必ず、かの同人作家を除かなければならぬと決意した。
龍田には二次設定がわからぬ。
龍田は、普通な艦娘である。武器を振り、敵と遊んで(意味深)暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
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秋雲の部屋のドアを叩くものが現れた。
昨日、ようやく完成した新刊「潜水艦がちょっと鬼門だわ///」を数冊配布してきたばかりであった。
(もう誰か感想言いにきたかな?今回の結構自信あるんだよねぇ・・・)
秋雲がノホホンと扉を開ける。
客人を見上げ言葉を失う。
一瞬固まる空気。
彼女は自分の無警戒さを後悔した。
そこに立つのは満面の笑みを浮かべている龍田。
(いやまだ配布してから早い・・・龍田さんには見られてないはず・・・)
「あのー龍田さん?どうしました?」
少し目を逸らしながら秋雲が問う。
「明日の偵察部隊の打ち合わせ場所、まだ伝えてなかったからね~。第2会議室に0930に集合よ~。」
秋雲は安堵した。返事と感謝を伝え扉を閉める。が閉まらない。龍田の足が見事に扉を止めていた。
「龍田さん?足が邪魔で閉めらんないですよ?」
恐る恐る龍田の顔を見上げる。
その顔に笑みなるものは何もなく、まるで秋雲を侮蔑するかのように見下していた。
「秋雲ちゃん?これ何かしら?」
龍田が差し出したもの。それは秋雲の新刊。
「それは・・・龍田さんと潜水艦たちの日常をおもしろおかしく描いた同人誌で・・・お読みになられました?」
「し~っかり読んだよ~秋雲ちゃんってと~っても絵が上手いのね~」
しゃべり方は変わらないのに一切表情が変わらない龍田に恐怖しつつも秋雲は内容を思い返す。
龍田が潜水艦にトラウマがあることを元ネタにした日常ギャグもの。テーマ自体は問題ない。現に龍田も許可をくれていた。
なら何がダメだったのか・・・秋雲は考える。深く深く考える。
そして結論に至る。
今回の同人誌中に出てくる龍田だが秋雲設定で「潜水艦に会うとショックでアヘ顔を晒してしまう」のである。
(あぁマズい・・・ついアヘ顔気合い入れて描いたからめっちゃ下品な感じに仕上がってたじゃん・・・)
この時点で秋雲は逃げ道の模索に脳を切り替える。
「秋雲ちゃん?どうしたの?キョロキョロして。もしかして私からどうやって逃げようか考えてる?でもね?・・・逃がさないから・・・」
冷や汗ダラダラの秋雲を追い詰めるように龍田が扉を引っ張る。
駆逐艦vs軽巡洋艦、ましてや相手はブチ切れ龍田。敵うはずもなく徐々に負け始める。
その時秋雲に名案が舞い降りる。
秋雲は押さえていた扉をパッと離す。突然力の抜けた扉に思わず姿勢を崩す龍田。その隙に秋雲は脱出。後も振り返らず全速力で逃走を図った。
振り返らなくたって分かる。追ってきている。
秋雲は逃げ込むに最適な場所を考える。
怒っている龍田を抑え込める人物・・・提督・・・陸奥・・・天龍・・・霧島・・・青葉・・・
この中で今回の事情を把握している人物・・・提督か青葉
信頼にたるのは・・・提督!
目指すは執務室。秋雲はただがむしゃらに足を動かした。
しばらくして執務室には提督と龍田、大淀の3人がいた。
大淀は書類に夢中。龍田は提督相手に問いかけていた。
「提督~秋雲ちゃんしらない?ここに逃げ込んだはずだけど・・・」
「秋雲?秋雲なら部屋に籠もって創作活動してるだろ?」
「その部屋から逃げてここにきてるはずよ?」
「いや、しらないなぁ」
「とぼけちゃって・・・そうだ♪提督、秋雲ちゃんの居場所教えてくれたらパフパフしてあげる「そこの戸棚の裏です!」ありがと♪」
呆気なく龍田の策略にハマった提督により秋雲の居場所が割り出される。
必死の弁明も為すすべなく龍田のゲンコツ3発を受け秋雲は気絶した。
龍田と提督が向かい合う。
「さぁ約束のパフパフだぞ龍田!」
「は~いどうぞ・・・」
胸に手をあて龍田が構える。
徐々に近付く桃源郷に提督の息が上がる。
甘い香りに誘われ前へ前へ。
あと数センチ・・・のところで提督の首に激痛が走る。
思わず龍田を見上げる。が龍田からの攻撃ではない。彼女の手は自身の胸に添えられている。
なら・・・と薄れゆく意識の中である人物が思い浮かぶ。
(首に噛みついてくるの・・・陸奥しかいないじゃん・・・)
嫉妬深い秘書艦はそのまま気絶した提督を咥え、出てきた仮眠室へと戻っていった。
「あ~あ残念っ♪」と執務室をあとにする龍田。
執務室に残された大淀は空いた提督用の椅子に腰掛ける。
この上ない座り心地に感動しながら書類整理を続けることにした・・・