ここは会議室の隣に設置されたシュミレーションルーム。
開発局から送られた試験兵装の情報を入れコンピューター上で様々な環境での「使ってみるとどうなるか」を見れるシュミレーターを備える。
そこにいる提督、陽炎型4人、計算担当の金剛型4番艦「霧島」が壁に掛かる大型モニターを見つめる。
今見ているデータは、気候などの条件すべてを同じにし魚雷のみを通常品から新型に変えた際、想定艦「巡洋艦」に対し各魚雷16発分発射の結果である。
「これさ・・・ダメなんじゃ・・・」
「そうですね司令。不知火としても実戦では使用したくありません。」
「直接ぶつければ問題ないんちゃう?」
モニターに出された数値、それを見た各々は頭を抱えた。
通常の魚雷では同一条件での16発で起爆地点に誤差はほぼ無いと言えるものだった。
だがこの新型魚雷、起爆地点がかなりバラつく。
撃って水面で起爆したものもあれば、ターゲットに当たって起爆なんてのもある。
「うちらこれ装備するん?」
「一応実戦でも見たい・・・かな」
「これ撃つ前に爆発すんじゃないの・・・」
そう言うと秋雲は、装備したくないと背を丸める。秋雲だけでない。正直ここにいる全員、装備を見送りたいのである。
「どうします?念のため火薬量を減らして装備してもらいます?」
霧島の一言に陽炎の頬が引きつる。
「万が一、誤爆しても致命傷にならない程度の火薬量で正確な使用感分かるか分かんないけど・・・やってみよう。陽炎たち、頼んでもいいか?」
手を合わせる提督。
「うちは、構わんけど・・・」
「不知火は司令に従います。」
「妹たちだけにやらせるのもねぇ」
「秋雲さんは辞めt「秋雲?」・・・やります・・・」
不知火に睨まれ秋雲も頷く。
「ありがとう・・・もしテストが危険と判断したら使用不可で大本営に送る。今から火薬少なくしておくので終わり次第4人は工廠で装備切り換え。明石に伝えとくからそうだなぁ・・・おおよそ20分後に工廠集合。霧島はデータを執務室に。あと念のため4人が出撃するとき付き添いを。各自解散」
それぞれが退出する。足取りの重い秋雲が出たのを見て提督が鍵をかける。
鍵とPCを霧島に預けた提督の足は、執務室ではなく工廠に向かっていた・・・
季節は1月・・・冬である。
当然寒い。ましてやここは日本の割と北側。しかも夕刻1900。雪こそ無いがかなり冷え込む。
そんな鎮守府の工廠にはだけたツナギにタンクトップの緑髪の女性とツナギの上から上着を羽織るピンク髪の女性、かなり厚着の男性が見える。
厳つい戦艦艤装の下に潜りながらピンク髪の女性、工作艦「明石」が声を張る。
「あっ夕張ー、14インチのレンチ2つとってー」
「こっち使ってるから1つモンキーでいい?」
「モンキーか・・・。提督の方はどんなですー?」
「こっち14インチメガネなら2本あるぞ」
「じゃあそっち貰いまーす」
「今やるぞー・・・ほれ受け取れ!」
「おっありがとーございます。あっそういえば魚雷の方、あと装備すればOKな状態ですよー。火薬ばっちり変えときました!」
着けていたゴーグルを外しサムズアップする明石。
明石達の仕事の早さに感動を覚えながら切り換え用の機械の調整を行う提督。
ナメたネジをバーナーで切り落とすを夕張。
機械好き達の楽園がここにあった。
満面の笑みを浮かべる3人、そこへ陽炎たちが浮かない顔で現れる。
「おっ!時間ぴったりだな。4人とも準備出来てるからそれぞれ艤装展開して魚雷の前に並んでくれ。」
4人が並んだのを見て提督が切り換え用の機械を操作する。
陽炎たちも不審がることなく切り換えを待つ。
複数のアームに艤装を繋ぎ、今装備している魚雷が発射管から外されていく。
提督が慣れた手つきで機械を操作し陽炎たちの艤装に先ほど「危ない」と評価した魚雷が装填されていく。
最後の秋雲に装填が終わり艤装が解放される。
それぞれ立ち上がり、軽く体を動かす。
「なーんか思ってたより随分軽いのね」
陽炎の感想にすかさずメモをとる不知火。
些細な感想、それですら貴重なデータとなる。
それを知っている、兵装試験を仕事とするここの艦娘たち。それの習性みたいなものである。
「そりゃ火薬抜いたからなぁ!」
つっこむ提督と4人がある程度感想を言い合った後、今後の確認を行う。
「予定だとこの後20:00から陽炎たちと霧島で近海の夜間パトロール。それぞれ合ってるか?」
4人が頷く。
「よし。それじゃあ会議室に移動を。霧島とルートに関してとテスト項目の確認しよう。」
「分かりました。では皆さん、いきましょう。」
なぜか陽炎を差し置いて不知火が3人を先導する。
妹の成長を喜ぶ反面、悔しさも感じ目を閉じ腕組みして頷く陽炎を尻目に移動を開始する2人と提督。
ハッと気付いた陽炎も会議室へと急いだ。
提督、陽炎たち4人が立ち去った工廠に悲鳴が響く。
ススまみれの夕張が整備していた妙高型艤装の影から慌てて出てくる。
「何今の声!大丈夫?明石!」
「ダメかも・・・」
「えっ!とにかく下から出てきて!」
ゆっくりと扶桑型艤装の下から出てくる明石。
「うわっ・・・タオルもってくるね・・・」
夕張がタオルを求めて立ち去る。
夕張が戻ってくるまでの2~3分ほど。
冷え込む工廠に1人、オイルを頭から被って虚空を見つめる明石だった・・・