ナチスの生物兵器で斬るっ!   作:YJSN

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ナイトレイドとの接触

「...うぅ〜ん...。」

 

何やら誰かの声が聞こえる。

 

比較的若い、男性の声だ。

 

(...うなされてるのか...?)

 

生憎と自分はいままだ睡魔との闘争によって動けない。

 

我が瞼は一向に閉じたままである。

 

(...眠い...。)

 

眠気を振り払おうと意識を再び覚醒させる試みを行うが、その瞬間

 

ガバァッ!!

 

「はぁ...はぁッ...。

...イエヤス...サヨ...俺を一人にしないでくれ...。」

 

隣にいる少年らしき声が突如、悪い夢から起き出す。

 

(...一人に...か。だが誰かの声が聞こえてる時点で、我々はもう一人ではない。)

 

目覚ましがわりに彼の声を利用して、瞼をこじ開ける。

 

「...。」

 

見たことのない木製の天井。

 

更に硬い地面...。

 

(...ここはどこだろう。)

 

確か首切りザンクとの闘いにアカメが決着をつけ、ぼくは意識を失ったはず...

 

「...ん〜...むにゃむにゃ...。」

 

「...って、なんで俺のベッドに...っ。」

 

「...タツミは今日から私の部下なんです...むにゃむにゃ...。」

 

今の若い声の主...そうだ、タツミだ。

 

タツミが何やら異変を感じ取って呟く。

 

(...ベッドの上に何かいるのか...それに、タツミ以外の誰かの寝言も聞こえた気がする...。)

 

タツミがもう一人の...女の声の主の、部下?

 

(...タツミはどこか軍にでも所属していたのか...?)

 

ますます疑問が深まる...。

 

すると、

 

「...ん〜...?」

 

と、タツミのベッドの上に上半身だけ寝転がってるらしい女性が立ち上がり、こちらの方へと近寄ってくる。

 

そして...

 

「おはようございます...ふぁーぁ...。」

 

と、なぜかぼく、又はタツミでもなく、机の上の...木で作られた小さな彫刻...おそらくタツミの私物であろうものに向かって挨拶をした。

 

(...大丈夫か、この女...。)

 

内心そう思ったが、自分も、目線だけ動かすのもやめて、周囲にいる者が全員起床した事を確認してから自分も起き上がる。

 

「...おはよう、ございます。」

 

棒読みで彼らに朝の挨拶を済ませる...。

 

(...てかここほんとにどこッ!!)

 

内心はその疑問でいっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから朝起きて、タツミと...もう一人の女性、自己紹介してくれた桃色の長髪の女性 シェーレには鍛錬があるようなので、食堂で状況をよく聞いてくれ、とのことだった。

 

ちなみに鍛錬の内容を聞いてみると、鎧泳ぎとかいう地獄の内容だった...。

 

「シェーレの奴の部下でほんとに大丈夫なのかぁ?」

 

「安心しろ、タツミはああみえても年上受けがいいんだ。」

 

「はいはいはい!!わたし次タツミを部下にするの予約済み〜ッ。」

 

「ほらな?」

 

「なんなんだよそれ!!ズリィィィィィ!!」

 

何やら朝早くから食堂ではガヤガヤと騒いでいるようだ。

 

スタッスタッスタッスタッ

 

テンポよくこの木造の通路を歩いて行き、食堂前まで来る

 

ギィィィィィ...

 

足元の床が軋む音で、皆が食堂入口側を見る。

 

「あ...お、おはようございます...。」

 

取り敢えずグッドモーニングを伝える。

 

数多くの視線がぼくに突き刺さる チクッチクッと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...なるほど、だいたいの状況はつかめました。」

 

昨晩の自分の状況と、あれからどうなったのかを早足で聞いていった。

 

あの後、気絶した僕をタツミが庇い、傷が癒えるまで自分の部屋で休ませると言ったそうだ。

 

あそこで寝かせてくれれば自然にいつも通りに帰れたのに...。

 

これでは屋敷の妹、アリアが心配する...いや、あいつの心配する顔も少しは見てみたいな。

 

まあ、アリアのことは親衛隊員がなんとかしてくれるだろう

 

彼らは指揮官不在でも最終時に下された命令に対する戦略的判断は怠らない

 

それだけの厚い信頼があるということだ。

 

それと、タツミがあのアリアご両親の邸宅におけるナイトレイド襲撃の時に、彼らの仲間に加わることになったそうだ。

 

(...なるほど、だから彼はあの時アカメとザンクの戦闘の場にいたのか。)

 

それで、先日は首切りザンクの暗殺依頼に赴いていたとのこと。

 

「自己紹介が遅れたな。私はナジェンダ。ここ、ナイトレイドのリーダーを務めている。」

 

「俺はラバック!!ところで君、男?女?どっちにも見えるからわかんないけど、もし女の子なら俺っちと付き合って...」

 

ガンッ

 

「グヒョォッ...!」

 

ヘロヘロ〜...ぺたん

 

「私はアカメだ...。」

 

「そしてそのお隣がレオーネお姉さんだよ〜、よろしくね坊や。」

 

さっきの緑色の奴は随分なアタッカーだけど、残念なことにぼくは男で、アカメに股間を強打されたのは無駄に終わったな...。

 

「ぼくは...ヘルガ。ヘルガ・シュタイナー大佐だ。」

 

「大佐?警備隊にでも入っているのか?」

 

ナジェンダがふと疑問に思って聞いてくる。

 

「そ、そうだよー、さっきから気になってたんだけどよ、そのご立派な軍服、どっかの特殊部隊...だったりして!?」

 

「ラバック...お前なぁ...。」

 

緑色のラバックが興味津々に聞いてくる。

 

「あー...その前にそれ、食べてもいい?」

 

話を遮って、目の前に並んでいる朝食であろう果物に手を出そうとする。

 

「あぁ、もちろんだ。腹一杯食べてくれ。」

 

「ありがと!」

 

ニコッとした破格の笑顔を送りつけると、

 

「くぁぁぁぁぁ!!朝から年下の男の子の笑顔を観れるとはッ!タツミ以上かもしれないな!!」

 

黄色い髪を持つ女の人、先ほど名乗っていたレオーネさんがそういう目でジターッとこちらを見てくる。

 

取り敢えずリンゴをつかんで、口に運ぶ。

 

シャキッ...シャキッ...

 

甘い果汁が口の中いっぱいに広がる。

 

ひとかみ、ふたかみと味を楽しんだところで、

 

「ふぅ...で、何の話だったっけ?」

 

漸く話に戻る。

 

「だから!その服装だよ!!どっかの兵隊さんかな!?」

 

芋虫色のラバックが再度聞く。

 

「ぁ、あぁ、これは...。」

 

一瞬戸惑う。親衛隊の正式軍服ですと、正直に言うか?まだ信用もできていない彼ら、ナイトレイドに...。

 

彼等は暗殺部隊...というより、懲罰部隊や粛清部隊といったほうが正しいだろう。

 

だが同時に彼等は帝国の破壊者、すなわち汚職者や犯罪者の一斉暗殺も行っている。

 

今の自分からすれば有益だ。

 

(...ここは本当のことを話しておくか、それにアカメの目もある。)

 

昨晩の戦闘で、自分のザンクへの攻撃が見破られており、只者ではないことは知れ渡っているはずだ。

 

「...親衛隊員だよ。耳にはしたことあるでしょ?」

 

「あ、あぁ、最近帝都の主要な経済区域担当官、オルトア・アリア貴族嬢の護衛でもあり、帝都の治安維持も行なっているという...。

 

って、貴様親衛隊員か!?」

 

ズザザッ

 

一気にぼくから距離を離して周りの者たちが戦闘態勢に入る。

 

「ち、ちょっと待て待て待て!! 今ここでやり合う気か!?」

 

焦りながら待ったをかける。

 

「最近になって勢力を拡大してる親衛隊を危険視するのはわかる...それにアリアにバックについてるのは例の大臣...わかる、わかるよ!」

 

「そこまで知っているならば今更待つ必要はなし!!」

 

「葬るッ...!」

 

即決でぼくを斬ろうとアカメがどこから持ってきたのか彼女の刀で切り裂こうとしてくる。

 

「ぼくらが敵となる理由はないはずだ!それに君達とはイデオロギーの相違点しかない...頼むから冷静になってくれ...。」

 

殺気に満ち溢れた場所へと変貌したが、何とか取り付き直す。

 

「...わかった。だが変な気は起こすなよ?」

 

ナジェンダが承認して、周りの者たちもそれぞれの武装をしまう。

 

「...にしても、まさか親衛隊員だったとはねぇ...タツミの知り合いだっていうから連れてきたってのに。」

 

「あぁ悪かったな!親衛隊で!!」

 

若干声を荒げながらムキになる。

 

「まぁそう怒るなってぼくぅ〜。」

 

「...喧嘩売ってんの?」

 

ぐぬぬぬぬぬ...

 

...いや、これではラチがあかない

 

「ま、まぁまずは状況整理だな...。ぼくには君達を殺害する理由もないし、害を加えるつもりもないよ...。」

 

「...でも私らの本拠地、バレちまったよな?」

 

「それは...そんくらい信用しやがれってんだ黄色野郎!」

 

「黄色野郎とはなんだ黄色野郎とは!

見た目のかわいさの割に口は悪い悪ガキにはお仕置きが必要だなぁ!」

 

黄色い奴...レオーネと熱くなるが

 

「二人ともやめろ。今はそんなことを言ってる場合ではない...それで?

ヘルガ大佐、私達に危害を加えるつもりはないといったな?」

 

こくんっ

 

ぼくは素直にうなづく。

 

「だいたい、ぼくらが狙ってた経済区域の担当官も1人そっちが暗殺してたし...ありがたいぐらいの存在だよ。」

 

「そうか...そう言ってもらえると嬉しい限りだ。」

 

「...。」

 

隣からアカメがじっとこっちを見つめてくる。

 

(...昨日のことまだ気になってるのか...?)

 

内心で呟くが、彼女には伝わらない。

 

「ともあれ、昨日のザンク討伐の時、タツミを助けてくれてありがとう。それについては感謝している。」

 

「ん...まぁ、彼は知り合いみたいなものですし。」

 

本当はあの時、ナイトレイドの襲撃から彼を守らなかった事を少し後悔していただけなのだが。

 

「...そうか...。では友好関係を築けそうだな...とはいかないんだね、これが。」

 

ナジェンダが何か意味ありげな感じで言ってくる。

 

「それって...アリアのことだよね?」

 

「そうだよ!!あの時、うちらがあの外道の両親を殺害し終えた時にはもうどこにもいなかったんだから...。

 

そしてタツミに聞き出したところ、あの夜いるはずの一緒にいたヘルガ...あんたとそのアリアだけが跡形もなく消えていた...と。

 

おっかしいなぁ、うちら結界を張ってたのに。」

 

「...どうやって逃げたか、それについては聞かないで欲しいけど、彼女は今こちらで精を出して働いてるよ。」

 

ナジェンダや隣にいるアカメが苦虫を噛み潰したようかのような顔でぼくを見据える。

 

「ッ...そいつは拷問に関与しただけでなく、あまつさえオネスト大臣の派閥に付いているんだぞ!それにその護衛のお前達親衛隊も同罪だ...ッ。」

 

レオーネが本音をぶつけてくる。

 

「...アリアは拷問に直接関与はしていない。彼女の両親が主犯格だ。」

 

ダンッ!!

 

アカメがそばの机を拳で強打する。

 

「ッだとしても、彼女は見殺しにした。

それもまた然り...。」

 

「...もちろん、拷問器具の手入れや拷問の黙認は彼女が破壊への手助けをした何よりもの罪だ。

...だが彼女はまだ若い、それにその容姿は我がアーリア民族のと瓜二つだ。」

 

「ふんっ...民族主義者か...。」

 

レオーネがまたも引っかかってくる。

 

「何が悪い、コミュニスト...。」

 

「ッなんだと!!」

 

「レオーネ!...やめるんだ。」

 

ナジェンダがその場を収める。

 

「...だがレオーネが言うことにも一理ある。それに先ほども述べたように彼女はオネスト派閥に属している...いずれ死なねばならない。」

 

「...いや、死にはしないさ。見限りをつけてぼくが親衛隊をオネストや警備隊、

そしてナイトレイドとも違う、第三の武装部隊として勢力を拡大させる。

 

そしてアリアはぼくの指揮下だ。彼女もオネストの情報網から彼の寝言をくすねる。

そして彼女のその働きこそが、彼女の罪を滅ぼす。」

 

そのぼくの計画に皆は押し黙る。

 

「...なるほど...なら、しばらくは相互利益の為に協力関係ってところだな?」

 

「...友好的中立の辺りで勘弁してくださいよ。

この帝国、ライヒは誰にもあげませんよ?

 

現皇帝の明確な意志と共に統治されるべきだと考えているから...ね。」

 

「ふむ...。」

 

皆深刻そうな顔をして考えるが、ここで止まっていては何もできない

 

「ま!その話は置いといて、対オネスト陣営として、しばらくはよくやっていきましょうよ。」

 

話を切り出すと、

 

「ぁ、ああ、まぁ確かにそうだな。乗った、では時が来るまで...。」

 

「うん...では当面の目標は決まったことだし...帰ってもいいかな?」

 

「なんだ、そんなに急ぐ必要はないじゃないか。」

 

「ナジェンダ...こいつは私達の場所を知った。帰らせないぞ...!」

 

アカメが血走った目でぼくを見る。

 

「そう早まるな、アカメ。彼もオネストにとって有利になるようなことは自分の不利...それは重々承知だろう。そうだろう?ヘルガ大佐殿。」

 

「うん...。」

 

「返事が小さい返事が!!」

 

レオーネがまたケチをつけてくる

 

面倒になったので、

 

『...Hasch...。』

 

静かに呟き、自らの体をこの空間と同化させ、黒い霧が自分が座っていた食堂の席に残される

 

「ッ!?」

 

アカメが一瞬驚くが、つかの間にぼくはレオーネの背後に回り、

 

「はぁぁぁぁぁぁい!!!!」

 

めい一杯の大声で彼女の耳元に返事をした。

 

「うぎゃぁぁぁぁぁ!!うるさいっての!!」

 

彼女は飛びのいてぼくから耳を遠ざける。

 

「返事がちっちゃいんでしょ!」

 

「うぬぬ...。」

 

「はぁ...。」

 

アカメが警戒したのが馬鹿らしいとばかりに、奥の厨房らしきところに戻っていった。

 

「さぁて、じゃひとしきり用も終わったようだし... 」

 

モミモミ...

 

「...ん?」

 

何か脇の間から胸にかけて違和感がある

 

そして胸がなんだかくすぐったいような...

 

「おおぉ...ほんとうにまな板だ...こいつ男だ!!」

 

「...この変態がぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ガンッガンッ!!

 

彼、芋虫ラバックとでも名付けるか、そいつの股間に二撃ほど痛い蹴りを入れてやった。

 

「きゃぃぃん!俺の大切なところがぁ...っ。」

 

「男同士で胸を触るバカがいるか!!」

 

かれこれ乱れた服装を整える。

 

「ははは...彼は幼女のような童顔の君でも手を出すらしいな。」

 

ナジェンダが冷静に分析する。

 

「...ちなみにゲイではないらしい。」

 

「ゲイじゃねぇよ!!」

 

ラバックが緊急復活して反抗するのであった...。

 

 


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