赤月の雷霆   作:狼ルプス

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第三十話

 

「もう大丈夫そうですね」

 

「ありがとうございます」

 

炭治郎は機能回復訓練を終え、しのぶの最後の検診を受けている。怪我が完治しているかの確認だ。

 

「ですが、くれぐれも無理はしないように。怪我と言うのは治りかけと、治った後が一番危ないですからね」

 

「はい、わかっています。」

 

「では最後に口を開けてください」

 

あーんと口を開けると、身体はもう大丈夫のようで問題なく終わった。

 

 

「うん、顎も問題はありませんね。」

 

「ありがとうございます。あ、そうだ。しのぶさん。一つ聞きたいことがあって。〝ヒノカミ神楽〟って聞いたことありますか」

 

「ありません」

 

「え!?じゃ…じゃあ火の呼吸とか…」

 

「火の呼吸なんてないです」

 

見事にバッサリ答えたしのぶだった。

 

「えっとですね、カクカクシカジカデ」

 

「ふむふむ」

炭治郎は最初から事情を説明した。

家に代々伝わる神楽で技が出せたこと。そこには火が見えたこと。

 炭治郎はあまり説明が得意な方じゃないため、苦労していた。しかし炭治郎はなんとか説明し、しのぶは根気強く聞いてくれた。

 

「──なるほど。事情は分かりました。何故か竈門君のお父さんは火の呼吸を使っていた。火の呼吸の使い手に聞けばわかる、と。成る程、火の呼吸はありませんが炎の呼吸はあります」

 

「え?、同じではないんですか?」

 

「私も仔細は分からなくて…ごめんなさい。ただその辺りの呼び方についてが厳しいのよ」

 

「そうですか…」

 

「もしかしたら…彼女なら何か知って…」

 

「え!いるんですか!火の呼吸について知っている人が」

 

 

「心当たりのある人は二人います。燐さんはちょうど炎柱の煉獄さんと同じ任務に出ています。鴉を使って連絡しておきましょう。煉獄さんに話を聞いてみるのもいいかもしれませんね。彼の使う炎の呼吸は長く継承の続く呼吸ですから。もしかしたら、火の呼吸やヒノカミ神楽についても何か知っているかもしれません。」

 

「そうですか!ありがとうございます!」

 

「それと竈門君、君は燐さんの中にいる存在には気付いていますか?」

しのぶは唐突に炭治郎に問うが炭治郎はそのことに心当たりがあった。

 

「もしかして…燐さんの中にいる内なる鬼の事ですか?」

 

「その様子だと竈門君には話しているみたいですね。燐さんの中にいる彼女なら、詳しい事も知っているかもしれません。何せ彼女は始まりの呼吸使いの時代にいた人ですから」

 

「始まりの呼吸……、そうですか、ありがとうございます、しのぶさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

炭治郎達が蝶屋敷を発つ時が来た。三人娘達は、炭治郎達のお別れを泣きながら惜しんでくれた。

 

また近い内に会いに来ると約束し、彼らは蝶屋敷を後にした。

 

善逸と伊之助も炭治郎と同行しており、善逸は指令も来てないのに蝶屋敷を出たことに声を荒げ怒っていた。

 

そんな善逸を宥めながらも、炭治郎達は駅へと向かった。

 

二人は任務の為に汽車に乗ってるらしく、炭治郎はこの駅から汽車に乗って煉獄と燐と合流する予定だ。

 

「オイ!なんだありゃ!なんだあの生き物!!」

 

さっきまで人の多さに驚き、大人しくしていた伊之助が大声を上げて騒ぎ出す。

 そして、伊之助の先には巨大な鉄の塊…汽車があった。

 

「こいつはアレだぜ……!この土地の主だ!この威圧感間違いねぇ!今は眠ってるようだが油断するな!」

 

「いや、汽車だよ。知らねぇのかよ」

 

「落ち着け!」

 

「いや、お前が落ち着け」

 

「まず俺が一番に攻め込む!」

 

「だから汽車だって」

 

「落ち着くんだ伊之助。この土地の守り神かもしれないだろ。それから急に攻撃するのはよくない」

 

「だから汽車だってこの天然水。列車分かる?乗り物なの、人を運ぶの」

  

「猪突猛進!」

 

伊之助が汽車に向かって頭突きをし始める。

 

「おいバカやめろ!恥ずかしいだろ!」

 

「何してる貴様ら!」

 

すると、騒いでた所為で駅員たちに見つかった。

 

「あっ!刀持ってる!」

 

「警官だ!警官呼べ!」

 

「ゲっ!やばいやばいやばい!」

 

善逸は汽車に頭突きを続ける伊之助の首根っこを掴み、駅員から身を隠す。

 

身を隠し、ほとぼりが冷めたのを確認して再び汽車の近くに向かう。

 

「政府公認の組織じゃないから堂々と刀を持ち歩けないんよホントは、鬼がどうのこうの言っても信じてもらえんし、混乱もするだろ」

 

「一生懸命頑張ってるのに……」

 

「まぁ仕方ねぇよ。とりあえず刀は背中に隠そう」

 

善逸の案に乗り、俺達は羽織の背中側に隠す様に刀を仕舞う。

 

伊之助は上半身裸なので、刀を背中に仕舞い、その上から布を羽織らせて誤魔化すことにした。

 

大勢で動くとまた目立ちそうなので、善逸に切符を買ってきてもらい、俺達は善逸が戻ってくるまで大人しく待つことにした。

 

数分後、切符を買ってきた善逸と合流し、汽車に乗り込む。

 

まだ騒ぐ伊之助を落ち着かせつつ、煉獄さんと燐さんを探す。

 

 

「炭治郎、リン兄ちゃんと煉獄さんはこの列車に乗ってるんだよな?リン兄ちゃんならわかるけど、炎柱の煉獄さんは知らないよ」

 

「うん。鴉からの連絡で聞いたから間違いないと思う。燐さんと煉獄さんの匂いは覚えてるから大丈夫」

 

車両内を歩き回り、燐と煉獄を探し、次の車両に入った時だった。

 

「うまい!うまい!うまい!」

 

凄い大きな声が聞こえた。声は列車の一角から聞こえ、炭治郎達はそこに向かう。

 

「うまい!うまい!うまい!」

 

「杏寿郎、確かに美味しいが…もう少し声を落としてくれ。他の乗客に迷惑になる。あむ」

 

「む!すまない燐!」

 

そこは大量の駅弁を一人で食べ、先程から「うまい!」と大声で連呼していた炎柱・煉獄 杏寿郎がいた。隣には同じく駅弁を食べている鳴柱・桐生 燐の姿もあった。

 

「ん?炭治郎に善逸じゃないか、どうした?そんな引きつった顔して?」

 

「あっ、いや、その、煉獄さんに用があって…」

 

「ああ、そう言う事。だが今の杏寿郎は話を聞かない。食べ終わってから聞いてもらっていいか?」

 

「は、はい、わかりました」

 

その後、弁当を食べ終えた後、杏寿郎の隣に炭治郎が座り、燐は向かいの席に座る。通路を挟んで向かいの席に善逸と伊之助が座った。

 

「うむ!そういうことか!だが、知らん!」

 

杏寿郎は、炭治郎からの話を聞き、そう答えた。

 

「ヒノカミ神楽と言う言葉も初耳だ!君の父がやっていた神楽が戦いに応用できたのはめでたいが、この話はこれでお終いだ!」

 

「え!?ちょ、もう少し……!」

 

「俺の継子になるといい!面倒を見てやろう!」

 

「待って下さい!そして、何処を見ているんですか!?」

 

「炎の呼吸は、歴史が古い!」

 

とうとうヒノカミ神楽と関係のない話をし始めた杏寿郎に、俺は苦笑する。

 

「(相変わらずブレないな… 杏寿郎は)」

 

「えっと、燐さんはヒノカミ神楽と火の呼吸について何か知りませんか?」

 

「ヒノカミ神楽…か、悪いな、ヒノカミ神楽は聞いた事はないが、ヒの呼吸は知っている」

 

「え⁉︎本当ですか!」

 

「ああ、炭治郎、最初に聞くが、お前の言っていた『ヒ』は何の字だ?」

 

「え、燃える火を書いて火の呼吸です」

 

「残念、俺の言っている“ヒ”は日輪の日を書いて日だ。日の呼吸は始まりの呼吸にあたる大業物だ」

 

「日輪の日…ですか?」

 

「そうだ、ただこれはカグラ様からお聞きした内容でな。俺は型の名前しか知らない。炭治郎の使ってるヒノカミ神楽の型の名前を教えてくれないか?」

 

「はい!わかりました」

そして炭治郎はヒノカミ神楽の型を燐に話すと、燐は驚きの表情になる。

 

「全く同じだ…型の名前も」

 

「これって……偶然でしょうか?」

 

「カグラ様に聞こうにも、今は寝てるからな。炭治郎、ひとつ聞いて良いか?“縁壱”って名前に心当たりはないか?」

 

「縁壱?」

 

「ああ、那田蜘蛛山ではじめてあった時、カグラ様がお前の耳飾りを見て動揺していてな。その時に『縁壱さんの耳飾り』と言っていた」

 

「えっと、この耳飾りは竈門家に代々伝わる家宝で、神楽も一緒で継承されてきたんです。縁壱って言う人の名前には聞き覚えはないです」

 

「そうか、竈門家と何か関係があるのは間違いなさそうだ。カグラ様は最近眠ってる事が多くてな…起きた時に聞いてみる」

 

「すみません、ありがとうございます」

 

 

そんな中、とうとう汽車が動き始めた。

 

「うおおおおお!すげぇ速ぇぇぇ!!」

 

汽車の速さに伊之助は大声を上げて、窓を開け、身を乗り出した。

 

「俺、外出て走るから!!どっちが速いか競争する!」

 

「危ないだろ馬鹿猪!馬鹿にも程があるぞ!」

 

そんな伊之助を善逸は全力で止めていた。

 

「危険だぞ! いつ鬼が出るかわからないんだ!」

 

「そうだぞ、気を抜くと死ぬぞお前ら」

 

 

「え? 鬼? 出るの? 」

 

「うむ!!」

 

「ああ、いるぞ」

 

 

「でんのかーーーい!! 嫌ぁぁーー!! 鬼のところに移動じゃなくてここに出るんかいい!! 俺降りる!!」

 

「観念しろ善逸、動き出した以上終点までは止まらないからな」

 

「嫌ぁぁぁ!!俺を守ってくれよリン兄ちゃぁぁぁん!」

 

「引っ付くな暑苦しい!それから鼻水を垂らすな!汚ない!!」

 

善逸は涙を流して燐に抱きつき混乱しているが、炭治郎に話しかける。

 

「煉獄さん。柱の煉獄さんと燐さんが出るってことは、そんなに危険な鬼なんですか?」

 

「うむ!短期間のうちにこの汽車で四十人以上が行方不明となっている!数名の剣士が送り込まれたが、全員消息を絶った!だから、柱である俺達が来た!燐によれば十二鬼月を視野に入れたほうがいいとの事だ!」

 

「はぁーーー!十二鬼月⁉︎なるほどね!俺、降ります!」

 

「だからもう降りられん。なんかあった時は守ってやるが、出来る事なら自分の身は自分で守れ、いいな?」

 

「なんでそんな冷静でいられるのさ異常者兄貴は⁉︎頼むよ〜!列車から降ろして〜!!」

 

「列車から飛び降りれば降りられん事はないぞ?善逸」

 

「俺に死ねと⁈」

 

「最悪骨は逝ってるかもしれんが死にはしないだろ」

 

必死で降ろしてくれと泣き叫ぶ善逸に燐は冷静に対応する。

 

そんな時、車両の扉が開き、痩せこけた駅員が現れた。

 

「切符を………拝見……致します………」

 

「なんですか?」

 

「車掌さんが切符を確認して切れ込みを入れてくれるんだ。炭治郎も切符を車掌さんに渡すんだ。ほら、善逸も席に戻って切符出しとけ」

 

そう言って燐と杏寿郎は切符を車掌さんに渡す。

 

炭治郎もそれに倣い、切符を差し出す。

 

「拝見しました…………」

 

俺たち全員分の切符を確認した車掌さんは、切れ込みを入れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、車掌の言葉を聞く者は居ない。

 

車両に居た全ての人間が眠りに就いてしまったのだから。車掌はそれを確認してから、次の車両へ移動して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐が瞳を開けると、ある場所に前に立ち尽くしてした。

 

「……ここは、川…か?何がどうなってるんだ」

 

 燐の呟きが、風と共に消え去っていく。辺りは綺麗な川が流れており、それは昔、燐の見慣れた風景だった。

  

そして次の瞬間、燐は目を丸くする。

 

「──久しぶりだな燐。まさかこんな形でお前にまた会うとは思わなかったがな」

 

 

「父……さん?」

 

声をした方へ振り向くと、そこには釣りをしている燐の父、桐生 未来の姿だった。

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