その設計が公開されたとき誰もが驚いた。
「刀?・・・えっ・・・刀?かっこいい・・・」と
本来、空母対空母はかなりの遠距離戦。
艦娘でもそれは言える。
しかし格闘戦による艦娘の喪失が相当数あることも事実。
実際に空母艦娘が間合いに入られた際、軽巡洋艦などには勝てない場合が多く対策は急務と言えた。
状況をふまえ赤城改二の開発には近接防御兵装にいくつかのパターンを持たせ各兵装試験鎮守府にてデータを集めていた。
結果として第2兵装試験鎮守にて採用していた刀を装備させるに至ったが、各兵装試験鎮守の赤城には引き続き近接兵装のデータ収集が依頼されていた。
赤城改二の公開から1ヶ月程たったある日の1130ごろ。
第4兵装試験鎮守府、その空母寮に赤城と瑞鶴の姿があった。
「瑞鶴ちゃん?次の一射が当たったら間宮食堂のプリン奢ってくれますか?」
「いいですよ!そのかわり外したら私に奢ってもらいますから」
お互いに挑戦的な視線を交える。そのまま赤城は目を閉じ深呼吸。
赤城の深呼吸が終わるとその目は真っ直ぐに小さな的を見据えていた。
弓矢の訓練。彼女たち弓矢型の発着艦システムを持つ空母において必須の訓練。午前のプログラムが終わり昼時を迎え2人は昼食を午前最後の一射にかけていた。弓矢型空母の殆どは、いつもこうして食後のデザートなんかをかけては一喜一憂していた。
ゆっくりと弓矢を構え引き始める赤城。張り詰めた空気。
(お願い・・・外してぇ・・・今月ピンチだからぁ・・・でも赤城さんならワンチャン・・・)
固唾を飲んで見守る瑞鶴は変な汗をかきゾワリとしていた。
それと同時に勝てる可能性も見出していた。
「グゥウウウゥウウ・・・」
張り詰めた空気を裂くように赤城の腹が鳴り「限界です・・・」と赤城が腰砕けなる。
弓矢を置きその場に座り込む赤城。
笑顔の瑞鶴が駆け寄る。
「赤城さん!これは私の勝ち・・・でいいですか?」
「・・・」
返事はない。赤城の肩を軽く揺らし確かめる。俯いたままの赤城。
「えっ?赤城さん?大丈夫ですか?赤城さーん?」
それでも俯いたまま呼吸以外なんの反応もない。
「お腹空き過ぎて気絶しちゃった?」
瑞鶴がどうしたものか考えながら腰を下ろす。
目の前に座った瑞鶴に突如赤城の両手が伸びる。
いきなり両肩を掴まれた瑞鶴が驚いたと同時に赤城の口が動く。
「瑞鶴ちゃん・・・あなた確か七面鳥って呼ばれてましたよね・・・私、お肉とっても好きですよ・・・」
「えっ?いやあの~赤城さん?正確には七面鳥って艦載機のことで・・・」
「上半身は貧相ですけど・・・よく見れば美味しそうなお肉のついた下半身・・・」
ジットリと瑞鶴の身体を見つめる赤城から黒いオーラが立ち込める。
とっさに距離を離そうとした瑞鶴だが全く動けない。
「誰が貧乳ですか!いや赤城さん、冗談ですよね?てか力強い!全然動けないんだけど!」
カシュンッ・・・
赤城の艤装から駆逐イ級のような機械が展開される。
これこそが第4兵装試験鎮守府の赤城がテストしていた近接兵装、「対近接用大型粉砕プライヤー」。深海棲艦の口による近接攻撃を模して開発された大型艦向け兵装である。
両手で弓矢を操る空母の邪魔をしないよう赤城の口と連動して動作するそれは、もう1つの口と言えるモノであり消化等は出来ずとも食いちぎったり噛み砕いたりは出来るのである。
怯える瑞鶴のスカートを少し捲り露わになった太もも目掛けて歪な口が襲いかかる。
「っい!痛い痛い痛い!ちょっと赤城さんストップ!」
全く力を緩めない赤城にかなり危機感を感じた瑞鶴が叫ぶ。
「ちょっ翔鶴姉ぇ!痛い!助けてっ!翔鶴姉ぇっ!」
妹の悲痛な叫びを聞き休憩室にいた翔鶴と蒼龍が駆けつける。
「えっ!瑞鶴?赤城さん?どういうこと?」
「とっとりあえず赤城さんのコレなんとかして!」
翔鶴が赤城のそれを力いっぱい引き剥がす。
「っい・・・取れたぁいったいなぁもう・・・」
「プッ!七面鳥の踊り食いっ!アハハハハハ!」
笑いながら蒼龍が瑞鶴の太ももを治療する。
幸い歯型がついて赤くなる程度で済んでいたが、念の為に医務室へ運ぶことにした。
赤城の方は翔鶴が持っていた休憩室のお菓子を食べ落ち着いたのか艤装をしまい自責の念と戦っていた。
「私は・・・一体なにを・・・瑞・・・鶴ちゃん・・・そうだお昼・・・瑞鶴ちゃんが美味しそうに見えて・・・」
立とうとする赤城だが足元が覚束ない。ヨロヨロする赤城を翔鶴が支える。
「赤城さん、私なにか食べ物持ってきますから少し休んでいて下さい。」
そう言って休憩室に赤城を担ぎ込み寝かせた翔鶴が食堂へ向かい数分後・・・
ある程度空腹を満たした赤城は医務室のベッドに腰かけながら太ももを冷やす瑞鶴に深々と謝罪していた。
「ごめんなさい・・・まさかこんなになるなんて・・・本当にごめんなさい・・・」
どうやら赤城自身も意識が朦朧としていたらしくかなり混乱していたようだ。詳しくは翔鶴から聞いたらしい。
「いいっていいって!翔鶴型頑丈だから!駆逐とかだとマズかったけど・・・ほら顔上げてください!」
「ありがとう・・・瑞鶴ちゃん・・・」
うっすら涙を浮かべる赤城を瑞鶴が撫でる。
「一緒にプリン食べましょう?赤城さんの奢りで!」
「っ!えぇ・・・食べにいきましょうか」
足を冷やす瑞鶴をおぶった赤城は食堂に向かい医務室を後にした・・・
赤城改二が公開されるちょっと前・・・
第4兵装試験鎮守府から送られてきたレポートを見て開発局の職員たちは表情を険しくしていた。
近接兵装としては中々に優秀、頑丈であり盾としも使え試験を担当した赤城からの評価も上々。と高評価が書かれたレポートだが職員たちには最後の1文が気になっていた。
曰わく「赤城の食欲に反応して周囲の食べれそうなモノを追い噛みつこうとする動作が見られる。」とのこと。
「これは少し想定外の動作ですね・・・」
「元々、赤城という艦娘は食欲が強い。それの口と連動させているんだから食べ物を追うのは仕方ないか・・・」
「空腹時に暴走、友軍を補食なんてなったらまずいですよ。」
一同が沈黙する。
「一応引き続きデータは採ってもらうとして・・・正式採用はムリそうだなぁ」
この装備にロマンを感じていた開発者たちは第4兵装試験鎮守府から上がったこのレポートに落胆した。