赤月の雷霆   作:狼ルプス

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第二十六話

「この空間…」

 

 気が付けば、そこにいた。辺り真っ暗な一面、水が広がり自身の立っている場所は波紋が広がり水面が薄蒼く照らしている。

 

 

「すまんの、何も言わずに意識をこの空間に連れて」

声のした方へ振り向くと黒い勾玉模様の入った白い羽織を身に着けた女性、カグラが立っていた。

 

「いえ…貴女がこの空間に呼ぶってことは何かあるんでしょう?長い付き合いだ。それくらいわかりますよ」

 

「話が早くて助かる」

 

「それで、内容は?」

 

「お主に、神鬼合一の更なる先に…今のお主なら使えるかもしれん」

 

「神鬼合一の更なる先…」

本来神鬼合一は燐の中に眠る鬼の力を引き出すためのもので、完全に解放出来ているわけではない

 

「ああ、しかし、神鬼合一よりも更に危険を孕んでおる。それでも良いか?」

 

「覚悟の上です」

燐は拳を掌に当て気合を入れるよう答える。

 

 

「そうか、だったら私の手を合わせろ、お主の中にある枷を外す」

 

「わかりました…」

燐はカグラと手を合わせると、燐から赤紫色の闘気が溢れ出て、それはしばらくすると静まっていく

 

「………」

 

「終わりじゃ…」

燐は目を開き手を握ったり開いたりと繰り返しながら状態を確認する

 

「なんだが、何かを外した気分だな…」

 

「その力をどう使うかはお主次第じゃ。私の用件は以上じゃ、現実に戻すからの」

 

カグラは印を組み、燐の意識は現実に引き戻される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュンチュン

 

場所は燐の鳴屋敷の寝室、日の光が襖から差し込む。

 

「(…朝か、神鬼合一の更なる先…か、それにしても腕が痛いな、頭にも何か柔らかい感触が)」

燐は意識をハッキリさせたのち自身を確認すると両側に二人の人物が眠っていた。

 

一人は長い髪が特徴で、燐の腕に抱きついているのがカナエ、そしてもう一人は胸元に抱き寄せて眠っているのがしのぶだ。

 

二人は燐に抱きついた状態で添い寝をしていたのだ

 

「(そう言えばしのぶが珍しく俺の屋敷に泊まってたっけ、それと…どうするかこの状況、無闇に動けないな)」

 

燐はこの状況をどうするか考え込んでいた。夫婦になり三人で寝ることはあるがお互い忙しいため一緒に寝ることは少ない。

 

 

「ふぁぁああぁあ……あら、燐…起きてたの? おはよう~」

 

腕に抱きついて眠っていたカナエが目を覚ます。

 

「ああ、おはようカナムグッ!」

 

「あら、どうしたのそんな変な声出しちゃって……うふふっ、しのぶったら」

しのぶはカナエ起きて毛布がズレたため燐をさらに強く抱きしめる。

 

「ムグーッ!ムグー!(助けてくれ!息がしづらい!)」

燐は顔を真っ赤にさせながらカナエに助けを求めるがカナエは微笑ましく見ており助けてくれる気配がない。

 

しのぶは思いの外強く抱きしめており、振り解こうにも解けない、「これで本当に鬼の頸が切れないのか?」と疑問に思える。

 

そしてなんとか抜け出そうと動くが、

 

「…んあ」

何処か艶めかしい声を出すしのぶに燐の動きは止まる。

 

 

「(こんな時に限ってそんな声出すなよ!余計動けないだろ!カナエの助けも正直期待できない…なんとかして抜け出すしかなさそうだな)」

燐は抱きしめていたしのぶの手をなんとか離すことで脱出に成功した。

 

「タハァっ!はぁ……はぁ、危うく窒息するところだった」

 

「あらあら、朝から見せてくるわね…貴方」

 

「お前も微笑ましく見てないで助けろよな…本当に息出来なかったんだぞ」

息を整えながら起き上がるが、しのぶは起きる気配が一向にない。

 

「しのぶ…こんな状況でも寝てるな、相当疲れが溜まってるのか」

 

「そうかもしれないわね。最近鬼の毒に抗体を持った燐の血を使った毒を作っているみたいだし、試行錯誤繰り返していたわ」

 

「俺自身、しのぶの力になれるならいいが流石に頑張りすぎだな…しかし、こいつの寝顔…久しぶりに見るな」

 

「うふふ、燐は知らないと思うけど…しのぶ、一緒に寝ている時貴方の名前を呟く時があったのよ。その時の表情はとても幸せそうだったわ〜」

 

「あはは、どんな夢見てたんだ…しのぶの奴」

 

燐はしのぶの頭を撫で寝顔を見つめる。その顔はとても安らかで眠り姫と言うくらい綺麗だった。

 

「しのぶには悪いけど…そろそろ起こさないとな、しのぶ、そろそろ起きろ…朝だぞ」

 

「う〜ん」

しのぶは起きる気配はなく毛布を頭を隠す様に潜ってしまう。

 

「しのぶ〜そろそろ起きないと他の隊士に示しがつかなくなるわよ〜」

 

「姉さん…あと五分」

しのぶは起きる気配はなく二度寝をしようとする。

 

「起きろしのぶ、二度寝はよくない」

燐は強引に毛布を剥ぎ、しのぶは布団の中で猫の様に蹲っていた。

 

「(……猫)」

 

「あらあら、猫みたいに蹲っちゃてるわ」

 

「起きろしのぶ…仕事に遅れるぞ」

 

「あと一時間!」

 

「なんで時間が伸びるんだよ!いい加減起きないとぉっ!」

 

燐はしのぶに引っ張られお互い見つめ合う状態になってしまう。

 

「……え、燐……さん」

 

「やっと起きたな、おはよう…しのぶ」

燐はしのぶの額に口付けをする

 

「……!」

しのぶの目は開いており、寝ぼけていたが意識がハッキリとした途端、燐の行為に気づき、頬を赤くしながら燐を突き飛ばす

 

そして突き飛ばされた燐は壁に頭をゴンッ!とぶつけてしまう。

 

「ッ〜〜〜」

しのぶは突き飛ばした後、顔を真っ赤にしながら寝室から出る。

 

 

「り、燐…大丈夫?」

 

「……ああ、大丈夫だ」

突き飛ばされた燐は、壁に頭をぶつけてしまいコブを作っていた。

 

しのぶは鬼の頸が斬れない反面、押す力、突き技に関しては鬼殺隊上位に食い込む。

 

燐が写輪眼でしのぶの突き技を模した時、筋肉痛を起こしてしまうほどだ。

 

 

 

「取り敢えず朝飯準備してくる…カナエはしのぶを頼む」

 

「え、ええ…わかったわ」

 

 

 その日の桐生夫妻の朝は、賑やか?であった

 

 

 

 

 

        ◆    ◆    ◆

 

 

「ほら…受け取れ」

 

「ありがとう…燐さん」

 

 朝を迎えるがしのぶは気まずい気持ちでいっぱいだ

 

 あの後カナエはしのぶを慰め何とか落ち着いたが、それでも突き飛ばした事に罪悪感があるみたいだ。

 

 

 

 

因みに燐はある料理人に料理を教えてもらい料理ができる。

蝶屋敷で振る舞ったことがありみんな大好評だった。カナエとしのぶも驚いた様に食べてくれて美味しそうに食べる姿を見て、燐は料理を趣味の一つとしている。

 

 

 

 

 

「……その、ごめんなさい…頭、大丈夫ですか」

 

「平気だ。謝るのはこっちだ、幾ら俺の奥さんとはいえ、いきなり額に口付けなんてしたらそうなる」

 

「でも…」

 

「だから大丈夫だ、取り敢えず冷めないうちにに食べてくれ」

 

「…そうですね」

 

「ふふっ、じゃあ二人とも挨拶しましょう」

 

「「「いただきます」」」

 

 

両手を合わせて一礼。しのぶは味噌汁を一口すする。

 

「相変わらず美味しいですね」

 

「ええ、毎回思っているけど…女として負けた気分だわ」

 

「そうか?男もやれば料理も出来るもんだぞ……ズズ、おっ…今回も良い出来だな」

燐は味に満足した様に食事を口に運ぶ。

 

食事が終わり片付けが終わった後、燐はカナエとしのぶの髪の手入れをしている

 

「ふふっ、くすぐったいわ、燐」

 

「すまない、大丈夫か?」

 

「大丈夫よ…やっぱり燐は器用ね。初めてされた時が懐かしいわ」

 

燐は母によくやっていて手慣れた手付きで手入れをしていく。

 

「確かお前が珍しくボサボサになってた時だっけ?あれは凄かったな…所でカナエ…善逸達の様子はどうだ?そろそろ機能回復訓練はやっているんだろ?」

 

「えっと…炭治郎君は問題はないんだけど、善逸君と猪之助君がちょっと」

 

「当ててやろうか?カナヲに負け続けた結果、心が折れて参加していない…そうだろ?」

 

「うん、正解よ」

 

「やっぱりか…気持ちはわかるが精神面がまだまだ未熟だな」

 

燐は手を止めずカナエの髪の手入れをした後、顔を洗い終わったしのぶが部屋に戻ってきた。

 

 

「しのぶ…こっちに来い、髪…整えてやるから」

 

「……お願いします」

そして燐はしのぶの髪を手入れを始める。しのぶはカナエより短めだがそれでも結べるくらいには長い。

 

「しのぶは久しぶりにやるが…大丈夫か?痛くはないか?」

 

「…平気です」

 

「どうした…まだ突き飛ばした事気にしてるのか?」

 

  

「いえ…それもありますけど…燐さんは髪の長い女性の方が好みなんですか?」

 

「いや…俺は好きになった奴しか興味がないから髪なんて本人の自由だと思うぞ?しのぶはしのぶでいれば良い、俺はありのままのしのぶが好きだから」

 

「そ、そうですか」

 

「だが、無理してカナエの口調を真似する必要はないんだぞ?正直気味が悪い」

 

「気味が悪いは余計よ!悪うございましたね!」

 

「ははっ、しのぶはやっぱ可愛いなぁ〜、流石俺の妻」

 

「それ今関係ないですよね!」

 

「怒るなって……よし、終わりっと」

しのぶの蝶の髪飾りをつけ胡蝶姉妹の髪の手入れは終わった。

 

 

 

 

燐は道具を直している間に、二人は燐に聞こえない様に何やらコソコソと話し始める。

 

「姉さん…今伝えるべきだと思うわ」

 

「えっ…今⁉︎でも…心の準備がまだ」

 

「大丈夫よ、姉さん、燐さん…絶対に喜ぶと思うから」

 

カナエは緊張したかの様にあたふたしており燐は二人の様子に違和感を持ったのか手を止める。

 

 

「どうした二人とも……………?」

 

「ほら…姉さん」

 

「スゥー、ハァー、燐に……発表があります」

 

「……? どうしたんだ、改まって」

 

「はい、実はですね」

 

 一つ、息を整えながらカナエは──自分のお腹に、手を当てた。

 

「──赤ちゃんが……できました」

 

「────」

 

「先週、しのぶに言われて私も驚いたけど。まだお腹が大きくなるのはこれからなんだけどね」

 

「────」

 

「燐を驚かせたくて、何時言うか迷ってたんだけど……」

 

「────」

 

「燐? ……きゃっ!?」

 

燐はカナエに飛びつくように抱き着いた。

 

「……っ……っ」

 

 燐は瞳からぽろぽろと涙を流していた。二人は一瞬、瞳を見開いたが、カナエはすぐに燐を抱きしめ返した

 

「……もう、びっくりしちゃったわ」 

 

「それは俺の方だ。本当に驚いた。人生で一番驚いた……本当なのか、しのぶ?」

 

「ええ、本当ですよ。ねっ、姉さん」

 

「うん、本当よ。貴方と私の子よ」

 

「そうか……そうかぁ」

 

ぎゅっ、力強くカナエを抱きしめ、首筋に顔をうずめる。花のような香りがカナエからする。

 

カナエは燐の背に手を置き、ポン、ポンと、優しく叩く。

 

 

「俺に、子ども……俺が父親」

 

「うん……そうよ」

 

「ふふ、私達の旦那さまは…思いの外涙脆いみたいね。」

 

「嬉し泣きだ…いいだろ……別に」

涙を流しながらも、その顔は、笑顔で、嬉しさで満ち溢れていた。

 

「しのぶも燐の妻なんだからしのぶもお母さんでしょ」

 

「間違いではないけど……私が産むわけじゃないんだから」

 

「しのぶもいつかわかるわ……まだ先のことにはなりそうだけど」

 

「言わないでよ…恥ずかしいんだから」

 

 

桐生夫妻の間に…新たな命が宿った瞬間であった。

 

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