ヒマワリWIZ娘のぼうけんにっき   作:151

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人類史上最低の男

「あ゛ーーーー」

 既に人間の出す声では無い声を出しながらうめく。誰もいないし、いいだろ。ゲフェンタワーの裏側は人通りもまばらで、こちらを気にかける者はいない。

 

「二日連続の徹夜かよ……」

 部屋で寝ていようとも思ったが、なんとなく落ち着いて寝てられないような気がしてここへ来た。男には一人になれる場所と時間が必要なんだ。

 塔にもたれかかり、うとうとしかけるのだが、

「あっちぃ……」

 日に照らされた塔は全体が熱く、背中が焼けるように熱い。

 

 やっぱり帰るか。今の時間なら多分誰もいないから、ゆっくり寝てられるかも……?

 

「あの……」

「え?」

 唐突に声をかけられた。見ると、男性騎士と女性ウィザードが立っていた。

 どこぞのWIZ娘と違い、清楚で大人の気品がある……いや、街やダンジョンなどで見かけるのは大抵こういう人々で、WIZ娘は例外中の例外か。

 

「フェイヨンのポタメモありませんか?」

 丁寧な言葉遣いの騎士だな……うちのギルドの騎士なんて……常w時w逆w毛w語wのw奴wばwかwりwだwぜwwwwwwwwww。

まあ、堅苦しいのは苦手だから、別にいいんだが、身内以外には礼儀正しく、というのはちょっとカッコいいと思う。

 

 それはさておき、フェイヨンのポタは……あるな。

「ありますよ」

「お願いします」

 言って、騎士が懐から青石を2個取り出す。

 

「では……」

 青石を受け取って、立ち上がり、ワープポータルを……覚えているのはここまでだった。

 

 

 

「……ん」

 気が付くと、薄暗い天井が見えた。かすかに漂う消毒薬のにおい。ベッドに寝かされているようだし、病院か……?

「知らない天井だ……」

 誰もわからないだろうネタを呟きながら、額に乗っていたぬるいタオルをどけ、起きあがろうとして、何かが体の上に乗っているのに気が付いた。

 目を向けると……WIZ娘がベッド脇の椅子に腰掛けて、毛布に覆い被さるように寝ている。

 

 ……かすかな記憶をたどる……確か、ゲフェンでポタを頼まれ……倒れたのか。そして病院に担ぎ込まれ、WIZ娘が……看病していた……のか?

 

 情けない。傷を癒し、肉体強化の祝福を施すことができても、自分の体調管理すらできないとは。薄いカーテンの向こうを見ると……薄明るい。夕方?壁に掛かった時計を見る……目が点になった。

 

 朝だった。丸一日寝ていたわけか。

 

 

 

 そっとWIZ娘を見る。徹夜で看ていたのだろうか?かすかな寝息を立てて眠っている。枕元に目をやると水の入った器とタオルがあった。一晩中、タオルを換えていたのだろうか?そっと手を伸ばし、顔にかかった髪をよけてやる。さらさらで猫のような髪だ。

 

「ふぅ……」

 天井を仰ぎ、ため息をついて、もう一度WIZ娘を見る……見ているだけで幸せになれそうなくらい、あどけない寝顔。

 

「ダメだな俺は」

 WIZ娘が俺のことをどう思っているのかはわからないし、この際どうでもいい。おそらく、誰かから連絡が入って飛んできたのだろう。その時のWIZこの狼狽ぶりは想像に難くない。

 身近な、いつも皆に笑顔でいる彼女に心配をかけさせてしまった。

 

 ふと、指で頬をつついてみる。

 

   ぷにっ

 

「!!!!」

 オイオイ、嘘だろ?

 この前実家に帰ったときに俺より一回り年上の従兄弟が5つにもならない子供達を連れてきていたが、そいつらと変わらないぞ、これは。

 いや、それ以上かも知れん。

 

「ん……」

 動揺しまくって俺が動いたせいだろうか、起こしてしまったようだ。

 

 顔を上げ、目をむにむにとこすって「寝ちゃった……」とつぶやいてこちらを見る。

 

「あ、気が付いた?」

「あ、ああ」

「大丈夫?どっか痛いところとかない?」

「ん、ああ、ないよ」

「よかった。心配したんだよ(´・ω・`)」

 返す言葉もなかった。

 

 WIZ娘の話を要約すると、出掛けようとしたら、俺が倒れてゲフェンの病院に担ぎ込まれたと言う連絡がカプラサービスから入り、あわてて駆けつけた、とのこと。そんなことまでやっているとは、カプラサービス、恐るべし……そこは感心するところじゃないか。

 

「お医者さんは『過労でしょう、休ませてください』って言ってた(´・ω・`)」

「そうか、心配かけさせてスマン」

「ギルマス、ちょっと怒ってたかも」

「……ちゃんと謝る、俺が悪いからな」

 ベッドから出ようとするとWIZ娘がそれを遮る。俺の体力が落ちているのか、押し戻された。

 

「いま、お医者さん呼んでくるから」

 そう言い残して部屋を出ていった。

 あいつ、いつもみたいな笑顔じゃなかったな……体中を締め付けるような罪悪感……俺は本当に最低だな。

 

 医者からは「しばらくはゆっくり養生するように」と念を押され、帰ろうとポタを出そうとしたら「ダメ!」とWIZ娘に叩かれ……といろいろあってようやくプロンテラに帰った。

 

 ギルマスは一言だけ

「皆、心配したんだぞ」

 

 こういうとき、あれこれ言われない方がつらい……と初めて知った。

 

 

 

 部屋に入り、ベッドに横になる。すぐに睡魔が襲ってきて、起きたら昼だった。

 

「腹減った……」

そりゃそうか。

 

 誰もいないだろうし自分で作るしかないか、と思ったら、ドアをノックする音がした。

 

「プリ男くん、起きてる?入るよ?」

「ああ」

 WIZ娘だった。俺が起きて動いた音が聞こえたんだろうか……

 

「大丈夫?」

「ああ」

「おなか空いてる?」

「ああ」

「待ってて、すぐ持ってくるから」

「ああ」

 俺、「ああ」しか言ってないな。

 

 しばらくするとWIZ娘が湯気の立つ椀を持ってきた。

 

「これね、アマツの料理で『お粥』って言うんだって」

「へー」

「あ(・∀・)熱いから気を付けて」

「じ、自分で食べられるから……」

 放っておいたら「ふぅふぅ」しそうだったのであわてて自分の手元に椀を引き寄せ、口に入れる。味は……ほとんど無いが、なんだか落ち着く。

 

「どう?」

「うまいよ」

「よかった。食べたらまた寝る?」

「……そうするよ」

「じゃ、適当に片づけるから」

 そう言い残し、部屋を出ようとするWIZ娘に声をかけた。

 

「WIZ娘」

「なに?」

「ありがとう……」

 

「気にしないで(・∀・)」

 そう答えて、部屋を出ていった。

 

 どうでもいいが、ヒマワリと話している気がしてならないんだが。

 

 食べ終えて、椀をドアの外へ置いておく。台所まで持っていきたかったが、怒られそうなのでやめた。

 

 あまり味はしなかったが、何だかうまかったな……そう言えば、WIZ娘は料理全般をそつなくこなしているような気がする。例のマスタード入りサンドイッチ等は別として、下手をするとそこらの店よりうまく作ることもある。

 

 こうしていわゆる冒険者になる前は何をしていたのだろうか?初めてWIZ娘に会ったのは既にウィザードになった後だったからその辺のことはよく知らない。直接は聞きづらいから誰かに聞いてみようか……

 

 

 そんなことを考えていたらいつの間にか眠ってしまい、目が覚めたら夕方だった。さすがに体がギシギシときしむような感じがするので「少し散歩してくる」と声をかけて外へ出た。

 

 街はいつも通り……そりゃそうか。

 ふと見ると、珍しい服装の商人がいる。何を売っているんだろうと見てみると……

 

 アマツの味 レトルトお粥  500Zeny

        i⌒i

     / ̄ヒ-ヲ \

    (T'L ヽ < }_,」

    〈 ̄ ̄ ̄l [~

     L_イ~`ー'i_ ヽ

  ,. -‐ ムヽ──ニノー' - ..

 

 ひょっとして……俺、感心して損した?

 




解説
逆毛
ROの男性キャラクターでは髪を逆立てたヘアスタイルが選択できる。呼び方はそのまんま、「逆毛」。そしてその髪型を選び、チャットでよく使われる「w」を多用する騎士がなぜか多く、逆毛と言えば騎士、という偏見が生まれたとか。


レトルトお粥
もちろんそんなアイテムは無い。
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