ヒマワリWIZ娘のぼうけんにっき   作:151

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自分に正直に

 プロンテラ大聖堂の奥、瞑想室の向かい側の部屋は談話室と呼ばれ、プリースト同士が情報交換したり、ちょっとした雑談をするような場所として使われている。

 

 この間破けたので(第7話参照)注文しておいた服を受け取りに来た俺は何となく部屋の中を覗いてみた。

 誰か知った顔でも……いた。

 

「やぉ、プリ男。元気だったか」

「ああ、そっちは」

「平々凡々、何事も無し」

「いい事じゃないか」

「まあね」

 こいつはプリ太(仮名)。故郷じゃ家が隣同士だったと言うこともあって、ガキの頃からの仲。

 お互いの近況を話し、思い出話にしばし花を咲かせ……

 

「そうだ、プリ男」

「なんだ?」

「見間違いじゃないと思うんだが、お前のギルドにいつも装飾用ひまわりを付けている女性のウィザードがいるよな?」

 ヒマワリ付けた女性ウィザード……WIZ娘のことだな。と言うか、他にいないだろ。

 

「ああいるけど、どうかしたか?あ、もしかして何か迷惑かけたりしたか?だったら代わりに謝る。きちんと伝えておくよ」

 WIZ娘なら何をしていてもおかしくなさそうだ……いろいろな意味で。

 

「イヤ、直接話したこともないが、何度かGHなんかで見かけてね」

「そうか……あいつところどころネジがゆるんでるから、何かしたかと……」

 

「で、本題」

「ああ」

「僕に紹介してくれ」

Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)

 

「え……えっと……どういう意味?」

「相方にしたいな、と」

(  д)  ゜  ゜

 

「あ、相方~?」

「ああ」

 理由を聞いてみると、最近は臨公も結構厳しいらしく、支援プリに求めるレベルがどんどん高度になってきてついていくのが辛い、とのこと。

 もともと、性格がおっとりしているので、何とかしたかったところ、狩り場でロクにSGも使わず、適当に魔法使っているWIZ娘を見て気になっていたという。

 

「ダメか?まあダメもとだから、その辺は……」

「うーん」

 うちのギルドのルール……こういう話があったときには本人に話を通すこと。当然と言えば当然だな。つまり、ここで俺が断ってはいけない。

 ちゃんとWIZ娘に話をして、WIZ娘がイヤだと言ったときに初めて俺がダメ出し出来る。つまり、ここでの俺の答えは……

 

「とりあえず本人に伝えておくよ」

「サンキュ」

 

 

 

 その夜……さて、どうやって話しかけたものか、と思っていたらWIZ娘が一人で食堂にいた。

 なにやら雑誌を読んでいるようだ。他には……誰もいない。

 

 話だけはしておくか。

 

「なぁ、WIZ娘」

「ん?何?プリ男くん(・∀・)」

 WIZ娘が振り向く。振り向いたままじゃ話しづらいだろうから向かい側に座る。

 

「大事な話があるんだ」

「う、うん」

 雑誌を閉じる。チラリ、と雑誌の表紙を見る。『月刊大魔法 11月号 特集:ヒマワリの有効活用』……どういう内容だ?

 

「実は、WIZ娘を相方にしたいというプリがいるんだ」

「え……?」

「そいつは、俺の幼なじみで、よく知ってる奴なんだが、WIZ娘を何度か見かけて、一緒に狩りに行きたい、と」

 プリ太が言ったことをそのまま伝えながら、大雑把に経緯を話す。

     / ./ ,'  l l | l l  | li l_」.Lヽ- 、 .  、 i  l

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        / / !:.:.:.:,r'^ヽ:.ヽ.__ハf:`"´:.:.:_ノ:ヽr':.:.:.:.:.:.:.i  i

「……ということで、WIZ娘に話を通さずに答えるわけにも行かないから、返事は待ってもらっている」

「……うん」

「会いたくないなら、そう言ってくれれば、俺から断っておく。とりあえず会ってみるなら伝えておくよ」

「……うん」

「返事は急がなくてもいいからさ」

「……うん」

 

 WIZ娘は、黙ったまま。そう言えば今までこういう話は無かったような……とまどうのも無理はない、か。

 

「ねぇ……どうしたらいいと思う?(´・ω・`)」

「え?」

 俺に聞かれてもな……

 

「WIZ娘のしたいようにすればいいさ。俺が保証する、あいつはいい奴だ。一緒に狩りしても楽しいだろうし、断っても文句は言わないさ。それに……」

 口が勝手に動いてペラペラとしゃべる。

 

「……うん、考えておく」

 ぽつり、とつぶやいて雑誌を手に取って立ち、ふわふわと部屋へ歩き出す。

 

「……って……ったな……」

 ぽつりとつぶやいた声はよく聞こえなかった。

 

 

 

「えーと……いた、あそこだ」

「うん……じゃ、行って来る」

 プロンテラ一の広さを誇るカフェテラスが待ち合わせの場所。

 ……そう、WIZ娘は「会うだけ会ってみる」と答え、今日この場所で会うことにしたのだ。

 

 ヒマワリがテーブルと人の波の間を通っていく。向こうも気づいたようだ。

 さて、帰るか……適当に露店を眺めながら歩く……どうにも気分が乗らない。

 

 噴水の近くのベンチに腰掛け、ふぅとため息をつき、空を見上げる。

 なんだか……心にぽっかり穴があいたような感じだ……

 

「プリ男、ここにいたんだ」

「ん?」

 BSだ。

 

「どうした?」

「WIZ娘、見なかったか?」

「ん……」

 答えに困る質問だな……

 

「頼まれてたカードがようやく売れてな、金渡そうと思ったんだが」

「カード?」

「ああ、苦労したぜ。アンドレの卵カード10枚なんて、そうそう売れるモンじゃないからな。一緒においたアルゴスカードの方が早く売れたぞ」

「マジかよ」

「ああ」

 どうしてそう言う微妙品を……

 

「で、どこにいるか知らないか?」

 正直に言うか。

 

「実は……」

 簡単に経緯を話す。放心状態だった俺はBSの表情に気づくことなく。

 

「……と言うわけで、今日会うことになったn」

 ぐわしっ

 

 BSがいきなり俺の胸ぐらをつかむ。

「お前!どういうつもりだ!」

「どういうって……WIZ娘が決めることだろ?俺が口を挟む事じゃ」

「馬鹿野郎!」

 はり倒された。

 

「お前、何っっにもわかってない!」

「何がだよ!」

「よく考えろ!」

「あん?」

「WIZ娘が断ると思うのか?」

「イヤなら断るだろ?」

 再び胸ぐらをつかんで持ち上げられる。

 

「WIZ娘は……頼まれたら断るような性格か?」

「え……」

「『相方になってくれ』と頼まれてイヤだと断るか?」

「そ、それは……」

「お前がその話を持ちかけるのは構わない。だが、WIZ娘は『お前が仲介して頼んできたからイヤだと断れない』んだよ!」

「……」

「俺も今までに何度かそう言う話があって、WIZ娘に伝えたことがある」

「初耳だな」

「特に話す理由もないからな……」

「まあな」

「だが、俺はこう付け加えた『イヤだろ?俺が代わりに断っておくぜ』と」

「……卑怯だな、それは」

「かもしれない。だが、俺はWIZ娘が特定の誰かとコンビでやっていけるようには見えない」

「……」

「WIZ娘は、みんなでワイワイやるのが一番好きなんだ。相方なんて作ったら、それが無くなるんだぞ!」

 

 

 

「BS……」

「あん?」

「さっきカフェテラスに行ったばかりだ……追いかける」

「ああ」

「プリ太には悪いが……」

「馬鹿、プリ太とかいう奴にとってもその方がいいはずだ、行くぞ」

 二人してカフェテラスへ駆ける。

 

 テーブル数が100を越えるとてつもなく広いカフェテラス。

 BSと二人で手分けをしたが、見つからない。店員もに聞くが、さすがにこう多くては……

 

「プリ男、WISは?」

「ダメだ。多分全員拒否にしてあるらしい」

「こっちも通じない。ギルチャも応答無し、か……」

 くそっ

 

「もうどこかに出掛けたのか……」

「おそらく……な」

「BS、一緒に着いてきてくれ。なんとしても探す」

「わかった」

 一度家に戻り、装備を調える。WIZとプリがペアで行く場所に行くというのは……正直かなり厳しいが、やるしかない。

 

「まずはどこへ行く?」

「廃屋。一応WIZ娘でも行けることはわかってるし、定番だからな」

 アルデバランのポタを出す。なんとしても探し出す!

 

 

 

「……はぁ」

「……くそっ、どこに……」

 あれから廃屋、GH、ノーグロード、亀など、見て回ったのだが、どこにもいなかった。

 近くにいる連中にも聞いてみたが見かけていない、と言う返事。

 

 疲労感だけを漂わせ、玄関のドアを開けて家に入る。

 ……WIZ娘の靴、あるし……_| ̄|○

 

「帰ってきていたんだな」

「ああ……」

 重い体を引きずるように、WIZ娘の部屋へ向かう。

 

 ドアの前でさて、どうしたものかと考え始めたとき、ドアが開いてアサが出てきた。

 

「あ、プリ男……」

 何とも表現しがたい表情を向け、しばらくすると目がつり上がった。

「ちょっと来なさい」

「いてて、み、耳を引っ張るな」

 

 引きずられるように台所へ。BSも何となくついてくる。

 

 

 

 台所にはいると、WIZ娘のマグカップを取り出し、レモンを搾る。

 そしてハチミツをスプーンに2杯ほど入れ、お湯を注ぐ。ホットハチミツレモンだ。

 

「はい」

「え?」

 マグカップを乗せたトレイを俺に差し出す。

 

「ここから先はあんたの役目」

「……わかった……」

 

 なんといえば良いのか思いつくまもなく、部屋の前まで来てしまった。

 とりあえずノックして……反応はないが、中へはいる。

 

 WIZ娘はベッドの上でこちらに背を向けて座り、うつむいていた。

 ゆっくりと近づき、声をかける。

 

「WIZ娘、飲み物持ってきた」

 びくん!と肩が動き、そっとこちらを見て、またうつむく。

 

「いらない」

「そう言うなって」

「アサちゃんは?」

「えっと……」

 答えに困る。

 

 何て言えばいい?どうすればいい?

 

 わからない。

 

 今言えること、今できること……

 

「WIZ娘、ゴメン」

「え……」

「ホントは『断れ』って言いたかった。だけど、何か、言うタイミング逃してしまって、言えなかった」

 

 多分、世界で一番カッコ悪い謝罪だな。

 

「WIZ娘が、ずっと同じ人と組んで……なんて無理だってわかってたのに言えなかった」

「あ、あの……」

「ズバズバと『相方にしたい』なんて言えるあいつに嫉妬してたのかもしれない」

 

 だが、きちんと言わなければ。正直に。

 

「ゴメン、WIZ娘。イヤな思いさせてしまって。本当に悪かった」

 

 ひたすら謝り続ける……それしかできない。

 

 WIZ娘はそんな俺を……泣きはらした目で見つめていた。

 

 やがて……

 

 

 

 わしっ、としがみついて、泣き出した。

 

「プリ男くんに嫌われちゃったのかと思ってた」

「何にも言ってくれないんだもん」

「私、ここにいちゃいけないのかと思ってた」

「『断れよ』とか『明日も一緒にどっか行こう』って言って欲しかった」

 泣きじゃくりながら、叫ぶように……ひたすら続けていた。

 

 

 泣き疲れて、眠ってしまったWIZ娘をベッドに寝かせ、外に出る。

 アサとBSは、やれやれ、という顔をして待っていた。

 

「これ、貸しだからね」

 そう言い残してアサは自分の部屋に戻っていく。

「高くつけとくぞ」

 BSも戻っていく。

 

 

 自分の部屋に戻り、ベッドに倒れ込み、いろいろ考える。

 今までWIZ娘があんな事を言ったことはなかった。

 ただの脳天気娘だと思っていた……イヤ、思いこんでいたが、いろいろ普通に考えていたんだな。

 頼まれたらイヤと言えなくて、いつも皆と楽しくやるのが好きで……でも実は自分の居場所が無いと不安で……普通の女の子だったんだな……

 

 だが……それにしたって、極端な気がする……何が原因だ?

 

 

 晩飯のあとも気になって……誰かに聞こうと思ったらちょうどアサが食堂で何か飲みながら雑誌を読んでいたので聞いてみることにした。

「一つ、質問」

「ん、何?」

 雑誌を閉じ、こちらを見るアサ。チラリ、と雑誌の表紙を見る。『月刊クリティカル 11月号 特集:実録詐欺「トリプルカオスジュル」』……どういう内容だ?

 

「WIZ娘ってさ、冒険者になる前は何やってたんだ?」

 アサはこちらをじっと見、そしてゆっくりと答えた。

 

「聞きたい?」

「ああ」

「後悔……するよ?」

 

 俺の答えは決まっている。

 

「構わない」




解説
相方
別にゲームシステムとしての機能では無く、常に一緒に組もう、と決めただけの間柄。ちなみに作者も何度か誘われたことがあるが、ログイン時間がバラバラなのと、全キャラ均等に遊ぶタイプなで丁重にお断りした。

トリプルカオスジュル
クリアサが欲しがるのは「トリプルクリティカルジュル」。どちらも略称はTCJ。露店表示がTCJでも文句を言ってはいけない。買うときにちゃんと確認しよう。
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