魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
『マスター……それはどういう意味で言っているのだ?』
俺の発言にメカ犬は、驚愕の声を上げた。
確かに他のホルダー達と戦って来たのと、ハンターには違いが多々としてあるが、戦い倒すという事には何一つ変わらない。
ならば何故俺が、こんな事をメカ犬に対して言ったのか……
それは俺の個人的で、独りよがりな理由からだった。
「俺はこのまま……中途半端な形でハンターとの戦いに決着がつくなんて嫌だ!確かに人は、突き詰めれば自分の為だけに生きているのかも知れないけど……だけどやっぱり人は、それだけじゃ生きていけないんだよ……このままハンターを倒すだけじゃ、それを伝える事なんて出来ない……そう思うから、ただの奇麗事かも知れないけど、戦うしかないないのなら俺は、その気持ちを思い切りぶつけて……ハンターの気持ちも全力で受け止めたいんだ!!!」
俺の言葉が既に廃墟と貸しつつある、海鳴病院の中心で木霊する。
これはただの理想でしかない……
それは発言者である俺が、一番理解している。
人の数だけ理想は存在して、それが必ずしも、誰にとってもの幸せだという事は、残念だが有り得ないと言わざるを得ない。
『……確かにマスターが言っている事は、ただの奇麗事だな。戦いに勝つ為には、誰かを守る為には時に何かを切り捨てなければならない事もある……マスターはその選択を迫られる度に、奇麗事を言うつもりか?』
メカ犬から返ってきた言葉は、俺にとって半ば予想していた言葉だった。
仮面ライダーの力があったって、俺は神様じゃないのだ。
この手で助けられるものなんて当然ながら限られていて、全てを助けられるなんて事は出来はしない……
現に俺は、仮面ライダーの力を手に入れながら、救えなかった人達がいる。
その人達の最後の顔は、笑顔で……だけどその目に涙を流していた……
俺が言った理想は現時点では、ただの夢物語であり、メカ犬の言う通りその理想を語っただけの奇麗事だ。
……だからこそ俺は声を大にして叫ぶ。
「……メカ犬。俺はお前が居なくちゃ、ただの無力な人間だと自分でも思う。それにこの仮面ライダーの力だって、万能な訳じゃないって事くらい分かってる……でもさ。俺はそれを分かった上で、やっぱり言うよ。そして挑戦し続ける!それが俺のやりたい事だからさ!!!」
『……どうやらワタシが何を言ったところで、意見を変える気は無い様だな……』
俺の言葉を聞いてから、一泊置いた後に、メカ犬が心底呆れた感じの声で俺に確認を取ってくる。
そしてそのメカ犬の問いに対して、俺の答えは既に決まっていた、
「当たり前だろ」
本当に身勝手な動機だと思うけど、俺はやっぱりこれからも己の理想を、実現させようと、これから先も躍起になるだろう。
もうあんな涙を、俺は見たくは無いって思い続ける限り……
『……方法が無い訳ではない。だがその方法はマスターにかなりの負担を強いる上に、確かな確証も無いぞ。それでもマスターは実行しようと思うか?』
「可能性があるって分かっただけでも充分だ。出来るかも知れないなら俺はやるよ」
『全く……本当にマスターは、呆れる程にお人好しだな……だがマスターのその考え方。ワタシは嫌いじゃ無い』
迷う事無く答えた俺に、メカ犬は再び呆れた調子ではあるが、最高の答えを俺に返してくれた。
きっと俺が今こんな考え方をしていられるのも、メカ犬と出会えたからだろう。
他の誰でもなく、頼りになる相棒が何時も隣に居てくれるから、俺は自分の理想を言葉にして、現実のものにする為に行動する事が出来る。
「ありがとう……相棒」
『ワタシはマスターの相棒なのだろう?ならば態々こんな事で礼を言わなくても良い。ワタシは相棒として出来る事をしたまでだからな』
感謝の言葉を述べた俺に対して、メカ犬はこれ位どうという事は無い、と言わんばかりの態度で返事を返す。
『お二人とも感動的な場面で水を差す様で悪いけど、さっさとしないとこの病院全体が、瓦礫になると思うのはオレッチだけじゃん!?』
「『……あ!』」
俺とメカ犬が互いの友情を改めて確かめ合ったその時、アタッチメントパーツとなっていたメカ虎が、声を張り上げた。
そのメカ虎の声により、今も暴走しながら、病院を破壊し続けるハンターを再確認した俺とメカ犬は、同時に口を開き、メカ虎の言葉が真実だった事を確信する。
「……それでメカ犬!何か方法があるって言ってたけど、どんな方法なんだ!?」
『うむ!それは……』
『二人して清々しいまでのスルーをかましてくれるじゃん!!!!』
左腰の緑な虎的な何かが叫んでいる気がするが、俺とメカ犬はその声をあえて気にする事なく、話を核心部分へと進めて行く。
「……本当にそんな事で良いのか?」
メカ犬の話を聞き終えた俺は、一つの疑問を口にする。
何故ならばメカ犬が俺に示した方法が、かなりの力技だったからである……
あんな前振りをしておいて、そんな説明をされたのならば、疑問の一つでも言いたくなるだろう。
『論より証拠!習うより慣れろだマスター!』
「何なんだよその根性論は!?」
『最初から覚悟は出来ているのだろう?ならば疑うよりも、成功することを信じて突き進めば良い!』
「……分かったよ。信じてるからなメカ犬!!!」
そんな俺の心情を知ってか知らずか、異世界から来たくせに、やけに達者にことわざを使いこなすメカ犬に辟易しながらも、俺はメカ犬の教えてくれた方法を実行する為に、右手に持っていたパワーブレードを地面に突き刺して、暴走を続けるハンターへと突っ込んで行く。
「作戦会議は終わったのか?丁度良かったぜ。テメエを殴り飛ばしたいのに、身体の自由が利かねえところだったんだ。態々ご丁寧にそっちから来てくれてあんがとよ!」
「俺はただ殴られに来たんじゃない!俺の……俺達の勝負を、納得の行く形で終わらせる為に、全力を尽くすんだ!!!」
眼前に迫った俺に、ハンターが笑い声を上げながら、自虐的な台詞を吐く。
ハンターのそんな態度に対して、俺は自身の想いを叫びに乗せながら、ハンターに組み付いた。
「何のつもりだ糞ガキ!?」
「すぐに分かるさ……頼むぞメカ犬!!!」
ハンターの意思を無視して暴れ続ける両腕を無理矢理抑え付けながら、俺はメカ犬に合図を送る。
メカ犬から聞いた作戦は至ってシンプルであり、先程も述べた通りとても力任せな方法だ。
タッチノートと同様に、メカ犬にはホルダーの反応を察知する能力が備わっているのだが、どうやらそれ以外にもエネルギーの流れを察知出来るらしい。
ただしその能力も、距離が離れてしまうと、それだけ感知出来る精度が下がってしまう。
だがそれは逆を言えば、近付けば近付く程に、その精度を増していくという事である。
それこそ身体の一部を解析する対象に対して、直接接触させればその効果は、かなりのものになるという訳だ。
『任せろマスター!!!』
俺の合図に応えてメカ犬が、直接触れている俺の腕を通して、ハンターの身体の解析を開始する。
ここまでは全て作戦通りになった訳だが、本当の正念場はここからだ。
メカ犬の話では、ハンターを暴走状態にしているエネルギーの核となっている部分を破壊すれば、この暴走状態を鎮める事が出来るらしいのだが、それには一つ大きな問題がある。
ハンターを暴走に陥らせているさその部分が、ハンターと完全に一体化していたとしたら、この作戦は前提から崩れ去ってしまう。
今の俺に出来る事は、ハンターの動きを封じる事に全力を注ぎながら、メカ犬の解析が終わるのを待つしかない。
そしてその解析の結果が、俺の望むものである事を願うばかりである。
「何で……テメエはそこまでするんだよ糞ガキ?こんな事して、テメエに何の得があるってんだよ!?」
ハンターの腕を抑え付けているが、別にそれ以外の部分を抑え付けている訳ではない。
その為に、俺の妨害を免れたハンターの脚部によって、何度も蹴り付けられる俺を見て、ハンターが不思議そうに一つの問いを投げ掛けて来た。
「……そ、それが俺のやりたい事だから……本気でぶつかりあえれば、分かる事があるかも知れない……だ、だから、このまま終わらせる訳には行かないんだよ……寂しいじゃないか……何も分かり合えないまま、この戦いが終わるなんて!」
「……お前」
俺は何度も蹴り込まれる痛みに耐えながら、自身のこうする理由を正直に吐露する。
その言葉に対して、ハンターが小さな呟きを零したその時だ。
『解析が終了したぞマスター!!!』
ずっと心待ちにしていたメカ犬の声が、ベルトから響く。
だが一番重要なのは、解析が終了した事よりも、それに伴い判明したであろう結果にある。
『マスター心して聞いて欲しい』
解析を終了させたメカ犬が、重々しく口を開く。
その口調から、最悪の結果となってしまったのではないかという考えが、俺の脳裏を過ぎった。
「もしかして……」
『……喜べマスター!ハンターの身体を暴走させているエネルギーの核となる部分を特定したぞ!!!難しい事に変わり無いが、その核の部分を破壊するのは可能だ!!!』
だがその考えは、杞憂に終わった。
メカ犬の言葉によって、俺の心に新たな希望が芽生える。
「本当か!?」
『うむ。だが先程も言った通り、ハンターのシステムを停止させずに、暴走だけを止めるのは至難の業だぞ!それでもマスターは挑戦するか?』
「……当たり前だろ!それよりも暴走させてる部分の核が何処なのかを教えてくれ!!!」
俺を心配してか、再度の確認を行うメカ犬に、俺は蹴りにより連続的に襲われる痛みに耐えながら、即答で返事を返す。
『ハンターの全身にエネルギーを送り込みながら循環させる構造が、ベルトの右側に内臓されている。その部分だけを正確に破壊すれば、ハンターを倒さずに暴走を止める事が出来る筈だ。詳細なデータをマスターが目視出来る状態で表示する!』
「サンキューメカ犬!」
メカ犬の説明を聞き終わり、俺が感謝の言葉を述べるのとほぼ同時に、俺の視界にディスプレイが出現して、ハンターの装着しているベルトのデータが幾つも詳しく表示されていく。
『どうやらこの機能は、後から無理矢理搭載させたのだろうな。だからこそ、ハンターの変身システムと不具合を起こして、暴走してしまったのだろうが、そのおかげで完全に分断出来るチャンスがある。そして私が出来る事は残念だがここまでだ!後は全てを託すぞマスター!』
「……ああ!ここまでメカ犬がお膳立てしてくれたんだ!!!絶対に決めてみせるさ!!!」
ディスプレイの内容を頭に叩き込んだ俺は、メカ犬から託されたバトンを確かに受け取り、ハンターの動きを拘束させていた両腕を離して、バックステップで後方へと下がり一旦距離を置く。
そして地面に突き刺してあったパワーブレードを引き抜き、ベルトからタッチノートを素早く取り出して、パワーブレードの溝部分へとスライドさせた。
『ロード』
音声が鳴り響いた事を確認した俺は、そのままタッチノートを、再びベルトへと差し込む。
『アタックチャージ』
ベルトから音声が聞こえてから間を置く事無く、稲妻の様な光が発生して、右腕のラインを通じて、パワーブレードの刀身へと集約されていく。
「こいつで決めるぜ」
眩い光を纏うパワーブレードを構えながら、俺はその狙いをメカ犬が教えてくれた一点に絞り、鋭く研ぎ澄まされた一撃を放つ機会を待つ。
俺の拘束から抜け出した事で、再び辺り構わずに暴れるハンターとの間合いを、僅かずつ縮めていった結果。
ついにその一撃を放つ機会が到来する。
ハンターとの間合いを徐々に狭めていった事で、暴走したハンターの攻撃対象が俺となって、強襲を仕掛けてきたのだ。
逆手に持たれた黒い刀身のナイフが、俺の肩口に猛威を振るい、俺の装甲とハンターのナイフが大きな衝撃と共に、盛大な火花を発生させる。
その痛みは尋常なものではなかったが、俺はその攻撃を敢えて避けずに受け止めた。
全てはこの一撃を確実に命中させる為の、布石なのである。
相手の攻撃を受ける事で、俺の一点に高められた一撃は、確実に命中させる事が出来る間合いへと入り込む。
「パワーブレード」
俺は至近距離のハンターのベルトの左側に、意識を集中させていく。
「カウンタースティング」
そして俺の放った一撃は、狙い通りの位置に、見事命中する。
ハンターの自由を縛っていたエネルギーは、その核を失い、漆黒の身体から元の全体的にブラウンなボディーと、上半身を覆う銀のプロテクターへとその色を染めていった。