兵装試験の時間です   作:とろろろ

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「はあぁぁぁぁっ!」
快晴の海で2人の霧島が殴り合う。
至近距離で上がる水柱を掻き分けるように拳が振られる。
さながらボクシングだが決定的に違うのはリングではなく弾が飛び交う海上ということ。1対1ではないため一撃離脱のように殴っては離れ殴っては離れを繰り返す。
金剛型とその護衛の駆逐艦2人ずつの6vs6での演習。
両チームともそれなりにペイント弾を浴びながらも崩れない均衡に焦りながら戦っていた。

片や王道装備、片や試験装備。この不思議な演習はある鎮守府からの依頼で実現されている。




金剛型爆進!

演習より1週間程前・・・

 

「うちに演習?また知り合いか?」

 

大淀から渡された演習依頼に目を通す。

そこに書かれた相手鎮守府の名前、「第7領海警備艦隊」の文字。

 

「知り合い?」

 

覗き込んだ陸奥の問に考え込む提督。その顔はまったく心当たりがないようであった。

大淀が第7領海警備艦隊の詳細を伝える。

 

「1年ほど前に設立されたところですね。たしか大本営属だった提督が就任していますね。練度的に近い金剛型がいる鎮守府へ依頼したかったようです。金剛型+駆逐艦2人での6対6を希望されています。引き受けます?」

 

「ん~・・・引き受けよう。陸奥、金剛型4人を工廠へ呼んでくれ。駆逐艦は俺の方で選定する。大淀は相手方に連絡を。」

 

「はいはい」

「かしこまりました」

 

こうして金剛型の兵装変更と駆逐艦を2人、不知火と雪風の陽炎型を選んだ第4兵装試験鎮守府は演習の日を迎えた・・・

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

今回、第4側の霧島は艦砲を持っておらず艤装から延びたアームは前面のシールドと両腕へと繋がりパワードスーツのようになっていた。艦砲を積まない分の重さをシールドの装甲厚に回せるため堅牢なソレに砲撃が有効でないと判断した相手霧島も殴り合いを選んだ。

そしてそれを中心に金剛型3人と駆逐艦が撃ち合う形となった。

第7側は王道の砲雷撃戦を展開、相手の出方を伺いつつ慎重に攻め込んでいた。対する第4側は試験兵装てんこ盛り。艦砲のない殴り合い特化霧島を筆頭に大きく炸裂する弾頭を用いた足止め特化の比叡、機動力に支障が出るほどの重装備金剛、想定よりかなり高速で動く榛名、そして海上迷彩のマントを纏った駆逐艦2人。

 

 

「Oh!弾がキレちゃったネー」

 

両腕の大口径単装砲を投げ捨て艤装のハンガーにぶら下がる30.5cm6連装機関砲を手にする。

その武器切り換えのタイミングを逃さず金剛の死角に回る比叡。

 

「隙だらけよ!第4のお姉様!」

 

比叡の主砲が放たれる。爆音と共に金剛目掛け弾が襲いかかる。すかさず金剛は取れる武器全てを比叡に向けて投げ盾のようにして下がる。爆発と黒煙を掻き分け比叡が追撃に入る。が黒煙から飛び出した小さな身体が比叡に組み付き自由を奪う。

 

「くっ・・・雪風ぇっ!」

「残念ですが・・・比叡さんはここで脱落です!」

 

比叡がハッとした瞬間、容赦なく首に手をかける雪風。

 

・・・ゴキッ・・・

 

しちゃいけない音がしたがそこは雪風。気絶にとどめる絶妙な力加減を見せる。

 

「Ok!!NiceLuckyGirl・・・次は向こうのワタsゴフェッ!!」

 

ほぼ丸腰の金剛に第7金剛の砲撃が刺さる。

お互いに金剛型1人を失い均衡が崩れる。

積極的に動いたのはお互いの榛名と駆逐艦。

第7は榛名をメインに駆逐艦2人、吹雪と睦月で3vs1を作って確実に仕留める作戦へ。手始めに比叡へと狙いを絞る。第4榛名が霧島へ意識を飛ばした瞬間を狙って比叡へ向けて突撃、反撃する姿勢を作らせずに懐へと飛び込む。

駆逐艦2人の雷撃をなんとか避けた比叡に榛名の砲口が向けられる。

 

「あの雷撃、避けない方が良かったかもしれませんよ?」

 

一斉射を浴びた比叡は大破。榛名は駆逐艦2人に指示をだそうと向き直ろうとしてとっさに回避行動を取る。

そこには大破して倒れる駆逐艦と相手方の榛名と雪風がいた。

牽制の砲撃を容易く避ける2人に勝ち目を見いだせない榛名は金剛の元へ移動し支援を求める。

 

「相手の榛名の動き・・・あきらかに普通より速いです・・・」

 

第7榛名が一瞬考えを巡らせた瞬間、第4榛名は異常な速度で間合いを詰める。

「っ!」

僅かに遅れた第7榛名へ第4榛名の速度に任せた頭突きが入る。

盛大な痛みと共に視界が揺らぐ。がお互いほぼ零距離、ここなら外さない。

爆音と共に痛み分けで大破した榛名2人。残るは、第7に金剛と霧島、第4に不知火と雪風、霧島。

砲撃が減り殴り合いがより激しくなる霧島たちを尻目に金剛へ襲いかかる駆逐艦2人。

機動力と小回りで金剛を攪乱するが戦艦の装甲を前に魚雷を持ってきていない雪風では火力不足。不知火も残魚雷数が1発という状況。ジリ貧で動き回る駆逐艦2人には体力と燃料の限界が近づいていた。

 

「ねぇさん!雪風がなんとか金剛さんの体勢を崩します。その隙に魚雷で頭部を!」

「チャンスは1度・・・頼りにしています、雪風!」

 

飛び込んできた不知火に金剛が砲撃を撃つ。

 

「くっ!ちょこまか動いてぇぇ!」

 

不知火の背後から飛び出た雪風が金剛に足をかける。

鮮やかな足技で金剛の姿勢を崩すもガッチリと金剛にアイアンクローをされもがく。倒れ込みもつれる2人へ不知火が魚雷を放つ。

金剛の頭頂部に直撃した魚雷で大破の判定がでる。

 

「ふぅ・・・雪風ありがとうございました。」

「えへへ・・・雪風もさっきの魚雷で大破貰っちゃいました・・・」

「不知火も燃料切れでもう動けません・・・」

 

海上に座り込む2人。その視線の先には楽しそう殴り合う霧島2人の姿があった。

 

 

 

 

 




日が暮れても殴り合う霧島を提督2人が止めに入って今回の演習はドローと判定された。
第7の演習海域で行われた為、第7警備鎮守府にて整備した第4一行は帰路へとついた。
不完全燃焼の霧島が暴れそうになったがそれをを金剛が上手く丸めこみモチベーション上げに成功。
その日のレポートは貴重なデータとなり戦艦娘用格闘兵装の開発へと繋がった。
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