る限りの事を柱の全員に説明する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よもや、長年姿を見ることがないわけだ。情報がないのも納得だ」

 

「空間を操る血鬼術…派手な術を使う奴もいるもんだな」

 

「自身の肉体の分裂、たとえ追い詰めたとしても逃げられてしまうのか」

 

無惨の能力に柱の全員が戦慄を覚える、例え追い詰めたとしても逃げられるのだから。

 

「ねぇ、あんたは鬼舞辻と戦ったって言うけど…結局は負けたの?」

 

「あと一歩の所まで追い詰めたが、不意をつかれやられた。私は無惨に取り込まれる前に、自身の術を自分にかけ取り込まれる前に自害したんじゃ。」

 

カグラは無惨に取り込まれる前に自身に天照を使い自害したのだ。もし取り込まれたら……無惨が写輪眼の力を使えるようになれば……さらに脅威になると考えカグラは自害を選んだのだ。

 

「それから気づかぬうちに燐の先祖の中に存在してきた。今まで干渉はできなかったが…燐に宿ってからはこうやって人格を入れ替えることもできるようになったと言うわけじゃ。実際の姿は燐しか知らぬ。私が知っている無惨については以上じゃ。何か質問はあるかの?」

 

燐(カグラ)は話を終え、他に質問がないか確認すると、一人手をあげている人物がいた。

 

「あ…あのぉ、カグラさんのその眼は桐生さんにも受け継がれているんですか?さっき不死川さんがその眼はと言っていたので」

質問してきたのは恋柱・甘露寺 蜜璃 、カグラの写輪眼が気になっていたようだ。

 

「ああ、この眼は私の血筋で燐まで受け継がれている。ただ、人間の血が混じっているせいか…先代は片目だけの開眼が殆どじゃったが、燐は私の力を濃く受け継いでいる為か…両眼開眼となっている」

甘露寺は「成る程」と納得したように相槌を打つ。

 

 

「私からは以上じゃ…後は燐に聞いてくれ。この状態でいられるのは限られているからのぉ」

燐(カグラ)の瞳は黒色の瞳に戻り、ふらついた所を、しのぶが支える。

 

「大丈夫ですか…燐さん」

 

「ああ…大丈夫だ…」

 

 

 

 

 

「すまない燐、無茶をさせてしまったようだね」

 

「謝らないでくださいお館様、これくらい大丈夫です」

 

 

 

 

 

 

 

 

この後会議は終了し、終わった後、天元と杏寿郎に今までカグラの事を内密にしていた事に殴られてしまったが、二人は俺の事を鬼としてではなく桐生 燐として信じてくれた。

 

竈門の妹はこれからの実績次第で考えを改めるらしい。

 

 

 

 

 

その後三人は天元の提案で燐の奢る形になり、遅くまで飲んだ為、燐は酔い潰れてしまい、二人は燐を抱え蝶屋敷へ運んだのだった。


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