それが規格外の新兵器であっても・・・
つまり兵装試験鎮守府には新開発の兵装であっても整備する環境が必要となる。
故に工廠設備に関しての充実っぷりは圧倒的。
近隣鎮守府の艦娘の整備や改装依頼なんかも受けたりする。
第4兵装試験鎮守府も例外でなく依頼がくる。
界隈では結構評判らしくリピーターにご新規さんにとその頻度は高い。
工廠では明石をメインに夕張、提督の3人が作業を行うことになる。
機関、可動周り担当の明石、装甲、外観担当の夕張、制御系担当の提督と役割がキッチリ分けられている。
今現在では、妙高型1番艦「妙高」と扶桑型1番艦「扶桑」の艤装チューニングの真っ最中。
2人とも別の鎮守府所属であり1週間の泊まりこみで艤装チューニングを行っている。
整備や改装と違い艦娘への「艤装の最適化」に近いこの作業は、実際に艦娘を預かりある程度の動作からより自由自在に艤装を操れるよう調律するのである。
テスト毎に初期艤装の違和感が消えていくことに妙高、扶桑の2人は高揚感を覚えていた。
「明日で仕上がりますよ♪」という明石の言葉を信じ用意されたゲストルームで今晩も明かす。2人曰わく、明日がとても楽しみだ、と
明朝0500・・・
冬の寒さ染みる中、工廠端の仮眠室にアラームが鳴り響く。アラームが消え数秒、仮眠室入り口からジャージにサンダル姿の明石が起きてくる。
背を丸め手をさすり寒い寒いと呟きながらすでに点いている証明に目を細めつつ工廠入り口、大きなシャッターを開く。
「おっ明石、おはようさん」
シャッターを開ける音に反応してか工廠に鎮座する扶桑型艤装が提督の声で話かけてくる。
「提督~おはようございます。朝早いですねーふぁ~あ・・・」
主砲塔に囲まれた機関部にPCを繋ぎ出力制御系の最終チェックを行う提督。それを見つけ挨拶を返すも我慢できず天井へ伸びをする明石。
両手を上げたその一瞬、明石の両脇に左右から指が突き刺さる。
「っん!・・・ゆ~う~ば~り~ 」
「目ぇ覚めたかな~?明石ちゃ~ん?」
徹夜明けでテンションのおかしい夕張はそのまま仮眠室へと消えて行く。
あまりにも一瞬のことに明石は、仕返しという考えにいたることができなかった。
「妙高の方、最終チェック終わってるよ。顔洗って準備できたら接続作業の用意頼むわ」
仕事へと考えを戻される。
眠気と悔しさから若干皮肉混じりに答える明石。
「さっすが提督、お仕事早いですねぇ」
「まぁーね!夕張に叩き起こされて4時間前から作業してるからね!ハハッ」
提督も若干テンションがおかしいが隣にある妙高型艤装を見て理解する。仕事は完璧だ、と。
これなら妙高さんの驚く顔が見れる。楽しみが増えた明石は、ひとまず顔を洗って着替えることにした。
明石が作業に加わって1時間ほど。
制御の複雑な戦艦艤装に苦戦しつつ提督と明石の二人三脚で確実に出来上がっていく扶桑型艤装。
機関部に火をいれ、出力が綺麗に立ち上がるのを確認。ようやくの完成。提督がすぐに妙高、扶桑両名に連絡をいれる。
10分もかからず2人が揃う。
「明石、2人来たからそれぞれのとこで接続作業するから手伝ってー」
「はーい。妙高さんの方は用意できたのでこちらへ!扶桑さんは提督の方での作業になります。」
それぞれが位置につき作業が始まる。
5分ほどで作業完了、立って動かしてみてと笑顔の明石が妙高を立ち上がらせる。
艤装と接続し出力を上げた2人は、まずそのレスポンスに驚く。
早くも遅くもない。自分が思った通りに動く。そこに誤差がないのである。
次に砲塔などの可動箇所。また驚かされる。無骨な歯車の塊でありながらまるで自らの指が如く滑らかに動く。
最適な速度、重量、出力。思わず笑みが零れる。
「とりあえずはこれでチューニングメニューは終了!あとは無事に鎮守府に帰ること。一応こっちから護衛出すので昼の1300出発で。質問は・・・・・・ないか。それじゃ1週間お疲れ様!」
提督が締め2人がお礼にと頭を下げる。
明石は、このやりきった感がとても好きだった。
それは提督も同じ。立ち去る2人を見ながらお互いの健闘を称える明石と提督。
今この場にいる全員が、着替えもせず仮眠室入り口に突っ伏して寝る夕張の事を忘れていた・・・
無事に鎮守府へと着いた妙高、扶桑は護衛についてくれた客船改装空母「隼鷹」と金剛型1番艦「金剛」を見送り自分たちの提督へ報告に向かった。
この明るさ、どこの鎮守府の隼鷹も金剛も似ていると感じた。実際のところ退屈な旅にはならなかったのも2人が賑やかにしてくれたからであろう。
執務室へとたどり着きドアをノック。秘書艦の「どなた?」と言う問いに扶桑が答える。
「扶桑並びに妙高、第4兵装試験鎮守府より艤装チューニング完了。只今帰還致しました。」
許可がおり執務室へ入る2人。
提督からの質問も程々に各々が感想を語る。
秘書艦の扶桑型2番艦「山城」は姉が変なことされてないか警戒しているようだ。
それを知ってか否か、想定以上の艤装の出来に柄にもなく上機嫌な扶桑は艤装をアピールしてくる。
妙高も提督へといつも以上に柔らかな笑顔を向ける。
「提督の言う通り、かなり刺激的な1週間でした。これからいっそうの活躍、期待していて下さいね。」
2人の様子を見て提督は安堵する。手元にある結構な金額の請求書も無駄では無かったな、と・・・