魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
「これは……」
俺はメアとアリシアちゃん達の頭上に出現した空間の裂け目を見て、思わず呟きを零す。
その裂け目が何を意味しているのか……
もしも俺の想像が正しいとしたら、それは最悪の事態に他ならない。
「その裂け目はこの現世と冥界を繋ぐゲートですよ」
先程の俺の呟きは誰かに対しての質問では無かったが、この場でとある人物がその呟きに返答を返した。
その言葉を口にしたのは、他の誰でもない。
この異様な光景を生み出した張本人であるメアだ。
『まさか……異世界どころか、死後の世界と現世を繋いだというのか!?』
メアの説明に対して、メカ犬がそんな事が有り得る訳が無いと否定するが、俺にはメアが嘘や酔狂でこんな発言をしているとは思えなかった。
メカ犬が言った通り俺もこの空間の裂け目が、あの世と繋がっているとは俄かに信じ難いが、その裂け目の先に途轍もない力を持った脅威が存在しているという事だけは感じられる。
「今度は仮初の命なんかじゃない……本当の死者の復活です!」
メアは高らかに宣言する。
その声は歓喜と狂気を孕んだ様に俺の耳には聞えてくる。
「……まさか本当にデズモゾーリャが復活するのか!?」
アバレマックスが、普段の凌駕さんとは違いこの状態特有の落ち着いた低い口調ではあるが、十分に驚愕していると分かる声を発する。
確かに次元を隔てている筈の俺達が感じる事の出来る存在感の主がデズモゾーリャの可能性は高いかも知れない。
「……メア。どうして……どうしてお前はこんな事をするんだ?」
今更だと分かりつつも、俺はそう聞かずにはいられなかった。
俺の知るメアは今ここに居る、オーバーやメルトと共に出ずもゾーリャの復活を企むメアに他ならない。
だがそれだけでは無いのだ。
確かに俺が知るのは目の前のメアだが、それとは別にアリシアちゃんから聞いたメアのイメージがどうしても俺の脳裏を過ぎる。
アリシアちゃんは楽しそうに語って聞かせてくれた……
ただ一人取り残された際に出会い長い時間を共に過ごした日々を……
メアは最初からアリシアちゃんを騙していたと結論付けてしまえば、それまでの話かもしれない。
だけど……
「どうしてこんな事を?それは愚問ですね。僕の目的は最初からただ一つですよ」
メアは俺の質問に答えながら、視線を俺から逸らせる。
視線の先には今も台座の上で、気を失っている舞ちゃんとアリシアちゃんの姿があった。
その直後、メアの手の指先が俄かに輪郭を失い、先端から砂流零れ落ちる。
「お前まさか!?」
この様子を目の当りにした電王から、モモさんの驚く声が俺の耳に届く。
メアに起こったその現象に対してモモさんが驚くのも無理はないだろう。
その現象をモモさんは過去にも目撃しており、自身も一度は経験したイマジンの末路なのだから……
「話はここまでです!最早この状態にまでなれば、後は僕が何もしなくても暫くすればデズモゾーリャは復活するでしょう……どうしても止めたいというのであれば、まずは僕を倒す事ですね!」
メアは会話を其処で強引に終わらせて、台座から大きく跳躍して俺達に襲い掛かってくる。
『来るぞマスター!』
「チッ!問答無用か!?」
飛び掛るメアに対して、メカ犬が俺に注意を促す。
その声を聞きながら俺は舌打ちと共にガイアブレイガンで身構える。
塔の外でも少しだけ手合わせした為、分かっていた事だがメアは相当に強い。
その強さは今の状態の俺達を相手にしていても、まったく遜色無かった。
飛び込み様に繰り出した蹴りを俺がガイアブレイガンの刃で受け止め、その隙に電王が横から斬り掛かるが、メアはすぐに体勢を整えて、デンガッシャーを持つ電王の腕が振り切られる前に受け止めてしまう。
更にここでアバレマックスが後方から追撃するが、メアは其々に俺と電王の武器を受け止めている手足を回転させて俺達の身体ごと受け流して、アバレマックッスが放つ斬撃を紙一重で避けきる。
だがそれだけで俺達の攻撃が終わった訳ではない。
身体を武器と共に、受け流されながらも俺と電王は再び体勢を整えて次の攻撃を開始する。
「うをおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
電王が雄叫びを上げながら再び突撃する間に、俺はベルトの右側をスライドさせて、緑のボタンを押す。
『スピード・ガイア』
音声が流れた瞬間に、ガイアモード特有のメタルレッドの装甲の下の部分であるメタルブラックのボディーが、鮮やかなライトグリーンへと変わっていく。
『スピードロッド』
更に俺は続けざまに黄色いボタンを押して、スピードフォルムの特殊武器、スピードロッドを生成してその溝の部分へとガイアブレイガンを差し込んだ。
『ジョイントアップ・ガイアロッド』
ガイアブレイガンを差し込んだ事により、スピードロッドに、メタルレッドのパーツが追加され、新たな武器へと生まれ変わる。
追加されたパーツによって更にリーチの伸びたロッドを手に、俺は先程よりも素早い動きで一気に戦場へと赴く。
先程の俺達三人による攻撃を捌いて見せたメアのスピードを上回るにはこちらの速度を上げる他無い。
だからこそ俺はガイアモードによって上乗せされた攻撃力にスピードフォルムの素早さを併せ持つ、このフォルムで手数を増やす戦法を実行に移す。
「これは……中々に厳しいですね……」
徐々に攻撃を捌くのが辛くなって来たのか、メアの態度から余裕が消え去っていく。
「はあっ!」
そして一瞬の隙を突き、遂にアバレマックスのオフェンスモードとなったスティライザーの一撃が、メアを捉える。
「こいつも喰らっとけえええ!!!」
アバレマックスの一撃に続き、電王のデンガッシャーによる一撃が叩き込まれる。
『今ですマスター!』
「これで決まりだああああああああああああああああああ!!!」
俺はメカ竜の声を耳にしながら、二人が作った最大のチャンスを活かす為に、よろけるメアに対してガイアロッドで一閃する。
この連続攻撃には流石にメアも耐え切れなかったのか、崩れさる様に地面へと膝を付く。
「……まだ。まだ僕は……負ける訳には……」
だがそれでも尚、メアはボロボロの身体だというのにも関わらず、再び立ち上がる。
「メア。どうしてそこまで……」
俺はメアの鬼気迫るその気迫に、再び同じ言葉を投げ掛けた。
「……もう僕には時間がないんですよ……それにアリシアにも……だから僕は例えこの身が滅んだとしても、悪魔に魂を売り渡したとしても……僕の大切な友達を救いたい……」
「アリシアちゃんを……助ける為?」
メアの言葉に俺は衝撃を受ける。
「純……ここまで来た君も恐らくは知っているでしょう。アリシアが特異点であると同時に……元居た世界における重要な分岐点の鍵だという事に……」
「……ああ。その話は俺も聞いた。だけどそれがどうしたらこんな事になるっていうんだよ!?」
メアの先程の説明では、その肝心要な理由が見えて来ない。
一体全体メアはその身を犠牲に、オーバー達の企みに加担までして何の脅威からアリシアちゃんを守ろうとしているのか?
……いや。
俺はただ気付かない振りをしているに過ぎないのかもしれない。
心の何処かでその一つの予測が、現実で無い事を密かに渇望しているのでは無いのだろうか……
「もう時間が無いんですよ……このままではアリシアの存在は消えてしまうんですからね……」
だがメアの言葉は終わらない。
そして発せられた言葉は、俺の考えた予測の中でも最悪の部類に属する代物だった。
特異点であるアリシアちゃんの存在が消えるという可能性を、俺は一つだけ知っていたのである。
電王の劇中のラストに、自身の存在と自らが生み出したイマジンと共に消えてしまったカイという青年もまた特異点に他ならなかった。
その消えてしまう条件について、俺は詳しく知っている訳ではないが、逆に特異点であるアリシアちゃんがその条件を満たしていないという事も言えないのは紛れも無い事実なのだ。
「アリシアを助ける道はたった一つだけ何ですよ。本来その世界には存在しない筈の大きな存在が特異点であるアリシアと深い繋がりを持って、世界に大きな変革をもたらす……そうする事でアリシアという存在を世界が認め、消えないで住む。彼等が僕に持ってきた誘いと僕自身の能力……それはこの条件にもってこいでしたからね」
先程の説明で、メアの目的がはっきりとした……
メアはアリシアちゃんを、大切な友達を助けようと必死だったのだ。
その行動は確かに常軌をいっしているものだったかもしれない。
しかしそれも全てはメアの心にある優しさから来るものだった……
「だから僕はこんなところで負ける訳には行かない!」
メアは己の決意を俺に向けて叫ぶ。
その気持ちには一片の曇りも無いという事が俺にも分かった。
……だけど……だからこそ……
「……メア!お前がアリシアちゃんを大切に思っているって事は分かった!」
「そうですか。ならこれ以上僕の邪魔はしないでいただけますよね?」
「だけど!!!」
俺はメアの返答に応える事無く一喝する。
「だけどやっぱりこんな事は間違ってる!だから俺は全力でお前を止める!!!」
「……何故ですか?君はアリシアが消えてしまっても構わないと、そう思っているんですか!?そんな事は僕には無理です!!!大切な友達を見捨てるなんて真似を僕は絶対に出来ない!!!」
俺の言葉に反応してメアが声を荒げるが、それでも俺は構わずに叫ぶ。
「それを本当にアリシアちゃんが望んでいると思うのか!?」
アリシアちゃんは優しい女の子だ。
幼いながらに必死に自分の運命と向き合おうとしている。
勿論俺だって、このままアリシアちゃんが消えてしまっても構わない何て、思っている訳が無い。
だけどメアの言う様な方法を選んじゃ行けない。
例えその結果として、アリシアちゃんが救えたとしても、その事で背負う業に彼女の心はきっと耐えられはしないだろう。
払われる多くの犠牲と代償をその優しい小さな女の子の背中に背負わせるなんて真似は絶対にしてはいけない。
「それに何よりも……友達のメアが居なくなったら、アリシアちゃんは絶対に悲しむ。俺はこれ以上アリシアちゃんの大切な人達が居なくなっていくのを見たくないから……だから俺は戦うんだ!!!」
「……分かってるさ。アリシアの事は、だけどそれでも僕は「メア……もう良いんだよ」……この声は?」
メアの言葉を遮る形で、一人の少女の優しさに満ちた声がこの場に居た全員の耳へと届く。
その声はこの塔の最上階の中央に鎮座する台座から響いた。
俺を含めた誰もがその声の主へと視線を向ける。
其処には台座の上から降りた一人の少女が、その流れる様な黄金色の長い髪を靡かせていた。
「メア……もう私の為にこんな事をしないで」
その少女、アリシアちゃんは長い時を共に重ねてきた友達に切実に訴えかける。
「お友達なら仲直りしなくちゃ駄目だよ」
更にアリシアちゃん同様に、目を覚ましていたのだろう。
舞ちゃんがアリシアちゃんに続き、メアを説得しようと言葉を投げ掛けた。
「アリシア……たとえ君の頼みだとしても僕はここで引く訳には行かないんだよ」
「私がもうすぐ消えちゃう事は知ってるよ……」
「な!?」
アリシアちゃんの頼みを断ろうとするメアの言葉に対して、アリシアちゃんは衝撃の事実を口にする。
その事実はメアも知らなかったのか、驚愕の声を上げていた。
俺も声こそ出さなかったが、アリシアちゃんが近い内に自身が消滅するという事をしていたという事実に対して驚きを隠せない。
「私だってこのまま消えちゃうのは嫌だよ。それは今でも変わらない……だけどそれで大勢の人達が傷付くのを私は見たくないよ。それに私は……そのせいで大切なお友達が居なくなっちゃうのは絶対に嫌」
それは他の誰の考えでもない。
当の本人であるアリシアちゃんが自身の運命と向き合って下した決断だった。
アリシアちゃんの事を大切に想うのであれば、その決意を踏みにじる様な事をしてはいけない。
例えその先に待っているものが、何であったとしても……
「僕は……僕は……」
アリシアちゃんの決意の言葉は、結果としてメアの戦う理由を打ち消した。
メアもアリシアちゃんも、お互いを大切に想っていたからこそ、何処かで考え方が擦れ違ってしまったのかもしれない。
それがメアを凶行へと走らせてしまった……
だがこの瞬間、その隔たれていた壁は無くなり、二人は再びお互いを友達だと胸を張って言える関係を取り戻したのだ……