魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
駆けつけてくれたE2にホルダー達の相手を任せた俺達は、ドライブモードとなったチェイサーさんの常軌を逸した猛スピードで、あの猫が言っていた今は使われていない水路へと辿り着いた。
其処までは良かったのだが、俺とメカ犬はある一つの出来事を失念していたのだ。
普段から何かと謎の多いチェイサーさんではあるが、俺やメカ犬のお願いには、案外素直に答えてくれる……
しかしこのドライブモードのチェイサーさんは、最早別人とも言える性格であり、その性格は超俺様主義者。
そんな方が、お願いですから止まってくださいとお願いしたところで、素直に止まってくれるだろうか?
答えは否だ!!!
案の定チェイサーさんは、スピードを一切落とす事無く、地下水道の入り口に突っ込み、水路の壁をぶち破りながら、まっすぐに北へと駆け抜けたのである。
幾つもの壁を突き抜けた先に見えたのは、今までぶち破ってきた水路とは比較にならない程の、ドーム状に広がる広い空間だった。
「あれは!?」
俺はその空間内部で、衝撃的な光景を目撃してしまい、驚愕の声を上げてしまった。
空間内部に居て最も先に目に付いたのは、マイティーフォームのクウガが戦っている姿だったのだが、それよりも俺は、そのクウガが戦っている相手の姿に度肝を抜かれたのである。
その相手の姿もまた……クウガだったのだ。
全身が白い鎧に覆われた姿ではあったが、グローイングフォームとは違い、その形状はアルティメットフォームに酷似していた上に、瞳の色も漆黒に染まっている。
その白いクウガが、五代さんが変身しているであろうクウガに対して、猛攻を仕掛けているのだ。
俺はその光景に驚愕しながらも、その白いクウガの正体に、一つだけ心当たりがあった。
空が話していた【闇】の存在……
それが、あの白いアルティメットクウガの正体なのではないだろうか?
だが今は深く考察するよりも早く、俺の知るクウガの危機を救う事が先決だ。
「チェイサーさん!!!」
俺はありったけの叫びで、チェイサーさんに呼び掛ける。
この一言で、今のチェイサーに何処まで通じるか分からないが、恐らく俺が言おうとしている事は分かってくれるだろうと信じるしかない。
『吹き飛ばすぜええええええええええ!!!!!!!!!!!』
しかし俺の心配は杞憂だったらしく、ドライブモードによって、すっかり別人格となってしまったチェイサーさんは、この水路全体にまで響くのではないかという位の雄叫びを上げながら、白いクウガにスピードの乗った強烈なバイクタックルを叩き込んで吹き飛ばす。
白いクウガを吹き飛ばした後、更に視線を前方に向けると、其処にはこの空間の中央で倒れているはやてちゃんの姿が俺の視界に飛び込んで来た。
「はやてちゃん!?」
俺はすぐさまチェイサーさんから飛び降りて、はやてちゃんの下へと駆けつけて無事を確認する。
『大丈夫だマスター。はやて嬢は意識を失ってはいるが、命に別状は無いようだ。じきに目を覚ますだろう』
「……そうか。良かった……本当に」
倒れていたはやてちゃんを助け起こしながら聞いたメカ犬の声に、俺は心から安堵した。
一番の懸念を払拭した俺は、そのまま気を失っているはやてちゃんを持ち上げて、チェイサーさんの傍まで連れて行く。
「チェイサーさん。はやてちゃんを安全な場所までお願いします」
『オレサマに任せておきな!負けるんじゃねえぞマスター!!!』
チェイサーさんのシートの上に、はやてちゃんを乗せながらした俺の頼みに、快く返事を返してくれたチェイサーさんは、俺にエールを送ると、変身前の状態の俺を固定する為のストッパーで、気絶しているはやてちゃんが落ちない様にして、この場から走り去っていった。
「……純」
ここまで一連の流れを、黙って見守っていたクウガが、俺に話し掛けて来る。
「遅くなりました五代さん。ところで今は、どんな状況になっているんですか?」
再開の挨拶もそこそこに、俺は現状を把握する為に早速質問を投げ掛けた。
海鳴市に飛来した今もE2が戦ってくれている大量のホルダーに、連れ去られた筈のはやてちゃんが、この空間の中央に放置されていた事。
それに先程チェイサーさんが吹き飛ばした、白いクウガの事など……
俺がハンターと戦ってから、ここに辿り着くまでの間に何があったのか、聞きたい事は山ほどある。
「……ごめん。俺が付いていながら【闇】の復活を止める事が出来なかった」
クウガが最初に放った質問の返答は、謝罪の言葉だった。
そしてクウガの文脈から、俺は一つの事実を確信する。
「やっぱり……あの白いクウガが【闇】なんですね?」
「……ああ。それにあの闇の本体は……空なんだ」
確認の為に聞いた俺の質問に肯定すると同時に、クウガはまたしても衝撃的な事実を口にした。
「あの白いクウガ……【闇】が空!?」
「そうなんだ。儀式を止めようとしたんだけれど、間に合わずに……」
俺にここまでの経緯を簡潔に語ったクウガは、目の前に居ながら阻止する事が出来なかった悔しさからか、強く拳を握り締める。
「今更来たところで、もう遅い。【闇】はここに完全な復活を遂げた。お前達にこの【闇】を止められるか?仮面ライダー!」
其処へ俺でもメカ犬でもなければ、クウガでもない抑揚の無い声が、この空間内部で響く。
その声の正体は、先程から俺の視界の隅に映っていた灰色の怪人、メルトの声だった。
『メルト!お前達の目的は何だ!?それに以前のフィリップ達が居た世界の事も含めて、今回の【闇】について……ワタシと同じ世界からやって来た筈のお前達が、何故別の世界の事を知っているというのだ!!!』
メカ犬がメルトに対して投げ掛けた疑問は、俺も考えていた事だ。
Wの世界との融合と、今回の【闇】の一件……もしかしたら時期的にデンライナーが来た時も、裏で暗躍してネガタロスを操っていたかもしれないという可能性すらあるのではないだろうか?
其処まで考えるのは、飛躍しすぎかもしれないが、どう見てもメルト達の行動は、仮面ライダーを知っている者の行動に思えてならない。
「それに答える義務も義理も私には無い。それに今はそんなくだらない事を考えている場合ではないと思うがな?」
メルトがメカ犬の質問を一蹴するのとほぼ同時に、瓦礫が吹き飛ばされる音と共にチェイサーさんに吹き飛ばされた【闇】が幽鬼の如く、再びその姿を現した。
「どちらにしてもお前達の命もここまでだ。もしもこの【闇】を退ける事が出来たならば、褒美にヒントの一つでも教える事を約束しよう」
【闇】と俺達を交互に見たメルトはそう言うと、この場での目的は全て果たしたと言わんばかりに、水路の出口へ向けて歩き出しその姿を消してしまう。
『待て!!!まだ話は終わってないぞ!?』
「止めておけメカ犬。俺も気になるところだけど……今はメルトを問い詰めるよりも先に、しなくちゃいけない事があるだろ?」
この場から静かに立ち去ろうとするメルトに対して、メカ犬が待ったの声を掛けるが、俺はその声を遮って此方へと距離を詰めてくる【闇】を見据えた。
【闇】だけを無力化して、空を救い出さなければいけないという強い想いが俺の中にあるが、改めてこの【闇】と対峙する事で、俺は改めて強者だけが放つ、異様な圧力を感じ取る。
そして【闇】は、あまりにも唐突に大きな動きを見せる。
「来る!!!」
クウガがそう言った次の瞬間には、既に俺とクウガをその拳の射程距離に捉えていた【闇】が、力任せに両拳を無造作に振り回して、俺とクウガ其々に叩き込む。
その拳は、尋常では無い威力を誇っており、咄嗟に防御しても尚、凄まじい衝撃が、俺とクウガを襲った。
「空!俺が……俺達が分からないのか!?」
「……殺す!クウガ……殺す!!それを邪魔する者も……全て!!!!」
俺は【闇】の中に居るであろう空に何度も呼びかけるが、その言葉は一切耳に入っていないのか、擦り切れたテープレコーダーの様に、憎しみの篭った言葉を吐き出し続ける。
「負けるな空!君はこんな……人を傷付ける事を、望む男じゃないだろ!!!」
更にクウガも空に必死に呼び掛けるが、どんなに想いを込めて俺達が叫んでも、その声は空の耳に届かないのか、【闇】の猛攻は少しとして収まる気配すら見せない。
「メカ犬!さっきのハンターみたいに、【闇】の核を特定したりとか出来ないか!?」
『先程から解析は行っているが……ハンターの時とは違い、空と自身と【闇】だと思われるエネルギーが完全に同化している。これでは同じ手は使えないだろう』
「それじゃあ【闇】を倒せば元に戻せるんじゃないか!?」
『最初に言っておくが、それは無理かもしれないな』
「どうしてだよ!?」
『ホルダーの技術を応用して作られたハンターならば、その力任せな方法でも可能だが、空と同化している【闇】は全く未知のエネルギーであり、ワタシの知識には存在していない専門外の領域だ。小さな範囲ならば位置を特定して物理的に分離させる事は出来ても、今の空には……』
クウガと共に、【闇】の猛攻に耐えながら、俺はメカ犬と何とか空を助ける方法は無いかと、模索し続けるが一向に解決策が見出せない。
それどころか、このままでは俺達の命すらも……
「最後まであきらめちゃ駄目だ!!!」
俺の脳裏に、薄暗い思考が過ぎろうとしたその時、目の覚める様なクウガの声が俺の耳に届く。
「……五代さん」
「もしも納得できる結果にならなかったとしても……それは全部終わってから後悔すればいい!でも今はまだその時じゃないんだ!!まだ俺達に出来る事がきっとある!!!!!」
……俺はクウガの、五代さんの言葉で、先程までの意識を払拭して、再び空を助ける算段を模索する。
確かにまだ終わっていない。
諦めずに全力で、挑み続ければ、誰もが納得出来る最高の終わり方を迎える事だって、決して不可能ではないのだ。
それに例え俺一人では駄目だったとしても、俺にはメカ犬という相棒が居る。
隣には俺が憧れ続けた……一人の仮面ライダーが肩を並べて励ましの言葉を投げ掛けているのだ。
こんな破格の条件が揃っているというのに、どうして諦める必要がある?
……だから俺は、一人の大切な友人に、言葉では伝えきれない熱い想いを、全力でぶつける。
「……何時までも……何時までも……黙ってないで何か言って見せろそらああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
【闇】の猛攻を掻い潜り、俺は想いのたけを乗せた拳を全力で叩き込む。
「空!!!其処に居るんだろ!!!!!聞こえてるなら返事をしてくれ!!!!!俺が……俺達が絶対に助けてみせるから!!!!!!だから空も根性見せろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
これが今の俺に、考えられた精一杯の行動だった。
俺は天才的な頭脳の持ち主でもなければ、何か一つ非凡な才能があるという訳ではない。
一言で片付けてしまうのであれば、凡人も良いところだ。
だけどそんな凡人の俺にも、自分の友人を信じ、貫く事は出来る。
この状況下で、最善の提案を出来るのは誰か?
それはこの【闇】を最も知り尽くしている空を置いて、他にいないだろう。
だから俺は、空にこの声が届く事を信じて、全力で呼び掛ける!
『危ないぞマスター!!!』
メカ犬の声が聞こえた時には、【闇】の振り翳した拳が俺の目前へと迫っていた。
最早この至近距離では、避ける事すら叶わないだろう。
俺は最後まで友人を信じて、もう一度叫ぶ。
「返事をしろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
俺の叫びは……
……一人の友に届いた。
「……そんなに叫ばなくても……ちゃんと聞こえてるよ?」
俺の顔面に直撃する寸前に【闇】の拳が止まり、その内側からは、先程までの憎しみのみを吐き出す怨念の声ではなく、俺の良く知る友人の優しさに満ちた声が聞こえて来た。
「……そら?本当に……空なんだな!?」
その声を聞いて、一瞬だけ呆けてしまったが、俺はすぐに気を取り直して確認する。
「……ああ。僕は空だ。他の誰でもない……僕そのものだよ」
空はぎこちない動きで、拳を下ろしながら俺の言葉に、肯定の返事を返す。
「良かった……本当に心配したんだぞ……」
「ありがとう純。僕が【闇】の中に飲み込まれた後も、純の声は何度も聞こえたよ。その声が僕をここまで導いてくれたから……だから僕は……もう一度君と話をする事が出来たんだ……」
「何だよその言い方?それじゃあまるで……」
「あまり時間が無いんだ……純には……勿論五代さんにも……良く聞いて欲しい」
俺だけではなく、クウガにも問い掛ける様に空は言葉を紡いでいく。
「僕を……【闇】と一緒に封印して欲しいんだ」