日も暮れ辺りが暗くなるころ川内は自分の艦隊を起こしに向かう。
彼女率いる水雷戦隊には綾波、敷波、曙、潮の4人がいるが長女の綾波は日暮れ前から武装のメンテを行っていたため起きており、今は川内の後ろをニマニマと笑いながら付いてきていた。
目指すは曙と潮の部屋。
扉の前に立ちインターホンを鳴らす。
「みんな起きてる?夜戦の時間が来たよ!」
部屋からバッチリ支度を整えた曙が姿を現す。
遅れて髪を整えながら潮も顔を出す。
「毎日毎日賑やかよね・・・」
「でもお陰で寝坊しないよ・・・」
苦笑いしながら2人の後を追う曙と潮。
ふと綾波が肩に担いだ武器が目に止まる。
(うわぁまたあれ使うんだ・・・)
同じような事を考える2人。
綾波が担いだいる武装は駆逐艦向けの実験兵装。
12cm砲を6つ束ね、さながらガトリングガンのようにした機関砲。
曙たちには重く反動も大きいため使っていないが綾波は使いこなしていた。満面の笑みで。しかも2つも。
たいそう気に入っているようで出撃前のメンテを欠かさない。
そうこうしているうちに敷波の部屋に辿り着いた。
川内達の艦隊が偵察に出て30分ほど
執務室では今日分の執務が終わりを告げようとしていた。
「ん~~…ふぅ…提督、私の方は終了したわ。」
「おぅお疲れさん、今日分はここまでだからのんびりしててくれ。大淀も終わり次第ゆっくりしてくれ~」
「かしこまりました提督!」
陸奥、大淀の順で仕事を上げていく。
「提督?お仕事終わったら1杯付き合わない?」
珍しく陸奥が提督を晩酌に誘う。
提督はあまり酒に強くないため少し考える。
「珍しいな・・・なんかあったのか?」
「それがね、隼鷹は遠征だし那智は明日早いからって寝ちゃったし1人なのよね・・・」
寂しげな表情を浮かべる陸奥。
「あぁ分かった。なら仕事終わり次第付き合うよ」
「じゃあ待ってるわね。あっ大淀はくる?」
「私はお酒は遠慮しておきます・・・すみません。」
「いいのいいの!気にしないでね!」
10分ほど経ち提督も執務を終わらせた。
上着を羽織り、座っている陸奥の手を取る。
「それじゃ向かいますか!」
「ついでにお夕飯も食べちゃいましょうか?ね!」
2人は夜の街・・・ではなく間宮食堂の一角、呑み処「鳳翔」へと足を運んだ。
「はぁぁ~このキンメ、自分で食べたいですねぇ・・・」
料理を仕込みながら鳳翔は食欲と戦っていた。
今日は近くの漁港からキンメダイを頂いたのでみりん焼きにしてお店の日替わり定食として出している。
あと2匹分のキンメダイを見つめながら余れば自分の口に入るため期待して閉店を待っていた。
今のところ、今日は鳥の唐揚げと焼おにぎりが多く出ているためこのまま行けばキンメダイは鳳翔の胃袋に収まるだろう。
そんな事を考えているとお店の扉が開く。
「鳳翔、お疲れ様ー。2人空いてる?」
来客に驚くこともなく対応する鳳翔。
「あら提督に陸奥さん、カウンターでもお座敷でもどうぞ!」
2人はカウンターに腰掛ける。
「あら、今日の日替わりキンメダイなの!じゃあ私これにするわ!」
目が輝く陸奥。「それと熱燗2つ」とお酒も忘れず頼む。
「じゃあ俺は・・・」
固唾を飲んで見守る鳳翔。キンメダイはあと1つ・・・注文があれば断れない。
「唐揚げ定食とお味噌汁、それと梅酒のソーダ割りで」
安堵ととも全身の力が抜ける。
「承りました。少々お待ち下さい。」
小さくガッツポーズしながら厨房で調理を始める。
カウンターでは2人が会話を続ける。
「提督ってお魚苦手よね。キンメ美味しいから食べてみる?」
「いや・・・匂いでNGだわ・・・やっぱトリカラ大正義だよ!」
「そのくせ鮭は大好きよね。」
「そりゃ鮭は白飯の大親友だぞ!そんなことよりいきなり熱燗2つもいくの?」
「慣らすには丁度いいでしょ♪ 提督こそソーダ割りだと呑み易いから呑みすぎて変な酔い方するわよ?」
「そもそもそんな呑まないから大丈夫だよ。」
久々の2人で晩酌。部屋でもそうだがついつい会話が盛り上がる。
そんなうちに焼き魚の香ばしい香りが漂う。
「うっ・・・この匂い苦手だなぁ」
「そう?私は今にもお腹が鳴りそうよ」
2人の会話は好きな魚から徐々に好きな料理へと変わり最終的には空母ヲ級の杖についてへと変わっていった。
そんな話しているうちに料理が出来上がる。
「お待たせしました。こっちが陸奥さんの分でこっちが提督の分。ごゆっくりお召し上がり下さい♪」
漂う香りが空腹を刺激する。鳳翔に礼を告げた2人は徳利とグラスを合わせると目の前の定食を貪った。
鮮烈に赤い焼き魚をおかずにご飯とお酒を楽しむ陸奥。
唐揚げを白飯に乗せ掻き込む提督。
しばらくして空腹が満たされた2人は酒をチビチビ呑みながら取り留めもない会話を続ける。
幾ばくかの時間が経ち・・・
赤い顔の2人はそろそろおいとまと席を立つ。
「あぁああぁアッタマいってぇぇ・・・」
「ほんと提督ってお酒だめねぇフフッ・・・」
アタマを抑える提督と上機嫌な陸奥はお支払いを終え提督自室へと帰っていった。
1人店に残る鳳翔はササッと日替わり定食の欄を書き換え、キンメダイの調理にかかる。
「~♪~♪~♪」
鼻歌を歌いながらご飯をよそいお味噌汁とお茶を用意する。
焼きあがったキンメダイをセットし今日の鳳翔の夕食が完成した。
1口キンメダイを食べ塩っ気があるうちにご飯も入れる。
「はぁぁあぁぁこれ!これです!美味しぃぃ・・・」
お味噌汁を流し込み改めて料理が出来ることに感謝する。
「ふふっ陸奥さんはやりませんでしたが・・・」
半分ほど余ったご飯にキンメを乗せ海苔を添える。
「やっぱりシメはこれですよね!」
キンメのあらから取ったお出汁をかけお茶漬けにする。
溶け出した脂がインスタントのお茶漬けとは格が違うことを感じさせる。
それを掻き込み至福を味わう鳳翔。
「あぁぁぁ幸せぇ・・・」
たっぷりと味わった彼女は明日の食材に期待しつつ食器を片付け始めた。