魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
『板橋家は本当に醤油が好きなのだな』
「そうか?」
母さんから頼まれたお使いからの、スーパーの帰り道。
メカ犬が買い物袋に収められた今回の戦利品である、徳用醤油のボトルを眺めながら呟いた。
確かに我が家は基本的な料理の殆どに醤油を用いるが、板橋家に限らず日本人の多くの人達が日常的に醤油の恩恵を受けていると思うのは俺だけだろうか?
そもそも人間が食べる食事を一切口にする必要の無いメカ犬に、幾ら醤油の素晴らしさを説明しても伝わらないだろうと考えた俺は、軽く流す事にして家路を急ぐ。
『そういえば、以前に彼らと出会ったのはこの場所だったな』
他愛も無い世間話をしながら歩いていると、メカ犬が懐かしそうに、視線を道から横へと逸らしながら俺に同意を求めてきた。
それに釣られて、俺もメカ犬と同じ方向に目を向けると、其処には以前にも来た事のある博物館。
「……ああ、そう言えばそうだったな」
メカ犬が何を言おうとしているのか思い至った俺は、博物館を見ながら相槌を打つ。
この場所でのメカ犬と俺が共有する思い出と言えば一つしかない。
目を閉じれば、それだけで昨日の出来事の様に思い出す事が出来る。
大変な目にはあったのも事実だが、彼らと出会えた事に後悔は無い。
もう二度と会う事は出来ないかも知れないが、叶うならば今度は厄介事を抜きにして会いたいものである。
珍しく感傷に浸っていたせいだろうか。
目を閉じてその光景を思い出していると、瞼の下に広がる俺の思い出の光景とは別に、例の電車の汽笛らしき音が聞えてきた気がした。
『……マスター。目を開けた方が良いと思うぞ』
幾ら俺が彼らの大ファンだったとは言え、遂に幻聴まで聞え始めたのかと、自身の頭を真剣に疑い始めたところで、足元に居たメカ犬に声を掛けられる。
「ん?どうしたんだ……」
メカ犬の声に反応して目を開けた俺は、目の前に広がる光景に我が目を疑い、まるで目の前の博物館に展示されている彫刻の様に固まってしまう。
まず俺が幻聴だと思っていた汽笛の件についてだが、訂正しなければならない。
その汽笛は幻聴等という曖昧な妄言では無く、俺とメカ犬の目の前に純然と存在する現実の物体が、その汽笛を鳴らしていたのである。
箱状の白・黒・赤三色ボディーが幾つも連結されており、その一番先頭の頭部部分は桃を二つに割ったかの様なデザイン。
その形状は何であるかと問われれば、電車の一言に尽きる。
だが一般的な電車のそれとは、目の前の電車は一線を画していた。
電車とは本来レールの上を走るものだ。
この電車も確かにレールの上を走っている事に変わりは無いのだが、空中で前方に出現し続けるレールの上を走り、自由自在に動く電車など他に例があるであろうか?
そして俺とメカ犬は、そんな型破りな電車の存在を幸か不幸か良く知っている。
「何でデンライナーが!?」
俺はその電車の名と共に驚愕の声を上げた。
確かに今の今まで電王メンバーの皆を思い出していたのは認めるが、別に呼んだ訳では無い。
だとすれば、目の前に存在するこのデンライナーは俺の妄想が生んだ産物だという可能性も無くは無いが、一緒に居るメカ犬にも見えている様なので、その可能性は低いだろう。
唐突なデンライナーの出現に、戸惑い続ける中、事態は更なる進展を見せる。
聞えたのは大きな爆発音。
それはデンライナーの内部から響き、その直後デンライナーの中腹のボディーに大穴が開くと共に、中から何かが表に飛び出して地面を転がっていく。
その転がっていく何かを見た俺は、更なる衝撃を受ける。
全体的に黒を色調としたアンダースーツに、白い篭手を着けたかの様な両手足。
そして身体の中心を縦に一本だけ流れる、電車の線路を彷彿とさせる独特な姿。
地面に叩き付けられたダメージからか、まだ立ち上がれないで居る彼の下へと、俺は急いで駆け出していく。
「良太郎君!?」
その姿は仮面ライダー電王。
今の姿は電王の中でも変身者である良太郎君が他のイマジン達の力を借りずに変身する、プラットフォームと呼ばれる姿だ。
「大丈夫!?」
『しっかりするんだ』
俺とメカ犬は急いで良太郎君が変身していると思われる電王の下駆けつけて、安否を確認した。
「き、君達は……」
呼び掛けに反応した電王が、よろめきながらも俺達を見て小さく声を零す。
この状況において、まずは何から聞くべきか迷っていると、まるでその思考を意図的に中断させるかの如く、先程の電王が飛び出てきた穴から、再び何者かが飛び出して来た。
「はっはー!電王も噂程じゃねえなあ~」
バケツの様な銀の頭に赤いゴーグルを思わせる眼に全体的に青と銀を混合させた様な全身。
その手には銀の鋭い鉤爪と注射針を思わせる突起。
その異形が、俺達を……正確には電王を見て嘲笑う。
「あれは……イマジンか!」
俺は奴の姿を見て断言する。
確か電王のTVシリーズでも、多くの出番があった敵で、記述的にはモールイマジンと呼ばれていた筈だ。
個体数が多く、一体ずつ性格が異なるらしいが、目の前の奴はその言動からかなり好戦的だと思われる。
「くっ……」
電王がイマジンに身構える為に立ち上がろうとするが、かなりのダメージを受けているのか、今にも倒れそうだ。
俺はそんな電王とイマジンを隔てる壁の如く間に立ち、ズボンのポケットからタッチノートを取り出す。
「何だか色々と事情があるみたいだけど、話は後にしよう。取り敢えずここからは俺達に任せて良太郎君」
その返答に答えを返す事すら無く、両膝を崩す電王。
どうやらイマジンとの戦いで、体力の殆どを消耗しきっていたらしい。
何故モモさん達の力を借りずに、良太郎君が一人で戦うという状況になっていたのかは分からないが、今やるべき事は一つ。
「行くぞメカ犬!」
『うむ!』
俺はメカ犬の返事を確認したから、タッチノートのボタンを押す。
『バックルモード』
鳴り響く音声と共に、傍に居たメカ犬がベルトへと変形して、俺の腹部へと巻きつく。
「変身」
力ある言葉を紡ぎながら、タッチノートをベルト中央の窪みへと差し込む。
『アップロード』
ベルトを中心に眩い光が俺の全身を包み、少年の姿から一人の戦士へと変貌を遂げる。
「あ~ん?何だお前?」
シードへ変身した俺を見て、イマジンが疑問の声を投げ掛ける。
「俺はシード。仮面ライダーシードだ。ここからは電王に代わって俺が相手だ!」
「はっ!邪魔するなら誰だろうが容赦しねえぞ!!!」
聞かれたので名乗ったが、イマジンは当然ながら礼の一言を述べる筈も無く、俺に向かって駆け出してきた。
『用心しろマスター』
「分かってるさ!」
ベルトから聞えるメカ犬の注意を促す言葉に、返事を返しながら斬りかかるイマジンの鉤爪を回避する。
「ちょこまかとウザイんだよ!!!」
連続で繰り返される攻撃を回避し続ける中、怒りが沸点に達したのかイマジンが怒りの咆哮を上げる。
俺は繰り返す回避行動と共に、観察し続けたイマジンの鉤爪が振り下ろされるタイミングを見計らってその手を掴む。
「はっ!」
イマジンの身動きを止める事に成功した俺は、ここまでのお返しとばかりに、何度も脇腹を蹴り込む。
大分イマジンが弱ったのを頃合にして掴んでいた腕を放した俺は、最後の仕上げに強烈な中段蹴りで、イマジンを後方へと吹き飛ばした。
『今だマスター!』
「ああ!」
俺はメカ犬の言葉に頷きながら、タッチノートをベルトから抜き出して開き、全体図を表示させ右足部分をタッチして、再びタッチノートをベルトへ差し込む。
『ポイントチャージ』
ベルトから発生する光が銀のラインを伝い、右足へと集約される。
「こいつで決めるぜ」
俺は体勢を低く構えて、一気に飛び上がり光が集約された右足をイマジンに向けて突き出す。
「ライダーキック」
放たれた必殺の一撃がイマジンを捉えて、断末魔と共に大きな爆発を引き起こし無へと帰る。
イマジンの最後を見届けた俺は、変身を解きこの訳の分からない現状を幾分かは知っているであろう電王の下へと急ぐ。
何かが起こっているという予感はあったが、現時点ではこの事件があんなにも大きな大事件に発展するとは夢にも思ってはいなかった……