魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
恐竜やという喫茶店と、其処の店長であるスケさんに出会った時から、半ばそうではないかと感じていたが、彼の登場によって俺の考えは確信へと変わった。
全身を包む赤いスーツに、両サイドに広がる白いギザギザのライン。
頭部全体を覆う密着したヘルメットの形状と、目線の部分に光る黒いゴーグル部分という特徴的な姿を俺は忘れる事が出来ない。
平成の仮面ライダーがクウガから再びテレビで放送される際に、その三十分前に放送されていた特撮シリーズがある。
仮面ライダーと合わせて前世の頃の幼い俺は、このシリーズを毎週楽しみにしていたものだ。
スーパー戦隊シリーズ。
基本的に本編では一人で戦う事が多かった仮面ライダーに対して、この作品は複数のメンバーが一つのチームとなって力を合わせて巨悪と戦う事がコンセプトとなっていた。
その歴史は長く続く東映特撮シリーズでも、仮面ライダーに次いで長く、実際のシリーズ数で数えれば途中でテレビ放送が一時期終了していた仮面ライダーよりも多いのは間違い無いだろう。
そして俺達の目の前には今、そのシリーズの中の一つ、爆竜戦隊アバレンジャーの一人。
アバレッドが居る訳なのだが……
「俺、参上!!!」
別の意味で聞き覚えのある声で両手を広げながらポーズを決めるアバレッドの姿が其処には在った……
「言っておくが俺は最初から最後までクライマックスだぜえええええええ!!!」
更にアバレッドは一振りの剣を片手に、市街で暴れ続けるイマジン達に向かって突貫していく。
ちなみにアバレンジャーのレッド、ブルー、イエローの三人には剣と銃の両方の機能を持つアバレイザーという共通装備が存在するのだが、アバレッドが持っている剣は、見るからにそれでは無く、前世の俺でもアバレンジャーの劇中では一度も見た事の無い形をしていた。
だがそれはアバレンジャーの中というだけの話であり、他の作品では結構な頻度で出ていた記憶がある。
つまり俺が何を言いたいのかというと……
「あの赤いスーツの人の中身って……どう見ても先輩だよね?」
俺が思った事を少し離れた位置で、イマジン数体を相手取っていたロッドフォームの電王が首を傾げながら呟く。
先程からのあの言動と、手にしている赤いカラーリングに歪な刃をした剣、モモタロスォードを武器にしている事から答えは火を見るより明らかだ。
あのアバレッドの中身はモモさんで間違いない!
『マスター。あの赤い者に似た言動をしている者もライダーなのか?』
その現状に興味を持ったのか、戦闘中にも関わらずベルト状のメカ犬から、そんな質問が零れる。
「いや、ライダーでは無いんだけどな。ある意味では切っても切れない仲というか……」
確かにライダーでは無いと言ってしまえばそれまでなのだが、スーパー戦隊を一言で説明するのは難しく、俺は襲い掛かるイマジンを押さえ付けながら返事を濁す。
まあ、何にしても探していた一人であるモモさんが見つかったという事と、この世界がアバレンジャーの存在する世界だという事が判明しただけでも大した収穫である。
ただ気になる事は、モモさん達を巻き込んでまでこの世界にやってきたメアというイマジンの目的についてだ。
ここがスーパー戦隊が存在する世界という事は、何が存在していても不思議では無くなってくる。
モモさん達に追い詰められて苦し紛れに開いた次元の裂け目が、偶然にもここに繋がっていたのか、それともその野望とやらを叶える為に、狙ってこの世界に来たのか……
その違いでメアというイマジンに対しての警戒レベルはかなり変わってくる。
出来れば前者の方であってくれと願う俺だったが、その願いは次の一瞬に脆くも崩れ去ってしまう事となった。
「ここまで僕を追って来るなんて、電王っていうのは噂以上にしつこいみたいですね?」
何時から其処に居たのか、戦いの場に突如として現れた一体の異形が、溜息混じりに言葉を紡ぐ。
その姿はとても奇抜なものだった。
全身に黒、赤、白の三色を使った横の細いラインが走っており、その頭部には同じく三色で統一された二股に分かれた帽子の様な被り物を被っている様に見える。
明らかに人間には思えない、黒く大きな瞳と鋭い牙を持っていたが、一番何に近いと聞かれれば、俺は迷い無く奇術師かピエロだと答える風貌だ。
「それに……君がアリシアの言っていた純……今の姿はシードって言えば良いのですかな?」
電王に一瞥をくれた後、今度は俺を値踏みするかの様に眺めながら、その異形は右手を顎に添えて考える素振りを見せながら言い放つ。
「アリシアちゃんを知っているって事は……まさかこいつが!?」
その異形の放つ言動に対して、俺は一つの考えへと行き着く。
「そう。こいつが僕達をこの世界に飛ばした張本人だよ!」
ロッドモードのデンガッシャーを巧みに振り回して、自身の周囲を囲むイマジン達を蹴散らしながら電王が俺の言葉が正解である事を示す。
「ああ、このけったいなイマジンで間違い無いわ!」
その言葉に続き、すぐ近くでキンタロスアックスでイマジンを薙ぎ払っていたキンさんも同意を示した。
「お初にお目に掛かる方達も居る様なので、改めて御挨拶をさせていただきましょう。僕の名前はメア。以後お見知り置きを……」
その異形のイマジン、メアは戦う相手に対してするとは思えない丁寧な口調で名乗ると、片腕を背に回しながら反対の腕を前に回して、深々とお辞儀をする。
「はっ!何がお見知り置きをだ!」
メアの言動が癪に障ったのか、アバレッドの姿をしたモモさんが怒号を放ちながら周囲のイマジン達を蹴散らして一目散にメアへと突貫していく。
メアの目の前に到達すると同時にアバレッドの姿をしたモモさんが、モモタロスォードで斬りつけるがその攻撃がメアの元へと届く事は叶わなかった。
なんと信じられない事に、モモさんが攻撃を加えようとした瞬間に、メアが四体に分裂して四方へと散ったのである。
「「「「残念ですが僕も忙しい身なので、貴方達に構っている暇は無いのですよ。御縁が有りましたら、また後程にお会い致しましょう」」」」
どういった仕組みなのか、四方から同時に四つのメアの声が俺達の鼓膜を激しく振るわせる。
「野郎!!!勝手に増えんじゃねえ!卑怯だぞ!!!」
「まあまあ先輩。ちょっと落ち着いて」
「そうやでモモの字。頭に血が上っとったら、相手の思う壺や」
何処かずれた怒り方をするモモさんをロッドフォームの電王とキンさんが肩を叩きながら宥める。
「でもよ……って亀に熊!?お前ら何時から其処に居たんだよ!?」
案の定敵を目の前にして、今まで俺達の存在に気付いていなかったのであろうモモさんが、大きなリアクションと共に驚く。
「今更気付いたんかい」
「先輩らしいって言えばらしいけどね」
そんなモモさんに二人は呆れ混じりに溜息を吐く。
「「「「ふふ。お仲間とも無事に合流出来た様ですし、僕は今度こそこれで失礼させていただきますよ」」」」
そんなモモさん達の様子を見ていたメアは上品な笑いと共にそう告げると、後を追う間も無く四方へと散り散りに飛び去ってしまう。
更に俺達の追撃を拒む様に、その場に居たイマジン達が俺達の周囲を取り囲んだ。
しかもその数は、先程までとは比べる必要も無い位に増えている。
恐らくはメアが新たに呼び出したと考えて間違い無いだろう。
メアをこのまま逃がしてしまうのは不本意ではあるが、今から追おうにも既に奴の姿は何処にも見えない。
それに何より、目の前のこのイマジン達を放っておく訳に行かないのも事実だ。
「皆さん!今はこのイマジン達をどうにかしましょう!!!」
再会の喜びからメアの逃走を許してしまった事態に驚く面々に俺は声を大にして呼び掛ける。
「ああ!!!お前は確か前にあった銀色の犬と小僧じゃねえか!何でこんな所に居るんだ?」
恐らく今更になって俺の存在に気付いたのだろう。
モモさんが再び驚きの声を上げる。
だがそれがいけなかったのであろうか。
モモさんが気を取られていたその隙に、後ろから迫っていた一体のイマジンが、モモさんの背部を思い切り蹴り飛ばした。
「のわっ!?」
当たり所がよほど良かったのか、イマジンに蹴りつけられると同時に、アバレッドの中に入っていたモモさん本体が飛び出して地面を転がっていく。
その光景は、緊迫する筈の戦闘中だというにも関わらず何処かシュールに見えた。
「痛たた……もう!酷いじゃないですかモモさん!俺の身体を勝手に使って暴れたりして!」
モモさんが抜け出した直後、起き上がったアバレッドが、未だ陸に上げられた魚の様に地面に転がっているモモさんに対して抗議の声を上げた。
その声は、今度こそ俺の記憶にある通りの声そのものである。
「悪い悪い。近くにイマジンの匂いがしたもんだからよ。おお……腰打ったかなこれ……」
アバレッドの声に、モモさんは腰を抑えながら立ち上がり、謝罪の言葉を口にした。
どうやら二人の口振りからして知り合いの様だが、もしかしてスケさんが言っていた海外からこっちにやってくる知り合いっていうのは……
「まあ、モモさんが反省してるなら良いですけど、何なんですかこいつ等は?」
モモさんの謝罪を溜息混じりに受け取った後、アバレッドは俺達を取り囲み、先程の蹴りを皮切りにして次々と襲い掛かってくるイマジン達の攻撃を捌きながら質問を投げ掛ける。
「細かいことは気にすんな!こいつ等が悪い奴らだって覚えてりゃそれで十分だ!」
腰を摩りながらもモモタロスォードを拾い上げながらあまりにもアバウトな説明をするモモさんではあったが、間違っていない上にこの様な忙しない状況の中では、中々適切な回答と言えるかもしれない。
「なるほど。それなら遠慮はいらないですね!」
アバレッドの方もその単純明快な答えに、頷きながら正面から向かってきたイマジンに対して拳を繰り出す。
『数が多いな……マスターここは一気に攻めるぞ!』
「分かった!」
俺はベルトから聞えるメカ犬の言葉に頷きながら、一端イマジン達と距離を取って、ベルトの右側をスライドさせる。
迷う事無く俺はスライドさせた事で現れた青いボタンと黄色ボタンを連続で押していく。
『サーチフォルム』
流れる音声と呼応する様に、メタルブラックのボディーは鮮やかなスカイブルーへと染まる。
『サーチバレット』
更に続け様に流れた音声の直後、このサーチフォルムの専用武器であるサーチバレットが俺の手に握られる。
俺は素早く銃身をイマジン達に向けて引き金を引くと、銃口から発射された幾つもの光弾がイマジン達に当たった瞬間に小規模な爆発を起こす。
「そろそろ交代やで!」
サーチバレットで俺がイマジン達を狙い撃つ中で、キンさんが叫ぶと同時に、ロッドフォームの電王へと飛び込んでその身体へと吸い込まれる様に消えてしまう。
「ちょっとキンちゃん!?」
それに呼応する様に外へと弾き出されて実体化したウラさんが、抗議の声を上げるが襲い掛かってきたイマジンの相手をするしか無く、それ以上抗議する事は出来ずその場から離れざるおえなくなってしまう。
『アックスフォーム』
電王のベルトから流れる音声と共に、一度離れて再び展開された装甲が先程とは違う形でもう一度、電王に装着されていく。
今度は全体的に黄色が押し出された見た目と、仮面から飛び出る刃物の様な特徴的なその姿は間違い無く、キンさんが主体となる電王のアックスフォームだった。
「俺の強さは泣けるで!」
片手を自身の顎に当てて首を捻りつつ、お決まりの台詞を言うと電王はロッドモードとなっていたデンガッシャーを組み替えて、そのフォームに見合ったアックスモードへと変換させると、近くに居たイマジンに対して真上から力一杯斬りつけた。
「皆さん!そろそろ止めと行きましょう!!!」
戦いが暫く続いた後、アバレッドの声を合図に俺と電王が其々に準備を開始する。
『アタックチャージ』
『フルチャージ』
其々の武器にエネルギーを集約された俺達は、迫り来るイマジン達に必殺の一撃をお見舞いする。
「ガトリングブースト」
掛け声と共に引き金を引くと、輝くサーチバレットの銃口から数珠繋ぎに無数の光弾が発射されて、複数のイマジン達を巻き込んで大きな爆発を引き起こした。
その少し離れた位置では、円を描く様に電王がアックスモードとなった輝くデンガッシャーを振り回して次々とイマジンを爆散させていく。
「ダイナミックチョップ!」
そして最後に技名を言うのは最早お約束と言えるだろう。
「ティラノロッド!」
更に残ったイマジン達をアバレッドの武器であるティラノロッドのティラノサウルスの顔が模された先端の口で残さず噛み砕いた。
こうしてひとまずではあるが、この場での戦いを無事に終えた俺達は、詳しい話をする為に恐竜やへと急いだ。