兵装試験の時間です   作:とろろろ

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提督宛てに他鎮守府からの演習依頼が舞い込んだ。
「珍しいな。ウチに演習依頼してくるのなんて・・・うわっ同期じゃんこいつ・・・」
この鎮守府に演習依頼が来ることはかなり稀である。陸奥や大淀が驚いていることがそれを証明する。
「よし、おもっくそデータのない新兵器使いまくってボコボコにしてやろう!ついでにデータ取っとこ。」
笑顔の提督が依頼書の「許諾」に○をつけて大淀に渡す。

この鎮守府に演習依頼が来ない理由、その1つがデータのない新兵器を相手にしなければならないため、である。
基本的に兵装試験が終わったものなら各鎮守府にデータは配布される。ただ試験途中のものや実装不可と判断された兵装に関しては例外となる。そうなると取得できる情報量は開発当初の理論値程度であり、挑む側はかなりの不利を強いられる。それを楽しむ変態ならば良いが基本的に提督という生き物は自らの艦娘たちを勝たせてやりたいため兵装試験鎮守府には依頼したがらない。
今回、依頼してきた第18近海護衛鎮守府の提督は、こちらの提督と同期でありそれなりに交流のある鎮守府である。
なのでちょっと他鎮守府とは事情が違うのである。

「アイツの艦隊だと・・・多分水雷戦隊に高速戦艦を合わせた攻撃力と機動力のある編成だろうな・・・夜戦はしたくないな。」

「なら私が出て秒で終わらせましょうか?」

「いや、陸奥が出るとデータ取れないからな。昼戦向きな編成で速攻してみるか・・・」

そう言いながら提督が6人の艦娘を呼び出す。

・・・・・・・・・・・





演習はデータ取りに最適ですね

1週間後~

 

第4兵装試験鎮守府近海に見える12の影。

天龍型1番艦「天龍改二」と暁、響、雷、電からなる普通な水雷戦隊+金剛型3番艦「榛名」の編成が第18近海護衛鎮守府の艦隊。

高練度な攻撃艦隊。連携も完璧にこなす当鎮守府最強の艦隊である。

ただ天龍たちは完全に相手の編成の訳が分からなくなっていた。それは彼女たちの報告を受ける提督も同じ。

「ねぇ・・・あの金属の塊ってなに?」

暁が誰となく問いかける。

「よく見ると上んとこから扶桑型の艦橋みたいなの出てるし位置的に山城じゃねーか?」

隻眼を凝らして天龍が答える。

鉄板のようなモノに囲まれている艦娘?を先頭に見たことのない手甲のようなものをつけた時雨と夕立、近接メインとなる短い戦闘距離でありながら空母の赤城と瑞鶴、最後尾には天龍が並ぶ。

 

「提督、榛名が主砲で牽制して天龍さん達が突撃でいいですか?」

「えぇ構いません。敵艦載機発艦までに一気に距離を詰めましょう。インファイトに弱い空母を優先して撃沈、あの塊は・・・後にしましょう。暁と響には時雨と夕立をお願いします。」

「了解!じゃいくぞお前ら!」

「うん!」

「понимание」

「響、作戦中は日本語でね?」

「了解なのです。」

「はい!榛名にお任せを!」

 

演習開始を知らせる空砲が鳴る。

と同時に金属の塊に火が点く。

「おいっアレ爆発すんじゃねーか!」

「とりあえず皆さんは突撃を!榛名、砲撃開始しまs電探に反応?艦載機?早すぎます!」

想定外のタイミングで発艦された敵艦載機に対空砲火をしつつ天龍たちは進む。

「・・・多分カタパルトかエレベーター・・・皆さん瑞鶴です。瑞鶴を優先して狙って。」

提督の指示に榛名が動く。異様に早い発艦は我々の知らない装備によるものと考え瑞鶴を狙う。

「赤城が撃ってこない・・・」

響が気付く。

「おっしゃ!ならチャンスじゃねーか!」

空母達に狙いを定めて加速しようとした天龍。その視界には異常な速さで真っ直ぐに突っ込んでくる金属の塊が写る。

とっさに天龍たちが砲撃する。だが弾をものともしないソレが零距離まで一気に飛び込んでくる。刹那、背後のブースターと装甲全てをパージ、中から伸びた色白い手が雷と電を掴み水面に叩きつける。

あまりのことに対応が遅れる天龍たち。

「こんなバカみたいな装備・・・不幸だわ・・・」

巨大な砲塔が火を吹く。

一瞬でペイント弾まみれになり轟沈判定となる雷と電。

次の動きをしない無防備な背中に容赦なく魚雷を放つ響。

「どうせもう弾入ってないのよね・・・フフフフ・・・」

虚空に笑う山城に撃沈判定が出る。

それを無視して4人は相手の懐へと飛び込む。

前に出てくる時雨、夕立に砲撃する天龍と暁。その弾は時雨たちの手甲に阻まれる。というより受け流されている。

「嘘でしょ!弾が誘導されてる!」

「なら直接ぶった切ってやるよ!」

天龍が抜刀、足の止まった夕立へ一閃するがそれを相手の天龍が受け止める。

「改二じゃねークセによぉ」

「うるせぇぶっ潰してやるよ!」

天龍2人が斬り合っている間に隙を見て響と榛名が空母連中に襲い掛かる。

「私、近接だめだから~」

そう言いながら下がる瑞鶴。構えをとって砲撃から近接の間合いに入る響、榛名。そこに立ちふさがったのは瑞鶴と同じく空母であり近接を苦手とする赤城であった。

赤城に掴みかかる榛名。

「響さん、瑞鶴さん任せました!」

「わかった・・・」

短く返答した響が瑞鶴へ向かうのを見ながら榛名が赤城を拘束。

がっちりと赤城の両肩を掴み主砲を向ける。

「榛名の勝ちです!」

その瞬間、赤城の艤装から伸びた駆逐イ級のような形をした4つの機械が榛名の砲塔に噛みつく。

「これは?!」

「榛名さん、すみません。今日の私、艦載機のかわりにこの子たちなんです。」

榛名の砲塔が金属の悲鳴を上げながら噛み潰されていく。

「いやっなんでっなんなんですかコレェ!」

戦闘力を奪われた榛名に続行不能の判定が出る。

 

時雨たちの強固な防御に苦戦しつつ魚雷は防げないことと攻撃力が低いことを見抜いた暁は2対1でありながらも有利に立ち回る。

弾で牽制し魚雷を放つ。これを繰り返してなんとか時雨を小破させていた。

だが敵に夢中になるあまり1つ失念していた。

大きく突撃してきた夕立をいなし夕立が体勢を崩した隙に魚雷を放とうとする。そこで暁は魚雷が尽きていることを知る。

「うわっ弾がもう・・・」

時雨と夕立はこれを待っていた。

暁は知らなかったが彼女たちは一方的な狩りが好きなのである。

今まで撃たなかった主砲や魚雷を一斉に撃ち始める2人。

「山城の仇だよ・・・暁!」

時雨の魚雷を受けた暁は轟沈判定。悔し涙を流していた。

 

天龍同士の斬り合いはやはり改二の方が強い。

「オラオラっ!足が止まってっぞ!」

「このヤロー、調子のりやがってぇ」

僅かではあるが確実に天龍改二が押していた。

何度目かわからない鍔迫り合い。だがこれが最後の鍔迫り合いとなった。

・・・ピシッ・・・

天龍改二の刀にヒビが入る。

「んな?!」

長年の相棒の突然の悲鳴に戸惑う天龍。

あれよあれよという間にヒビは広がり中程から刀がパキッと折れてしまう。

折れた刀と相手の折れてない刀を交互に見る。

「わりぃな天龍改二さん?オレのこいつ、お前のとちょーっと作りが違うんだわ。」

外見は殆ど一緒だが第4兵装試験鎮守府の天龍に与えられたら刀は従来品を改良した更新版。耐久性アップをメインに素材の変更と刀身断面が変更されたそれであった。

「まだオレらんとこまで回ってねぇヤツじゃねーかよ・・・」

ショックを隠しきれない天龍改二を時雨と夕立が襲う。

呆気なく撃沈判定が出てしまう。

そのまま1人になった響を瑞鶴以外の全員で挟撃、撃沈とした。

これにより本日の演習は第4兵装試験鎮守府の勝利できっちり夜戦前に終了となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




日も暮れ始めた1650

港に戻ってきた天龍たち第18近海護衛鎮守府の面々を迎えた提督はそのまま第4兵装試験鎮守府の工廠へと天龍と榛名を案内した。
ペイント弾を落とし工廠に入った天龍、榛名を迎えたのは第4の提督と明石、夕張そして新しい天龍の刀と榛名の主砲であった。
「丁度、更新時期だったから新しいのを用意して頂きました。」
「これって更新版のじゃねーか!いいのかよ!」
「悪かったなってのといいデータ取らせてくれたお礼だよ。それと同期のよしみってやつ。」

天龍は新たな刀を腰に携え折れた刀を自らの提督に渡す。
「提督、これ記念にとっとけ。」
天龍から刀を受け取った提督の横に砲塔を新しくした榛名が並ぶ。
「潰れた時はどうなるかと思いました・・・けど治ってよかったです!」

戻った天龍たちはすっかり綺麗にシャワーを浴びた暁たち六駆の面々に羨ましがられながら改めて挨拶を交わし第18近海護衛鎮守府への帰路についた・・・
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