兵装試験の時間です   作:とろろろ

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夕刻1600
薄暗くなった港にならぶ6人の影。
白露型5人、白露、時雨、村雨、夕立、五月雨と重雷装巡洋艦「北上」は、いつも以上に丁寧に艤装の点検を行っていた。
ここ数週間、北上を旗艦にこの6人での出撃が多かった。
理由は白露型5人が試験している特殊防御兵装のデータ取りのため。5人が防御寄りになるため火力を補える重雷装巡洋艦の北上が加わってバランスをとる編成となる。
ただ今日これから行うのは出撃ではなく演習。
陽炎たち6人が、本格的に夜戦用ステルス装備の試験を行う前に北上たちと演習をして使用感を確かめることになった。
「なんかさぁ~負けたくはないよねぇ」
演習用の魚雷を確認しながら北上が誰となく話かける。
「夕立も負けたくないっぽい。けど・・・霧島いるのズルいっぽい?」
「確かに戦艦は驚異的だよね。けと僕は神通さんの方が怖いかな・・・」 
2人の話を頷きながら聞く北上と五月雨。
「作戦的にはさぁ~いつもどおり白露たち前にして守ってもらいながら突撃、あたしが魚雷でドーンとキメる、でいい?」
「了解!なら1番先頭は私で!」
「じゃあ並びは姉妹順でいい?」
村雨の問いに一同が頷く。
「まぁチーム北上の強さ、見せてあげましょー」
彼女達なりの気合いを入れ夜を待つ。
白露型5人の手には見慣れない小さな盾が取り付けられていた。



夜は危ないから灯りをつけましょう

夜1930

 

鎮守府近海に2つの艦隊が並ぶ。

そのさなかであっても陽炎たち4人の姿は夜闇に見え隠れしていた。

「あれかなり見えづらいっぽいぃ」 

「電探使えばなんとかなりそうだけどね」

実際陽炎たちが装備している夜戦用のマントは視認こそしづらくとも電探等レーダー関連には普通に反応してしまう。

早速その事をメモする五月雨。片腕につけた盾を器用に机代わりに使いササッと書き終える。

緩やかな曲面を持つ40センチ四方くらいの盾、それと艤装の機関部をつなぐケーブルが白露たちの試験している兵装。

盾表面に磁場を発生させ実体弾を誘導、受け流そうという兵装である。今のところの評価は「それなりに使える」であった。実際に36センチ砲くらいまでなら問題なく受け流せる。ただ盾の当て方でその成功率が大きく変わったり、磁場の発生にかなりのエネルギーを消費したりと扱いにくい。

「受け流したのあたしに当てないでね?」

ゆっくりと航行しながら最後尾の北上が注意喚起する。

「多分・・・大丈夫だと思います!」

胸を張って答える五月雨。

どこかゆる~い空気感が漂う。

しばらくはお互いに航行して巡り会った瞬間から闘いとなる。

その瞬間は毎回唐突にくる。

ほんの一瞬、電探に反応があった瞬間全員の表情が変わる。

敵にバレぬよう探照灯はお互いつけていない。が電探にはそれなりに離れてT字になるよう航行する相手艦隊。

緊張が走った瞬間、相手艦隊の先頭をいく神通と恐らく最後尾の霧島が探照灯を照射。結構な距離があっても眩しさに一瞬反応してしまう白露たち。霧島が容赦なく砲撃する。とっさに盾を起動し防御の姿勢を整える。

「このまま霧島さんの間合い超えるよ!」

白露に続いて他4人が突撃。僅か後方で北上がその時を伺う。

が北上が気づく。

「まっず・・・みんな電探使えないよ!」

盾を起動した結果、磁場の影響か電探に大きくノイズが走る。

それでも探照灯を灯す神通と陽炎たち4人分の闇、その後方に霧島と相手艦隊の姿は捉えていた。

距離が近付き神通、霧島が探照灯を照らしつつ近接戦闘の用意を行う。まだ陽炎たちは撃ってきていない。

(こんなもんかな?)

1列になっていた白露たちの後方、北上が艦隊から飛び出し霧島に向け一気に加速する。

(ここからは重雷装巡洋艦の間合い!)

北上にとってはいつも通りの勝ち方。

だが今日は少し違う。

魚雷を放つ直前、背後に気配を感じ振り返った北上を闇から突如飛んできた無数のペイント弾が襲う。

「え?なにこれ・・・」

北上、轟沈判定。訳もわからぬまま立ち尽くす北上。

「もしかして電探封じてから陽炎たち別々に動いてた?」

闇を生かして艦隊を誤認させられた。自分の読み間違いにガックリする北上。仕方なく白露たちを見学する事になった。

 

いつもなら北上が魚雷を撃つタイミングだがその感じがない。おかしいと思った白露たちが列を崩す。

「夕立、五月雨は後方警戒、僕と姉さん、村雨はこのまま艦隊に突っ込むよ!」

時雨の指示に5人が動く。水柱を上げながら突撃する3人。そして後ろを振り返る2人。振り返った2人の目の前にそれぞれスパッツから伸びる白い足が飛んでくる。

「っん!」

「っい!」

顔面に膝蹴りを受け吹き飛ぶ2人、そこにペイント弾の追い討ちが容赦なく襲う。

夕立、五月雨轟沈判定・・・。

 

神通に時雨、霧島に白露、村雨で近接戦闘が行われる。

機動力と手数で有利な駆逐艦だが相手も相手。

神通、霧島は当鎮守府でもきってのインファイター。流石に強い。

時雨が大きく跳ね盾で殴るように神通の顔を狙う。それを身をかがめ後方へ流す神通。それを待っていたように時雨が膝で神通の顎を狙う。しかしその攻撃は神通後方の闇から叩き込まれた陽炎の拳によって止められる。姿勢を崩した時雨の鳩尾に容赦なく神通の肘が刺さる。時雨は気絶、一応は轟沈判定となる。

気絶した時雨を神通が抱え陽炎へと微笑む。暗くてよく分からないが多分陽炎も微笑み返しているだろう。

霧島側も秋雲、不知火、黒潮によりペイント弾まみれの白露、村雨が「えっ!何が起こったの?」と混乱している。

6対6で行われたこの演習は0対6という圧倒的な結果で陽炎たちの勝利となった。

 




演習が終わり港に戻った北上はとりあえずタオルでペイント弾を落としながら陽炎たちに話かける。
「あのマントすっごい見えづらいんだけど・・・よく連携とれたねー」
「事前にタイミングだけ打ち合わせていました。神通さん、霧島さんが囮となり隙を見て不知火たちが奇襲。そちらの作戦は霧島さんの読み通りでしたから。」
満足げに答える不知火にムッとしつつ北上は「次は負けないから」と時雨以外の白露たち4人を連れてシャワーへと向かった。
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