魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
晴れた日の早朝はとても清々しいものだと俺は思う。
空気は澄んでるし、朝日を浴びると太陽から元気を分けて貰えてる気がして来る。
俺の朝は早い。
前世の頃から朝型人間だった事も有るし、今の俺は一応小学生なので夜更かしする訳にもいかないのである。
すると自然と就寝時間も早くなり、それに比例して起床時間も早まるのだ。
今日もその例に漏れず俺は朝早くに目を覚ました。
布団から這い出た俺は、部屋のカーテンをあけて朝日を全身に浴びながら大きく伸びをする。
朝の日差しで眠気を覚まし、軽く身支度を整えた後、俺は部屋を出てリビングに向かった。
リビングに着くと食欲を刺激する美味しそうな匂いが漂ってきた。
我が家のキッチンは開放型でリビングと繋がっているので誰かが料理をしていればすぐに分かる様になっている。
そしてこの家で料理をするのは大体決まっている。
「おはよう母さん」
俺が挨拶をするとお玉を持った母が顔を覗かせた。
「おはよう純。今、純の分の朝ご飯準備するから待っててね」
「うん」
台所に母さんが戻っていくのを確認した俺は、朝食の準備が出来るのを待つ為に食卓に向かった。
食卓には既に板橋家の住人が、台所にいる母さん以外全員揃っていた。
「おはよう父さん」
まずは一家の大黒柱である父に挨拶をする。
父さんは俺の周りの人達の中で、一番普通の人と言える存在だ。
特にイケメンな顔でもないし、お隣さんみたいに特殊能力を兼ね備えている訳でもない、善良な会社員なのである。
「おはよう。今日も早起きだな純は」
新聞の経済面を見ていた父さんは俺の挨拶を聞くと、新聞から顔を上げて俺に挨拶を返してきた。
「まあね」
俺は適当に相槌を打ちながら、椅子に座る。
「メカ犬もおはよ…如何したんだよそれ?」
先程まで父さんに視線を向けていたので気付かなかったのだが、メカ犬の様子が何時もと違ったのだ。
何と言うか…
普段のメカ犬は輝く程のメタリックシルバーで光沢を放っているのだが、それが所々焦げている、もしくは煤塗れと言える状態になっていた。
「おはようマスター。これには理由があるのだ」
見た目がやけに黒々となったメカ犬が、何故自分がこうなったのかを俺に説明してきた。
何でもメカ犬は今日も朝早くから母さんのお手伝いをしていたらしい。
メカ犬が毎日そんな事をしていたのを俺が知ったのは最近の事だ。
それにメカ犬が何をどうやってお手伝いしているのかは今回は割愛しておく事にしよう。
兎に角お手伝いを終えたメカ犬は、何時もの報酬として自分の朝ご飯である、乾電池を母さんから貰ったそうだ。
メカ犬が言うには、本来は自分の中に発電装置を持っているから、外部からのエネルギー補給は必要無いそうなのだが、俺達人間で言う所の味覚の様な物を持ち合わせており、電気を嗜好品として好むらしい。
板橋家では朝は全員揃ってから食事をする事が殆どなのでメカ犬もそれに合わせて、家族の一員として食事に参加している。
ただ今日のメカ犬は朝早くから、情報屋のジャックと会う約束をしていた為、家族全員が揃うのを待たずに、先に食事を始めたそうだ。
そこに起き抜けの父さんがやって来た。
父さんは癖なのか、それとも習慣なのか、起きるとすぐに玄関ポストに朝刊を取りに行き、台所でコップに一杯の水を入れてからリビングにやって来て、それを飲みながら新聞に目を通す事でようやく起きるのだ。
それまでは何処かふらついた足取りをしているので、傍から見ていると何処か危ないと思えてしまう。
今日もその例に漏れず父さんはふらつきながら、メカ犬が食事をしているリビングにやって来たのだ。
メカ犬は食事の際に発光現象を引き起こす。
そんな事を寝ぼけている人の目の前でやったとしたら、どうなるだろうか。
寝ぼけていた父さんは突然の激しい光に目が眩み、唯でさえふらついている足取りは、当然の如くバランスを崩す。
此処で更に不運が重なった。
バランスを崩した父さんは、思わず手にしていたコップを手放してしまったのだ。
しかも落とすのではなく、光を遮る為に咄嗟に腕を顔に持って行った為に投げる様な形になってしまった。
水入りのコップは放物線をを描きながら飛んでいった。
そして、その着地点に居たのは食事中のメカ犬だった。
「…つまり水浸しになって、全身に電気が感電してそんな有様になったと?」
『うむ。その通りだマスター』
幸いにもメカ犬の身体自体は無事だったらしく、俺は食卓に有った布巾でメカ犬の煤を落としてやりながら、こうなった経緯を聞いた。
「本当にすまなかったなメカ君」
俺が来るまでに何度も謝ったそうなのだが、父さんは改めてメカ犬に謝罪の言葉を口にした。
『あまり気に病まないでくれ父殿。ワタシはこの通り何とも無い』
今でこそ普通に会話をしている父さんとメカ犬だが、初対面の時は大変だった。
何せ初めてメカ犬と会話を交わした事で父さんはショックで気絶してしまったのだ。
有る意味これが当たり前の反応だと俺はその時思った。
だがその翌日には今の様な関係になっていた。
俺の知らない間に、二人に何があったんだろうか?
「そう言ってもらえると助かるよ。所で純。今日は確か学校帰りに高町さんの所の翠屋に寄るんだって?」
「うん。そうだよ父さん」
この話は此処までといった所だろうか。
父さんは話題を変える為か、俺に話を振ってきた。
普段ならば俺は学校帰りに寄り道等せずに一度家に帰宅するのだが、今日は特別だった。
何と今日は翠屋が雑誌の取材を受けるのである。
海鳴ジャーナルという会社が発行している雑誌、月間ウミナリの喫茶店特集記事に是非載せたいという事で、士郎さん達に取材依頼が来たのだ。
なのはちゃんの話では、取材を受ける時間が俺達の学校が終わってから向かっても十分間に合いそうだった事と、面白そうだった事も有り皆で見学する事になったのである。
俺は最初邪魔になってしまうんじゃないかと思ったのだが、インタビューコーナーで俺達の様なお客さんの意見を聞く事もあるそうだから、寧ろ来て貰いたいと士郎さん達が言っていたそうなので、問題無いらしい。
暫く親子の語らいと言う世間話をした後、父さんは読みかけの新聞の経済面を再び読み始めた。
俺も話しながらメカ犬の煤を落としていたのを、他にやることも無かったので本格的にやり始める事にした。
真面目にやるとそんなに時間は掛からず、程無くしてメカ犬は元の輝くシルバーボディを取り戻した。
「ふう~。終わったぞメカ犬」
「助かったぞマスター。そういえば、後で良いのだがマスターに話しておかなければいけない事が有るのだ」
「話したい事?」
『うむ』
ここで話さないって事は多分ホルダー関係の事なのだろう。
メカ犬の様子を見るに、別段慌てているわけでも無いので、急を要する事態では無さそうだ。
「分かった。今夜にでも聞かせてくれよ」
『了解した。それではワタシはこれから用事が有るので先に失礼するぞ』
メカ犬はそう言うと玄関に向かって行った。
「ああ。行ってらっしゃい」
『うむ』
俺に短く返事を返したメカ犬は、今度こそリビングを出て玄関先へと姿を消した。
その後何時も通りに家族で食事を済ませた俺は、今も夢の中に居るであろうお隣の幼馴染を起こす為に高町宅に向かった。
案の定、なのはちゃんは何時も通り、幸せそうな寝顔を浮かべながら布団の中で丸まっていた。
もはや俺にとって平日のライフワークとなっている。
高町宅にて眠っているなのはちゃんを起こすというミッションを今日も無事やり遂げた俺は、なのはちゃんを連れて、学校に向かった。
今日もまた俺が先生に点呼の際に呼び忘れられる以外は、特に変わった事も無く放課後を迎えた。
当初の予定通り、俺達四人は翠屋に取材見学に行く事となった。
翠屋に着いた俺達を、士郎さんと桃子さんがいらっしゃいと言って出迎えてくれた。
二人が通常通りに仕事をしている事から推測するに、雑誌の取材はまだ始まっていない様だ。
なのはちゃんが取材の事を桃子さんに聞いた所、少し前に連絡があったそうで、後十分程したらやって来るらしい。
待つ事約十分後。
翠屋の扉が開き一人の女性がやって来た。
首から提げられた一眼レフカメラが印象的だった。
見た感じの歳は二十歳前半だろうか。
髪型はショートカットで快活なイメージが持てる。
絶世のとは言えないまでもスポーティーな美女と分類できるであろう、健康美に溢れた魅力を自然と纏っている。
それを如実に示しているのは、女性の表情だ。
陰りの無い爽やかな笑顔が、そのイメージを更に揺ぎ無い物にしている。
女性は翠屋に入ると、声を上げた。
「どうも、海鳴ジャーナルの者です。今日は宜しくお願いしますね」
どうやらこの女性が取材に来た記者の人だった様だ。
取材は滞り無く進んでいった。
士郎さんと桃子さんに話を聞きながら記者の女性はメモを取っていく。
話を終えた後は、店内を首から提げたカメラで取り始めた。
何度もシャッターを押して満足できる写真が取れたのか、それが終わると、女性記者さんは次に店内に居るお客さんに、翠屋についてのインタビューを開始した。
数人のお客さんに質問をした後、女性記者さんは俺達の座るテーブルの前にやって来た。
「初めましてお嬢さん達。私は海鳴ジャーナルの風間恵理(かざまえり)って言います。恵理って名前で呼んでくれて良いからね。少しお話しても良いかな?」
そう言って簡単な自己紹介をした女性記者の恵理さんに、俺達も簡単に自己紹介をする事にした。
「私はアリサ・バニングスよ。宜しくね。何でも聞いてくれて良いわよ」
「私は月村すずかです。宜しくお願いします」
「俺は板橋純です。どうぞ聞きたいことがあれば遠慮無く言って下さい」
「私は高町なのはです。この翠屋をやっているお父さんとお母さんの娘です。どうぞ宜しくお願いします」
俺達の自己紹介というよりも、なのはちゃんの自己紹介に恵理さんが反応した。
「あなたが桃子さん達が言っていた娘さんね。それにお友達のお話も聞いてるわよ」
恵理さんは仕事柄か、元々の性格なのか、とても気さくな人で、インタビューの話はとても弾んだ。
「それじゃ私は次の人の話を聞きにいくわね。楽しかったわよ皆」
俺達へのインタビューを終えた恵理さんは、次の人にインタビューをする為にそう言って隣の席に去って行った。
俺達は頑張ってくださいねといった意味合いの言葉を、其々に恵理さんの背中に投げかけた。
暫くして、一通りの席を回り終えた恵理さんは、再び士郎さんと桃子さんに話しかけていた。
幾つかの言葉を交わし恵理さんは一礼すると、今度は俺達の席にやって来た。
「ご一緒して良いかしら?」
恵理さんは俺達にそんな事を聞いてきた。
特に断る理由も無いので俺は、どうぞと言って空いている席に座る様に促した。
「取材はもう終わったんですか?」
席に座った恵理さんになのはちゃんが質問を投げかけた。
「ええ。最高の記事にするから楽しみにしててね」
恵理さんは笑顔で答えた。
「所で、何で私達と合席しようとしたんですか?」
続けてすずかちゃんが質問をしてくる。
「折角記事にするんだもの。自分でお店の味を確かめたいじゃない。それと私は食事を出来るだけ楽しむ様に心掛ける性質なのよ。あなた達となら楽しいお話をしながら食事が出来ると思ってね?」
すずかちゃんの質問に答えた恵理さんは悪戯っ子の様に笑ってウインクをした。
席に座る前に注文を済ませていた様で、暫く世間話をしていると桃子さんが林檎のタルトと紅茶を持ってきた。
食事をしながらも会話は続き、そんな中でアリサちゃんの口からこんな質問が出た。
「恵理さんは、他にどんな記事を作ってるの?」
「色々よ。一概に括る事が出来ないくらいにね」
恵理さんはそう言うと何かを思い出した様に、そう言えば今話題の事件を調べてるのよと語りだした。
「最近この海鳴市で不思議な事件が相次いでるって知ってる?突然ビル街が植物だらけになったり犬達が商店街に襲撃してきたり、果てはお菓子が空を飛んだりね。しかも未確認情報なんだけどそれに合わせた様に人間と同じぐらいの大きさの怪物も目撃されているって話なの」
まるで幼子が母親の化粧箱を始めて開けた時の様に、瞳を輝かせながら話す恵理さん。
俺はその話を背中に大量の冷や汗を流しながら、表面上は平静を装いながら聞き続けた。
間違いなく話題の正体はホルダー達だ。
多少の噂にはなっていると思っていたし、ゴシップ的な取材はされているだろうと覚悟もしていたが、恵理さんの様な大手の会社の記者の人が興味を持っているとまでは予想してなかった。
何故かホルダー絡みでの事件で遭遇率が極めて高い美少女三人組は、この話に大層興味を持ち私達もその場に居たんですよと返しを入れた。
それを聞いた恵理さんは益々瞳を輝かせた。
「それならあなた達は見た事が有るかしら。実はね、この連続で起こる事件を影で解決している黒い超人が居るそうなのよ」
俺の背中を流れる汗の量が倍増した。
恵理さん…知ってる所か、本人があなたの目の前に居ますよ。
なのはちゃん達が揃って目を合わす。
「それってあの人だよね多分…」
「間違いないわよ。特徴も一致してるし」
「私は二回会った事が有るよ」
三人は揃って恵理さんに言った。
「「「それって仮面ライダーさんだよ」」」
「仮面ライダー?」
オウム返しで聞き返した恵理さんになのはちゃん達は、自分の知っている仮面ライダーについての説明を始めた。
「凄い、凄いわ。まさかあなた達がそんなに凄い情報を持ってるなんて思ってもいなかったわよ!」
若干興奮気味の恵理さんは仮面ライダーについての話を聞いた後一枚の写真を俺達に見せた。
「実はね、一般の人が投稿してきた写真なんだけど、これに見覚えは無いかしら?」
写真には海鳴のビジネス街の風景が写されていた。
パッと見ただの街の様子を写した風景写真なのだが、集中して見てみると、ある違和感に気付いた。
風景の右端の上部分に何かが映り込んでいるのだ。
ぼやけていて良く分からないが、白い体毛を持った何かの動物にも見える。
「これはね。今海鳴で噂になっているスカイモンキーの写真よ」
「「「「スカイモンキー?」」」」
先程とは逆に、今度は俺達が恵理さんの言葉にオウム返しをしてしまった。
「最近話題になっててね。上空から突然人間サイズの巨大なサルが降って来て、人からバックなんかの持ち物を強奪してから、また空に飛んで消えてしまうって報告が多発しているのよ」
俺達はこの事は初めて聞いたと言うと、恵理さんは特に残念そうにする訳でもなく、そっかと言って写真をポケットに入れた。
「さてと、これ以上ゆっくりしている訳にもいかないし私はそろそろ行くわね」
恵理さんはそう言って立ち上がると、楽しい御喋りだったわよと言って去って行った。
まだ解散するには早い時間なのでなのはちゃん達はもう暫く翠屋に居ると言っていたのだが、俺はこれから用事が有るからと言って翠屋を出る事にした。
用事というのは、ホルダーについての事だ。
恵理さんの話と見せてもらった写真から、確証は持てないが可能性は極めて高い。
少しでも早くこの事をメカ犬に伝えないといけないと思い俺は、今日はジャックの所に行って来ると言っていたメカ犬の言葉から、ジャックが普段から拠点にしている裏路地の空き地を目指して走り出した。
『うむ。それについての話を丁度話していたのだマスター』
裏路地に着いた俺は無事にメカ犬と合流し、翠屋で聞いた話をメカ犬に説明した。
メカ犬もジャックから似た話を聞いていた様で、説明はすぐに終わった。
しかもメカ犬がジャックから聞いた情報は更に詳しい物だった。
事件は一日に二回起こっており、どちらも夕方頃に起こるらしい。
しかも出現場所は、海鳴市のビジネス街を中心に半径約五キロの距離を時計回りに回っているそうなのだ。
『このサイクルで犯行が行われているならば、間も無く海鳴商店街にそのスカイモンキーが現れる筈だ』
情報をまとめて次の出現場所を計算したメカ犬が言った。
「一度確かめてみた方が良いな。今から行ってみるか?」
此処から距離もあまり離れていないし、今から言っても間に合いそうだったので俺はメカ犬に進言する。
『うむ』
メカ犬の肯定の言葉を確認した俺は、メカ犬と共に一路スカイモンキーがこれから現れるかも知れない商店街に向けて移動を開始した。
商店街を歩き続けながら、俺はメカ犬に話しかけた。
「なあ、商店街の可能性が高いって話だけど、商店街って結構広いぞ。もう少し場所を絞れたりしないのか?」
『これでもかなり絞り込んだ方なのだ。これより先は運を天に任せて探し続けるしかない』
俺はそのメカ犬の言葉にそうですかと返して溜息を一つ零した。
それから俺達は、まるで犯人の犯行現場を押さえる為に隠密行動をする刑事の様に、商店街を歩き続けた。
『キンキュウケイホウキンキュウケイホウキンキュウ…』
俺達の祈りが天に通じたのか、タッチノートから警報が鳴り響く。
それと時を同じくして俺達の前方から女性の悲鳴が聞こえて来た。
『近いぞマスター!』
「ああ!」
俺とメカ犬は悲鳴の聞こえてきた前方に走り出した。
辿り着いた場所には気絶したOL姿の女性とその人の持ち物なのか女性物のハンドバッグを持った人外の化け物、ホルダーが居た。
ホルダーは全身を白い体毛で覆われており、顔の部分は木彫りのサルの様な能面をしていた。
この見た目ならば噂でスカイモンキーと言われるのも納得である。
『ホルダーで間違いないぞマスター』
「見れば分かるって」
俺はメカ犬に言いながらポケットのタッチノートを取り出した。
「やるぞメカ犬!」
『OKだマスター!』
メカ犬の合意の言葉を聞き、俺はタッチノートを開きボタンを押した。
『バックルモード』
タッチノートから流れる音声と共にメカ犬が銀のベルトに変形し俺の腰に巻かれる。
「変身」
タッチノートを閉じてホルダーに掲げた俺は、仮面ライダーになるためのキーワードを放ち、ベルトの中央にタッチノートを差し込んだ。
『アップロード』
白銀の光が俺の全身を包み込み、激しい光を放つと俺の姿を脆弱な一人の小学生から、メタルブラックのボディを持った戦士の姿に変える。
「なっ!ガキが変わりやがった!?」
俺の変身を目撃したホルダーが声を上げる。
「悪さをするのは其処までにするんだな」
『盗んだ物を今すぐ持ち主に返すのだ』
俺とメカ犬は盗みを働くホルダーに正論で諭す。
「けっ嫌なこった!大体何なんだお前はよ」
ホルダーは俺に悪態を吐きながら聞いてくる。
「俺は仮面ライダーシード。お前みたいな悪党をのさばらせて置けないんでな、止めさせてもらうぞ!」
「うるせえんだよ!」
ホルダーの怒りの沸点はかなり低いらしく、いきなり飛び掛ってきた。
「はっ!」
俺は飛び掛るホルダーに上体を逸らしながら避けて、落ち際に蹴りを叩き込む。
「ぐげっ」
ホルダーはそれをまともに喰らい吹き飛ばされるが、直ぐに体制を立て直して襲い掛かってくる。
単純な素早さで言えば、このホルダーは俺よりも確実に素早いのだが、怒りで我を忘れているのか、攻撃が単調で読みやすいので、近づき様にカウンターを叩き込んで確実にダメージを与えていく。
「はあ!」
大分弱った所で俺は右のストレートを腹部に打ち込んでホルダーを吹き飛ばす。
『今だマスター!』
「ああ!」
メカ犬の言葉に頷き、タッチノートをバックルから取り出すために一瞬だけホルダーから目を離したその時だ。
「ぐはっ!?」
突然背中に衝撃が走り俺は溜まらずに倒れこむ。
何が起こったのかと後ろを向くと、先程まで目の前に倒れていた筈のホルダーが居た。
「なあ!?」
俺は驚きを隠せず驚愕の声を上げる。
ホルダーは俺に追撃を掛ける様な事もせずに黙ってかなりの跳躍で飛び去っていった。
「どうなってるんだよ一体!?」
まるで瞬間移動でもしたかの様に、ホルダーが俺の背後に一瞬で回っていたのだ。
『何だと言うのだ奴の能力は?』
メカ犬もこの一連の出来事を理解できていないらしい。
「兎に角後を追うぞ!」
俺がこの場を後にしようとしたその時だ。
脇からカメラのフラッシュの光とシャッターを押す音が聞こえてきた。
振り向いてみると其処に居たのは、カメラを持つ一人の女性。
今日喫茶翠屋で知り合ったばかりの快活な雑誌記者の恵理さんが居たのだ。
「あ、あの少しお話をしたいんですが!」
恵理さんは若干怯えた素振りを見せながらも俺に、仮面ライダーに話しかけてきた。
取り敢えず、ホルダーを追う前に恵理さんを如何にかしなくてはいけない事が半ば確定した事を、この場の雰囲気から察した俺は、如何した物かと、心の中で首を捻らせた