魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第33話 三番目の男【後編】

『アクセス・リンク』

 

鳥羽がベルトにカードケースを差し込むと共に、ベルトから電子音声が鳴り響き、鳥羽の身体の前方に光が様々な数式が羅列された様な状態で浮かび上がる。

 

その光は瞬時に人の形へと編みあがり、鳥羽の身体と重なり一つに重なり合い一人の戦士へとその姿を変貌させた。

 

その戦士の姿は全体的に白を基調としたフォルムと所々緑の装飾があしらわれたデザインで、何処と無く西洋の鎧を彷彿とさせる。

 

鳥羽が変身を遂げた戦士の名は、仮面ライダーアクセス。

 

既に海鳴市でも多くの者に認知されている、仮面ライダーE2の生みの親でもある風間恵美が、恩師として慕う森沢が開発した独自のシステムである。

 

「さあ、お楽しみの時間だ」

 

アクセスは目の前のホルダーに語り掛けながら、一度自身の右手を握り反対の手で包み込むように合わせた後、相手との距離を詰めるべく、全速力で駆け出した。

 

だが自身に危害を加えようとする相手の接近に、ホルダーが黙っている筈も無く、自らの周囲に幾重もの炎弾を生み出してアクセスに向かって次々と射出する。

 

「おわっと!?」

 

前方から迫ってくる炎弾の嵐に驚きながらも、アクセスは咄嗟に足を止めて横に転がり、何とか被弾を免れる事に成功する。

 

アクセスに回避されたホルダーの攻撃は、既に半壊していたビルへと命中して、建物としての最後を迎えた。

 

その衝撃で、設置されていた水道管が破損した為か、際限無く全壊したビルの瓦礫の中から大量の水が溢れ出て来る。

 

「その攻撃ちょっと、卑怯じゃないか?」

 

答えが返ってこないであろうと理解しつつも、アクセスはホルダーと後ろのビルを交互に見ながら愚痴を零しつつ、ベルトに手を掛けて一枚のカードを抜き出す。

 

抜き出したカードの表側の絵柄は全体的に水色で、半透明な泡が描かれている。

 

アクセスはそのカードを素早くベルトの右側のスリッドにスライドさせた。

 

『アクアリンク』

 

ベルトから機械的な音声が響くと共に、アクセスの後ろの倒壊したビルの中から噴出し続ける水が、アクセスの身体に引き寄せられる様に、周囲に集まって浮遊する。

 

その光景を気に留める事無く、再びホルダーが生成した炎弾を撃ち出すが、アクセスは避けずに右手を前に突き出す。

 

するとアクセスの手の動きに呼応するかの様に、周囲を浮遊していた水が水流となって迫り来る炎弾を撃ち落した。

 

攻撃を防がれたホルダーは、その後も次々と炎弾を生成してアクセスに放つが、アクセスの方も周囲を浮遊する水を使って全て撃ち落していく。

 

アクセスに搭載されたリンクシステム。

 

それはこのアクセスギアを開発した森沢の研究テーマが凝縮されている。

 

森沢の研究していたテーマとは、人間の英知を用いて生み出した科学によって、人と自然を融合させる事だった。

 

人間は常に自然の恩恵を受けながらも、同時に自然の脅威に晒されている。

 

その自然の一欠片でも自由に操る事が容易に出来るとしたならば、人々の暮らしは更に豊かなものとなる筈だと、森沢は確信していた。

 

だがそのリンクシステムも今はまだ完成に程遠い。

 

その扱う力はあまりにも強力で、現段階では多くの人々が日常の中で扱うには適さない力だったのだ。

 

人々の生活を豊かにする為に作られた力は、皮肉にも戦う力となり、アクセスギアという副産物を生み出す結果となった……

 

そしてその力は、開発者の森沢から鳥羽直己という一人の青年に託されて今こうして戦いの中にその身を投じている。

 

アクセスが先程仕様したカードを、森沢はエレメントカードと命名した。

 

これこそがアクセスに搭載されたリンクシステムの最大の特徴であり、カードに埋め込まれたデータをベルトに通す事によって、そのデータを擬似的に現実とリンクさせて、一時的に自然界の一部を自らの手足の様に操る事が出来るのである。

 

今回アクセスが使用したのはエレメントカードの一つであるアクアカード。

 

カードの中には、現実世界の水に属する物質を操作するデータが蓄積されており、アクセスはそのデータを用いる事で、ビルの瓦礫から噴出する水を操ってホルダーの攻撃を見事に防いだのだ。

 

「さてと、今度はこっちから行くぜ!」

 

ホルダーが放つ全ての炎弾を防ぎきったアクセスは、そう宣言しつつ再びベルトの中央に手を掛けて新たなカードを一枚取り出した。

 

今度のカードは表面が赤く、燃え盛る炎のイラストが描かれている。

 

アクセスはホルダーに向かって駆け出しながら、再びベルトの右側のスリッドへとカードをスライドさせた。

 

『フレアリンク』

 

ベルトから電子音声が響く中、ホルダーがまたしても炎弾を生成するが、アクセスが右手をかざすと生成した炎弾がその形を崩して、アクセスの周囲へと集まっていく。

 

先程アクセスが使用したエレメントカードの属性は火。

 

今まで使っていたアクアが水を自由に操れたのと同様にこのフレアカードには、現実世界に存在する火に属する物質を自在に扱う事の出来るデータが入っており、それはホルダーが作り出した炎も例外では無い。

 

「もう一つオマケだ!」

 

ホルダーの作り出した炎を奪ったアクセスは更にベルトからもう一枚カードを取り出した。

 

そのカードにはアクセスの拳と思われるパーツが描かれており、その背景には【+】という記号が大きく描かれている。

 

『ナックルリンク+フレア』

 

そのカードをアクセスがベルトの右側のスリッドにスライドさせる事によって、電子音声が響き渡りそれと同時にホルダーから主導権を奪って周囲に展開させていた炎が、アクセスの拳へと集まりだす。

 

「はあああああああああ!!!」

 

アクセスは気迫を込めた叫びと共に、炎を纏った拳をホルダーに対して叩きつけていく。

 

猿型のホルダーの特性である素早い動きで、ホルダーも対応を試みるが、アクセスの攻撃はその速さを凌駕して、炎を纏った拳が着実にホルダーにダメージを与える。

 

最後に渾身の蹴りを叩き込んで、ホルダーを吹き飛ばしたアクセスは、拳に纏った炎を四散させながら、更なるカードをベルトから引き抜く。

 

そのカードは先の戦いでも使用したアクセスの右足が描かれたカードだった。

 

「さあ、これで終わりと行こうか?」

 

アクセスはホルダーに告げると、そのカードをベルトのスリッドへとスライドさせる。

 

『リンクチャージ』

 

スライドさせたカードが光となって飛散してから間も無くして緑色の光がアクセスの右足へと集約されていく。

 

全ての準備が完了した事を確認したアクセスは、その場から飛び上がり光を纏った右足を突き出してホルダーに最大の一撃を放つ。

 

「ライダーキック!」

 

その瞬間ホルダーは大きな爆発を起こすと同時に、暴走プログラムが分離したのだが……

 

「ん?」

 

アクセスは着地を無事に決めて、爆発地点に視線を向けて、一つの違和感を覚えて小さく疑問の声を上げた。

 

確かにアクセスの必殺の蹴りはホルダーに命中したし、その一撃には確かな手応えがあったのである。

 

そして暴走プログラムがホルダーと分離した……

 

だが肝心のホルダーは、素体となった元の人間に戻る様子を見せないのだ。

 

気になる部分はそれだけでは無かった。

 

このホルダーの中に取り込まれた暴走プログラムは三つ。

 

しかし実際にホルダーと分離した暴走プログラムは一つだけだったのである。

 

そして分離した暴走プログラムは何かに共鳴する様に、朱色の光を発しながら再びホルダーの内部へと吸い込まれ、次の瞬間にアクセスの攻撃で酷く傷付いた筈のホルダーの身体が急速なスピードで修復されていく。

 

「おいおい……流石にそれは反則だろ?」

 

自身が倒した筈のホルダーが復活する様子を目の当たりにしたアクセスが、仮面の下で苦笑いを浮かべた直後、二台のバイクのエンジン音が、この戦いの舞台に颯爽と響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは!?」

 

「どうなってるんだ!?」

 

既にシードへの変身を完了させて、チェイサーさんに跨りホルダー反応のあった地点に駆けつけた俺と、その途中で偶然にも合流して、隣を愛機であるマシンドレッサーで並走していたE2が驚愕の声を上げた。

 

「……倒したホルダーが復活したっていうの?」

 

更に此方も魔法少女の姿へと変わったミルファが、後部座席から俺達が目撃した現象をありのままに呟く。

 

俺達の目に最初に飛び込んだ光景は、鳥羽さんが変身したアクセスが必殺の蹴りを叩き込み、大きな爆発を引き起こしたというものだった。

 

その光景を見て、ホルダーは倒されたのだと思ったのはきっと俺だけでは無いだろう。

 

現に俺だけでなく、E2やミルファも其々に驚愕の声を上げていたのだ。

 

「ミルファは少しの間下がっていてくれよ」

 

再び戦闘を再開させたアクセスと復活したホルダーから少しだけ離れた位置でチェイサーさんに止まってもらった俺は、ミルファに声を掛ける。

 

これは後から聞いた話なのだが、ミルファの扱う魔法はホルダーには非常に効きづらいらしい。

 

誰もミルファを足手まといと言うつもりは無いが、戦う上で相性が悪いというのは中々に致命的な事だ。

 

それを理解すると共に、ミルファにはホルダーを倒した後にその身体から出て来る試練の光の対処に集中してもらう為に下がっていて貰うのは、お互いに話し合って決めた決め事だった。

 

それを理解しているミルファは同じ様にチェイサーさんから降りると、頷きながら数歩程後ろへと歩を進める。

 

「気を付けなさいよ」

 

下がりながら発したミルファの応援の声に頷きながら、俺は直ぐ隣でマシンドレッサーを止めたE2と共にホルダー目掛けて駆け出した。

 

今までに無いホルダーの起こした現象に、どう戦うべきが思案するのと同時に、俺の脳裏をもう一つの不安要素が過ぎる。

 

先の戦いでもホルダーの動向を無視して、俺に戦いを挑んできたアクセス。

 

ただでさえ今回のホルダーには不特定要素があるというのに、ここで俺がアクセスと戦う事になると、もしかしたら同じ結果を生むという結果になってしまうのではないだろうか?

 

そんな不安を胸中に秘めながら俺がホルダーに向かう途中……

 

「ちょっと待て!」

 

それを遮る様に声を掛けられた。

 

声を掛けてきたのはアクセスである。

 

入れ替わりになる形でE2がホルダーに攻撃を開始した事によって、俺とアクセスが一対一で対峙するという、最悪の部類に入る状況となってしまった。

 

「待ってたぜ。あんたが来るのをな……」

 

アクセスが嬉しそうに話しかけてくるのに対して、俺は何時でも戦える様に臨戦態勢を整える。

 

「……と、言いたいが今は残念だがそんな場合じゃ無い訳よ」

 

だがアクセスは其処で一触即発とも言える雰囲気を四散させて、頭頂部を軽く掻く仕草を見せながら、拳を繰り出してくる訳でもなく、更に話しを続けてきた。

 

「何が言いたい?」

 

警戒を解かないまま質問を投げかける俺に、アクセスはE2と戦いを繰り広げているホルダーを指差しながら答える。

 

「あんたと戦いたいのは今でも変わってないさ。でもな……俺はそれ以上にあのホルダーに腹が立ってるんだよ」

 

其処で一泊置いてからアクセスは再び語りだす。

 

「俺はな。この生まれ育った海鳴市が結構好きなんだ。この街には俺の尊敬する人や、ダチに後輩……兎に角俺にとって大切な奴等が大勢居る。思い切り暴れるのは俺も好きだけどな……こんな暴れ方は解せ無いんだよ」

 

アクセスの言葉から俺が感じ取った感情は、深い怒りと暖かい優しさだった。

 

確かにアクセス……鳥羽さんは俺が最初に感じた通り、破天荒な人で後輩であるヤスが戻ってくると知って元気を失う程に、予想外の事態を引き起こすとんでもない人だった……だけど。

 

だけどそれだけではない、多くの人を惹きつける人で、大切な人達を守りたいという熱い気持ちを持った人物なのだという事も理解出来た。

 

「そもそもあのホルダーは、俺があんたの邪魔をしたから、街をこんな結果にする羽目になったのかも知れねえ……それを今更否定する気は更々無いが、これ以上は絶対に許せないんだよ!だから俺がこんな事を言えた義理じゃねえが……あのホルダーを倒すのに手を貸してくれ!!!」

 

アクセスの言葉は、俺に対して都合の良い言い訳にすらならない頼みだった。

 

非常時にも関わらず戦いを挑み、その結果に起こった事態への謝罪の言葉すら述べる事をしない……

 

ふざけるなと怒鳴っていてもおかしくない状況だったが……俺はアクセスを……鳥羽さんという人物がどんな人なのかを少しだけ理解出来た気がして……

 

何故か憎めなくて、気が付けばその理不尽な頼みに俺は首を縦に振り、肯定の返事を返していた。

 

俺と鳥羽さんは性格も考え方も違うが、唯一共通点と呼べる部分が一つだけあるのかも知れない。

 

手にしたこの力で大切な人達を守りたいという覚悟。

 

その気持ちがあるのなら……

 

俺と鳥羽さんは例え戦う立場にあったとしても、共に戦う事も出来る正真正銘の仮面ライダーなのだ。

 

「……そうさ。こんな悪夢は俺が、俺達仮面ライダーが終わらせる」

 

ホルダーに破壊された街を視界に映しながら呟いた俺は、先程まで対峙していたアクセスと並び立ち、同時にホルダーに向かって駆け出していく。

 

「「はあああああああ!!!」」

 

E2の射撃で怯むホルダーに対して俺とアクセスが同時に拳を叩き込む。

 

『マスター先程の現象をワタシなりに解析してみたのだが聞いてくれるか?』

 

怒涛の攻撃を続ける最中に、ベルトからメカ犬の声が聞こえてくる。

 

「何か分ったのか?」

 

『うむ。先程のアクセスの攻撃を見ているのであれば、マスターも薄々気付いているとは思うが、このまま戦っていても暴走プログラムを完全に素体と分離させる事は恐らく無理だろう』

 

「ああ。多分そうだろうとは思ってた」

 

他の二人もその事は気付いているだろう。

 

だからこそ敢えて率先して止めを刺そうとはせず、着実にダメージを蓄積させる戦い方を続けているのだ。

 

しかしメカ犬の口振りから考えるに、この方法も有効とは言えない様である。

 

『ミルファの部屋でも話したが、今回のホルダーが持つ三つの暴走プログラムは其々が相互関係にある筈だ。例えその内の一つを破壊したとしても、他の破壊を免れたプログラムが壊したプログラムを修復してしまうのだろう』

 

「聞けば聞くほど厄介だな……」

 

『だが今のマスターならば、共に戦う仲間達が居るワタシ達ならば、勝つ事も可能だ!』

 

「そんな言い方をするって事は、何か方法があるのか?」

 

『うむ!一人では無理な方法だが、皆の力を合わせればきっと出来る』

 

自身に満ちた声のメカ犬の言葉に、俺は耳を傾ける。

 

そしてメカ犬の考えた作戦を全て聞き終えた俺は、ホルダーの胸部を思い切り蹴飛ばして僅かばかりではあるが、その作戦をE2とアクセスに伝える時間を作り出す。

 

「二人とも聞いて欲しい!」

 

俺の掛け声に反応して、E2とアクセスが駆け寄ってきた。

 

「……そんな方法で本当に倒せるんですか?」

 

「まあ、他に良い案がある訳でもないしな。やるだけやってみようじゃないの。刑事さん」

 

メカ犬から授かった作戦を伝えると、E2がその作戦が本当に有効なのかという疑問を口にするのに対して、アクセスが賛同すると共にE2に説得の言葉を投げ掛ける。

 

「……確かにそうですね。やってみましょう!」

 

数瞬の沈黙の後、最後にはE2も首を縦に振りながら肯定の意思を見せてくれた。

 

「それじゃあ話も纏まったとこで……早速行くぜ!!!」

 

アクセスの掛け声を合図に、俺達三人の仮面ライダーが目の前のホルダーを倒す為の戦いを開始する!

 

先程と同様に、俺とアクセスが再び立ち上がったホルダーに接近戦を仕掛けるが、その攻撃は陽動でありあくまで本命は別の部分にあった。

 

「まずは僕が行きます!!!」

 

俺とアクセスがホルダーと戦う位置から少し距離を置いた地点からESM03を装備したE2の声が聞こえてくる。

 

もう分っているかもしれないが、俺とアクセスがホルダーに接近戦を仕掛けたのは、E2が高い攻撃力を遠方からでも発揮する事が出来る武器を調達する為の時間稼ぎに過ぎなかったのだ。

 

『ブレイクチャージ』

 

E2が左腰から取り出したマガジンをグリップの底から装填する事により、機械的な音声を響かせながらESM03の銃口が黄色い輝きを放ち始める。

 

「二人とも避けてください!!!」

 

俺とアクセスがE2の叫びを聞くと同時に、俺達はホルダーをその場に留める為に一撃を喰らわせた直後、その場から急いで飛び退く。

 

それを合図にE2が引き金を引いたのだろう。

 

俺とアクセスの横を、黄色い光を纏った幾重もの数の弾丸の嵐が通り過ぎていく。

 

先程の一撃によって動きの阻害されていたホルダーにこの攻撃を避ける術は無く、弾丸の嵐がホルダーを巻き込み大きな爆発を引き起こす。

 

爆発の中、ホルダーから一つの暴走プログラムが分離された。

 

ただ今回は、これで倒した事には当然ならない。

 

メカ犬の作戦はここから始まるのである。

 

「今度は俺の番だな!」

 

E2の攻撃が止んだ直後、アクセスがベルトから一枚のカードを引き抜きながら宣言した。

 

『リンクチャージ』

 

アクセスが取り出したカードには以前に見たカードとは違い、アクセスの右腕部分と思われるイラストが描かれており、そのカードをベルトの右側に通すとカードそのものが光となって飛散すると共にベルトから電子音声が響き渡る。

 

「今度こそ終わらせるぜ!!!」

 

右腕に緑色の光を集約させながらアクセスは、未だ爆発の影響が残っているホルダーが居る地点に向かって突貫していく。

 

「ライダーパンチ!」

 

アクセスの放った必殺の拳が、見事にホルダーを捉えて今一度大きな爆発を引き起こした。

 

その爆発の最中、二つめの暴走プログラムがホルダーから分離される。

 

メカ犬の作戦とはこういうものだった。

 

今回のホルダーは三つの暴走プログラムを有しており、例えその内の一つを破壊したとしても、残りの暴走プログラムがすぐさま修復してしまい意味を成さない。

 

だが一つだけその鉄壁とも言える再生能力を覆す方法があったのだ。

 

それはあまりにもシンプルな方法だった。

 

必殺の一撃でホルダーから分離させる事が出来る暴走プログラムはただ一つ。

 

ならばその結果を連鎖的に引き起こせば良い。

 

つまり俺達三人の仮面ライダーがホルダーに対して連続で必殺の一撃を叩き込むというものだった。

 

その作戦は一人ではきっと不可能だっただろう。

 

共に戦う者達が集まったからこそ、成立した作戦なのだ。

 

俺は二度目の爆発を引き起こすホルダーを見据えながら、ベルトに嵌め込まれたタッチノートを引き抜く。

 

タッチノートを引き抜いた俺は全体図を表示させて右足をタッチして、再びタッチノートをベルトの中央に差し込む。

 

『ポイントチャージ』

 

ベルトから響く音声と共に、発生した光が銀のラインを伝い右足へと集約される。

 

「こいつで決めるぜ」

 

俺は姿勢を低く身構えて、両足に力を込めて大きく跳躍した。

 

そして俺は輝く右足を前に突き出して、必殺の一撃を放つ。

 

「ライダーキック」

 

E2、アクセスに続き放たれた俺の一撃は、見事にホルダーを捉えて三度目の大きな爆発を引き起こした。

 

その爆発と同時に三つ目の暴走プログラムが分離して跡形も無くその形を消失させ、ホルダーの姿も元の人間である見知らぬ若い男性の姿へと変わる。

 

それはメカ犬の作戦が、成功したという事を示していた。

 

感慨に耽る暇も無く、男性の体内から淡い光の玉が抜け出していく。

 

「逃がさないわよ!!!」

 

その光の玉、試練の光の出現に対して臨戦態勢を整えていたミルファが、誰よりも早くその光へと駆け寄り、手に持っていた杖を振るう事で、試練の光を完全無へと返す。

 

「お疲れミルファ」

 

「あんた程じゃないけどね。それに今回も分身体の方だったみたいだし……また最初から振り出しだわ」

 

労いの言葉を投げ掛けた俺に対して、ミルファは瞳を細めながら笑顔で返答するが、最後は少し憂鬱とした溜息を吐き出した。

 

まあ、今回も本体では無かったのだから、ミルファが落胆する気持ちも分らない訳ではない。

 

取り敢えずこれで今回の事件は一件落着と言いたいところだが……

 

現在俺の目の前には、アクセスが佇んでいる。

 

ホルダーとの戦いでは共に協力して戦ったが、彼が俺との戦いを諦めた訳では無い。

 

利害を一致させていたホルダーを倒した今、アクセスが俺との戦いを止める理由は無い筈なのだから。

 

「さてと。それじゃあ仕切り直して勝負と行きますか!」

 

俺は宣戦布告とも言える言葉に再び身構えるが……

 

「……と言いたいところだが、今回はあんたに無茶な頼みを聞いて貰っちまったからな。借りのある相手に手を上げるのは俺の主義じゃねえ」

 

両手を大きく広げながら、オーバーなリアクションでそう言うと、アクセスは俺に背を向けてこの場から歩き出す。

 

「だから借りを返すまで、あんたとの勝負はお預けだ。借りを返したら、今度こそ心置きなくやろうぜ!」

 

最後に背中越しに手を振りながら、アクセスは去って行った。

 

『仮面ライダーアクセスか……どうにも一筋縄では行かない人物の様だな』

 

去っていくアクセスの背中を見ながら呟いたメカ犬の言葉に、俺は静かに頷き肯定の意思を示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう!今日こそ一勝負しようぜ板橋!」

 

「だから勝負はしませんって……」

 

利害の一致から三人で協力して戦ったあの日から一週間が経過したが、あれからほぼ毎日翠屋を訪れては同じ言葉を繰り出す鳥羽さんに対して、アルバイト中の俺は既に決まり文句となりつつある対応をしながら最後に溜息を零す。

 

「はは!つれないねえ。まあ、良いさ。何時もの頼むぜ」

 

早くも常連客と化した鳥羽さんの注文に対応しながら、俺は再び溜息を吐く。

 

ここ一週間でほぼ毎日何かしらの形で鳥羽さんと関わる機会があって分ったのだが、この人は基本的に何に対してもパワフルなのだ。

 

しかも本人では無く、周囲の人物が必要以上に疲れるタイプのなんとも傍迷惑なタイプのパワフルなのである。

 

その認識を改めて得た事で、最近ヤスの元気が無くなった理由を切実に理解出来た。

 

しかもその人物が正体を知らないとはいえ、俺を狙っているとなれば、此方の疲れは倍増する事請け合いだ。

 

「……まあ、何とかなるか」

 

俺は誰にも聞こえない様な小さな声で呟く。

 

日々疲れと心配事が増していく毎日ではあるが、今日の海鳴はそれなりに平和である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し遅れてしまったが遂に完成したな」

 

様々な機械が設置されたとある大きな開発ラボで、一人の男性が自身の作り出した傑作を目の前に歓喜の声を上げる。

 

だがその声を聞くものは誰もおらず一人の男の声と、激しいエンジン音だけがその場を満たしていた……

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