魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
ヤツデンワニが俺達に見せてきた物はとある裸子植物の種子と形が酷似しているが、その両手からはみ出る程の大きさを誇っていた。
「それってまさか!?」
それを間近で見ていた凌駕さんが、戦慄の声を漏らす。
「はい。銀杏どうえっす!」
ヤツデンワニは、平然と言い放つが、勿論これがただの銀杏である訳が無いのは明白だ。
そもそも手の平に収まり切らない程の大きさを誇る銀杏があるという話を、俺は聞いた事が無い。
ただ単にそれが銀杏に良く似た形をしているというだけである。
その銀杏に良く似た物体の正体は、俺の考えが間違っていなければとんでもない物の筈だ。
「……何でお前がそんな物を持ってるんだよ?」
驚くのも程々に凌駕さんが、眉間に皺を寄せながら当然の質問をヤツデンワニに投げ掛ける。
「実はあのパーティーの後に、何か記念になる物はないかな~って岩場を探してたら見つけちゃったので、思わず拾っちゃいました。えっへん!」
ヤツデンワニは特に悪びれた様子を見せる事無く、それを入手した経緯を話した後、誇らしげに胸を張って見せた。
その説明で俺は確信する。
ヤツデンワニが持っている物は、間違い無く銀杏電池だ。
この銀杏電池は、アバレンジャーとデカレンジャーが共演したVSシリーズに登場した、ストーリーの鍵を握るキーアイテムとなっていた物である。
エヴォリアンの幹部だった一人のミケラが最初に作り出したトリノイドと呼ばれる、戦隊シリーズには欠かす事の出来ない怪人の最初の一体目であるサウナギンナンが所有していた物だったのだが、劇中では攻撃を受けた際に紛失していた筈だ。
その攻撃で壊れてしまったのかと、思っていたが、どうやらそのまま放置されている所を、ヤツデンワニが回収していたらしい。
「お前!それがどんな物なのか分かってるだろ!?」
飄々とした態度を続けるヤツデンワニに対して、先程まで黙って説明を聞いていた三条さんが一喝する。
それも当然の事だろう。
この銀杏電池は相当に不味い代物なのだから……
銀杏電池を所有していたサウナギンナンは、その言動こそはふざけていたが強力な能力を有していた。
それは死者の復活である。
そして銀杏電池とは、そのとんでもない能力を発動させるエネルギーをサウナギンナンへと供給する役割を担っていたのだ。
見せられた物が物なだけに、はっきり言って碌な事にならないのは最早、確定事項と言えるだろう。
ヤツデンワニがこんな物騒な物を態々ここまで持ってきた理由とは、一体何なのか。
その理由を聞こうとした瞬間……
「あまり手間を掛けさせないで頂きたいですね」
この場に居る誰でも無い声が、恐竜やの中に響き渡った。
だがその声に聞き覚えが無い訳ではない。
そして俺が来たばかりのこの世界において、聞き覚えのある声というのは、恐竜やに居るメンバーを除けばかなり限られてくる。
「そこか!!!」
周囲を見回していたモモさんが逸早く、声の出所を察したのか、誰も居ない筈の壁に向かって手近に置いてあった空のカレー皿を投げ放つ。
そんな事をすれば、通常はどんな事態に発展するだろうか……
常識的に考えれば、壁にぶつかって、陶器製の皿わ割れて地面に転がる……それで終わりの筈だ。
だが現実に起こっている現象は、常軌を逸していた。
皿は壁に命中する事無く、なんと空中で静止していたのである。
しかしその光景も一瞬の出来事にしか過ぎず、空中で静止していた皿は突如として地面へと落下して、店内に陶器が割れる際に聞える特有の乾いた音が響く。
それと平行して、カレーが静止していた地点の空間が歪み、一体の異形が俺達の目の前に姿を現す。
まるで奇術師かと問いたくなるその出で立ちは見間違う筈も無い。
その異形は先程の戦いで、見事に俺達の前から逃げ果せたイマジンのメアだった。
「良く僕の居場所が分かりましたね?」
「はん!俺の鼻を舐めるんじゃねえ!テメエのイマジン臭いがプンプンしてやがったからな!!!」
素直に感嘆の言葉を告げるメアに対して、モモさんは誇らしげに自身の鼻を人差し指で擦りながら答えた。
「メア……どうして君がここに居るの?」
誰もが気掛かりとなっていた事を、良太郎君が一番に言葉にする。
その質問に答える義理がメアにある訳では無いが、メアは意外な程にあっさりと良太郎君の質問に返答を返す。
「僕の目的の物がここにある。理由はそれだけですよ」
「そう!そうなんですよ!何かこいつが僕チンの銀杏を寄こせってしつこく付き纏って来たからここまで逃げてきたの!」
メアの返答に続き、ヤツデンワニが凌駕さんの背中に隠れながら矢継ぎ早に捲くし立てる。
薄々と予感はあったが、銀杏電池が存在していたという事により、メアの言うデズモゾーリャ復活が単なる絵空事では無くなってきた。
事実、過去に失敗してはいるが、サウナギンナンはデズモゾーリャの復活を試みている。
どんな方法を考えているのかは知らないが、絶対にそんな事をさせる訳にはいかない。
「出来れば穏便に譲ってくれると嬉しいのですが、どうやらそんな訳にもいかないみたいですね」
メアの言葉とは裏腹に、その態度からは最初から平和的な解決方法など考えていないという意思が、嫌という程に感じられる。
「……メア。どうしてそんな酷い事をしようとするの?」
ここまでのやり取りを見ていたアリシアちゃんが、その瞳に涙を溜めながら問い掛ける。
アリシアちゃんの話からすると、二人は相当な時間を共に時の狭間で過ごしていた筈だ……
俺からして見れば、世界に大きな災厄を起こそうとしているイマジンだとしても、アリシアちゃんにとっては積み重ねた時間の数だけの信頼があるのだろう。
デンライナーで聞いた話が本当だと言うのであれば、俺もメアがこんな恐ろしい事を考えるとはとても思えない。
「……酷い事ですか。確かにそうかも知れませんね。ですがアリシア。僕は止める気はありませんよ!例えそれが友人の言葉だったとしても……」
アリシアちゃんに返されたメアの答えは、明確な拒絶だった。
その声からはメアの確固たる決意が現れている。
メアのその意思が善か悪なのかは別として、決意の篭った言葉から感じられる限り、メアは相当な覚悟を持っているという事だけは分かった。
だがそれと同時に俺の脳裏には、言葉に例え様の無い違和感が生まれる。
その違和感の正体が分からず、俺が何も言えない間に、メアはアリシアちゃんとの会話はここまでとばかりに指を弾いて、恐竜やの店内に乾いた音を奏でてみせる。
この音を合図としたのだろう。
恐竜やの至る所の僅かな隙間から大量の砂が濁流の様に流れ込み、数々の異形へとその姿を変貌させていく。
程なくして大量のモールイマジンが、俺達を取り囲んだ。
「さあ、これが最後のチャンスです。大人しくそれを僕に渡してくれませんか?」
最後の慈悲とでも言わんばかりに、メアが丁寧な口調でヤツデンワニに話し掛けるが、答えは既に決まっている。
一瞬の隙を突いて、モモさん、ウラさん、キンさんの三人が入り口付近を塞いでいたイマジン達を張り倒す。
「ヤツデンワニ!早く逃げろ!」
更に凌駕さんがモモさん達がイマジン達を張り倒す事で作った道を、ヤツデンワニを引率しながら駆け抜けて、早く逃げる様に指示する。
「ベ~ルベルベルベル!!!!!」
ヤツデンワニは、アメフト選手の様に、銀杏電池をがっちりと抱えて脱兎の如く店の外へと飛び出していった。
しかしここで俺達は、一瞬の隙を作ってしまう。
「逃がしませんよ!」
メアはそう言うと自身の姿を光の球体に変化させて、誰も対応する時間を与える事無くヤツデンワニを追って外へと飛び出してしまった。
それを俺達は急いで追いかけようとするが、相手がそれを簡単に許してくれる訳も無く、この場に残ったモールイマジンの集団が俺達に襲い掛かってくる。
「早く追わなくちゃ!!!」
コハナさんが発した言葉には俺も同意するが、こんなにも相手が多いとそれはかなり困難というものだろう。
「「爆竜チェンジ!」」
其処に三条さんとらんるさん。
二人の重なる声が、俺の耳に届いた。
左腕に装着した其々の青と黄色のブレスのスイッチを押す事で、光の粒子を纏った二人は、アバレブルーとアバレイエローに華麗な変身を遂げる。
凌駕さんの変身するアバレッドがティラノザウルスを模しているとするのならば、アバレブルーはトリケラトプス、アバレイエローはプテラノドンをモチーフにしている事が一目で分かるデザインをしていた。
「凌駕!ここは俺達に任せてヤツデンワニを追え!!!」
「ここは私と三条さんに任せて!」
アバレブルーとアバレイエローは、入り口付近で進行を邪魔するイマジン達を最優先に薙ぎ倒しながら叫ぶ。
その提案はありがたいが、このパッと見ただけでも20体を超えているであろうイマジン達を二人だけに任せて良いのだろうか。
俺とそしてもう一人、良太郎君も同じ事を思ったのか、ここに残って戦う事を宣言しようとしたその時、ウラさんの声によってその発言は遮られてしまった。
「女の子を戦わせて、先に行くっていうのは、僕の好みじゃないからね。そういう訳で僕はここに残らせてもらうよ」
「俺も残るで!」
ウラさんに続き、キンさんもここに残る事を宣言しながら、入り口付近のイマジンに突っ張りを食らわせて吹き飛ばす。
「良太郎!早くモモを連れて、凌駕さんと純と先に行って!」
何気に戦いに参加しているコハナさんが、地面に転がるイマジンを踏みつけながら先に行くように促した。
「ここは皆さんに任せて、俺達は奴の後を追いましょう!」
凌駕さんの言葉に俺と良太郎君は、少しだけ考えた後、肯定の意思を伝えるべく頷く。
『手遅れになる前に急ぐぞマスター!』
「遅れんなよ良太郎!」
メカ犬とモモさんの声に俺と良太郎君は、再び力強く頷いてみせる。
「分かった!行くぞメカ犬!!!」
「うん!行こうモモタロス!!!」
俺と良太郎君は、其々のパートナーに返事をしてから、凌駕さんの後に続き恐竜やを飛び出して、ヤツデンワニとメアが向かったと思われる方角に向けて駆け出した。
走り出してから数分もしない所で、俺達は追っていた二人の姿を視界に捉える。
だがその光景は、決して喜ばしいものでは無かった。
ヤツデンワニは目を回した状態で地面に転がっており、そのすぐ傍には銀杏電池を手にしたメアの姿。
『遅かったか!?』
メカ犬の言う通り、俺達は間に合わなかったのだ。
だがまだ希望はある。
メアが銀杏電池を使う前に奪い返す事だ。
「メカ犬!」
『うむ!』
タッチノートを開きながら俺とメカ犬は互いに視線を交わしながら合図を送り合う。
「僕達も行くよモモタロス!」
「おう!」
それに続き良太郎君が、ベルトを腹部に巻きつけながらライダーパスを取り出してモモさんと短い会話を交わす。
『バックルモード』
タッチノートのボタンを押す事で、メカ犬がベルトに変形して俺の腹部へと巻きつき、その隣ではベルトの赤いボタンを押した良太郎君にベルトから流れる独特のメロディーと共にモモさんが憑依する。
「「変身!」」
俺と良太郎君は同時に力ある言葉を紡ぐ。
俺はそのままタッチノートをベルトの窪みへと差込み、良太郎君はライダーパスをベルトの中央へセタッチさせる。
「爆竜チェンジ!」
更にその隣では凌駕さんが叫びながら左腕に装着したブレスのスイッチを押し込む。
『アップロード』
『ソードフォーム』
俺と良太郎君が装着するベルトから、其々に音声が流れて全身が光に包まれていく。
次の瞬間に俺の全身を包んでいた光は飛散して、メタルブラックのボディーを持つシードへの変身を果たす。
その隣ではプラットフォームとなった姿の上に、モモさんのイメージでもある赤を主体とした装甲が展開後、次々と装着されていきソードフォームの電王へと変身を遂げる。
俺と電王の変身を果たすのと時を同じくして、アバレッドの変身も無事に完了して、ここに三人の戦士が並び立った。
普段はこの後名乗るのが俺達のお約束ではあるが、今はそんな悠長な事をしている場合では無い。
目的を達成したメアが、何時逃亡するとも知れない事から、俺達は一斉にメアから銀杏電池を奪い返す為に一斉に駆け出した。
だが俺達の行動は事前に予測していたのだろう。
逸早く俺達の接近に気付いたメアは銀杏電池を持っていない手を動かすと、奇術師の様なその見た目通り、何処からとも無く、小振りの投げナイフを出現させて、俺達に向けて投擲した。