なんかTipsとか前書きに書きます。
1
俺は人気もないごつごつとした岩の上を歩いていた。すぐ左には海。綺麗だとは思うが無慈悲にも海しか見えない。
山で楽しくキャンプするはずだったのに行けども行けどもキャンプ場に着かず、これはやばいと川辺を下っても人一人いない岩礁と海しか見えない。
靴を履いていても足裏に痛みがくる。
いや、これは靴擦れかな?もう遭難して数時間経つ。近くを船が通らないだろうか。
わざわざ足を濡らしたくはない、俺は川は通らず右へ進み続けるも気が付けばもう夜。しかし安心して寝れるような場所は未だにない。目が霞んでくるのを感じる。
しばらく歩くと光が見えた。誰かいるのだろうか。足を取られないように近づいてみると月に照らされたそれは古ぼけたランプだった。
(小さいころはアラビアンナイトも読んだな、こうランプを布で擦るんだったか。)
そうランプを控えめに擦ると手に持ったランプが熱を持った。
(んむ?擦ってないところもぬるくなった気がする。強く擦ってみよう。)
擦れば擦るほどランプは熱くなる。もう男は夢中でランプを隅々まで擦った。
男が満足するまでランプを磨くと、やけに周りが暗く感じる。ふと上を見ると木より高い大男が気色悪く笑いながらこちらを見ていた。
「み、見越した!」
「私は見越し入道ではない。私はそのランプの魔人だ。聞いたことくらいはあるだろう。好きな願いを3つまで叶えてやろう。」
「うそでしょ。まじかよ。こんなことがあってたまるか。本当に好きな願いを3つも叶えてくれるんだな?後になってデメリットなんてないよな?」
「あぁもちろんだ。私は全知全能だ。如何なる願いも叶えよう。」
男は思った。ここで帰り道なんて聞いたところで所詮独身、親もおらず帰ったところで高所作業でいつ死ぬともわからない仕事をする毎日、どうせなら小説のように生まれ変わるのもいいことだ。
どうせなら大学生のころにハマったDQ8なんかがいい。それも主人公なんかじゃなく気楽に行動できるような立場…どこぞの金持ちの放蕩息子なんかがいいな。
「1つ目の願いを言うぞ、いいかまだ1つ目だ。3つ目の願いを言うまで1つも叶えないでくれよ?俺をDQ8の世界、時代に、主要人物じゃない金持ちの長男として生まれ変わらせてくれ。もちろん記憶を保ったままだ。記憶がないなら俺じゃないからな!」
「うむ、DQ8だな。もちろん知っている。次の願いは何だ?」
思えば俺は心臓が弱かった。まともに働けるようになるまでカウンセリングやら投薬やらいろんな不都合を感じることも多かった。ならばもちろん。
「2つ目の願いだ。常に健康体で居たい。病気も呪いも毒も、全ての状態異常が効かない体にしてくれ。もちろん肉体的にも異常がないように。」
「健康か、いいだろう。最後の願いを言え。」
せっかくのドラクエだ。どうせなら今まで遊んだ全てのシリーズの魔法を使いまくりたい。ダメでもともと、言ってみるか。
「思うままに魔法が使いたい。8だけじゃないドラゴンクエストの魔法全てを。もちろん満足に使いまくれるマジックパワーもだ!」
「魔法か、いいだろう。それでは願いは聞き届けた。お前の次の生を我々は見守っているぞ。」
「え、見守ってくださるんですか。ありがたい!」
「ただし、我々が面白くないと思った時は苦難を与える。努々忘れるな。」
「え、まさか見守るって…娯楽扱いなのか!?」
「もういい、行け。」
「………アスさま!大変です!赤子が泣きませぬ!」
「ええい、急いで逆さ吊りにし叩くのだ!気道に水が詰まっている!」
スパァン!スパァン!
「お、おぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!???」
「おお、よかった。……様、あなたのご子息です。」
「まぁ…おさるさんみたいね。そうね、名前はどうしようかしら。」
「……様、陛下がいらっしゃいました。」
「おお、……!その子が我が子か!名前はどうするのだ?」
「あら、私もそう思っていたのよ。そうね…エリゴス、エリゴスなんてどうかしら。」
「うむうむ、良いと思うぞ。皆のもの、エリゴスの世話を頼むからな。マス……スも今回は」
「いいってことだ、わしは医師としてすべきことをしたまでよ。」
「うむ、それもそうだな。では…こ……に……」
「ええ、……ーン……許嫁……」
もう無理だ、意識を失いそうだ。
俺はエリゴス…俺はエリゴス…ぐぅ…
エリゴス
王子
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