見ただけでわかるほどの立派な室内。天井まで届くほどの窓から差し込む月明かりの他に明かりのない室内は薄暗いが、かすかに見える調度品はどれも選んだ者のセンスの良さを表していると言える。
コンコン、とドアをノックする音。「……です」と名乗る声が続く。
「入って」窓際に立つ部屋の主は短くそう答える。
暗さ故、顔かたちまではわからないが、まだ若い、背の高いその女性はドアを開けて入ってきた女性ウィザードの方を向く。
「メリーベル様、お呼びでしょうか?」
「状況は聞きました。順調のようですね」
「はい。これまでのところ、当初の予定より1日早く進んでいます」
「明日次第……ね」
「ええ。しかし、思惑通りに進むのは間違いないかと」
「そうね。明日決まるのは決行日のみ……」
「はい」
手元の紙束に少し目を落としながら、続ける。
「このまま進めば来週末には次の段階へ進みます」
「となると、あの男ももう用済みね」
「ええ」
メリーベルと呼ばれたその女性はウィザードへ歩み寄る。
並んで立つとウィザードの目線はメリーベルの肩よりもやや低い。彼女の背が高いせいと言う以上にウィザードの背が低いようだ。
「そのままにしておいても作戦上は問題ないが、あとあと絡んでくると面倒だな」
「そうですね。始末しておいた方がいいかと」
「フフ……馬鹿な男。教会で暮らしていれば平穏な人生が送れたものを」
メリーベルはそのままソファーへ座り、ウィザードを見てつぶやく。
「始末しておいた方が今後のためね」
「ええ」
「でも、いいの?」
「え?」
「あの男、あなたに好意を持っているのでは?」
「それはあの男が勝手にしているだけのこと。私には関係ありません」
「そうね。あなたはそう言う女。だから信頼できるんだけど」
「ありがとうございます」
「……始末は他の者にまかせても構わないのよ」
「他の者では死体の処理に手間取るでしょう。お任せください」
「わかったわ」
そのまま天井を仰ぎ見て、思い出したようにクスッと笑いながらつぶやく。
「作戦とは言え、なかなかの演技ね」
「え?」
「ちょっと頭のネジがゆるんだ女の演技」
「やめてください。思い出すのもイヤな事です」
暗がりで表情は見て取れないが、すこし不機嫌そうだ。
「始末はまかせるけど、来週になってからでないとまずいと言うことだけは忘れないで」「はい」
「それと、明日の結果はドールに伝えて」
「わかりました」
「下がっていいわ」
「はい」
女性ウィザードが部屋を出ていくのを見送り、ぽつり、とつぶやく。
「怖い女……敵にはしたくないものね」
ざわざわ……
雑踏の中を歩く。
「……」
出口へ向かう人の波はなかなか進まず、居心地の悪さが増すばかりだ。
「……」
周りの連中の話している内容はおよそ想像がつく。だから余計に居心地が悪い。
「……」
無言の圧力か……イヤなものだ。だが、この原因を作ったのは俺だ。と言っても俺がすべて悪いわけではない。
「……」
「だあぁぁぁぁっ言いたいことはわかるから、その目をやめてくれ」
やれやれ、と言ったふうに額に手をやり、BSが歩いていく。
「懸賞で当たったんだ。見ない方が損だろ?」
「そうだな」
「お前だって断らなかったじゃないか」
「俺も見たかったんだ」
「なら、いいじゃないか?」
「……情けない男だ……」
……聞こえてるぞ。
「予想はしていたが、見事にカップルばかりだな」
「……っ、そうだな……」
そう、俺たちは今プロンテラで公演中の劇を見に来たのだ。週刊雑誌に連載中の人気小説を劇にしたもので、前評判通りの良い出来。
200年前の王室テロ未遂事件――既にその時点で歴史的な考察は皆無だ――を舞台に描かれる男女二人の悲恋はあらゆるカップルを惹きつけてやまない。
その内の一人の女性の名前がバレンタインの由来だとも言われているが……ま、どうでもいいか。
だ が 、 俺 ら は 男 二 人 だ 。
「WIZ娘くらい誘えっ!」
「さ……誘ったが、断られた」
「はぁ?!」
BSがこれまで見たことがないくらい間抜けな顔になる。
「断られたって……何で?」
「……どこかに行く、と言っていた」
「お前、どうやって誘ったんだよ」
「どうって……この劇、見に行こうって」
BSがつかつか、と歩いてきて、哀れみをおびた目をしながら俺の肩にぽんと手を置きつぶやく。
「脈無し、かもな」
大通りに並ぶ露店を見ながら歩く。チョコレートをおいている露店があるな。
そうか、バレンタインデーが近いんだった。
「プリ男」
「ん?」
「お前はもらえそうにないな」
「……イヤ、俺は信仰に生きているから」
「俺はもらうあてがあるけどな」
「なっ……」
予想外の回答……
「待て!なら今日はその相手と行けばよかったじゃないか!別にチケットくらいやるからさ!」
「風邪引いて寝込んでてな」
そりゃ無理だな。劇も今日と明日しかないし。
家につくと……アサが台所へ向かうところだった。
「チョコももらえない哀れな男のために義理を作ってあげるからヽ(´-`)ノ」
「……イヤ、それはそれで悲しいからやめてくれ」
「冗談よ。WIZ娘、ヨーヨー狩りに行ったよ」
「へ?」
「手伝ってあげたら?喜ぶよ、きっと」
俺は、聖カピトーリナ修道院前へ急行した。
入り組んだ地形の中を駆け回り、WIZ娘を捜す。
もう何のために駆け回っているのかわからないほどに。
「ソウルストライク!!」
いた!
声のする方へ行ってみた……が、人違いだった。
クソッ、どこにいるんだ……
結局、2時間駆け回ったが、どこにもいなかった。
---同時刻、プロ北D。
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(○) <ストームガスト!! ;;;;;;゙゙゙゙゙ / ゙: ゙゙゙゙゙;;;;;;
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i iノリノ)))) / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ゙゙゙゙i;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;l゙゙゙゙゙
! (li ´ヮ`ノ l <ユピテルサンダー!! ノi|lli; i . .;, 、 .,, ` ; 、 .; ´ ;,il||iγ
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从iく>ェ<〉iリ `;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `, ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
し'ノ ゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙
´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙|lii|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´`
| 13日午後4時頃、プロンテラ北ダンジョン内において原因不明の爆発事故が
| 発生し、死傷者・行方不明者が多数発生する大惨事となりました。
| 尚、辛うじて難を逃れた目撃者によると突如出現したヒマワリが…
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄\| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.| 物騒な事件ねえ。|
〃 ⌒ ヽ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/ミfノノリハ)) __Å__
fヘ|| ゚ ヮ゚ノ| .| |\王王|
と っ<>†^~/つ─┛ .| | |__|
| ̄| ̄ ̄ゝ;;:~:: ⌒ヽ, | |__|/ |
| | ̄| ̄ ̄||,し'Jヾ! ̄l. .| | ̄ ̄ ̄|
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2月14日。バレンタインデー。
恋人同士がお互いにプレゼントを贈りあう日だが、某国では女性から男性のみ、という限定ものになっているが……
「BS、顔がにやけてるぞ」
「ん、ああ……だってさ……」
もらってきたらしい。
俺は……信仰に生きるんだから関係ないんだってば!
WIZ娘はと言うと……朝からどこかへ行ってしまった。
今日は不貞寝するに限るな……そう思って、部屋でゴロゴロしていたら、昼頃にドアをノックする音がした。
「はい?開いてるよ」
ドアを開けて入ってきたのはWIZ娘だった。
「プリ男くん、あのね(´・ω・`)……」「ん?どうした?」
ヤバイ、心臓がバクバク言ってる。
「どうしても材料が揃わなかったの(´・ω・`)」
「え?」
「だからお店で買ってきたのだけど、いい?」
「えっと……構わないよ」
「ホント?(・∀・)」
「ああ」
「じゃ、あげる」
阿部高和の手作りチョコレート1個獲得
、 ヽ
|ヽ ト、 ト、 ト、 、.`、
/|l. l. | |l l | | l |l.| |l. l
/' j/ ノ|ル'/レ〃j/l |
-‐7" ヾー---┐|_.j
 ̄ ./゙ニ,ニF、'' l _ヽ
:: ,.,. |ヽ 」9L.` K }.|
l' """ l ) /
h、,.ヘ. レ'/
レ′こ、これは……
r.二二.) /
≡≡ ,イ
. / !
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::::::` ̄´ / !ハ.
「だあああ!」
「わわわっヽ(・∀・)ノ」
「もう少し選べ!」
「えー(・ω・`)」
「だいたいお前、どこに行ってたんだよ?」
「プロ北D(・∀・)」
「サルの尻尾をカカオと交換してくれる商人がいるぞ!」
「え゛( ゜д゜)」
「まさかお前……」
「チョコやっつけてカカオ集めてた(´・ω・`)」
「……」
「カカオ、11個しか集まらなくて(´・ω・`)」
仕方ない、なんかイヤだけど食うか。
包みを開けてチョコを口に入れる。
「ありがとう」
「え……」
ついでだ、と俺はWIZ娘の頭をくしゃっとなでてやる。
「よくがんばったな」
「やん、髪が乱れちゃうヽ(・ω・)ノ」
こうして2月14日はいつものように平和に過ぎていった。