独ソ戦は誰もが知ってる第二次大戦中の史上最大の陸上戦のことです
1942年 8/12 独ソ戦 南方軍集団A スターリングラード戦線
「Los Los Los!!」(急げ急げ急げ!!)
パァンッパァンッ
ダダダダダダダダンッ!!
ブロォォォォッ
チリと埃が舞う戦場で怒号が飛び交う。
そしてその怒号の源はぼくの喉からだった。
生物兵器大隊長 ヘルガ大佐として迅速な指揮を現地で下す。
「第三小隊は左舷の建物を三つ先のところで応戦開始、とにかく障害物があるところならどこでもいい!!そこを定位置として交戦しろ!!」
「第1小隊は右舷に平行線のまま散開、国防軍兵士の誘導を行え!!」
(ヤヴォール)
そう心の中で微かに聞こえる返答、だがしかし、それはぼくの幻聴に過ぎない。
彼らは言葉を発さず、戦闘以外のことは何も考えない。
ドォォォォォォンッ
ヒュゥゥゥッ...ドォォォォォォンッ!
東側から鳴り響く砲弾の滑空音とともに152mm榴弾砲の嵐が来る。
その榴散弾は建物を破壊し、ここスターリングラードの地を傷つける。
恐らくソ連軍側のSU-152と思われる自走砲部隊が到着し、ここももうじきまずくなってきた。
「大佐!ヘルガ・シュタイナー大佐!!」
「なんだ!どこの部隊のものだ!!」
「第27国防軍南方軍集団所属の
ドォォォォォォンッ!!
生物兵器大隊の親衛隊員数人と自分が隠れていた瓦礫と瓦礫の間に作られた塹壕に突如として敵砲弾が撃発した。
ガラガラッ ガサッ ドサッ...
様々なものが崩れ落ちて僕と目の前にいた恐らく指揮官補佐が倒される。
そして僕の意識も瓦礫に踏み潰されながら、次第にブラックアウトするのであった...。
国家社会主義ドイツ労働者党所属組織 親衛隊生物兵器化学大隊は1933年始めに設立された。
総統が首相に就任した直後のこと。
比較的最初期に設立された部隊であり、正規の武装親衛隊第1SS師団と同期だ。
なぜそこまで早急な時期に設立されたのか。
それはエジプト・カイロにおけるあるモノの発見から繋がることになる。
1931年 現地のドイツ人考古学者があるファラオの墓から持ち帰ったという奇妙な生物がドイツ国内の企業に鑑定を依頼されたそうだ
ちなみに発見した当時、それに手を付けたものは全員肉が腐り落ち、その生命体に吸収されたかのように死に至ったという。
ドイツ国防軍および親衛隊長官 ハインリヒ・ヒムラーはこの生命体に強い関心を持つようになり、将来の軍事的活用を夢見ていた。
熾烈な権力闘争の末に親衛隊がこの生命体の研究・試験・運用を任されることが総統より正式に公布された
そしてその実験台に選ばれた被験者達が親衛隊生物兵器科学大隊であった。
ここに集められたのは親衛隊の中でも優秀な武装SSから来たエリート部隊の者や、特異な身体能力を持つ者だった。
そしてその中に、ぼくも含まれていた。
ヘルガ・シュタイナー大佐
ぼくは士官学校も出世もせずに初めから大佐クラスでの親衛隊員となった
その理由は総統にある
総統は孤児だった道端の小汚いぼくを拾ってくれたのだ
...正確には党の集会の時に隣にいたヒムラーによる人種論的な外観に感銘を受けた、そうだが
それでも構わない
彼らが、我らが総統がぼくのこの銀髪と、低身長を気に入ってくれるならばこの身を差し出す
北方民族からの出身で、異民族扱いされてきたぼくをヒムラーと共に親衛隊の右腕として雇ってくれたのだ
総統に尽くすことこそが民族の救済に繋がるのだ
そう信じてやまなかったのが、親衛隊一般課のぼくだった
だが時はきて、1933年、例の大隊に所属することになった
評判や大衆の意見は求めず、ヒムラー長官に頼まれれば何でもやったぼくだからこそ、素直に入隊した
が、そこでの実験は想像を絶するものだった。
カイロから密かに密入されてきた例の禍々しい黒い生命体は、不規則な形であり、液体なのか個体なのかの区別もつかなかった
そして触れたもの全員が手当たり次第に肉と骨を吸われ、そいつの養分となってしまう
そんな異常な生命体に科学者達の研究は難航した
が、しかし 被験者に数滴 その生命体を垂らして見たところ、死には至らなかったという。
ほんの数ミリリットルしか垂らさない場合、被験者に害はないと思われた。
けれど被験者は日に日に生気を失って行き、最後には言われた事以外なにもしない人形へと成り下がったという
しかもその謎の生命体との結合による細胞の活性化で、自然治癒力が格段に向上し、腕一本失ったとしても数分で回復する始末だった。
1937年、これらの研究結果に満足したヒムラーは、ぼくを使った実験を開始させた
ぼくに、その生命体のほぼ全てを吸収させるよう命じたのだ
ぼくは一瞬、たじろいだが、ヒムラー長官からの
『お前は捨て駒ではない。お前の流した血が、我ら祖国と総統を救う。
それにお前が必ず生還することを、私は信じている。』
という、激励を信じ、彼の命令を遂行した
被験中、かの生命体はぼくの腹わた辺りから侵入してきた
いい餌だとでも思ったのだろう
だがぼくは民族の為に、総統の為に生きねばならなかった
僕の身体がどれだけ蝕まわれようと、構わなかった
自分の所属する、自分と共に生きてくれる者達の元にまたいれるのであるならば、寄生されようとも構わなかった
その強烈な民族崇拝 共同体信奉が理にかなったのか
かの生命体は他の被験体と違い、ぼくの体内に寄生を開始した
ぼくの心臓や、ぼくの脳に渡るまで、ぼくと同化した
ぼくの、民族への最大限の献身こそが名誉であるという一つのイデオロギーに共感した、とでもいうのだろうか。
そのようにして、被験体第279番目の生体実験は終了した
してあの時...1942年のスターリングラード攻防戦において、ぼくは初めて実戦投入されたのだった...
隷下の親衛隊員は皆、ぼくに取り込んでいる黒き謎の多い生命体のカケラを体内に吸収している
意思や意識は存在せず、肉も骨も朽ち果てているがその身体能力や跳躍力は僕よりはるかに劣るが凄まじく、
ぼくらは弾丸を物ともしなかった
心臓の鼓動や生きている感覚は存在せず、物体が存在するだけの無機質な物へと変わっていく感覚だった
ただし、このような人形のような者達の中でぼくだけが唯一の意志を持ち、寄生された隊員を使役することができた
(...随分と都合よく作られたものだな...。)
どこから来てどのようにこの生命体が存在しているのかはしらないが、
ぼくとの共生を選んだならば、そのあるかわからない死の時まで十分に使役するつもりだ
...そしてこの意識がブラックアウトした後の状態はいつまで続くのだろうか...
そう思案に老けて、静かにその時を持つのであった...