アイエスどうでしょう   作:フレイア

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 臨海学校にて行なわれたセシリアとラウラによるかき氷早食い対決。ラウラ有利と見られていた戦いをなんとセシリアが制した。

 あれからおよそ4か月、すっかり秋が深まり冬が近づいてきていたある日、セシリアはラウラから「話がある」と呼び出された——


短編で連載してたのをシリーズ化してみました。基本1話限りの単発です



対決学園 セシリアvsラウラ

 

 

「お話ってなんですの?」

 

 2時間目と3時間目の間の休み時間、次の授業の準備を進めていたセシリアの元にラウラがやってきた。曰く「話がある」というわけらしい。

 やけに神妙な面持ちのラウラが口を開く。

 

「うむ。いきなりだがセシリアよ、お前甘い物は好きか?」

「…はい?」

「だから、甘い物は好きか?と聞いているのだ」

「…………」

 

 神妙な面持ちで話し出したと思ったらなんてことのない内容にセシリアは思わず素っ頓狂な反応を見せてしまった。

 

「え、えぇ。甘い物は好きですわ」

 

 10代の少女で甘い物が好きじゃない子は居ないと思う。ラウラは2、3度頷いたのちセシリアの顔を見る。

 

「なるほどなるほど、それなら良い勝負が出来そうだな」

「?????」

「では、お願いするぞ」

 

 何のことですの?セシリアがそう問いかけようとした時、ラウラは右手を掲げ、パチンと指を鳴らした。

 すると教室の扉を開けて簪が入ってくる。簪は徐ろにセシリア達の元へ歩み寄っていき、手提げ鞄の中から巻物を取り出して勢いよく開いた。

 

「や……やぁ〜やぁ〜、セシリア〜オルコット〜…!」

 

 簪は巻物に書かれている文を読み上げていく。しかしかなり恥ずかしいのか、顔を真っ赤にさせている。

 

「ほ、本年7月…!わ…忘れもしない、臨海学校1日目、海の家でのかき氷対決…!」

「ぷっはっはっはっはっはっはっは!」

「そんなことありましたわね…」

 

 鈴が吹き出し、セシリアは苦笑いを作る。

 1学期にあった臨海学校、1日目は自由行動ということで各々海へ繰り出し泳いだりビーチバレーをしたり目一杯楽しんだ。

 そんな一幕の中でラウラがたまたま近くにいたセシリアへ挑んだのが、かき氷早食い対決なのであった。

 

「貴殿の堂々たる戦ぶり…!堂々たる勝利…!敵ながら、天晴れであった…!」

 

 力が入りすぎてガチガチになっている簪の横で相変わらず鈴は腹を抱えながら爆笑。恐らく、簪が読み上げている箇所の先に書かれている部分を読んだのだろう。

 

「しかし…ッ!このままおめおめと引き下がっているわけにはいかない…!よって、ラウラ・ボーデヴィッヒは…セシリア・オルコットに、再戦を申し込むことを、今ここで宣言する…」

「は、はい!?」

「あっはっはっはっはっは!」

 

 ラウラからの唐突な宣戦布告にセシリアは目を白黒させている。鈴は相変わらず以下略

 

 教室がどよめく中、簪は顔を両手で覆いながらそそくさと教室から出て行ってしまったが、全く気にしていないラウラはセシリアの方へ身体を向ける。

 

「というわけでだセシリア、やるぞ、再戦」

「いやいやいやいや」

「なんだ?覚えていないとは言わせんぞ。私はしっかりと覚えている。あの敗北を」

 

 実はかき氷早食い対決、なんとラウラが負け、セシリアが勝ったのだ。

 もっとも前者が日陰で食べ、後者が日向で食べていて自ずとセシリアの方が溶けるのが早かったという要因があるにしろ、ラウラはこの敗戦に言葉にできないほどショックを覚えた。

 ちなみに観戦していた鈴は「セシリア勝った!セシリア勝った!」と大はしゃぎしていた。

 

「いやショックってアンタあの後すぐケロっとしてたじゃないの!」

「だが心の奥底ではずっとこの機会を待っていたのだ。ドイツに帰国した時にはクラリッサを始めとした隊員達とソーセージ早食いをやって勝って、学園では一夏とハミルトンに焼きそばとステーキで勝った」

「あれこのためのフラグだったのか!?」

 

 焼きそば早食い対決に心当たりがある一夏がツッコミを繰り出す。この時は男性と女性という肉体的な差があったため接戦だったがギリギリのところでラウラが競り落とした形で勝利を収めている。

 

「全ては今日のため。私はずっと待っていたのだ。どうするセシリア、受けるか受けないか、答えは2つに1つだ」

 

 強者のオーラを発するラウラを前にしてセシリアは暫し考え込む。やがて頭を上げ、キッとラウラを見据えて言い放つ。

 

「いいでしょう。このセシリア・オルコット。その勝負受けて立ちますわ!!」

 

 ラウラは口角を緩ませ、不敵な笑みを浮かべた。

 

「フッ、そうでなくてはな」

 

 教室内から喝采が巻き起こり、早速どっちが勝つか、誰に賭けるかなどザワザワと話し合いが始まる。

 

「それで、そのかき氷対決はいつ執り行いましょう?」

「いやさすがに今の時期にかき氷はキツい」

 

 今は11月、かき氷はとっくのとうにシーズンオフ。キッパリと言い切ったラウラにかき氷でリベンジをすると思っていたセシリアは少し肩透かしを食らう。

 

「確かに今の季節にかき氷はねぇ、それで?他に候補はあるの?」

「心配いらん、では、お願いします」

 

 ラウラの合図と共に再び簪が教室へ入ってくる。今度はリコーダーを取り出しピィーと鳴らしたが音が上がってしまった。

 

「やぁ〜やぁ〜、セシリア〜オルコット〜…!」

 

 さっきよりかは流暢に喋る簪を見て、鈴は「あーこれは吹っ切れたわね」と解説を入れる。名前を呼ばれたセシリアはどこかげんなりとしている。

 

「またわたくしですか…」

「再びかき氷で、という気持ち、痛いほどよくわかる…」

「いや別に思ってな——」

「しか〜し…!今はかき氷は売っていない…そこで…!」

 

 簪は手提げ鞄から1枚のプリントを取り出す。

 

「ソフトクリーム…?」

「あっ………はははははは…」

 

 セシリアの目線がプリントに書かれている内容にいく一方で、鈴は巻物に書かれている内容を先読みして肩を震わせながら笑いを堪えている。

 

「対決時間は明日のお昼…レゾナンスにある店でセシリア・オルコットとラウラ・ボーデヴィッヒには……

 

ソフトクリーム…3本…「3本!?」早食い対決を執り行うことを今ここに宣言する…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタ、とんでもないやつ引き受けちゃったわね」

「…………」

 

 翌日、やってきた対決日。鈴の隣に座るセシリアの空気はどんよりと重い。対するラウラは自信満々とばかりに脚を組んで椅子に座る。

 

「ルールは理解できたか?」

「いや、理解できたかじゃないのよ。なんでアンタとセシリアの対決にあたしを巻き込むのよ」

「こっちだって簪を使うんだ。お互い様だろう」

「勝手に巻き込んどいて何言ってんのよ」

 

 現在鈴、セシリア、ラウラ、簪がいるのはレゾナンスの一角。ラウラに連れてこられたシャルロットもいる。

 

 ルールは単純、相手よりいかに速くソフトクリーム3本、バニラ味とブルーベリー味、ミックス味を食べ切るかだけ。すでに店へ許可の方はラウラが取っている。

 

「味の順番はどうするの?」

「特に決めていない、どの味からいっても大丈夫だが、買うのは必ずこの3種類だ」

「例えば間違えてバニラ→バニラ→ブルーベリーになっちゃったらダメなの?」

「ダメだ。ミックスが入っていないからな」

「じゃあ…間違えて買ってきちゃった場合…4本…」

「4本……」

 

 絶対間違えない下さい、とセシリアが鈴に目で訴える。

 対決の場所はレゾナンス内にある店ではなく、モールの外にある広場。セシリアとラウラは広場にて待機、開始と共にセシリア陣営の鈴とラウラ陣営の簪が店までダッシュで行きソフトクリームを購入、また広場に戻ってきて大将に渡す、このリレー形式を計3回繰り返す。

 一通りの説明が終わったところで、簪がポツリと小声で呟く。

 

「持ってきてる途中にソフトクリームがポトっと落ちるなんてことも…」

 

 聞き捨てならない台詞を聞き逃さなかったラウラが簪をギロリと睨む。

 

「…ないようにしろよ」

「う、うん…」

「そうなった場合は買い直しでしょ?」

「無論だ」

 

 また、副将は大将が食べ切るまでソフトクリームを買いに行けない、食べきったかどうかは口を開けて判断する。ちなみ審判に指名されたのはシャルロットである。

 

「勝手に巻き込まれて勝手に副将だなんだにされて、こんな長い距離3往復させられるあたしの身にもなりなさいよ」

 

 鈴がボヤく一方で大将の2名、ラウラ陣営の簪は気合いを入れるように息を吐く。

 

「ここまできたら負けられませんわ」

「簪頼むぞ、勝てばお前が欲しがっているアニメグッズとやらを買ってきてやる」

「うん…勿論…」

 

 セシリア、ラウラ、簪の顔に緊張が走る。

 そしていよいよスタート、ギャラリーが固唾を飲んで見守る中、スターター兼審判役のシャルロットが合図を出す。

 

「位置について……」

 

 シャルロットの合図で鈴と簪はスタート位置につく。

 

「なんなのこの妙な緊張感…」

 

 鈴と簪がその時を待つ中、ついにシャルロットが「スタート!!」と叫んだ。

 掛け声と共に2人は猛ダッシュでレゾナンス内に向かう。

 

「いけ!簪いけ!」

「鈴さん!頑張って下さい!」

「簪あれは本気だぞ!」

 

 一歩リードしたのは簪、その後僅差で鈴が続く。

 やがて2人の姿が見えなくなり、広場には大将同士が残される。

 

「コレどっちか先に来るかで展開大きく変わると思うなぁ」

 

 実際シャルロットの言う通りで、この対決、どちらが先に店に辿り着き注文を行い、ソフトクリームを買うかが勝負の行方を握っている。

 

「1分経ったな…」

「ドキドキしますわね……あっ!!」

 

 1番にやってきた人物を見てセシリアが声を上げる。1番最初にソフトクリーム(バニラ味)を持ってきたのは鈴だ。

 

「はいセシリア!」

 

 鈴がソフトクリームをセシリアに渡す。その時数秒遅れて簪も到着。セシリアが食べ始めたところでラウラにもソフトクリーム(ブルーベリー味)が行き渡った。

 

「あのね…はぁ…はぁ、着いたのは簪さんの方が早かった」

 

 息を切らしながら鈴は状況を伝える。

 

「でも、出されたのは明らかにバニラの方が早かった!」

「なるほど…!そこも攻略ポイントだったか…!」

 

 ブルーベリー味のソフトクリームを頬張りながらラウラはホゾを噛む。

 

「それで恐いのはね、やっぱ日曜だから人が——」

「あっ」

 

 その時、不意にラウラが頭を抑えてしゃがみ込む。シャルロットが心配そうに駆け寄るが鈴は苦笑いを見せる。

 

「大丈夫ラウラ!?」

「ラウラ早くも頭がキンキンしてるわね」

 

 どうやら冷たい食べ物を早食いしてるからか頭にきてしまったらしい。夏のかき氷対決でも見た光景である。

 

「でもセシリアはまだ大丈夫!セシリア次ブルーベリー!?ミックス!?」

「ミックス」

「おっけい!」

 

 対するセシリアにはまだキンキンはきていない。この辺りになるとセシリアとラウラが戦い、鈴が実況をするという構図が出来上がり始める。

 

「ただやっぱりラウラの勢いが凄い!もうセシリアに追いつきそうだもん!」

 

 見るとラウラのソフトクリームはあっという間にコーンだけになり、相手が追い上げてきていることに危機感を覚えたセシリアがスピードを速める。

 そしてラウラがあと二口あたりというところでついにセシリアが最後の一口を口の中に放り入れた。

 

「これ飲み込んだらスタート!?」

「うん」

 

 一応の確認をシャルロットに取った鈴がいつでもダッシュできるように身構える。

 

「ふぁい!!」

「おっけい!」

 

 そしてセシリアが最後の一口を飲み込み鈴の掌を叩く。鈴はよし来たと言わんばかりにレゾナンスへと猛ダッシュしていく。

 

「やばい…ラウラ、頑張って…!」

「あ″あ”!!」

 

 少し遅れてラウラも1本目を完食、バトンを渡された簪も猛ダッシュでレゾナンスへ向かっていく。

 

「凰のやつも何だかんだで楽しんでるだろアレは」

「にしても…これは中々キツいですわ…!」

 

 猛ダッシュでレゾナンスへ走っていった鈴と簪の姿を思い返したラウラがふと「あ」と口を開く。

 

「簪にミックスって言うの忘れたなぁ…まぁまぁ大丈夫だろう。まさか続けてブルーベリーを買ってくるなんてヘマはしないはずだ」

 

 嫌な予感を感じたラウラは言い聞かせるように言葉を発する。

 

「あっ速い」

「何!?凰もうきたのか!?」

 

 そこへミックス味のソフトクリームを買ってきた鈴が到着。控えめなガッツポーズを作りながらセシリアは鈴からソフトクリームを貰う。

 2本目を買いに行った時はそう差がなかったはずの両チームであったが、今やセシリア・鈴チームが断然リードを誇っている。

 

「簪ぃぃぃぃい!簪ぃぃぃぃい!!それにしても遅すぎるだろアイツ何をやってるんだ!?」

 

 すでに鈴が広場に到着してから1分が経過し、セシリアのソフトクリームも着々と減っていっている。

 あまりの遅さにラウラが憤慨している中、何かに感づいた鈴が息を整えながらレゾナンスの方を見つめる。

 

「この遅さはねぇ、簪さん落とした可能性あるわね」

「あっ……?冗談だろ…?」

 

 戦前、簪が何気なく呟いた一言を覚えているだろうか?あの時簪は『持ってきてる途中にソフトクリームがポトっと落ちるなんてことも』と言った。

 嫌な予感がひしひしと湧いてくるラウラを尻目にセシリアはソフトクリームを攻略していく。

 

「これは遅すぎるわね」

「遅いよな…。あぁもうセシリア食べちゃったぞ」

 

 セシリアのソフトクリーム(2本目)が残り後僅かになるが、まだ簪の姿はない。

 

「何してんだ簪…」

 

 あまりの遅さに怒り以上に困惑を覚え始めた辺りでようやく簪がやってきた。

 

「ラウラ…………」

 

 大事そうにソフトクリーム(ミックス味)を持ってくる簪。しかしその間にセシリアは2本目を完食する。

 

「もうセシリア2本目食べ終わったぞ!」

「鈴さん!」

 

 セシリアからのタッチを受け取り、鈴がスタートを切る。そして鈴と入れ違いになるように簪がやっとラウラの元へ辿り着いた。

 

「ラウラ…ごめん…………」

「なんだ!?」

「落としちゃった…………」

「バ カ も の !!」

 

 想定していた中で最もやってはいけないことをやらかした簪は今にも泣きそうになっている。

 ラウラは俯く簪にお叱りのカミナリを落としてソフトクリームに食らいつく。

 

「落としたって…お前……」

「ごめん…ホントにごめん…」

 

 実は簪、持ってくる途中で躓き、誤ってソフトクリームを落としてしまったのだ。

 そのままにして新しく買いにいくにも行かず、近くのインフォメーションでティッシュを借りて大急ぎで落とした床を拭き、また大急ぎで買い直してきたのだ。

 

 これにはさすがのラウラもガッカリしたのか、心なしか少し肩を落としている。

 

「落としたってか…お前…」

「大丈夫…まだ分からない…。食べ終わるまで分からない…!」

「そのくらい分かっているさ」

「大丈夫だよ…、鈴もきっと落としてるから…」

「いや見ろアイツ歩いてきてるから」

 

 ラウラが顔を向けた先にはラスト3本目+αを買い悠々と歩いてくる鈴がいた。

 

「もう1本ありますけどアレは自分用なのでしょうか…?」

「鈴もちゃっかりしてるね…」

 

 セシリアとシャルロットが解説する中怒涛の勢いで2本目をかっ食らったラウラが簪の手を叩く。

 すれ違った簪を見ながら鈴は3本目のソフトクリーム(ブルーベリー味)をセシリアへ渡して自分用に買ってきたストロベリー味のシャーベットアイスを食べ始める。

 

「途中の道に明らかに何かを落として慌てて拭いたような痕跡があったわ」

 

 鈴がそんなことを伝えた僅か1分後、簪がラス1のソフトクリームを持って広場へ戻ってきた。先程の不祥事を挽回するほどのスピードにラウラも若干興奮しながら「簪速いぞ!」と叫ぶ。

 

 そこからは逃げ粘るセシリアをラウラが猛追する熾烈なデットヒート。簪が「頑張れ…頑張れ…」とエールを送り、鈴が「ラウラは身体を揺らしてリズムにのりながら食べてる」と解説をいれる。そして、ついに最後の一口が飲み込まれた、勝者は————

 

 

 

 

「セシリアの勝ちーーー!!」

 

 鈴が歓喜し、セシリアは両腕を上げ勝利の美酒を味わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっち側の敗因はラウラというより簪さんの……」

「ごめんなさい…」

 

 あれがなければ恐らくラウラは勝っていたと思うと、どこか複雑な心境になる。ガチで落ち込んでいる簪を励ますように鈴はおちゃらける。

 

「落としたやつ乗っけて食わせればよかったのよ」

「やってみたけど…色々ダメだなって良心が押しとどまって…」

「お前やったのか???」

「うん、でもどう見ても落としたのバレちゃうし埃ついてるし、何より人間としてダメだと思って……」

「はっはっはっはっは、貴様は…」

 

 ラウラは高笑いしながら簪の身体に蹴りを食らわせる。

 

「悔しいなぁ…。簪!次がいつになるかは分からないが、次は勝つぞ!」

「うん…!」

「もういいっての」

 

 新たな決心を秘めて前を歩くラウラと簪へ鈴がボソッと静かにツッコミを入れた。

 

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