赤月の雷霆   作:狼ルプス

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第三十二話

現在燐は跳び込んだ各車内で、蠢く肉塊へ向かって刀を振るう。

 

「(列車自体が鬼だったのは驚いたが、やっぱり本体の頸を斬らないとどうにもならないな)」

しかし周りには乗客もおり、燐はなんとか乗客を落ち着かせた後、応戦する。

 

 

──雷の呼吸 壱ノ型・霹靂一閃・十一連

 

技を放ち、肉塊を斬るが、すぐに車両に吸収されてしまう。

 

「(いくらやってもキリがない。体力を消耗していく一方だな。炭治郎、伊之助……上手くやってくれよ)」

気配を探ったが、二人が応戦しているのはすぐに感じ取った。後はあの二人が本体を斬るのを待つだけだが、思いの外てこずっているようだ。

 

「(杏寿郎も善逸も動いている。俺達の役目は、乗客を守りきることだ!)」

 

燐は刀を左手に持ち替え左手に雷を纏う。

 

そして青い雷がチチチチ!と音を鳴らしながら日輪刀に伝うように放電する。

 

「千鳥!」

刀を横に振るい、雷を針状に形態変化させ、広範囲に射出する。

燐は乗客に刀が当たらないように様に、車両を細かく斬り裂いていく

 

技の強化に手応えを感じた燐は車両を移動しながら肉塊を斬りつけていく。

 

「(天照を使いたいところだが、乗客がいるからこの方法は却下だ。なんとか凌がないとな)」

 

ギィヤァァァァァァァァッ!!

 

「ッ!なんだ⁉︎」

 

その時、凄まじい断末魔が車両全体を揺らした。そして無数の触手が乗客を掴むが、

 

──天照!

 

燐は伸びた触手のみ黒炎の炎で焼き尽くす。しかし数が数だけあって目の負担も大きかった

 

 

現在の鬼、十二鬼月下弦の壱の正体は列車そのものだ。彼がのた打ち回ればその分、列車全体も跳ねるのだ。

 

「くっ!(炭治郎達が鬼を斬ったのか⁉︎しかしまずい…このままじゃ列車が脱線する。それに、このままじゃ…)」

 

激しく揺れる列車に燐はなんとか体勢を整えるが、列車が脱線するのも時間の問題だ。このままでは乗客の命が失われてしまう。

 

燐は車両から外へ飛び出し、乗客を下ろし、すぐに脱線した列車に向かい刀を振るう。

 

「被害を最小限に抑える!……雷の呼弐ノ型・稲魂!」

 

燐は全力を込め技を放ち、汽車への衝撃を緩和させる。

 

手を止めるな!技を側に続けるんだ!!

 

(参ノ型 聚蚊成雷!遠雷!熱界雷!電轟雷轟!雷切り!千鳥!)」

 

燐は今使える技をすべて使い、汽車への被害を最小限へと抑えようとする。

 

 

「(なんとか気配で上手く当てられているが、視界がハッキリしない。これはまた暫くまともに見れないな)」

 

そう思った瞬間、巨大な爆発音とともに汽車が揺れた。

 

その音は断続的に響かせ、汽車はそのまま大きな被害なく倒れた。

 

「がっ!」

しかし燐は頭に何か強い衝撃がはしった。燐は受け身を取ることが出来ず地面に落下してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「う、ううっ…俺は、そうだ杏寿郎達は…痛っ!」

燐は意識を回復させると頭と胴体に強い痛みが走った。燐は額に手を触れると、手には自身の血が付着していていた。

 

「さっきの衝撃か…しかも肋にヒビが入ってるなこれは、とりあえずは止血だ」

燐は止血の呼吸で、頭から流れ出ていた血を止める。そして携帯していたしのぶ作の薬を塗り応急処置をする。

 

「(流石に肋の骨はどうにもならないな。後は杏寿郎達の安否だ)」

燐は意識を周囲に集中させる。

 

「(乗客はけが人はいるものの全員無事だな。後は杏寿郎達だ)」

燐は杏寿郎の気配を探ると背筋が凍る様な感覚に襲われた。

 

「ッ⁉︎この気配、黒死牟の時と同じ、まさか上弦の鬼か?なんでこんな所に?それに杏寿郎の気配が小さくなってる…まさか、押されているのか⁉︎」

 

燐はすぐに杏寿郎達の元に向かう、しかしその中

 

「(カグラ様!)」

 

『起きておる…状況は察しているが……』

 

「(ええ、上弦の鬼が出ました。しかも杏寿郎が押されてる。“あれ”を使います!)」

 

『馬鹿か!今のお主の状態で倒せる訳なかろうが!それにあの力は』

 

「(日の出まではなんとか持ち堪えてみせます!正直今の状態で倒すのはまず不可能です!)」

 

『ハァァァ、どうせダメだ言ってもやるんじゃろ?好きにしろ、あの二人に説教される覚悟はしておけ』

 

「(それは言わないお約束ですよ)」

燐は瞳を写輪眼に変え、杏寿郎の元へ向かう。

 

 

 

 

 

 

そして杏寿郎の元へ近づくとなんとか見えた光景は激しい攻防であった。杏寿郎の左目からは血が流れ落ち、衣服からも血が滲んでいる。

 

「雷の呼吸 壱ノ型・霹靂一閃・舜神」

 

 

燐は一気にその場から消える様に加速し、鬼が杏寿郎の腹を貫く寸での所で腕を斬り落とした。鬼は突然の事に距離を取る。

 

「悪いな、杏寿郎、遅くなった」

 

「うむ、やっと来たか燐!死んだのかと思ったぞ!」

 

「カナエとしのぶを残して死ねるかよ。と言うかお前ボロボロだな」

 

「それを言うのならばお互い様だぞ!」

 

「列車の乗客を守る時にヘマしてな…柱として不甲斐ない」

 

燐はそのまま杏寿郎を追い詰めた鬼に目を向ける。

 

 

 

「────ほぉ、俺の腕を切るか、鬼殺の隊士。よもやお前も柱だったか?」

 

「だとしたらなんだ?」

 

桃色の髪、白い肌に走る黒い線の刺青、そして、瞳に刻まれる『上弦・弐』の文字。

 

よりによって弐か、あのクソ野郎と同じ数字か……

 

「今度は俺が相手してやる。こいよ…悪鬼」

燐は暗闇に光る赤い瞳で鬼を睨む。

 

「勾玉の様な形に、その赤く光る瞳、貴様…赤月の雷霆か?」

上弦の弐は俺の瞳を見てそう言ってきた。赤月の雷霆の異名は上弦の鬼にも知れ渡っているみたいだ

 

 

「まさかお前ら上弦の鬼にまで知れ渡っているとはな。俺も相当有名になったものだ」

 

「貴様は黒死牟を追い詰め、童磨を倒した男だ。知らない訳がなかろう」

 

「そうか」

燐は日輪刀を構え戦闘態勢に入る。しかし上弦の弐は笑みを浮かべた

 

「いい闘気だ…!今まで屠ってきたどの柱よりも洗練されている!至高の域に手を掛けているのか・・・!嗚呼、嬉しいぞ!童磨を殺しただけのことはある!俺はお前も気に入った!名を教えろ、もう一人の鬼狩りの柱!」

 

「鬼殺隊鳴柱・桐生 燐」

 

 

「鳴柱…雷の剣術使いを相手にするのは久しぶりだ!俺は、猗窩座だ。素晴らしい提案をしよう。お前も、鬼にならないか?燐よ…いや、鬼になれ!お前の強さにはまだ上がある!俺と共に更なる高みを目指そう!」

 

「断る…俺は人として生涯を迎えたいんでな。貴様らの様な鬼になるつもりはない」

 

「惜しい、鬼になれれば、百年でも、二百年でも鍛錬し続けられる。強くなれるなれるのだぞ?」

 

「俺には愛する人がいる、俺だけ長く生きても…幸せなんてないからな、俺は大切な人達と最後まで生きたい。お前にもいなかったのか?大切な人は」

 

 

「ふん、そんな下らないもの──」

 

いないと言おうとした猗窩座、しかし猗窩座はナニカを思い出しそうになった、遠い忘れたはずの過去の記憶を。

 

すると姿はハッキリしないがある人物の姿が思い浮かんだ。

 

 

「(なんだ…お前は、誰だ?)」

 

『狛治さん』

 

やめろ!

 

 

「っ、そんなもの、いるわけがないだろう?燐、お前も鬼にならないのなら殺す」

辺りは猗窩座の殺気により充満し、その場にいた炭治郎達は怯むが燐は冷静に猗窩座を見据える

 

 

「善逸!動けたら杏寿郎達を連れてできるだけ安全な場所まで連れていけ。伊之助と合流して共に残りの乗客の誘導を任せる。いいな?」

 

 

 「……わかった!リン兄ちゃん、無茶はしないでくれよ」

 

「誰にものを言ってんだ?死ぬつもりはない」

 

 

燐は自分の日輪刀を上段に構える。

 

「(なんだあの構えは?何をするつもりだ)」

 

 

「本当は……黒死牟にとっておきたかったが、そうは言ってられないからな」

 

燐はそのまま手を振り下ろし構えを取る。すると髪色は白く、瞳の結膜は黒く変化し、リンの周りには黒い何かが溢れ出る。

 

「「「「ッ……!!?」」」」

 その変化を見た瞬間、猗窩座も含めその場にいた全員の背筋が凍った。燐の突然の変化、瞳は黄色に変化し、結膜が黒く変色した。

 

鬼気解放!

 

だが、ただ白く変化したわけではない。燐の中に眠る鬼の力を最大限に引き出すための力だ





猗窩座が何故上弦弐かは、童磨をリンが倒した為、童磨より下だった上弦の鬼は壱ずつ上がっています


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