文才ではないので期待はしないでください
「...ん...んんぅう...?」
いきなり目の前が明るくなる...というより、視界が手に入ったというべきか。
先程までの真っ暗な眠らされたような世界とは大違いであった。
光量の変化に驚く頭を落ち着かせて、目を開いて周りを見渡す。
「ど...どこだよここは...?」
少しばかり口を悪くしながら誰も居ないはずなのに、誰かに問いかける。
周りは見渡す限り深い森だった。
その大自然の中に1人ポツンと木のそばで寝ていたのだ...。
「...はッ!!」
ここはソ連領内...なのかもしれない。
先のソ連軍による砲撃で重傷を負ったと一般兵士に勘違いされて郊外へ運ばれたとか...?
ではぼくの部隊は...一体...どこに?
考えれば考えるほど謎が増す。
情報量が異常に少ないこの状況では、まず身の回りから整理だ
服装は整ってある 埃一つついていない
腰の将校用拳銃は健在で、ブラックのP-38がホルスターにしまってある
更に、『忠誠こそ我が名誉』と刻まれたSS隊員の証、短剣も無事に所持している。
これが無ければ、真の隊員とは認められない。
「ふぅ...。」
安心して一息つく。
「しかし...動かないことに情報は得られないよな...。」
これまでのように部下の我が同志達に諜報活動をその進化した高い身体能力と共に行わせてぼくが司令の頭脳となる方法はここでは通用しない
他の我等が被験体達はここには居ないが、恐らくぼくが場所を移動すれば、共に追従してついてくるはず。
だがここに居ないということは、彼らがこれない移動不可能な場所に自分がいるということ...。
そういった場合、ぼくの『壺』から再び蘇らせねばならない
『壺』の中には遺灰が詰めてある。それもぼくの部下...いや、もはや自分の身体の中にいる例の黒い生命体を同じく秘めた同志達の被験中に採取した肉体や骨、遺灰だ
彼らの一部であるこれをぼくの持つ呪詛と共にこの壺を解放してあげれば、再び自らの前にその姿を現わす
それが1935年の実験結果から推測されたぼくに寄生する生命体の能力...優しく言えば、いわゆる召喚とかいったっけ?そういう奴だ
だが今、彼らが必要というわけではない。
しばらく様子見をしてから我が隷下として再び共に戦ってもらわねばならない...
何ならぼくの部下達 彼ら同志は肉体を無理やりぼくに寄生している...名前でもつけるか、この物体Sのほんのカケラが死体に帰省して動いているようなものだ
つまり操り人形のようなものだ
しばらくは彼らのその痛ましい姿は見たくなかった
考えを一旦終わらせて、ひとまず目の前の目標に入る
「位置情報の取得...あわよくばスターリングラード戦線への帰還、戦線復帰だな...よしっ...と。」
立ち上がり、適当に付いた砂埃を払いながら走り始める。
タッタッタッタッ
今こうしている間にも100万近い将兵達がスターリングラードで倒れているかもしれない。
そう思うとジッとしている余裕はなかった。
ガンッ
地面を強く踏みつけて空高く跳躍して、一時的な滑空状態へと移行する。
鳥みたいに空を飛べるわけではないが、跳躍による物理エネルギーを利用して一定時間空中に留まることは可能だ。
それによってこの高い木々の真上から全景が見下ろすことができ、位置情報の取得が簡単に行える。
正直偵察機や航空機をわざわざ出さなくても良くなるため、ぼくのこの偵察方法は重宝された。
ビュゥゥゥーッ...
強い向かい風を浴びながら、一面の森と、少し西にいけば森の中をひっそりと繋げる街道が見えた。
そしてその街道は...
「...なんだありゃ?」
見たこともない建物に驚愕する。
ここから真北に存在する高い壁...そして中央に城らしき物が見える...。
「スターリングラードにしても、空爆と度重なる砲撃であんな綺麗には残されていないはず...。」
きっと自分はもっと別の場所...少なくともこんな静かでは独ソ戦線には居ないことは明白だった。
しかもあの凄まじく大きな城塞都市のような場所は、自分が聞く限り近くにあるなどという話は耳にしたことがない。
「と、...取り敢えず、情報収集の為に人が居そうなあそこに向かうとするか...?」
やや疑問口調で自分で自分に問いながら、あそこまで跳躍と走りによって走破を目指す。
ダンッ!
地面を強く蹴るごとにコンクリートのように圧縮された土と軍靴が鈍い音を発する。
そして凄まじい速度であの謎の城塞都市へと向かうのであった...。
徐々に壁が大きく見え、順調に近づいて行き、その壁の根元まで来た。
ズザザザザァァッ
砂埃を舞わせながら、急ブレーキをかけて壁を見上げる。
「ほえぇ...そもそも独ソ両国内にこんな建物あったっけ...?」
その壮大さに少し見惚れるが、それはまたの機会にするとして、更に情報を求めて壁に向かって走りだし...
タッタッタッタッ
ガンッ
壁の頂上であろう30-45m上まで一気に一度の跳躍だけで距離を詰め、登り切る
この壁は内側の都市であろう部分を囲うように円形で建てられている
故に、この壁の上を周回すればここの中身が丸見えだろうという魂胆だ。
「うわぁ...すげぇ広いな...。」
壁の内側を見ると、遠くから見えた通り中央にデカイ城のようなものが立ち、その周りを取り囲むようにして住宅街や商業施設が立ち並ぶ。
「こんな広いとなると...うぅん。どこから手をつけるか...。」
町はなかなかに賑わってるらしく、音だけ聞けば普通の街並みだ。
ただ...妙なことに自動車や機関車、インフラや高度な技術レベルの生活風景が見られない。
城壁の上から見るとそればかりか斧や剣、槍などで武装する衛兵などが見られた。
「なんと...後進的な...というか、ここは祖国ドイツでもソビエト領内でもない...完璧な第三国ではないか。」
その事実にたった今気づき、驚愕している。
「と...とりあえず!!祖国に戻らねば...ライヒへ!!」
そう決心して、もう何がなんだかよくわからず、がむしゃらになりながらもどこか場所を聞けるところへと移動する。
壁を急いで跳躍して下町に飛び降りる。
ビュゥゥゥッ ドォンっ!
少し高さがありすぎたのか、衝撃で地面が少し凹んだが人通りのない裏街道だった為問題ない。
タッタッタッタッ
急いで町中を駆け回る。
早く仲間の元へ戻らねば...!
その一心で走り回ってあらゆる人物などに尋ねてみる。
言語の壁は...正直、なぜか向こう側の言語がドイツ語でないのにドイツ語に聞こえる。
この意味のわからない不明瞭な状況に嫌気がさしてくるが、こんな都合のいいことがあるならなおさらさっさと場所を訪ねるべきだ。
そうしてドイツ 又はソ連領内の位置情報やこの二カ国や主要な枢軸国への帰路を教えてくれと道沿いに出会う人々に話を聞いていく...がしかし、
「あぁ?ドイツだぁソビエトだぁ?何を訳のわからんことを...。」
そう事あるごとに無視されていく。
どういう事なのか、誰に尋ねてもそんな風な回答しか出てこなかった。
さらには、
「そんな国名聞いたこともないぞ?...それにあんた、ここいらじゃ珍しい服装してるな。
どっかのお偉いさんかなんかかね?」
「...ありがとう...もういいです。」
そう大人しく食い下がる。
道沿いに広がる石造りや木造の建築物や商店の数々...。
後進的な文明...。
意味不明だ。世界で超大国のはずである我が祖国の名や敵国であるソビエトの名すら知らんという。
頭の中が混乱するが、その中で最大限出来る限りの、今自分にできる出来ることを探す。
「...何はともあれ、情報こそが要だ。」
パンっ
両手で頬を叩いてから、気を取り直し、再び情報収集に務める。
この場所が一体なんなのか。ここにいる人間はなんなのかを。
思案しながら歩いていると、ちょうど話すのに良さげな場所を見つけた。
外観からは木製の建物で、ライヒにもよくある酒場だ。
キィィィ...
扉をあけて店内へ入る。
そうすると店の中にいる者達は皆、普段見ないこの服装が奇妙なのか、こちらをじっと見つめてくる。
気にもとめず、すたすたと歩き、どこか手頃な席はないかと見渡す。
すると、近くに何やらジッと座り込んで机に顔を伏している少年っぽい男の子を見つけた。
この子なら周りの連中よりかは気を落ち着かせて話せるだろうと思い、そばまで歩いていき、
「おーい。そこの少年。」
「...っ!!きたのか!!」
ガバッ
と、勢いよく顔を上げる少年...だがしかし、彼が言う通りの『来る』人ではなかったらしく、その嬉々とした顔は再び通常通りに戻った。
「って違うのか...。...ぇ、えーと、あなたは...?」
いきなり話しかけてきたぼくの方を見据えて、疑問に思ったことを口にする。
「そ、その前に、隣、座ってもいいかな?」
「え、えぇ、まぁ。」
「ありがと。」
短い会話を終えて彼の向かい側の席に机を挟んで座る。
「で...まぁ、初めまして。ぼくはヘルガ...ヘルガだ。よろしく。」
素性や本名、職業は今明かさないほうがいいだろう。情報の秘匿というやつだ。
「ぇ、え?...ぁ、はい、よろ...しく...?」
いきなりのことでよくわからないと言った顔をする少年
「失礼だが、名前は?」
「あ、は、はい!タツミといいます!!今日、帝都についたばかりの田舎者で...ぇ、えっと、あなたはどうしてぼくに?」
気前がいいのか自己紹介をスラスラとしてくれる。
「どうやら...だれか待っていたみたいだけど、その人本人じゃなくてごめんね。
ぼくは単に君と同じなだけさ...いや、君より無知かもしれない。」
「と、いいますと?」
「話は長くなるんだが...。」
そうして自分が相当な田舎から来て、今日この地に辿り着いた身で何もわからず、この辺りの地理やこの場所について知りたいと言った趣旨を伝え、彼に色々と答えてもらった。
「...なるほどなるほど...ここは帝都で、中央にあるデッカいお城みたいなのが皇帝のいる場所...と。」
「そうさ!俺もどんなとこなのかはまだ来たばっかだし、よくわかんなくてな...けど、強い助っ人がいるから安心なんだぜ!」
意気揚々と話す彼は、そう語る。
「助っ人...タツミ君がさっき言っていた待っていた人のことかい?」
「そうさ!その人、どうやら警備隊のお偉いさんと通じてる友人がいるらしくて、隊長クラスからパパッと入隊させてくれるらしいんだぜ!」
「そ、それはうますぎる話じゃない...かな...あはは。」
その話を聞いて苦笑いが表情に出る。
「そうか?でも、俺はあいつを信じるぜ!もう少し待てば、ここに来るだろうしな!」
...この少年...どう見ても騙されている
話によるとこの少年、その人物にほぼ所持金の全額を渡してしまったそうな。
なんと虫のいい話だこと...
本人は鈍感なのか待ち続けているが...
「...ところで、ヘルガはどうして帝都に?」
タツミから聞かれる。
「...どうしてと言われても...どうしてなんだろう。」
真剣な顔になって、一思いに耽る。
「?」
「...ぁ、いやいや!まぁ、大体は君とおんなじ理由さ。」
「そっか!」
うまく話を合わせておく。どうしてここにいると言われても自分でもよくわからないのだから。
「それと!!
さっきから気になってたんだけどさぁ!その服装は何!?どっかの軍隊!?超超超かっけぇよ!!すんごい勲章付いてるけど、どっかの軍人さん!?」
興味津々にぼくの親衛隊の制服について問いただしてくる。
この少年、事あるごとに声がデカイので注目の的だ。
まあ、それはおいておいて
「こ、これね...これは...まぁ、なんというかただの私服だよ。こ、こ故郷ではよく着るんだ!」
むちゃくちゃな嘘だが、しかし
「そ、そうなのか...軍人さんなら、俺を入隊させて欲しかったんだけどなぁ...。」
「そんなに腕が立つの?」
少し深くまで聞いてみる。
「おうよ!俺の剣の腕は中々だぜ!!」
そう言ってタツミは背中にかけてある剣を親指で指して自慢する。
「...ふぅぅーん...。」
ぺろり...
舌鼓が鳴る。騎士...に似たようなものなのか。彼のその手腕に少し興味が湧いた。
「ねぇ...良かったら、ここでその君が待っている人を一緒に待ってもいいかな?
運が良かったらぼくもその...帝都警備隊に入隊できたら、なんちゃって。」
この都市国家には、帝都警備隊と言われる軍事組織が存在する。
明確な軍は強力な力を持つ帝具を持つ者にしか与えられず、この警備隊のみが国内で唯一の正式な武装部隊だ。
「あ、あぁもちろん!!
じゃぁ、改めて、俺はタツミ!
本当はもう2人いるんだが、はぐれちまってここにはいないけど、帝都にはついた頃だし、出会ったら紹介するぜ!」
「ありがと!ぼくはヘルガ...ヘルガ・シュタイナー!よろしくね!」
この世界を鑑みるに、自分のいた場所とは全く異なる場所というのは明白だ。
更には恐らく...世界線、丸ごと違う可能性も存在する。
昔、誰かから聞いたことがある。
自分達とは異なる道を選んだ分岐線や世界線がいくつも存在し、平行線として存在するという話を。
これはそのうちの一つなのだろうか?
世界地図などについても、タツミは明確に記されているのは帝都の東側が海岸で囲まれており、
西側と北側に異民族の国家が存在するということだけらしい。
ならばここはもはや自分のいた世界とは全く異なる。
この地で働き、情報収集に務め、祖国に戻れる日までは活動し続けねば...。
あわよくばこの帝国自体をライヒのものに...。
小さな野心に火がついたように思案を巡らせるのであった...。
主人公の制服姿の元はだいたいこんなイメージ
https://images.app.goo.gl/Au2kHMJmcaaNDNE99
主人公の隷下のSS隊員はこんなイメージ
https://images.app.goo.gl/aopmUab9UgDYsZWD6